【小説版】提督「鎮守府一般公開?」 (32レス)
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22: 2022/02/24(木)23:52 ID:er2aAZLw0(7/9) AAS
 鎮守府近くの防波堤で、重雷装巡洋艦の木曾が、腰を下ろしていた。身にまとうマントが、穏やかな潮風に揺れている。
「暇だな…」
 鎮守府の雷巡ファミリーの末妹である彼女は、非番のときはよくこの防波堤に来て海を眺める。大井や北上、球磨や多摩といった姉達とはまた異なる性格を持つ彼女は、少女の年相応に騒いだりはしゃいだり、はたまた誰かへの憧れを持つこともなく、一歩下がって周りの幸せを眺めている方が性に合っていた。
 沖合を見ると、午前中の哨戒を終えた大井と北上が、波頭を上げて入港してくる。木曾に気づいて手を振ってくれる二人の姉に手を振り返しながら、木曾はぼんやりと考え事をしていた。
 ……これじゃ、鋼鉄の頃と何も変わんないな。
 やや自嘲気味にそう思いつつ、木曾は、出港時以外は波止場に繋留されていた半世紀以上前の自分の姿を思い返していた。
 今の自分に不満を持っているわけではない。少女の身体を与えられて生まれ変わった運命を迷惑に思っているわけでもない。青臭いが人として信頼し得る提督のもと、姉妹達を始め、軍艦旗を背負って共に戦った少女達との再会、新たに課せられた役割……一度は海に没して朽ち果てた己自身に、再び陽の光が当たるようになったのは本当に幸せな事だと思う。
 だが、鋼鉄としてではなく、少女として第二の生を与えられたということに、木曾が戸惑いを感じ続けているのは、木曾自身が否定しようのない事実でもあった。
 重油の代わりに食事とパフェ。防弾装甲の代わりにセーラー服とマント。電探の代わりに……透き通る翠色の瞳。
 持て余しているんだろうか、俺は。この身体を。この新たな運命を。
省4
23: 2022/02/24(木)23:55 ID:er2aAZLw0(8/9) AAS
 少し息を乱した木曾の耳に、横合いから若い男の声が無遠慮に割り込んで来た。
「あれ?あそこの波止場に座ってるの、もしかして鎮守府の艦娘じゃないですか?」
 振り返ると、陸軍の憲兵将校二人……と、スクール水着の少女が、いつの間にかすぐそばに来ていた。どうやら、鎮守府に用があってやって来ているものらしいが、それにしても、いったいどういう組み合わせなんだろうか?
「本当だ、服装からして間違いないな」
 顔だけそちらに向けて眉をひそめる木曾。そうとは知らずか、スクール水着の少女が能天気な声を上げた。
「えっ?鎮守府の艦娘さんですか!?」
 キラキラと目を輝かせるスクール水着が、まるで憧れの異性でも見るように、眩しい視線を木曾に向けている。
「……お前、何者だ?」
 警戒心を含んだ声でストレートな疑問を投げかける木曾。
「はい、まるゆは陸軍の潜水艦です!」
省34
24: 2022/02/24(木)23:55 ID:er2aAZLw0(9/9) AAS
今日はここまで お休みなさい
25: 2022/02/25(金)22:04 ID:1eE0hMbwo(1) AAS
お疲れ様です
26: 2022/03/02(水)22:09 ID:pFIuXi+uo(1) AAS
おつ
27: 2022/05/13(金)17:23 ID:XT1u2HRM0(1/5) AAS
また投下します
28: 2022/05/13(金)17:24 ID:XT1u2HRM0(2/5) AAS
鎮守府・司令官室

ジリリリリリ

 提督のデスク上の電話機が内線の着信を告げる。
 「はい、司令官」
 『大淀です。提督、新任の艦娘が到着しました。木曾の案内で、今そちらに向かっています』
 秘書艦とはまた別に庶務を任せている大淀が、その役割に相応しい落ち着いた声で申告する。
 「あっ!そうだった、今日一人来てくれる予定だったんだ!」
 手元のファイルを繰り、陸軍潜水艦の着任を知らせる軍令部からの通知を見なおす提督。
 『……あの……それで、保護者らしい人が二人、付き添いに来られてるんですが、お通ししてよろしいでしょうか?』
 「は?保護者?申し送りに来た陸軍の技官か何かか?」
省9
29: 2022/05/13(金)17:26 ID:XT1u2HRM0(3/5) AAS
 気まずい沈黙が延々と続くのを断ち切ろうと、提督が何とか口を開く。
 「お久しぶり、ですね…」
 「…ぁぁ」
 「どうも…」
 憲兵二人も居心地が収まらないらしく、目線をあちこち動かしながら歯切れの悪い返事をするのが精いっぱいらしかった。その空気に、さしものまるゆも何かしら思うところがあったのか、少し遠慮がちに申告を始めた。
 「は、初めまして、司令官殿!自分は陸軍の潜水艦・まるゆであります!」
 「お、おお。ようこそ、我が鎮守府へ。自分が当鎮守府の提督だ、よろしく」
 「こちらこそ、よろしくお願いいたします!」
 「いやぁ、潜水艦が着任してくれるとは嬉しい限りだよ。……ところで木曾、そちらは…」
 いつまでも憲兵二人を話の埒外にしておくのも不自然かと、提督が木曾に問う。
省10
30: 2022/05/13(金)17:27 ID:XT1u2HRM0(4/5) AAS
 「な、何かおかしいか!?君……」
 憲兵中尉が顔を赤くして木曾に向き直って憤慨する。
 ……なんだこいつ、まだ二十代半ばじゃないか。木曾からすればひ孫も同然の若造の心中を、しかし木曾は好感を持って受け止めた。提督とほぼ同年代のこいつもまた、多分大学かどこかの在学中に学徒動員されて憲兵科の将校になったんだろう。数年前にこいつらがイチャモンをつける形となった島風のゴーストップ事件については、大井姉さんから聞いている。むろんあの時のこいつらには俺達艦娘に対する偏見もあったろうが、むしろ今のこいつにあるのは、純粋にまるゆという女の子の事への慮りだろう。あとは、数年前の自分達に対する恥辱ってところか……?
 「いや……悪かったな憲兵さん。そうじゃねぇよ。あんたら、いいとこあるじゃん。優しいな」
 「なっ……」
 「ち、違う。自分は別に女子を甘やかしなどしとらん!」 
 憲兵中尉はおろか、憲兵大佐も顔を赤くして照れ隠しをした。
 「け、憲兵さん……?」
 事情を知らないまるゆも、心配げに憲兵二人を見上げる。
 木曾に内心で礼を言いながら、提督が話を引き継ぐ。
省16
31
(1): 2022/05/13(金)17:30 ID:XT1u2HRM0(5/5) AAS
今日はここまで
32: 2022/05/13(金)20:32 ID:WztYdelao(1) AAS
>>31
お疲れ様
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