エンド・オブ・ジャパンのようです (266レス)
1-

232: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/18(火)23:29 ID:an/t4nPL0(3/4) AAS
そして、仮に弾薬が潤沢にあったとしても、ではのんべんだらりと戦っている暇があるかと言えば答えは否だ。

『───ズァアアアアアアアアアッ!!!!』

└(*・ヮ・*メ;)┘「あー………Muscle-03より01並びに02、新たな“艦影”を11時方向に確認したけど」

∬メ´_ゝ`)「02より03、ありがとう。私達も見えてるから大丈夫よ」

└(*・ヮ・*メ;)┘「デッスヨネー」
省7
233: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/18(火)23:41 ID:an/t4nPL0(4/4) AAS
駆逐イ級やハ級といった“非ヒト型”は、どんなに小さいものでも5メートル前後。超絶巨大とはいえ高層ビルの類も無ければ山や森が密集しているわけでもない平坦な“甲板上”で多数展開していれば、否が応でもその姿は目に留まる。
だけど実際には、確認できるのは駆逐ナ級が二隻と軽空母ヌ級がEliteも含めて三隻のみ。しかもヌ級は、今なお艦載機をちらほらと吐き出し続けるのみで砲弾は一発も放っていない。

にも関わらず、先程まで行なわれていた“対地砲撃”はどう少なく見積もっても五、六十隻分に相当する分量だった。ならば最低でも、それだけのヒト型が学園艦内にいると考えるべきよね。

弱音は吐きたくないけど、流石にこの装備かつこの損傷状態で万全のリ級やル級とかち合って生き残ることができる保証はない。だから尚の事、私達は少しでも早く大洗女子学園に到達する必要があるワケだ。

(付け入る隙があるとしたら………やっぱり、向こうの“方針”になるわ)

私の“生け捕り”………まで求めているかどうかは実際のところ定かじゃないけど、ソレを含めてとにかく何かしら他に私を“殺せない理由”があると仮定する。
この場合、少なくとも今のように密集した陣形を作っている限り、私のみならず阿音と鈴に関してもある程度の安全性を担保することができる。深海棲艦の艤装では、威力の大きさゆえにここまで密着した状態で私“のみ”のダメージを回避・軽減する事が不可能に近いからだ。
省6
234: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)00:20 ID:EeDdit1v0(1/4) AAS
そして私の見立てによれば、向こうの優先順位は恐らく“校舎への侵入阻止”の方が遥かに高い。数が膨大であるため制御しきれていなかった可能性を差し引いても、【暴徒】や【寄生体】の攻撃から感じる“殺意”はホンモノだった。

本当に目的が“生け捕り”だったとしても、向こうの感覚としては恐らく「死なずに捕らえられたなら御の字」ぐらいの感覚なんじゃないかしら。

(………自分で言うのもアレだけど、仮にそうならなんか【別に対戦でも旅パとしても大して強くないけど珍しいポケモンにとりあえずモンスターボール投げてる】みたいな感じでめちゃくちゃ腹立たしいわね)

一応、チ級が“ライン超え”の直前に私の“不殺”に対する最後の努力として白兵戦を挑んできてくれるなら、まだ突破の目は残る。けど、さっきの交戦で既にチ級が二隻やはり近接白兵戦闘で沈められている以上期待薄だわ。だったら脇の二人ごと機銃掃射でも浴びせかけて、たまたま生きてたら回収の方が安全で合理的だ。

……………全く。戦術も戦略も散々あの鎮守府で学んできたつもりだけど、やっぱりどこまで行っても“実戦”ってのはままならないものね。
省17
235: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)01:10 ID:EeDdit1v0(2/4) AAS
風切り音が。

小銃弾や機銃弾よりは遥かに巨大な質量を持つ鉄の塊が。

一発の“砲弾”が、私の頭上数メートルの位置を駆け抜けた。

『グァアアッ!!?』

“それ”はそのまま雷巡チ級に直撃し、【船体殻】の表面で弾けて爆炎を撒き散らす。無論悶え苦しむようなダメージは与えようもないが、困惑と驚愕が入り混じったような声色で吠えつつチ級は姿勢を崩した。
省23
236: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)01:21 ID:EeDdit1v0(3/4) AAS
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「──────撃て!!!」

W号のキューポラから顔を出していた少女は───────西住みほは、まるで戦車道の試合でいつも“そう”しているように平然と、声高に号令を下す。

『『『ギギィイイッ!!!?』』』

即座に75mmが吠える。優に20匹にはなろうかという【寄生体】の塊が一つ、うねり顔を出していた家屋ごと直撃弾を受け爆散した。
237: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)01:57 ID:EeDdit1v0(4/4) AAS
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〈ワシが西住サンと初めて直接会ったのは戦後の、1958年のことでしてね。

丁度あの時まだルーキーだった長嶋の坊やと彼女の座談会ってのが持ち上がりまして。ええ、彼女が東京読売戦車道婦人倶楽部の初代監督に選ばれたもんですからね、その関係だったんですけれども。

私が今生きていて読売ジャイアンツでコーチとして哲サンや正力サンと一緒にまた野球をやらせてもらってるのは間接的には彼女のおかげだからってんで、ワシが東南アジアに居た時は会う機会がなかったんですけども、もう居ても立っても居られないからね。シゲの兄さん(※)に頼み込んで、坊やに同行させてもらったんですよ〉
※当時巨人監督の水原茂氏のこと

〈会場についたら、まだ対談予定時間から15分前だってのに、西住サンがちょこーんと座ってらっしゃいまして。ええ、存外小柄だったのを覚えてますよ。ワシより20か25は低かったんじゃないかな。このヒトが中国軍や米軍を戦車を駆って沢山やっつけていたのかと思うと、大層不思議な気持ちになったもんです〉
省5
238: [sage saga] 2023/04/19(水)10:08 ID:mR2W/sLr0(1) AAS
更新おつです
ピンチに軍神来る(ただしJK)
239: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2023/07/26(水)21:18 ID:1kNqHEos0(1/17) AAS
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戦車道。

この“競技”を最初に眼にした時の衝撃は、今でも覚えているわ。艦娘として「この世界の日本」に生を受けてから、多分一番大きいヤツね。

学園艦?ええ、そりゃあ初めての海上任務で【サンダース大附属高校】と出会したときは面食らったし圧倒されたわよ。
でもアレは、言ってしまえば結局のところ“バカデカい船”でしかないわ。驚きはしたけど、それだけ。あくまで、大和さんや武蔵の“実物”を見た時に抱く感情──“艦時代”の私にそんな上等なモノが備わっていなかったことはさておき──の延長線上でしかない。

対して戦車道は、根本から“違う”。
省6
240: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:19 ID:1kNqHEos0(2/17) AAS
出会った、なんて上等で運命的なモンじゃない。私が初めて彼女を“見た”のは、【第63回全国戦車道大会】の試合を映していたテレビの画面越しでのこと。

元々興味はあったと言えど、その時はまだのめり込む程ではない。山と積まれた書類との憂鬱な長期戦の辛さを少しでも緩和できればという、所謂「作業用BGM」として点けただけのつもりだったわ。

だけど。

気がついたら私は、完全に書類仕事を放り出して繰り広げられる“試合”に釘付けになっていた。

戦車主砲の咆哮に声を上げ、弾丸が装甲を穿つ瞬間に目を見開き、履帯が猛々しくぶつかり合う様に息を呑み。
省8
241: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:22 ID:1kNqHEos0(3/17) AAS
……少しばかり“不愉快な記憶”のせいで熱くなってしまったけれど、ほぼ全ての試合が運や偶然に縋り頼った勝利であったこと自体はさっき述べた通り否定しない。

バタバタと慌ただしく、不格好でコミカルな、終わった後に「何で勝てたのか」と首を傾げてしまう、結果オーライを辞書で引いた時に例示の一つとして出てきてしまいそうな、そんな試合運びの数々。
直前まで黄金期を築いていたチームや、その黄金期を終わらせたチームのような“強者”の戦い方からは遥か遠くに位置するもの。

どこの野球チームの監督だったかしら、「勝ちに不思議の勝ちあり」なんて言ってたのは。まさにその体現と言っても良かったかもね。

だからこそ、私は惹かれた。

絹糸よりもか細く儚い【勝ち筋】を、どれほど不格好な有様を晒しながらも必死に手繰り寄せる泥臭さに。
省8
242: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:26 ID:1kNqHEos0(4/17) AAS
別に、今の境遇にもう不満はない。寧ろ、あの無能な司令官から常に楽しい【いくさ場】とぶっ飛んだ愉快な日常を用意してくれる今のアイツに上官が変わったことを考えれば──比べ物にならないほど頭がおかしいことを差し引いても──最早幸運とさえ捉えられる。
ただ、私が彼女のような強さを、物理的ではなく精神的な強さを最初から備えていたなら。あの愛しい“地獄”ももう少し早くもう少しマシな環境にできたんじゃないか。そう思わずには居られない。

西住さんは、それを“表”の世界にいたままで成し遂げた。腐り果てた価値観と悪意的な謀略に、“希望に眼を輝かせ使命感と義務感に燃える小娘”のまま抗い抜いた。
艦娘として、身体能力や武力は私の方が遥かに勝っているかもしれない。だけどその精神力は、憧れ、羨み、私もそうありたいと望んでしまうほど強く気高いものだった。

同時に、それは私にとって戦闘そのものに対する享楽とは別の“戦う理由”でもある。西住さんに少しでも長く、できればその生涯が終わるまで、今の“道”を歩み続けて欲しい。心の底から信頼できる仲間たちと肩を並べ、“表”の世界で輝いてほしい。
我ながら青臭すぎて気恥ずかしくなってくるけど、それでも真剣で切実な、そんな理由。

───なのに。

西住みほは、今、私の目の前にいる。
省12
243: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:28 ID:1kNqHEos0(5/17) AAS
「こっちへ!!」

チ級の軌道を眼で追いながら、彼女は私達の方に手を差し伸べてくる。

言いたいこと、聞きたいことは山ほどある。だけど、今は時間的にも状況的にもその余裕がない。

そしてこの急場を切り抜けるに当たって、残念なことに彼女の“提案”は最適解だった。

「02、03!!」
省22
244: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:31 ID:1kNqHEos0(6/17) AAS
「戦車後退!」

li イ; ゚ -゚ノl|《り、了解です!》

ギャリギャリとキャタピラーが唸り、下敷きになっていた【暴徒】の残骸が生々しい断裂音を残してそこら中に飛び散る。1、2秒ほどの抵抗感を経て、W号の車体は急速にバックを始めた。

「左、撃て!次いで右、撃て!!」

<(' _'#<人ノ《あいよっと!!》
省28
245: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:33 ID:1kNqHEos0(7/17) AAS
一つの“兵器”として見た場合、W号戦車は旧式もいいところだ。装甲厚、最高速、最大・有効射程、貫徹力、旋回性能………どれをとっても近現代の最新鋭戦車とは比べるべくもない。
対深海棲艦戦力として見れば尚の事で、カール自走臼砲や列車砲のような規格外でもない限り基本的には足止めすらろくに出来はしないだろう。

それでも、コレは“戦車”だ。単純比較では陸戦における最強兵器であり、王者。現代戦は対戦車火器も充実しているけれど、未だただの歩兵にとっては十分な脅威足り得る。

況してや、せいぜい角材や出刃包丁程度しか装備していない【暴徒】にとってその砲声は死の宣告に近い。

「ァ………ァ………』
『ゥ………グォ………」

W号がギリギリハマる程度の幅の路地、当然突入を測った“群れ”は密集する。
前衛の10人が飛来した砲弾に引き千切られ、中衛の10人は榴弾の着弾点周辺にいたばかりに肉の破片と化して宙をヒラヒラと舞う。後衛も内5人は爆風と砲弾の破片によって薙ぎ倒され、残る5人も吹き飛んできたかつての同胞の屍体や砕けたコンクリート塊の直撃を受けて虫の息で地面に転がっている。
省11
246: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:36 ID:1kNqHEos0(8/17) AAS
(ドイツ語の授業でも履修していたのかしら……?)

学園艦の最大の設立理由は“海外に通用しうる人材の早期育成”であり、この理念の影響から各学園艦は英語以外にも多数の外来語を選択制の授業に取り入れている。
流石に大洗女子学園の授業内容まで網羅するほどの“フリーク”には私もまだ踏み入れていないけど、独逸語があっても全くおかしくはない。単語の内容にしても、片方は元から知っておりもう片方は「炎」などの極一般的な意味も含まれてる。授業で習うことはあるでしょう。

(だからおかしくはない………けど、ね)

では何故、この2単語を“癖になってうっかり思わぬ場で口走ってしまう”ほど練習する必要があるのか。
大洗女子学園はプラウダのようにチーム内に留学生がいるという事情もない。そこまで急ピッチにドイツ語を覚え習得する必要性というのは薄いはずだ。

ヨーロッパ全体があんな有様だから、例えば留学なんてできるワケもないのに。
そんな中で“現地人が聞いても問題ない”レベルで、よりによって“ドイツ語”を習得する必要がどこにあるというのかしら?
省14
247: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:43 ID:1kNqHEos0(9/17) AAS
AA省
248: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:45 ID:1kNqHEos0(10/17) AAS
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(´<_`;)「……………おいおいおいおいおいおい!!!」

日本海上自衛隊一等海曹・流石乙矢(サスガ・オトヤ)は、双眼鏡越しに目にした光景に驚愕を禁じ得なかった。

共に布陣し防御陣地の設営──と言っても瓦礫の排除と塹壕掘りぐらいのものだが──を行っていた艦娘から言われた、「大洗女子学園の甲板上で深海棲艦のものではない“砲撃”が見える」という報告。

そんなことはありえない、どうせ気の所為、良いとこ深海棲艦の砲撃が暴発したのを見間違えでもした……要はただの誤報だと乙矢は考えていた。実際、大洗町並びに大洗女子学園が置かれている現状を鑑みればその判断が真っ当だ。
だがその艦娘が余りにもしつこく確認を求めるものだからメンツを立ててと双眼鏡で覗き込めば──今まさに、小さく弱々しいものではあるが、船尾の軽空母ヌ級Flagshipに間違いなく“砲撃”が突き刺さったのだ。
省15
249: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:46 ID:1kNqHEos0(11/17) AAS
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「もう一度聞かせてくれ」

──────身長190cmを超えているであろう、ドウェイン=ジョンソンかアーノルド=シュワルツェネッガーと言わんばかりのすさまじい肉体を持ち、アルファベットの「T」が中央にあしらわれたマスクを被る、

( T)「大洗女子学園が、なんて???????」

筋肉モリモリ、マッチョマンの変態がいた。
250: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:54 ID:1kNqHEos0(12/17) AAS
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先に述べた通り、W号戦車は兵器としては骨董品だ。曲がりなりにもヒト型にだってダメージ自体は与えられる第3・4世代戦車とは違い、駆逐艦の装甲殻すらろくに貫徹できない。

だから今のヌ級Flagshipに対する砲撃だって、向こうは恐らく痛くも痒くもない。実際ヌ級の上げた声も、驚きと困惑によるものでダメージからくる苦悶は響きに全く皆無だった。

『『『─────ッ!!?』』』

だけどその、蟷螂の斧に等しい筈の一撃が敵の警戒心を揺るがした。
省12
251: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:57 ID:1kNqHEos0(13/17) AAS
(;*‘ω‘*)「大層ご立腹だねぇ……穏やかじゃないっぽ!」

「ガァッ!?』

「このまま防護陣地まで撤退を!!」

女保安官が辟易とした表情でぼやきつつ、さっきと同じ要領で【暴徒】の先頭を1人射抜く。ほんの一部が進軍の足を鈍らせるものの、“主力群”の時と違って十分な拡散ペースがあるため効果としては遥かに薄い。
西住さんも当然迎撃という選択肢は取らず、一目散に離脱を図る。

「こっちだこっち、急げ!!」
省17
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