高木社長「ねぇ、キミぃ…」 (157レス)
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1: 2020/09/22(火)20:03 ID:V4s4JV6AO携(1/155) AAS
このSSはゲームや漫画、アニメの設定がごちゃ混ぜになってますのでご了承下さい
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2: 2020/09/22(火)20:06 ID:V4s4JV6AO携(2/155) AAS
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アイドル。この世知辛い世の中で生きる人々に希望を与え、なおかつ自分も希望を与えてもらえる存在。そんなアイドルが私は大好きだ。どれくらいかと言えば、自分で事務所を構える位には。
3: 2020/09/22(火)20:07 ID:V4s4JV6AO携(3/155) AAS
「ふぅ…」
我が765プロダクションも気づけば大きくなったものだ。かつては雑居ビルの一室に事務所を構え、従業員も音無君と秋月君の二人だけだったというのに。まあそうは言っても移転した今もその二人にプロデューサーである彼を加えただけなのだけれど。
4: 2020/09/22(火)20:08 ID:V4s4JV6AO携(4/155) AAS
「社長、お疲れなんじゃないですか?」
「ははは、まだまだ大丈夫だよ。音無君」
ちょうど書類の区切りがついたところで音無君からお茶を差し出された。たしかこれは萩原君が持ってきてくれたものだったか。
5: 2020/09/22(火)20:09 ID:V4s4JV6AO携(5/155) AAS
「今日は雪歩ちゃんが持ってきてくれた玉露を入れてみました。普段とは違いますけど…」
それも彼女なりの気遣いだろう。細かなたころまで目が届く。世界中のどこを探しても彼女より素晴らしい事務員は居ないだろう。何せ私がそう思うのだから間違いない。そう、ティンときたのだ。
6: 2020/09/22(火)20:10 ID:V4s4JV6AO携(6/155) AAS
「…ありがとう」
しかし、私はどうなのだろう。彼女たちの力を引き出せているだろうか。
「大丈夫ですか?なんだかぼーっとしているような気がしますけど…」
「はは…君には敵わないな、音無君…」
アイドルのみんなと出会う前から一緒にいた彼女には隠し事は無理らしい。私は観念して懸念していたことを口にする。
7: 2020/09/22(火)20:11 ID:V4s4JV6AO携(7/155) AAS
「音無君は、ここで…765プロで本当に良かったかね?」
「え?」
鳩が豆鉄砲とはこういう時に使うのだろうか。いまいち話の要領を得ていないであろう彼女に私は続ける。
8: 2020/09/22(火)20:13 ID:V4s4JV6AO携(8/155) AAS
「いや、君は有能だ。少人数しかアイドルがいないとはいえこの765プロの事務をほとんど一人でこなしてくれていることには感謝しかない」
今更誤魔化しても仕方ない。少し照れる気持ちもあるが日頃の感謝とリスペクトを正直に言葉にした。
9: 2020/09/22(火)20:14 ID:V4s4JV6AO携(9/155) AAS
「けれど…いや、だからこそ思うのだ。君は…765プロで良かったのかと…」
「はぁ…」
無理をさせている。彼女の有能さに頼り切りになってしまっている。せめてもと、昇給や人手を増やす話を持ちかけたこともある。そこまで余裕があるわけではなかったが、彼女には身銭を切ってもバチは当たらない。そう思って声をかけると彼女はいつもこう言っていた。
『そのお金をあの娘たちに回してあげてください』
『私なら大丈夫ですから』
省1
10: 2020/09/22(火)20:15 ID:V4s4JV6AO携(10/155) AAS
「思ったことはないのかい?ここよりも条件が良い場所に行きたいと…」
アイドル事務所は他にも、いや、アイドル事務所じゃなくたって、彼女の能力ならばどこでも活躍できるだろう。きっと今よりも良い待遇で働ける。私と知り合ってしまったがために、私に情が湧いてしまったがために縛り付けてしまっているのではないか。そんな考えが浮かんだのは一度や二度ではない。
11: 2020/09/22(火)20:16 ID:V4s4JV6AO携(11/155) AAS
「ここより良い場所ってどこですか?」
「え?そりゃぁ、961プロとか、876とか…」
「社長、それ本気で言ってます?」
久しく見ていなかった心底呆れたというような表情。黒井や石川ならば、彼女も知らぬ仲ではない。特に黒井は今でこそあんな態度を取っているけれど、私のことを抜きにすれば音無君をぞんざいには扱わないだろうというのに。
12: 2020/09/22(火)20:17 ID:V4s4JV6AO携(12/155) AAS
「いや、君に限ったことではないのだ…アイドルの諸君も、私が見つけてきた最高の原石だ…もしかしたら、こんなコネも金も無い私でなければ、もっともっと…」
彼女たちの実力、才能は本物だ。そんなもの誰が見てもわかる。けれど私はどうだ。業界にほんの少し長く居ただけ。日高舞が引退し、表に立つ者も裏で支える者も多く辞めていったあのアイドル冬の時代に、しぶとく生き残っただけでしかない。こんな男の事務所で無ければ…彼女たちももっと…
13: 2020/09/22(火)20:18 ID:V4s4JV6AO携(13/155) AAS
「はぁ…そんなに言うなら聞いてくればいいじゃないですか」
「ん?どういうことだね?」
「だから!アイドルの娘たちにも聞いてみたらいいんですよ!765プロで良かったのかどうか!」
「君ぃ…それができれば…」
「できればもへったくれもないですよ!ほら!お仕事はできるところやっておきますから!聞いてきてください!」
省1
14: 2020/09/22(火)20:19 ID:V4s4JV6AO携(14/155) AAS
01
変なところですぐに行動に移せる実行力は母譲りだろうか。社長室から叩き出されながら、『全員に聞くまで戻ってきたらダメですよ』と言われ、あれよあれよと言う間に鍵までかけられてしまった。
15: 2020/09/22(火)20:20 ID:V4s4JV6AO携(15/155) AAS
「むぅ…困ったねぇ…」
これではどちらが雇い主なのかわからない。そんなことを考えていると…
「あれ?社長?どうしたんですか?」
「おぉ、天海君」
ちょうど事務所にやってきたばかりの天海君に声をかけられた。道中、バレてしまわないように変装しているのだろうか、トレードマークのリボンは帽子に隠れ、いつもはしていない眼鏡をかけているが彼女の魅力に変わりはない。
16: 2020/09/22(火)20:21 ID:V4s4JV6AO携(16/155) AAS
「いや、音無君に締め出されてしまってね…」
「えぇぇぇ!?ど、どういうことですか!?」
「いやいや、私が悪いんだ」
トップアイドルと言われるようになって尚、こんなくたびれた中年に自然体で話しかけてくれる純真さが眩しい。そんな彼女だからこそ、やはり思う。
17: 2020/09/22(火)20:22 ID:V4s4JV6AO携(17/155) AAS
「時に天海君。君は…765プロに入って良かったと思えるかね?」
「はい?」
「いやだから…他のプロダクションならばよかったと…思ったことはないかい?」
こんな状況ですら、トップアイドルになった彼女だ。きっと他の事務所ならば、日高舞など目ではない。
18: 2020/09/22(火)20:23 ID:V4s4JV6AO携(18/155) AAS
「えっと…他の事務所も何も、私765プロにしか受からなかったんですけど…」
「え?」
てへへ、と言いながら頬をぽりぽりとかく天海君は恥ずかしそうに照れている。どうして?彼女ほどの逸材が何故…
19: 2020/09/22(火)20:24 ID:V4s4JV6AO携(19/155) AAS
「私、ダンスも歌も苦手だったから…スクールの成績も良くなかったんです…だからオーディションの時も目立つところにはいませんでした」
そう語る彼女の目はどこか遠くを見つめているようだった。
「…社長だけでした。オーディションで他の子には目もくれず、端っこにいた私に『ティンときた!』って言ってくれたのは」
私からすれば、彼女の他には居なかった。どんな状況でも希望を忘れずに前を向き続ける目をしていたのは彼女だけで、その目は今でも変わらない。
20: 2020/09/22(火)20:25 ID:V4s4JV6AO携(20/155) AAS
「だから、私にとっては765プロ以外なんて…考えられないんですよ」
ニコッと笑った彼女の笑顔がその言葉が嘘ではないことを証明していた。
「そうか…ありがとう天海君」
「はい!社長」
「ん?どうしたんだい?」
省3
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