キョン「またお祈りメールか…」 (13レス)
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1: 2021/09/20(月)18:57 ID:ijUOeYjJ0(1/8) AAS
12月初旬。街は早くもクリスマスムード一色で、至るところが緑と赤のイルミネーションに彩られている。

聞き覚えがあるけども、曲名まではわからないというクリスマスソングあるあるを感じつつ、街を行き交うカップルや家族連れを横目に見る。
彼らは皆、どこか浮き足立って幸せそうに見える。
高校時代の俺なら、そんな彼らを見て

「都合のいい時だけキリストを信じやがって。民間企業のマーケティング戦略に踊らされてるだけじゃねえか。資本主義の成れの果てだな。」

と全力で見下していただろう。
だが、大学4年生22歳になった俺には、もうそんなことを吠える気力もない。

「資本主義の成れの果て?バカねぇキョン。こういうもんは楽しんだもの勝ちなのよ!生きる上で確固たる信念は必要だけども、楽しむ上で余計なものはシャミセンのオヤツにでもしてやりなさい!」
省2
2: 2021/09/20(月)19:01 ID:ijUOeYjJ0(2/8) AAS
高3の時、俺達SOS団は朝比奈さんが進学した京都大学を目指して勉強に励んだ。

高3の1年間、団活はほぼせず毎日みっちり勉強漬けだった。
涼宮達と共に黙々と勉強に取り組む日々は辛かったが、楽しく思えることもあった。
例えば、涼宮の世界史特別講座は面白かったな。
始皇帝が如何に偉大な皇帝か、フロイトとユングの思想の違いは何かなどを語ってもらった記憶がある。

終わりさえよければ、間違いなくいい思い出になったんだがな…

合格発表の日、俺達SOS団は全員部室に集まっていた。
そして合格発表が行われる12時。俺達は各自のスマホで自身の受験番号を入力し、合格通知を調べた。

そこには、俺の番号のみが欠けていた。
省38
3: 2021/09/20(月)19:03 ID:ijUOeYjJ0(3/8) AAS
「なぜ弊社を志望したのか理由を教えてください。」

先週。つまり11月下旬。久しぶりに漕ぎ着けた面接でこのような質問を受けた。
この会社以外にも何度も受けた質問。定番の質問。当然俺も回答を用意している。

「はい!御社を志望した理由は、私は地方創生に興味があり、御社でその地方創生ができそうだと感じ〜、加えて御社理念にも共感しており〜」

事前に用意してきた回答を澱まずに言えた。
ここまではいつも通り問題ない。

「なるほど。それではそのように思う理由を教えて頂けませんか?」
と、面接官からいつものように質問を受けた。当然これも理由を考えてある。
省15
4: 2021/09/20(月)19:08 ID:ijUOeYjJ0(4/8) AAS
「…」

先週の面接を思い出し、ただでさえ暗い気分が更に重くなった。
かぁっと耳が赤くなる感覚がする。

「一度頭を冷やそう」

そう呟き、俺は大学に行った。

大学3年の3月からみんなで打ち合わせしたかのように、黒のリクルートスーツに身を包んだのに、夏を過ぎると一気に元の量産型ファッションに戻る。
秋になると、またリクルートスーツの奴等が増える。
しかし、奴等の話題は就活ではなく、サマーインターンやウインターインターンだ。つまり、一個下の後輩達が就活を始めるのである。
省29
5: 2021/09/20(月)19:16 ID:ijUOeYjJ0(5/8) AAS
逃げ込むように、大学から一駅離れた四ツ谷の喫茶店に駆け込んだ。

ESを書くためにパソコンを開こうとしたが、そんな気にもなれない。
手持ち無沙汰に、スプーンでホットコーヒーをかき混ぜていた。

そんな弛緩しきっている俺に、思いも寄らない人物の声が降りかかった。

「あれ?キョンじゃないか?こんなところで何をしているんだい?」

何年かぶりに鼓膜を震わせた声。そして、今話したくない類の声。
できれば知らないふりをしてやり過ごしたい。
しかし、かつて親友と自己紹介された声の主に、理性に反して口が勝手に動いていた。
省3
6: 2021/09/20(月)19:19 ID:ijUOeYjJ0(6/8) AAS
「いやぁ。ほんと久しぶりだねぇキョン。大学はこの辺りなんだっけ?」

「あぁ、そうだ。佐々木は大学は東大だろ?四ツ谷に何の用があって来たんだ?」

「覚えていてくれて嬉しいよ。近くの大学の授業を受けているんだ。聴講ってやつだね。僕の研究テーマで面白い講義をしている教授がその大学にいてね」

「なるほど。そういうことか」

他愛もない会話。
側から見れば、途絶えた交友を暖め合っている旧友同士にしか見えないであろう。事実、佐々木はそう思っているだろう。
省37
7: 2021/09/20(月)19:24 ID:ijUOeYjJ0(7/8) AAS
「………………」

長い沈黙だった。いや、実際のところあまり長くないかもしれない。
しかし、俺にとっては永遠にも感じる沈黙だった。
痛々しい沈黙を打ち破るべく、俺は、

「なんかごめんな。久しぶりの再会なのにこんな話しちまって」

努めて明るく言った。

「……キョン」
省25
8: 2021/09/20(月)19:25 ID:ijUOeYjJ0(8/8) AAS
もうすっかり夜になっていた。
佐々木にあのようなことを言われた後に、すぐに家に帰る気にはなれず、辺りを散歩していた。

『キョン。今の君は正直なの?僕にはそうは思えない』

さっきの喫茶店で、佐々木に言われた言葉の一部が頭の中で繰り返される。
不思議と怒りは湧かなかった。全くもっての図星でもあったし、佐々木があんなに激情を露わにすることに驚いていた。

「正直…か」

自分自身の魅力についてそのように評されたのは初めてだった。
省45
9: 2021/09/20(月)21:39 ID:4b508SMU0(1) AAS
どう足掻いてもこの後ハッピーエンドになる気がしないのは何故だろう?
キョンがブラック企業に就職してる未来が見えてしまうのは何故だろう?
10: 2021/09/20(月)23:31 ID:atU1YmGZ0(1) AAS
ハルヒがsos団とかいうベチャー立ち上げててそこで当時の5人で八百万屋でもやってほしい
11
(1): 2021/09/21(火)14:17 ID:qNB1aDYlo(1) AAS
ハルヒの力があればキョンだけが落ちるなんてそんなはずは…!!
12: 2021/09/21(火)20:16 ID:tSIEherX0(1) AAS
>>11
キョンだけ落ちてほしかったのかな…
13: 2021/09/22(水)23:44 ID:bWbnBYne0(1) AAS
あれ…フハハは…?
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