エンド・オブ・ジャパンのようです (266レス)
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88: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2022/11/16(水)22:06 ID:W1WHWUQU0(1/10) AAS
その傾向は、今この場で最も旺盛な“戦意”を漲らせているであろう2人についても変わりませんでした。

《…………りょうかーい》

《はぁ〜〜い………》

島風さん、そして白露さんの返答の声には、不満自体は非常にはっきりと表出していました。
しかしそれでもやはり扶桑さんへの反論はなく、電探上で彼女たちの反応を示す──他の水雷戦隊の方々と比して明らかに大きく突出した──青点もまた名残惜しそうな素振りは見せつつも両翼の隊列へ戻ります。

そのまま敵艦隊は、戦艦や重巡の皆さんによる射撃に追い立てられながらまさに“敗残部隊”という他ない様子で海域より離脱していきました。
省13
89: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:10 ID:W1WHWUQU0(2/10) AAS
一応、国連“海軍”所属部隊が【学園艦棲姫】へ至る海路の各所に臨時の洋上補給拠点を続々と建築はしています。
が、拠点といいつつ実態は補給物資をありったけ詰め込んだドラム缶が綾波たち艦娘が使う水上航行ユニットを改造したものの上に纏めて置かれただけのもの。

量の面でも安全性の面でも、決して“あること”を前提にして考えて良い代物ではありません。
そう考えると、最低限の継戦能力維持のためにある程度弾薬や燃料の節約を考えなければならないのは扶桑さんの仰る通りでしょう。

「でもFlag、さっきの艦隊が後続と合流して更なる大戦力として戻ってくる可能性は考えられなかったかしら?

約200隻、向こうはBattle ShipもHeavy Cruiserもかなり残っていたわ。空母艦隊が甚大な損害を被っていたとはいえ、水上打撃戦力だけ抜け出して自分たちのFreetに加えたとしてもおかしくないんじゃない?」

「向こうに、それを実行するだけの余裕がありませんよ」
省9
90: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:12 ID:W1WHWUQU0(3/10) AAS
これが、“父島鎮守府総旗艦・扶桑”か。そんな、戦慄にも似た感嘆と畏敬の思いが、綾波の胸を満たします。

僅かな所作から、敵艦隊の狙いや次の動きを即座に見抜く洞察力。

不測の事態にも動じず、寧ろ策に盛り込み利用できる応用力。

その場での戦果拡大を徹底的に追い求めた大胆不敵な“拙速”と、大局的観点から鑑みた冷静沈着な“巧遅”を自身の明確な理論に基づいて的確に使い分ける判断力。

数多の艦娘が集う大艦隊にあっても、振るった指揮を全員に納得させ従わせる統率力。
省18
91: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:14 ID:W1WHWUQU0(4/10) AAS
「それにしても、【特派府】艦隊………ですか」

「なぁに?なんか文句でもあるわけ?」

「おう、そうだぜ!ナメんじゃねーよチキショウめ!!」

「色んな意味で当然の反応だと思うな〜………」

扶桑さんのすぐ後ろまで進み出てきた赤城さんが、多摩さんの改めての自己紹介に複雑な表情を浮かべました。当府屈指の武闘派である霞さんが速攻で噛みつき涼風さんもそれに続きましたが、文月ちゃんの言う通り私もその反応は正直理解できてしまいます。
省8
92: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:18 ID:W1WHWUQU0(5/10) AAS
故に、我々【特派府】艦隊の任務は基本的に近隣の巡回と「はぐれ艦隊」を発見した際の掃海作業、後は偵察程度に留まります。
万一主力級艦隊と接敵した場合、基本的には即座に撤退後遠巻きの監視態勢へ移行。前述した任務の兼ね合いで“偶然にも”泊地に停泊している本土の艦隊か、これも“たまたま”米軍との合同海外演習を行っていた自衛隊所属の艦娘艦隊が対処する形を取ります。

仮に交戦するとしても基地航空隊や現地の空軍と連携しながら進軍を遅滞させるための牽制がせいぜいで、本格的な艦隊決戦が指示されることは滅多にありませんでした。
取り分け艦娘戦力の充実が著しいここ2年ほどは、「偶然主力級の艦隊が泊地に入港して中だった」状態を“安定して”作ることが出来た為、そもそもそれを検討する必要性自体起こり得なかったのです。

逆説的に言えば、ここまでの鉄火場に綾波達【サマール島第19特派府】の艦隊が居るという事実、それ自体が、

「アンタらの実力そのものを疑うわけじゃないけど、要するにScoutを主任務とする艦隊を動員しなきゃいけないぐらい追い詰められてるってことでしょ?

それも、“艦娘覇権国”の日本がサ」
省14
93: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:21 ID:W1WHWUQU0(6/10) AAS
今更言うまでもないことですが、大東亜戦争の折、帝国海軍は太平洋上で幾度となく欧米諸国の艦隊と熾烈な戦闘を繰り広げました。
その時に刻まれた“艦時代”の記憶は、艦娘としてヒトの形を得た今も綾波達の中に残っています。

故に、アイオワさんやサラトガさんのような米国艦娘を筆頭に、この一年ほどで急速に“実装”が進んだ旧連合国の艦娘の皆さんに対して、大なり小なり複雑な思いを抱える子はいるでしょう。
かく言う私だって、在比米軍鎮守府に派遣されてきたジョンストンさん──フレッチャーさんの妹艦にあたります──と初めて言葉を交わした時は正直かなりぎこち無い反応をしてしまいました。

とはいえ流石に、深海棲艦という共通の敵を前にしながらここまではっきり拒絶反応を示す方は非常に珍しい部類に入る気がしますけど……。

「大体、他の艦娘は大和魂が足りないんだ。幾ら時代が変わったからって、祖国を焼け野原にし天皇陛下に心痛を与えた連中に────わぶっ!?

な、なにするんd、いだだだだ!!?」
省16
94: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:23 ID:W1WHWUQU0(7/10) AAS
綾波も軍属の身。このような見た目ですけれど、世の中が美事と正義のみで回っていると思う程純真無垢ではありません。

降って湧いたが如く唐突に現れた、国連特別“海軍”なる組織。それがここまでの事態に対しても明らかな即応性を持っていたことについて、何かしらの“裏”を感じなかった艦娘は殆どいないのではないでしょうか。

寧ろ私としては、この方面に配属されている艦娘達の間で長らく囁かれてきた

『記録上は近隣特派府の軽巡・駆逐艦しか出撃していないはずの方角から何故か超弩級戦艦のものとしか思えない砲声が聞こえる』

という怪談じみた噂話に答えが出たことで幾らかスッキリした思いさえ抱いたぐらいです。
省9
95: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:27 ID:W1WHWUQU0(8/10) AAS
「にしても冷たいもんだよ提督は、Last Voyageをこんな素敵な連中とさせるんだから。割りと“勝手知ったる”仲だったと思ったんだけどなぁ」

「っ!アトランタ、そんな言い方……」

「いい子ちゃんぶるのはやめてよヒューストン。アンタだって勘づいてるでしょ?この作戦、KAMIKAZE以外の何物でもないって。

ヨコスカ、アオガシマ、そこに“ウチ”から【あの連中】まで加わったAllied Freetを壊滅させるような化け物に、アタシら程度の艦娘を何百隻束にしたって勝ち目はないって」

先に述べた、青ヶ島、横須賀、そして“海軍”鎮守府による連合艦隊は、既に【学園艦棲姫】との交戦で壊滅的な打撃を受け撤退しています。
省14
96: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:30 ID:W1WHWUQU0(9/10) AAS
(沈んだ【敷波】の所属鎮守府を聞き、“知っている【敷波】”ではなかったことにホッとしてしまった私は、とてもひどい艦娘ですね……)

この4個艦隊相当の損害は、あくまでも“轟沈”を抜き出したもの。大破撤退艦を含めれば1割強、撤退・戦闘継続中を問わず中破艦まで対象を拡げるなら既に損耗は2割近くにまで上ると聞きます。

そしてこの数字さえ、“前線が混乱する中で上がってきた不確実な情報”であり綾波が“一時間ほど前に聞いたもの”でしかありません。正確なところがどうであるか、今はどうなっているのかは解りませんが、これよりもマシである・好転している可能性は限りなく低いでしょう。

(私も正直、死にたくは……ないですねぇ)

理屈では、初月さんの仰ることこそ「正」であると理解できます。艦娘が担う責務は深海棲艦の撃滅と人類の守護、祖国の防衛。それを果たすこと自体に疑問はありませんし、全力で果たしたいとも思います。
しかしそれとは別に死にたくない、生きたいという渇望もまた、明確に綾波の中で渦巻いているのです。
省12
97: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/11/16(水)22:36 ID:W1WHWUQU0(10/10) AAS
密かに燻らせていた暗然たる思いがアトランタさんの言によって表出したのは、きっと綾波だけではなかったのでしょう。
この艦隊そのものを押し潰すかのように、重く苦しい空気が辺りを包み込みます。多摩さんも、文月ちゃんも、浜風さんも、私達の艦隊は誰もが暗い影を表情に宿して俯いてしまいました。

「全艦、傾注!!」

それを切り払ったのは、凛として放たれた扶桑さんの声でした。

「各艦隊旗艦は海図を同期、近隣海域で構築されている即席洋上補給拠点の最新情報を取得・共有するように!海図統合完了後、拠点規模に応じて一時艦隊を50km圏内で分散しつつ進軍します。

各空母・航空戦艦、他水偵装備の巡洋艦は偵察機を発艦。海図上の補給拠点が健在であることは事前に必ず確認してください!
省24
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