エンド・オブ・ジャパンのようです (311レス)
エンド・オブ・ジャパンのようです http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/
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55: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火) 19:52:05.22 ID:CoVkH/xM0 ('A`)「……………考えては、いるさ」 「!!! じゃあ」 ('A`)「ああ見えて仲間思いだからな、そりゃあ俺の戦術に我慢がならないのは解る。なんとかもっと有効な戦術を構築できればとは、ずっと思ってるよ」 「………………………………………………………」 一瞬喜色を浮かべたように見えたナカスガの表情が、みるみるうちに侮蔑と落胆、憐憫によって曇っていく。 前者二つは口先だけで結局白兵戦術から抜け出せない俺へのものとして、憐憫は誰に対してだ…? ('A`)「ええとまぁ、そっちに関しても可能な限り早めに解決できるよう努力する。で、2つ目はなんだ?」 「あーっ……っと……」 何故かこれ以上この話題を続けると更に愉快ではない状況へ追い込まれる気がしたので、とっとと切り上げ次の要件へ言及する。 途端、ナカスガの歯切れがこれまでと打って変わって悪くなった。 「ちょっと、他の戦線の様子が気になってね?ほら、今起きてる深海棲艦の攻勢って、アイツらが現れた直後以来の全世界規模らしいじゃない?仮にここが持ち堪えられても、他が崩壊したら意味ないから気になっちゃってね?いやちょっと、ちょっとよ?だけどその……提督も兼任してる少佐のところなら他地域の戦況についても確かな情報とか入ってるんじゃないかなって。例えばさ、極東戦線とかすごく気になるじゃない、艦娘戦力の中心的な場所だしさ」 聞いてもいない要件の理由までベラベラと並べ立てるものだから言葉数自体は多いのだが、内容はとてつもない回りくどさで解りにくい。つまり「深海棲艦に攻撃されてる日本戦線の戦況が気になるから教えて欲しい」で済むじゃねえか。 そういや、コイツ元々ヤパーヌの出身だったな。ツンから聞いた話だが、こっちに来る前に作った友人がいるとも。 オオアライで“東洋のジャンヌ=ダルク”が乗る学園艦の上に深海棲艦が突然「生えてきた」ってニュースは戦意高揚番組を躍起になって流し続けている軍営ラジオですら真っ先に取り上げてた。 それだけでも十分なヘヴィパンチであるところに、今度は国内でテロが起きているやら頭ケシ畑のチャイナ連中が軍事介入を画策しているやら、挙げ句ロシアが核の利用を仄めかし始めたなんてニュースが飛び交う有様だ。まぁ、心配になるのも無理はない。 ('A`)「まだ日本戦線に関する続報はない」 ただ、最初の要件同様、今の俺では残念ながらご期待に添えないのだが。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/55
56: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火) 19:55:47.38 ID:CoVkH/xM0 「し、詳細である必要はないのよ。例えば、今どれぐらい戦線を押し返したかとか、どの町は無事とか、大洗女子学園が奪還されたかとか、それぐらいで……」 ('A`)「提督っつっても対象階級の中では一番下の現場士官だからな。悪いが、軍上層部からその辺りが俺まで降りてくることは滅多にねぇさ」 言いながら胸ポケットのマールヴォロに手が伸びかけるが、眼前の人物の存在を思い出して辛うじて堪える。 青少年少女の健全な発育を思い自身の嗜好を我慢する、大人の鑑だね我ながら。教育省からの表彰状はまだだろうか。 ('A`)「まぁ、あのぶっちぎりの艦娘大国がおいそれと押し込まれるとは思えんし、世界中が修羅場とはいえ中国やロシアの件も日本自体も周辺国も無反応とは考えづらい。 少なくとも“更に危機的状況になった”という知らせが来てないなら、ある意味それが無事の証拠と見ることもできるだろうさ」 ………これを成長と呼べるのかは知らないが、我ながらスラスラと嘘をつけるようになっちまったもんだ。 実のところ、続報自体は入ってきている。厳密に言えば【フィリピン海防衛線】に関するものなので日本列島そのものについてという意味では嘘は言っていないが、それでも関連情報についてダンマリを決め込んでいるのは間違いない。 ただ言い訳させてもらうなら、じゃあ今俺の手元にある情報をこいつに開示したところで何がどうなる? 得体の知れない敵の“新型艦”による猛攻撃を受けて日米連合艦隊とこれにASEANも加えた連合空軍が敗退して、“新型艦”は大艦隊を引き連れて日めがけて北上中ですなんて話をナカスガにしたところでなにか変わるか?心配のタネを増やして終わりじゃないか。 「…………………とりあえず、今私に伝えられるような情報が一つもないことは理解したわ、ありがとう」 ('A`)「どういたしまして。……あぁそうだ。お前この後ジョルジュの元に行く予定や用事はあるか?」 「? ないけど何?伝言でもある?」 ('A`)「逆だ。今から2時間、奴にだけは絶対に会うな。2時間経ったら構わないが、とにかく2時間は絶対に空けろ。少佐命令として他の命令に優先だ、解ったな?」 「な、なんか凄い気迫ね……命令なら受諾するけど」 ('A`)「よし、もう行っていいぞ」 首を傾げながら去っていくナカスガの姿を見送り、ほうっと息をつく。 とりあえず2時間も設けてやれば、その頃には奴さんとレーベレヒトの大層情熱的かつ刺激的な“逢瀬”も終わっているだろう。チ級撃破の折に交わした報酬の約束を果たしてもらおうと探していたところでソレに出くわした際は面食らったものの、同時にレーベの大分ジョルジュに入れ込んだ言動の正体に合点がいった。 まぁ戦闘直後に盛るんじゃねえよとは正直思ったが、寧ろ戦場だからこそ燃えるものがあるのかも知れない。どちらかが強制されているならともかく、互いが合意し“そういう感情”を共有しているなら俺からとやかく口を挟むのは出歯亀ってやつだ。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/56
57: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/20(火) 19:59:44.56 ID:CoVkH/xM0 ようやくポケットからの脱出に成功したマールヴォロを一本手に取り、火を付ける。万感の思いを込めて深く深く吸い込むと、寿命を削る紫煙が肺を我が物顔で満たす。 (;'A`)「ゲホッ!!」 がっつきすぎた報いで咳き込む。形を乱した煙がボワッと口から湧き出て、風に吹かれて散っていく。 ('A`)(……………戦況、ねぇ) 本題とはズレていたしやはり伝える義務はなかったので話していないが、“他戦線の状況”自体は既に俺の元にも次々と入ってきている。 西欧戦線はフランス・スペイン・アメリカ・ポルトガル連合軍によるオルレアン防衛線が突破され、【陸棲型】を主力とした深海棲艦の機動攻勢の前に総崩れで撤退を重ねている。 フランス政府はナントへ機能を移転させ、更なる事態の悪化に備えて本格的に国外亡命先の交渉に入ったそうだ。 北欧戦線はオスロから大挙出撃した艦隊がコンクスビルゲンへの総攻撃を開始、スウェーデン本土への雪崩込みも視野に入ってきたと言う。 フィンランドを加えた3カ国とロシア軍は、コンクスビルゲンが制圧された際は【Black Bird】による防空圏を数の暴力で強引に突破した上で街ごと敵艦隊を爆弾の雨と核非搭載の弾道ミサイルで吹き飛ばす作戦の調整を開始した。 アフリカじゃケープタウンに加えてポートエリザベスにも【戦艦棲姫】を主力とした推定二十個超の艦隊戦力が上陸し、現地軍や投入された国連“海軍”の抗戦も虚しく本格的な内陸浸透が始まりつつある。 インド洋に浮かび艦娘戦力も潤沢に保有する日本・アメリカ・インド連合艦隊はこの動きに介入できなくもない距離だが、洋上で深海棲艦による波状攻撃を受け動けないらしい。 中南米でも深海棲艦は動き出している。パラマリボへの上陸を目指しているとされる十個艦隊強をパナマ、ベネズエラ、キューバなど周辺諸国の海空軍が迎撃しているが、戦況は入ってくる限り絶望そのもので足止めすらロクに出来ていない。 ………ドゥームズデイ・クロックの針は、今どのあたりにあるだろうか。指している場所が仮に23:59:59:99であったとしても、俺は驚かないね。 ('A`)(……………………) タバコの先から立ち上る煙に合わせて、視線を上に向けていく。空は先程まで分厚く覆っていた雲がいつの間にやら散り、忌々しくなるほど爽やかに晴れ渡っている。 とても世界が滅亡を迎えつつある日の空模様には見えない。 が、案外こんな天気の時こそ世界が滅ぶのかもしれないなんて、他人事のような考えが脳裏によぎった。 . http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/57
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga] 2022/09/21(水) 12:32:35.07 ID:fWk1SJ5b0 更新おつです ツン隊長デレデレですし ドクオの毒男体質も女子高生に心配されるレベル 久々の穏やかな時間でしたね http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/58
59: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2022/09/23(金) 23:23:43.53 ID:8rRfKGN10 . ぐるぐるぐる。 まるで回転している巨大な独楽の中心から見ているかのように、綾波の視界は回り続けています。 艤装の加護で殺しきれない遠心力、艦娘の身体能力でも抑えきれないGの圧力が、軋むような痛みに変換されて身体中を蝕みます。すぐ隣りにいた浜風さんや他の皆さんの様子を伺う余裕はありませんが、誰一人まともに動けている気配がないのできっと同じような状況なのでしょう。 《───べ!飛べ!!飛べぇええええ!!!》 轟音と耳鳴り、緊急を告げるけたたましいブザー音。様々な騒音に掻き消されそうになりながら、それでも無線から聞こえてきた必死の叫びは綾波の耳に届きました。 「うぅ………」 辛うじて動く両の手になけなしの力を込めて、這うようにして前へ、開きっぱなしになった後部ハッチへと向かいます。 10mもないはずの距離が、とても遠く感じました。艦娘であれば、否、只のヒトであったとしても数秒で歩み切れる距離に何十秒も掛けねばならないことが、この機体に残された時間が少ないであろうことも合わさって酷くもどかしい。 「うぁ…………!」 機内の温度が僅かずつ上がり始めたように思える中、なんとかハッチの縁に手をかけられました。そのまま現時点で注ぎ得る力を振り絞り、ハッチの外へと上半身を乗り出させます。 降下、等という格好のいいものではありません。落下、滑落、或いは排出。ただ逃れるために宙に投げ出した私の身体は、周囲で炸裂する高角砲弾や飛び交う【黒鳥】たちの合間を縫い、重力に引かれるまま眼下の海へとまっしぐらに堕ちていきました。 「わぶっ…………!!?」 海面に叩きつけられた瞬間、半ば意識を手放していたにも関わらず艦娘艤装の防護機能が作動。綾波の全身を包んだ不可視の防壁がそのまま重量によって沈んでいくはずのところを一〜二メートルほどで引き止め、トランポリンが弾むみたいに上へと引き戻します。 眼を開ければ、既に綾波はへたり込むような姿勢で水上にいました。かつて零戦や空母機動艦隊をして名を馳せた皇国の技術力は、70年以上の時を経てなお変わらず世界屈指のもののようです。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/59
60: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/23(金) 23:25:43.54 ID:8rRfKGN10 ただ、そのことに感心し喜んではいられません。何せここは、戦場のど真ん中なんですから。 ともすれば朦朧となる意識を奮い起こし顔をあげると、揺れる視界の中で水飛沫が次々と上がりました。数は5つ、搭乗していた僚艦の皆さんと同じ数であることを踏まえると、どうやら全員無事に降りることができたようです。 「あぁ………」 ですが、綾波達を【ロナルド・レーガン】からここまで運んできてくれた機体───CH-47【チヌーク】はそうはいきませんでした。 後部から激しく炎を吹き出していたチヌークはそれでも辛うじて飛行を続けていましたが、綾波達がなんとか着水したのを見届けると最後の力を振り絞るようにして機体姿勢を横に向けながら一際高く上昇します。 次の瞬間、その横腹に高角砲弾が突き刺さり、30mを超える巨躯は炎を纏いながらバラバラに引き裂かれてしまいました。 明らかに、綾波達への攻撃を身を挺して遮った動き。操縦していた陸自士官のお二人は、最後の最後まで日ノ本を脅かす存在に立ち向かうという職務を貫き通したのです。 しかし、そんな彼らの気高いあり方に哀悼や賛辞を述べる間を、“敵”は与えてくれません。 『『『ゴァアアアアアアアアッ!!!!!』』』 「敵艦隊接近!12時方向、2個艦隊!!」 「応戦するにゃ、綾波チャン、浜風チャン、カバーお願いにゃ! 軽巡多摩、砲雷撃戦開始にゃ!」 「駆逐艦浜風、旗艦指示目標視認!相手にとって、不足なしです!」 「綾波、指示を受諾します!……この海域は、譲れません!!」 綾波に続いて態勢を整え終えた旗艦の多摩さん、僚艦の浜風さんと共に、向かってくる深海棲艦の群れ目掛けて砲弾を放ちます。おそらくチヌークを落とした砲撃の主であろうそれらはすぐに反応し、汽笛代わりの咆哮で威嚇しつつ直ぐに応射してきました。 12対3。敵艦隊にはEliteこそ確認できませんが、数的不利は歴然です。加えて向こうは片方の艦隊旗艦を重巡リ級が努めており、最高火力も上回られています。 正面切ってまともにやれば綾波たちに勝ち目がないのは確かでしょう。ですが敵艦隊は、あまりにも安直に綾波たち“だけ”を目指して猛々しく進んできていました。 チヌークの動きそれ自体に気を取られたか、或いはこれを撃墜したことによって綾波たちの内幾らかをその巻き添えに出来たと誤認していたか、その理由が何であれ、 「敵艦隊、距離700地点にて停止!!全火砲こちらへ集中の構え!!」 「第二陣、今にゃ!!」 奴らの動きは明らかに、自分たちが既に挟撃されていることに気づいていませんでした。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/60
61: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/23(金) 23:27:48.02 ID:8rRfKGN10 多摩さんがそう叫んだ瞬間、電探上にある残り3つの僚艦反応が動きます。 海面に漂う、チヌークやそれより前に撃墜されていたであろう友軍機の残骸に。或いは荒れ狂う海の波間の中に。リ級らが通り過ぎ、此方を沈めるため足を止めるその瞬間まで息を潜めていた3人が、一気に加速し敵艦隊の後方から突っ込みます。 「真後ろがここまでがら空きとはね………見てらんないったら!!」 「はっはぁ!釣りはいらねえ、ぜぇんぶもってけドロボー!!」 「駆逐艦の本領発揮だよぉ〜!これでもくらえ〜〜!!」 『『『グゴガァアアアアアアアッ!!?』』』 『ア゛ァ゛ッ!!?』 霞さん、涼風さん、文月さんによる魚雷一斉射。その数、実に10本。かなり距離を詰めてからの射撃だった為避ける間もなく、後方にいたハ級2、ホ級とイ級各1、計4隻が断末魔を残して灼熱の水柱に呑み込まれます。 面食らった様子でリ級が霞さんたちの方を振り向き、他の艦も動きを止めます。当然ソレは、今度は綾波たちにとって絶好の隙です。 「方舷、魚雷全投射いくにゃ!!撃(て)ぇ!!」 『グッ………?!』 『『『ギァアアアアアッ!!?』』』 多摩さんの号令に従い、右脚ユニットの魚雷を全弾発射。2発はホ級を跡形もなく吹き飛ばし、1発はト級の身体のど真ん中を抉り取り沈黙させます。残る1発はリ級を狙ってすんでのところで躱されたものの、延長線上にいたニ級に命中しその息の根を止めてくれました。 更に多摩さんの魚雷がイ級とロ級を、浜風さんが別のニ級を沈め、僅か数分の攻防で私達は彼我の戦力差を逆転させることに成功しています。 「敵艦隊、残余3隻!」 「一気に仕留めるにゃ!各位前進しつつ射撃を!!」 故に兵は拙速を聞く、未だ功の久しきを観ざるなり。当然ここは、悠長に構えず一挙に勝負を決めに行きます。 重巡リ級は無傷で健在ですし、随伴2隻も片方は軽巡ヘ級。総合火力で見れば未だ互角か、此方がやや劣勢と見て良いかもしれません。 ですが、数的有利はそのまま手数の差に直結します。姫級や鬼級でもいるならいざ知らず、全て通常種なら“質”の差は“量”で十分に押し潰せる。 『『グガガガッ!??』』 『ギィィッ………!』 へ級には浜風さんと文月ちゃんが、リ級には多摩さんと霞さん、涼月さんの三人がかりで、徐々に距離を詰めながらの全力射撃。小口径の主砲故一撃必殺とは行きませんが、小口径だからこそ実現できる連射力で2隻の足を縫い止めます。 残り1隻は3体目となる駆逐イ級。後期型とはいえ通常種なら綾波一人で十分捻じ伏せられます。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/61
62: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/23(金) 23:30:31.14 ID:8rRfKGN10 リ級ら敵艦隊も、無論ただやられるために棒立ちしていたわけじゃありません。反撃しよう、綾波たちを撃ち倒そうと、懸命に藻掻いている様子は砲火の中からでも十分に伺えました。 『ギィアッ………!?』 『ゴぁ────』 だけど、四方八方から雨霰と降り注ぐ綾波たちの砲火が、それを許しません。結局抵抗らしい抵抗は殆ど出来ないまま、イ級が沈みへ級が力尽き、残るはリ級ただ1隻のみです。 『グゥッ………!?』 「リ級、中破状態に移行!」 「トドメにゃ!魚雷発射!!」 詰めに詰めて、いつの間にか距離は500。海上の艦隊戦においては直接掴み合っているも同然の至近距離。 放たれた六本の魚雷は、当然外れることもなく全てリ級に吸い込まれていきます。 断末魔が、くぐもった爆発音にかき消されます。大樹の幹を思わせる図太い水柱と爆風が収まった後には、艤装の一欠片さえ残ってはいませんでした。 「敵大編隊接近!!対空警戒!繰り返す、対空警戒!!」 迅速極まりない二個艦隊の殲滅、それも損傷艦すら0の完全勝利。しかしそんな大戦果を挙げた直後でも、私達に息をつく暇は与えられません。 水平線の彼方、恐らく例の【棲姫】が居るであろう方角。そこから、巨大な雲のごとく黒いなにかが湧き出してきます。 本来天候の急激な悪化を示す黒雲の出現は、綾波たち艦娘にとって忌むべきものです。しかし今回ばかりは、アレがただの黒雲であったならその方がどんなに気が楽だったでしょうか。 『『『───────!!!』』』 そんな私の都合のいい願いが届くはずもなく、黒いナニカは明らかに明確な意思を、私達艦娘への害意・敵意を感じられる動きで此方へ向かってきました。 それはアレらがただの空に漂う水粒や氷粒の塊などではなく、先程霞さんが叫んだ通り、膨大極まる数故に1個体と見紛うばかりの敵機群であることを証明しています。 「近接航空支援要請!!」 《Roger, Engage》 多摩さんが無線に向かって叫ぶと、幸運にもこの方面で手隙の航空隊がすぐ近くにいたようです。応じる声と共に、頭上を銀影が2つ駆け抜けていきました。 《Target insight. Wendigo-05, FOX-2 FOX-2》 《Wendigo-06, FOX-2!!》 現代米軍の艦上戦闘機、確か【ホーネット】という名が着いていたその2機は、発射符号に合わせて両翼のミサイルを放ちます。周辺の友軍艦隊でも要請したところがあったのでしょう。別方面からもジェットエンジン音が重なり、我々の頭上を含む三方向から計8発の空対空ミサイルが敵機群に迫ります。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/62
63: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/09/23(金) 23:33:39.30 ID:8rRfKGN10 深海艦載機の密集陣形に対する、機関砲やミサイルを用いた人類さん達の航空攻撃。状況さえ整えば時に綾波たち艦娘をも凌ぐ戦果を挙げられると言うことは、青ヶ島やベルリンでの攻防戦を経て既に世界中に知られています。 しかしながらそれを、深海側が何時までも甘んじて受け入れてくれるというのは、あまりに虫のいい話でしょう。 『『『ッッッ!?!?』』』 『『『───!!!』』』 《Damn……!》 半数の4発は群体に直撃し、火の玉が膨れ上がりかなりの数の敵機を焼き払いました。ですが残る半数は、進路上の“群れ”が寸手のところで散開を間に合わせ空を切ります。 人類機の空対空戦はロックオンによる誘導ではなく、あくまで群れを“一個体”として捉えた上での空間攻撃。言ってしまうなら威力が大幅に上がった対空噴進弾のようなもので、回避されてしまえばもう追尾・命中させることはできません。 『『『───────!!!!!』』』 全弾命中したからといって殲滅・撃退できたとは思いませんが、それでももう少し大きく敵の動きを乱すことは出来ていたでしょう。被害の半減に成功させた敵機群体は、直様態勢を立て直し突撃を再開します。 この辺りに展開している他の友軍艦隊も纏めて標的になっているようで、群体は三々五々に散っていき綾波たちに向かってきた分はあくまでごく一部に過ぎません。 ですがその“ごく一部”でも、電探上で表示される赤点を見る限り総数はどう希望的に見積もっても150を優に超える大編隊です。 「て、てやんでぇ!なんだいあの数ぁ!?」 「少なくとも10個以上には分散しているはずなのに、なおこれほど………」 「浜風も涼風も、愚痴ってる暇はないわよ!対空兵装、構え!」 一方で、ダメージが大幅に“軽減された”のは事実ですがそれは与えられたダメージが“軽微である”ことと等号では結ばれません。ミサイルの半数が躱されて尚、敵航空隊は少なくとも目算する限り1/4に達する戦力を削られています。 だからこそ敵機群は、そのまま分散突入するには至らず直前に“再編”の動きを挟む必要がありました。 「畜生ダメだ!対空砲火、効果極めて小なり!!敵編隊、先鋒が爆撃態勢に移行!!」 「輪形陣を解除!各位自由回避に移るにゃ!!」 「よ、避けられるかなぁ〜………」 一分にも満たない、全てのミサイルが当たっていた場合とは比較にならないほど僅かな時間の空費。ですが、その僅かな空費こそが、 「─────Go Go Go!!」 今度は綾波達の、艦娘の側の援軍到着までの命脈を繋いでくれたのです。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/63
64: 以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage] 2022/09/24(土) 02:42:28.35 ID:Mlh4hE/Z0 VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/64
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga] 2022/09/26(月) 11:45:22.37 ID:Nke/XQbJ0 投下きてたーおつです 学園艦棲姫戦線の撤退戦?ですよね? まさか八頭身提督まだ当初の目標を諦めてない? http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/65
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga] 2022/09/29(木) 10:51:07.26 ID:siBAshSZ0 更新乙です! ドクが嫁さんとイチャイチャしてるけど、それに振り回される部下も大変なのねw 戦況が加速度的に悪化する上で、肝心要の日本艦隊がこの状態だとどん詰まり…望むべくは大洗方面の早期解決だけなのか http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/66
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/10/11(火) 14:53:34.77 ID:L9FKjrAbo 4年前ぐらいに見たベルリンのやつ面白かったなぁとふと思い出して関係作品大体全部見てたらまだエタってなくて感動しました ミリタリ全然詳しくないしガルパンわからんけどドイツ軍パートと政治パートが特に面白い 前回の最後意味わからんし理不尽すぎたけど日本も大洗もタイトル通り終わってしまうんか http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/67
68: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2022/10/11(火) 23:05:43.47 ID:GA2SequC0 銃声。警察官が使う小口径の拳銃などよりは遥かに重いものでこそあれ、それは明確に通常の歩兵火器が奏でた単発のものです。 戦場という広い括りで見れば聞こえるのは当然かも知れません。ですが、砲弾が飛び交いミサイルが入り乱れ戦闘機が空を駆け巡る“海戦”においては、朗らかな歌声に匹敵するほど──何れかの艦隊の那珂ちゃんさんがいる場合その限りではないかも知れませんが──場違いなものでした。 最終的に三度まで、銃声は鳴り響きました。艦娘としての優れた動体視力が、まさに対空兵装を構えつつ回避運動に移っている綾波たちと降下してくる敵編隊の間を遮るようにして、同じ数の銃弾が飛び込んでくる瞬間を捉えます。 「All squad, Attack!!!」 〈〈〈サー、イエッサー!!〉〉〉 途端、銃弾が“機影”に姿を変えました。 綾波達にとっては“苦い記憶”の一つでもある、アメリカ軍の艦上戦闘機グラマンF6F【ヘルキャット】。計12の青い機体は、零戦の倍にもなる馬力の発動機を存分に唸らせ猛然と空を駆け上がります。 〈エンゲージ!!〉 〈ファイア、ファイア、ファイア!!〉 『『『!!?!??!?』』』 唐突な、横槍ならぬ“横弾”により発生した正面切っての航空戦。数の面ではヘルキャット隊と向こうで比べようもないほど差がついていましたが、何分向こうはここに来ての空対空戦闘など欠片も予想していなかったことでしょう。迸った十数条の12.7mm機銃による火線は、その尽くが敵機にそのまま突き刺さり機体を引き裂きました。 『『……………ッッ!!』』 無論、深海棲艦側も木偶ではありません。数個編隊分がまるごと食いちぎられたことで状況を理解したのでしょうか、慌てて回避運動に移りヘルキャット隊の進路上から離れつつ、すれ違いざまに次々と射撃を加えていきます。 〈ハッハッ、ナンダイ、クスグッタイジャナイカ!!〉 〈マサカソレガキジュウソウシャノツモリダナンテイウナヨ、ディープワンズ!!〉 ですが、その試みは大半が無駄弾を増やすだけに終わりました。 米軍製兵器の特徴である、搭乗者や操縦者の生存性向上を最大限追い求めた凶悪極まる安定性と防弾能力。 F6Fは取り分けその両特徴が色濃く現れた機種でもあります。同機が備える何れの要素も、行き交う間際の“一撫で”如きで揺るがせるものではないことはこの身に刻み込まれています。 地獄より使わされし猫たちは、被撃墜どころかまともに飛行姿勢を崩す機体すら殆ど現れません。彼らは悠然と飛行を続け、時に“深追い”してきた敵機を逆に喰らいさえしながら、至極あっさりと「群れ」を打通しきってみせました。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/68
69: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/10/11(火) 23:08:24.22 ID:GA2SequC0 落とされた機影は恐らく20を超えるでしょうか。この物理的な損害も、向こうにとって決して小さなものではありません。 ですが深海棲艦側から見てそれより遥かに致命的であったのは、ヘルキャット隊に“群れ”の打通を許したという事実そのものでした。 『───! ───ッッ!!』 『……………!!!』 百数十機規模での編隊飛行。当然、統率は困難を極めます。況してやあの“群れ”は、綾波たちへの攻撃態勢に移っていた最中。 人類空軍機によるミサイル攻撃への対策としてある程度機体ごとの間隔は空けていたようですが、それでも大きさに関しては人並みでしかない6つの海上標的に総攻撃を仕掛けるにあたってはどうしても空間的な限度があります。 さながら大坂の陣で真田信繁と毛利勝永に突撃を受けた徳川内府の軍がごとく、中央から真っ二つに切り裂かれた敵航空隊。分断は乱れを、乱れは揺らぎを、揺らぎは崩壊を生み、瞬く間に修復不可能なまでにそれらは拡大していきました。 当然綾波たちへの空襲など実行できるはずもなく、“群れ”は本格的に一度散開し再編成へ向けて動き出します。 同時にそれは、深海棲艦側が自ら“数的有利”を放棄した瞬間でもありました。 「敵は崩したわよ、アカギ!!」 「ええ、お任せください!第一次制空隊、発艦!!」 『『『────!!???』』』 先程の弾丸と同じ方角から、次に飛来したのは三本の矢。それらは燃え盛る焔を思わせる輝きを空中で一瞬放った後、ヘルキャットと同じ数の零式艦上戦闘機に変化し一斉に“群れ”の横腹へ食らいつきます。 『…………ッッ!!』 〈シラナカッタノカ?イッコウセンカラハニゲラレナイ!!〉 『─────…………』 〈ヨシ、ゲキツイスウイチ!!クチクシテヤル……コノヨカラ……イッキノコラズ……!!〉 低空域での巴戦において、同時代相当の性能の戦闘機が零戦に勝てるはずもありません。しかも栄光の【一航戦】なら尚の事です。 下方へと逃れた敵機たちは、次々と捕捉され抵抗する間もなく落とされていきました。 〈ワンモア!!〉 〈〈〈サーイエッサー!!〉〉〉 そして上方からの離脱を目論んだ隊には、再びヘルキャット隊が襲いかかります。発動機の高い馬力故に高高度戦闘においても運動性と速力を維持し得る彼らを、爆弾や魚雷を抱えた状態の【カブトガニ】で振り切れるはずもありません。 F6Fの両翼から火線が迸る度に、飛び回る敵の機影は確実に一つずつ減っていきます。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/69
70: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/10/11(火) 23:10:34.18 ID:GA2SequC0 「全艦、最大船速で離脱するにゃ!!」 「「「了解!!」」」 芸術的と言っても過言ではない、惚れ惚れするような航空戦でしたが、見惚れるわけには行きません。多摩さんの号令が下るまでもなく、我々6人は一斉に旗艦を吹かし、“群れ”の真下から逃れます。 鮮やかに敵機を討ち減らしつつ、零戦とヘルキャット隊が見せていた動き。牧羊犬が羊を柵の中へ追い立てるように、或いは箒で部屋中のゴミを隅から中央へ掃き集めていくように、“群れ”を上下から挟み込んでより密度の高い塊にしていく動き。 その動きが意味するところは、この後に何が始まるかは、艦娘なら誰もが知っています。 「─────対空掃射、開始!!」 ちょうど綾波達が戦闘空域下から離脱しきったところで、その口火を切ったのは2発の三式弾でした。同時に突き刺さったソレらから飛び散った火炎の雨が、一気に周囲の数十機を焼き払います。 『『『!!?!?!??!!!?』』』 最早立て直しようもないほど“群れ”が乱れたところに、嵐のごとく押し寄せる機銃弾と高角砲弾。離脱を図る機体には、周辺でなお飛行する零戦隊とヘルキャット隊が対応しトドメを刺します。 最も理想的な事例として私達艦娘用の戦闘教本に載せたくなるような、完璧な包囲殲滅。 『『『────……………』』』 「Clear!!」 電探上から残りすべての反応が消えるまでに、要した時間は十数秒ほどに過ぎませんでした。 他の艦隊も増援との合流が間に合ったのでしょう。流石に綾波たちのように殲滅まで至ったところは少ないようですが、アレほど巨大だった群れは見る影もありません。現れた当初の1/10にはなろうかというほど数を減らし、青息吐息で来た空路を戻っていきます。 ただし、 「…………Next Enemy incoming.」 かなり少なく見積もっても、最初に現れたモノの3倍には達そうかという“群れ”と、入れ替わる形でではありますけど。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/70
71: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/10/11(火) 23:12:59.67 ID:GA2SequC0 推定150機超。これは、改装前の加賀さんと赤城さんに搭載可能な最大艦載機数の合計値に匹敵します。数字的な面だけで言えば、一航戦が根刮ぎ消滅したような状況です。 普通の空母機動艦隊ならそれだけでも致命傷足り得るものになりますが、深海棲艦側は少なくとも10を越える同じ規模の“群れ”を他の友軍艦隊にも差し向けていました。そしてその全てが──文字通りの“全滅”は綾波たちのところぐらいにしろ──致命的な損害を受けて跳ね返されています。 1000には確実に達する、空母機動艦隊の一つ二つどころか小国の総航空兵力にさえ比肩しかねない数の機体。それを喪いながら、寧ろ更に大規模な戦力を以て即座に“次”の攻撃を敵艦隊は繰り出してきたのです。 「OK, OK────」 そんな、常軌を逸する圧倒的な物量を目の当たりにして。 「────It's getting hot!!」 増援艦隊の皆さんは、一様にその口元を綻ばせていました。 「パーティ、早速盛り上がってきたわね!アカギ、どっちの子たちが多く落とせるか勝負よ!!」 「ええホーネットさん、望むところです!!」 先程の“銃声”の出処───アメリカ軍の空母艦娘にしてヨークタウン級3番艦・ホーネットさんが、大東亜戦争時に使われていた米軍の小銃を模したカタパルトを構えながらやや熱を帯びた声で叫びます。 それに隣で応じるのは、再び矢を構えた赤城さん。 「All unit, Weapon Free!!」 「制空隊第二陣、発艦始め!!」 新たに放たれる、3発の弾丸と3本の矢。即座にトムキャット隊と零戦隊が空を舞い、先行していたそれぞれの第一波と合流すると風を巻いて押し寄せてくる“群れ”へと突っ込んでいきました。 〈〈〈アタック!!〉〉〉 〈〈〈トツレ、トツレ、トツレ!!〉〉〉 『『『!??!?!!?!?』』』 青ヶ島鎮守府にてその名を轟かせる【大腮】こと龍驤さんには及ばないまでも、お二人の航空隊の練度もまた十分過ぎる水準でした。 さながら、小さく獰猛な肉食獣が獲物と定めた大型の草食獣から肉を食い千切るが如き動き。左右に別れた“一航戦”とトムキャット隊それぞれから火線が伸び、“群れ”は先鋒の両翼数十機が会敵とほぼ同時に射落とされます。 そのまま止まらず突入した両隊は巴戦へと移行。之に敵の“群れ”は更に1割近い戦力が足止めされ、陣形も大きく乱れることになりました。 〈オクレヲトルナ、ワレラモツヅケ!!〉 〈キシタチヨ、カカレ! フォイヤ-!!!〉 〈アバンチ、アバンチ!!〉 ホーネットさんと赤城さんのお二人が先駆けとなったことで、周辺の友軍艦隊からも続々と遅ればせながら艦載機隊を送り込んできました。例の国連“海軍”も混じっているようで、飛び交う妖精さんたちの無線にはイタリア語やドイツ語も含まれます。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/71
72: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/10/11(火) 23:14:38.65 ID:GA2SequC0 規模はこれらに赤城さんやホーネットさんの航空隊を併せても尚“群れ”には遠く及びませんが、お二人が出鼻を挫いたことで向こうが抱えていた「数的優勢」は既に霧散していました。 四方八方あらゆる方向から突き入れられる何百条もの火線に削られ、風船から空気が抜けていくかの如き勢いで萎んでいきます。 (,,゚ ゚)《Engage!!》 録に展開・分散すら出来ず着実に追い詰められていた“群れ”に致命傷を与えたのは、意外にも人類軍の戦闘機でした。 (,,#゚ ゚)《Wyvern-01, FOX-2! FOX-2! FOX-2!!》 『『『!!!!!!????』』』 女性の声で叫ばれる、空対空ミサイルの発射を意味する符号。無線から三度聞こえたそれに合わせて、空域に突入してきたF/A-18Dの翼下より同じ数だけ銀槍が放たれます。 三発のミサイルは何れも未だ赤城さんたちの航空隊による攻撃が届いていない“群れ”の中核部分を寸分の狂いなく射抜き、何百という機体を焼き払い吹き飛ばしました。 (,,#゚ ゚)《Gun, gun, gun!!》 人類航空機としての定石に沿えばそこから反転すべきところを、そのF/A-18Dは止まりません。そのまま綾波達の頭上を駆け抜け、機銃を放ちながら“群れ”に肉薄します。 0.8m〜1.2m。【黒鳥】は別格として、深海棲艦の艦載機の大きさは、最大でもF/A-18Dの実に1/14。 ワンショットライタァという、大東亜戦争時米兵から一式陸攻が付けられたものと同じ蔑称とそれに見合った脆さはあれど、中には燃料弾薬が満載されています。激突すればそれが1機2機であっても機体は致命的な損傷を受けるでしょう。 (,,#゚ ゚)《……………ッッ!!!》 人類の戦闘機にとって深海棲艦機は言うなれば、意思を持ち自在に空を飛び回る機銃弾や噴進弾のようなもの。しかしそれが大いに討ち減らされて尚数百発飛び交っている中に、“彼女”はまるで臆することなく斬り込んでいきました。 『『『────……………』』』 「Wow……!」 「……………凄い技ですね」 蝶のように舞い、蜂のように刺す。 奇しくも今まさにこの増援艦隊にも加わっている、故郷の武勲艦と同じ名を冠した銀色の【蜂(ホーネット)】の動きは、この比喩に全く違わぬものでした。 自らの機銃で刺し穿った空白に銀翼をねじ込むと、尚も銃火によって敵機を薙ぎ払い道を切り開きつつ全幅11m、全長17mにも及ぶ巨躯を巧みに操って“群れ”の中で舞い踊ります。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/72
73: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2022/10/11(火) 23:18:15.26 ID:GA2SequC0 無線上でワイバァンを名乗ったその機体は、下から上へと突き上げる形で一気に“群れ”を貫きます。動きはそれで止まらず、飛び上がったイルカのような姿勢から近現代の航空機には疎い綾波でも舌を巻いてしまう卓越した航空技術であっという間に機首を再度下方───最早完全に総崩れとなった残余の“群れ”へと向けました。 (,,#゚ ゚)《FOX-2!!!》 最後の一発である銀槍が、機銃弾と共に放たれます。鉄火の暴風と爆炎の嵐が、“群れ”に叩きつけられます。 〈トツニュウシロ!!〉 〈イレグイダ、オトシマクレ!!〉 ワイバァンが今度は下側へと突き抜けた後、残された“群れ”の中核は総崩れの上で当初の規模の1/5程度に討ち減らされただの残骸と化していました。 その“群れの残骸”も、再度飛来した新たな友軍航空隊に巴戦で絡め取られ、瞬く間に四分五裂していきます。 最早、綾波たちへの攻撃を継続する余力がないことは明白でした。 《こちら巻雲、敵航空隊主力群は壊滅状態!すごい、すごいです〜〜!!》 「赤城より空母艦隊各位、残党敵群の包囲殲滅を徹底せよ!わいばあん一番機が作ってくれた好機を逃すな!!」 《翼のあの国旗、確かマレーシアのものか……?【回転木馬】ならいざ知らず、単騎駆けでこれほどの戦果を挙げるとは!》 《何者かは解らぬが、まさに一騎当千也!褒めて使わすぞ!!》 (,,*゚ ゚)《─────》 無線上で友軍艦隊の皆さんが口にする称賛の言葉を、【彼女】がどこまで理解できたかはわかりません。ただ、補給のため退がる間際にワイバァン一番機が見せた宙返りは、おそらくそうした声に対する返答だったのでしょう。 〈エネミーフリート,インカミング!!ソウメニー!!〉 〈テキカンタイハサイダイセンソクニテセッキンチュウ!!クウボ、センカンモタスウ!!チュウイサレタシ!!!〉 遮られていた視界が“群れ”の中核壊滅によって開け、航空隊がその向こう側から迫る敵艦隊に気づきました。次々と無線で報告を送ってきます。 報せを受けた綾波達の方では、特に驚きや動揺はありません。 大いに損耗を受けたとはいえ人類航空軍も支援艦隊に搭載されている基地航空隊も未だ相応の戦力が残存しており、綾波達新たな艦娘部隊もここを始め周辺海域に現在進行系で次々と投入されている状況。 【学園艦棲姫】という強大な敵への抵抗は、未だ激しく続いているのです。向こうも、航空戦だけでこれを鎮圧できるとは流石に考えないでしょう。 後続艦隊が存在することは、至極容易く想像できました。 〈オーヴァ300エスティメイト!! オールユニット、ビーケアフル!!〉 尤も、その数まで聞いたところで、艦隊の空気は一層引き締まったものに変わりましたが。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/73
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga] 2022/10/12(水) 10:43:18.01 ID:1mB7AO9c0 更新おつです この状況から投入できる予備戦力があるとは思いませんでした もしかして人類側も無尽蔵?、などと勘違いしそう http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1657376096/74
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