エンド・オブ・ジャパンのようです (311レス)
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222: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/09(日)20:47 ID:MRR6D8+I0(1/2) AAS
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まことに小さな島国が、つい30年ほど前まで世界の巨人であるアメリカと6年以上もがっぷり四つ組みで渡り合っていた。このことは、現代の奇跡というより他にない。
19世紀の末になり、日本は「明治維新」という国を挙げた狂乱の果てにようやく統一的近代国家の道を歩みだした。既に“国際社会”を創り上げて久しく思想も文明も遥か先を歩んでいた欧米諸国から見れば、明治という時代が始まる際の有様はきっと、猿が無理矢理に洋服を着ようとしている姿と区別がつかなかっただろう。

そしてこの“猿”が、僅か二十数年で大清帝国を粉砕し、四十年でロシア帝国を打ち負かし、一世紀に満たぬ期間で新たな【帝国】として亜細亜に跋扈しアメリカとさえ鎬を削るまでに至ったことは、「先進国」を自称し続けてきた彼らにとって、多大な屈辱を伴う信じがたい“驚愕”であった。

だが、何よりもその光景を信じられなかったのは、他ならぬ当時の日本国民である。
223: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/09(日)20:48 ID:MRR6D8+I0(2/2) AAS
浦賀に黒船が姿を現し強引に徳川幕府を開国に至らせるまで、この島国にとって欧米とはまさに“外界”であった。技術、文明、思想、価値観、全てが未知であり、吸収しようにもぶつかり来るそれらの衝撃が強烈過ぎ、一つ入れる度にこの島国は大いに揺れた。
幾度となく揺れに揺れ、その繰り返しに耐えきれず起きた日本という家屋の大倒壊が明治維新である。

本来ならば向こう数十年はまともな建て直しが困難なほどの倒壊ぶりでありながら、この国はそれを“土台”だけ残して上層建造物のみを破壊するという奇妙なやり方で起こすことに成功した。その為に、武力を伴った国家規模の革命直後にありがちな致命的な混乱を殆ど経験することなく近代国家建設を成し得た。

この“奇跡”が起きた要因を、一概に限定することはできない。国民性や地政学的要因、長年続いた幕藩体制の功罪、様々な要素が複合的に絡み合った結果としか言いようがない。
ただ一点、戦国の頃よりこの国に通されてきた一本の道が、女流鉄砲術から戦車へと至る“道”が、取り分け大きな役割を果たしたという点だけは、恐らくあらゆる視点において共通の見解となるだろう。

一応は、筆者もまた“彼女”とは同時代を生きる人間であるため、その血縁者について語ることに些かこそばゆい思いはある。しかしながらこの人物無くして日本の土台を支えた“芯”について解き明かすことは出来ないため、恥を凌ぎ、筆を執ることとする。

これは日本が中世国から近代国へと至る時代を、幕末から明治へ、そして昭和へと伸びていく【鋼の道】を歩み続けた、一人の女の物語である。
省1
224: [sage saga] 2023/04/10(月)16:28 ID:KUNpmuPx0(1) AAS
更新おつです
西住流テーマの司馬遼太郎小説があるって設定はアツい!
225: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/13(木)23:13 ID:JNDnG78R0(1/2) AAS
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『ギァア────ァ゛ッ゛………』

大口を開け、喉笛を噛みちぎらんと此方に首を伸ばしてきた【寄生体】。ブレイドを真正面から振り下ろし、頭を叩き割って黙らせる。

「ゲボォッ』

振り向きざまに刃を翻し、真逆の軌道で下から斬撃。隙ありと見たか飛び掛かってきていた小太りな【暴徒】が、宙空で身体を真っ二つに両断されグシャリと音を立てて地面に落下した。
省19
226: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/13(木)23:17 ID:JNDnG78R0(2/2) AAS
駆逐艦娘1名、陸上自衛隊員1名、学園艦保安官1名による、大洗女子学園の奪還。
そんな、平時に私が第三者として聞いたなら発言者の気が触れたとしか思えないような“作戦”を声高に宣言してから、一時間ほどが経過した。

この時点で私達の位置から学園校舎までは、目算距離で約3kmになるかどうかといったところ。徒歩である点を考慮すると決して近いとは言えない。
けれど、常人の身体能力を遥かに凌駕する艦娘と膨大な体力を要する肉体系公務員2名が“普通に”移動したなら、この一時間小走りでもしていればもう到着していたでしょうね。

「『「ァアァアアアアアアッ!!!!』」』

『『『ギャッ、ギャッ、ギャギャっ!!』』』

まぁ、【私達に対して殺意マシマシの“元”人間】と【私達に対して殺意マシマシの敵性侵略生命体】が道に溢れかえり何千何万と犇めく中を、“普通に”行けるワケがなかったってだけのことよ。
省16
227: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/14(金)23:10 ID:a3HNpCLf0(1/2) AAS
立て続けに二体を葬ったが、路地の入り口で蠢いている【寄生体】の数は未だに膨大だ。当然、この程度で攻撃を止める筈もない。

『キィアッ!!』

『グォッ!!』

「ちぃっ!!」

∬;メ´_ゝ`)「このっ!!」
省19
228: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/14(金)23:19 ID:a3HNpCLf0(2/2) AAS
弾倉抜きでも3.5kgにもなる鉄の塊が、よく鍛え上げられた軍人の肉体を以て全力全開でスウィングされれば、当然余裕で人を殺せる威力を伴う。
握りつぶされたアルミ缶のように打撃部分が凹んだ【暴徒】は、私の上から吹っ飛んで壁に激突しそのまま永久に沈黙する。

└(#メ*・ヮ・*)┘「はい、モー見えてるからね!!」

「ガフッ』

『ブギゥッ!?」

その向かい側の家の2階、そして屋根上で追撃を試みようと更に3人の【暴徒】が現れたものの、鈴によるH&K PSG1の速射で何れも顔面を吹き飛ばされ落下した。
省25
229: [sage saga] 2023/04/17(月)12:31 ID:kgoloDqs0(1) AAS
更新おつです
色々ありすぎてゾンビ物もクロスオーバーしてたの忘れてましたw
230: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2023/04/18(火)23:23 ID:an/t4nPL0(1/4) AAS
八人目は姿勢を低く、レスリングのタックルのような要領で迫ってくる。顎を膝でかち上げ、剥き出しになった喉仏を握り潰して息の根を止めた。

九人目は元保安官の【暴徒】だったらしく、ニューナンブを構え撃ってきた。生憎、どれほど微弱な【船体殻】でも容易く防げる銃火器の方が私個人としては余程ありがたい。背後の二人に流れ弾が当たらないようあえて大きく飛んで連射された3発を全て受け止めつつ、着地と同時にブレイドを振り下ろし防弾チョッキごと両断する。

「ゴホッ…………!?』

丁度十人目。心臓を深々と刺し貫き、脱力したソイツの胸ぐらを掴み、私を包容しているような形で纏わりつかせ───そのまま一気に大きく踏み込んで、加速。

『「『ぅぎゃぁっ!!?」』」
省24
231: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/18(火)23:26 ID:an/t4nPL0(2/4) AAS
炸裂音が空気を震わせ、一瞬爆光が煌めいた後路地裏には黒黒とした煙が充満する。咄嗟に屈んだ私と鈴の頭上を、千切れた【寄生体】の頭部や焼け焦げた肉片が飛び越えていく。

『ギィッ、ギィッ…………』

『シャアアアァァ………』

小銃の弾丸とは比べ物にならない威力ではあれど、密集具合を考えても削れたのはせいぜい二十に届くかどうかだろう。数だけで言えばまだまだ健在の筈だったが、それ以上“塊”が追撃してくることはなかった。

∬メ;´_ゝ`)「ごめんなさい、待たせちゃったかしら?“お客様”の引き止めがしつこくて」
省14
232: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/18(火)23:29 ID:an/t4nPL0(3/4) AAS
そして、仮に弾薬が潤沢にあったとしても、ではのんべんだらりと戦っている暇があるかと言えば答えは否だ。

『───ズァアアアアアアアアアッ!!!!』

└(*・ヮ・*メ;)┘「あー………Muscle-03より01並びに02、新たな“艦影”を11時方向に確認したけど」

∬メ´_ゝ`)「02より03、ありがとう。私達も見えてるから大丈夫よ」

└(*・ヮ・*メ;)┘「デッスヨネー」
省7
233: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/18(火)23:41 ID:an/t4nPL0(4/4) AAS
駆逐イ級やハ級といった“非ヒト型”は、どんなに小さいものでも5メートル前後。超絶巨大とはいえ高層ビルの類も無ければ山や森が密集しているわけでもない平坦な“甲板上”で多数展開していれば、否が応でもその姿は目に留まる。
だけど実際には、確認できるのは駆逐ナ級が二隻と軽空母ヌ級がEliteも含めて三隻のみ。しかもヌ級は、今なお艦載機をちらほらと吐き出し続けるのみで砲弾は一発も放っていない。

にも関わらず、先程まで行なわれていた“対地砲撃”はどう少なく見積もっても五、六十隻分に相当する分量だった。ならば最低でも、それだけのヒト型が学園艦内にいると考えるべきよね。

弱音は吐きたくないけど、流石にこの装備かつこの損傷状態で万全のリ級やル級とかち合って生き残ることができる保証はない。だから尚の事、私達は少しでも早く大洗女子学園に到達する必要があるワケだ。

(付け入る隙があるとしたら………やっぱり、向こうの“方針”になるわ)

私の“生け捕り”………まで求めているかどうかは実際のところ定かじゃないけど、ソレを含めてとにかく何かしら他に私を“殺せない理由”があると仮定する。
この場合、少なくとも今のように密集した陣形を作っている限り、私のみならず阿音と鈴に関してもある程度の安全性を担保することができる。深海棲艦の艤装では、威力の大きさゆえにここまで密着した状態で私“のみ”のダメージを回避・軽減する事が不可能に近いからだ。
省6
234: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)00:20 ID:EeDdit1v0(1/4) AAS
そして私の見立てによれば、向こうの優先順位は恐らく“校舎への侵入阻止”の方が遥かに高い。数が膨大であるため制御しきれていなかった可能性を差し引いても、【暴徒】や【寄生体】の攻撃から感じる“殺意”はホンモノだった。

本当に目的が“生け捕り”だったとしても、向こうの感覚としては恐らく「死なずに捕らえられたなら御の字」ぐらいの感覚なんじゃないかしら。

(………自分で言うのもアレだけど、仮にそうならなんか【別に対戦でも旅パとしても大して強くないけど珍しいポケモンにとりあえずモンスターボール投げてる】みたいな感じでめちゃくちゃ腹立たしいわね)

一応、チ級が“ライン超え”の直前に私の“不殺”に対する最後の努力として白兵戦を挑んできてくれるなら、まだ突破の目は残る。けど、さっきの交戦で既にチ級が二隻やはり近接白兵戦闘で沈められている以上期待薄だわ。だったら脇の二人ごと機銃掃射でも浴びせかけて、たまたま生きてたら回収の方が安全で合理的だ。

……………全く。戦術も戦略も散々あの鎮守府で学んできたつもりだけど、やっぱりどこまで行っても“実戦”ってのはままならないものね。
省17
235: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)01:10 ID:EeDdit1v0(2/4) AAS
風切り音が。

小銃弾や機銃弾よりは遥かに巨大な質量を持つ鉄の塊が。

一発の“砲弾”が、私の頭上数メートルの位置を駆け抜けた。

『グァアアッ!!?』

“それ”はそのまま雷巡チ級に直撃し、【船体殻】の表面で弾けて爆炎を撒き散らす。無論悶え苦しむようなダメージは与えようもないが、困惑と驚愕が入り混じったような声色で吠えつつチ級は姿勢を崩した。
省23
236: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)01:21 ID:EeDdit1v0(3/4) AAS
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「──────撃て!!!」

W号のキューポラから顔を出していた少女は───────西住みほは、まるで戦車道の試合でいつも“そう”しているように平然と、声高に号令を下す。

『『『ギギィイイッ!!!?』』』

即座に75mmが吠える。優に20匹にはなろうかという【寄生体】の塊が一つ、うねり顔を出していた家屋ごと直撃弾を受け爆散した。
237: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/04/19(水)01:57 ID:EeDdit1v0(4/4) AAS
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〈ワシが西住サンと初めて直接会ったのは戦後の、1958年のことでしてね。

丁度あの時まだルーキーだった長嶋の坊やと彼女の座談会ってのが持ち上がりまして。ええ、彼女が東京読売戦車道婦人倶楽部の初代監督に選ばれたもんですからね、その関係だったんですけれども。

私が今生きていて読売ジャイアンツでコーチとして哲サンや正力サンと一緒にまた野球をやらせてもらってるのは間接的には彼女のおかげだからってんで、ワシが東南アジアに居た時は会う機会がなかったんですけども、もう居ても立っても居られないからね。シゲの兄さん(※)に頼み込んで、坊やに同行させてもらったんですよ〉
※当時巨人監督の水原茂氏のこと

〈会場についたら、まだ対談予定時間から15分前だってのに、西住サンがちょこーんと座ってらっしゃいまして。ええ、存外小柄だったのを覚えてますよ。ワシより20か25は低かったんじゃないかな。このヒトが中国軍や米軍を戦車を駆って沢山やっつけていたのかと思うと、大層不思議な気持ちになったもんです〉
省5
238: [sage saga] 2023/04/19(水)10:08 ID:mR2W/sLr0(1) AAS
更新おつです
ピンチに軍神来る(ただしJK)
239: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2023/07/26(水)21:18 ID:1kNqHEos0(1/17) AAS
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戦車道。

この“競技”を最初に眼にした時の衝撃は、今でも覚えているわ。艦娘として「この世界の日本」に生を受けてから、多分一番大きいヤツね。

学園艦?ええ、そりゃあ初めての海上任務で【サンダース大附属高校】と出会したときは面食らったし圧倒されたわよ。
でもアレは、言ってしまえば結局のところ“バカデカい船”でしかないわ。驚きはしたけど、それだけ。あくまで、大和さんや武蔵の“実物”を見た時に抱く感情──“艦時代”の私にそんな上等なモノが備わっていなかったことはさておき──の延長線上でしかない。

対して戦車道は、根本から“違う”。
省6
240: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:19 ID:1kNqHEos0(2/17) AAS
出会った、なんて上等で運命的なモンじゃない。私が初めて彼女を“見た”のは、【第63回全国戦車道大会】の試合を映していたテレビの画面越しでのこと。

元々興味はあったと言えど、その時はまだのめり込む程ではない。山と積まれた書類との憂鬱な長期戦の辛さを少しでも緩和できればという、所謂「作業用BGM」として点けただけのつもりだったわ。

だけど。

気がついたら私は、完全に書類仕事を放り出して繰り広げられる“試合”に釘付けになっていた。

戦車主砲の咆哮に声を上げ、弾丸が装甲を穿つ瞬間に目を見開き、履帯が猛々しくぶつかり合う様に息を呑み。
省8
241: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/07/26(水)21:22 ID:1kNqHEos0(3/17) AAS
……少しばかり“不愉快な記憶”のせいで熱くなってしまったけれど、ほぼ全ての試合が運や偶然に縋り頼った勝利であったこと自体はさっき述べた通り否定しない。

バタバタと慌ただしく、不格好でコミカルな、終わった後に「何で勝てたのか」と首を傾げてしまう、結果オーライを辞書で引いた時に例示の一つとして出てきてしまいそうな、そんな試合運びの数々。
直前まで黄金期を築いていたチームや、その黄金期を終わらせたチームのような“強者”の戦い方からは遥か遠くに位置するもの。

どこの野球チームの監督だったかしら、「勝ちに不思議の勝ちあり」なんて言ってたのは。まさにその体現と言っても良かったかもね。

だからこそ、私は惹かれた。

絹糸よりもか細く儚い【勝ち筋】を、どれほど不格好な有様を晒しながらも必死に手繰り寄せる泥臭さに。
省8
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