右京「タイムパラドクスゴーストライター?」 (82レス)
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抽出解除 必死チェッカー(簡易版) レス栞 あぼーん

37: [saga] 2020/07/02(木)22:20 ID:0AxqYuWp0(1/38) AAS
集英社を出てから一時間後、冠城の愛車でシルバーのカラーが特徴なスカイラインがあるアパートの前で止まった。
コーポ谷岡、木造建ての古いアパートだ。車をアパート付近の駐車場に停めると右京、冠城、それに伊月の三人はアパートのとある部屋の前に立った。
部屋のドアにある名札には『佐々木』という苗字が記されていた。
編集部の菊瀬から教えてもらった佐々木哲平の部屋がここだった。

「ここが佐々木哲平のアパートですか。見たところ古そうな建物ですねぇ。」

「大金を持っているような様子は見受けられませんね。これだと佐々木哲平の懐事情はかなり苦しいんじゃないですか。」

これなら佐々木哲平が窃盗を行っていたとしても不思議ではない。
現段階で佐々木哲平が罪を犯したのだとすればそれは高知の伊月の自宅に忍び込み窃盗を行ったかもしれないという可能性。
確かにこれなら辻褄が合うかもしれない。だが…
38: [saga] 2020/07/02(木)22:21 ID:0AxqYuWp0(2/38) AAS
「右京さんの推理ですけど俺としてはどうにも納得がいかないんですよね。」

「はぃ?そう思う根拠は何ですか。」

「ホワイトナイトですよ。佐々木哲平が窃盗犯だとしたらアシが付かないようにわざわざ高知に出向くほどの用心深い人間なんですよね。
それなら伊月ちゃんから盗作した漫画をタイトルやキャラの名前も変えずにそのまま載せるのはおかしいと思いませんか。」

冠城が右京の推理に疑問を思うのはそこだった。
何故地方まで遠出して窃盗を行う用心深い人間が忍び込んだ先の家で盗作した漫画をタイトル名も変えずにそのまま載せているのか?
これではホワイトナイト自体が窃盗した証拠になってしまい自ら犯した窃盗が明らかになる恐れがあるはずだ。
その疑問について実は右京も同じことを考えていた。
省8
39: [saga] 2020/07/02(木)22:22 ID:0AxqYuWp0(3/38) AAS
「自宅にいるお母さんに連絡を取りました…けど…盗られたモノは何もないって…」

右京は伊月に自宅へ連絡して何か盗られた物はないか確認をしてもらった。
だが盗られた物は一切ないという。つまり佐々木哲平は窃盗の目的で伊月の家に忍び込んだという疑いはないということ。
しかし伊月のホワイトナイトを佐々木哲平が盗作したという疑惑は晴れてはいない。

「あの…部屋に入らないんですか…?」

そんな考え込む右京と冠城に伊月が思わずそんなことを聞いた。
そのことを聞かれて二人は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
実を言うとそこが問題だった。伊月には関係のないことだが特命係は捜査権限がない。
そのため今の段階で家宅捜索を行うなど出来るはずもない。
省3
40: [saga] 2020/07/02(木)22:23 ID:0AxqYuWp0(4/38) AAS
「佐々木哲平さんについて変わったこと…?」

「ええ、なんでも構いません。少しでも気になることがあれば答えて頂けませんか。」

右京が訪ねたのはこのアパートの大家だ。
佐々木哲平の周囲で何か異変は起きていないかと尋ねた。
すると大家は考え込んだ末にあることを話した。

「そう言われても佐々木さんは一ヶ月前に部屋を空けてつい最近戻ってきたばかりだから何もわからないよ。」
省13
41: [saga] 2020/07/02(木)22:24 ID:0AxqYuWp0(5/38) AAS
一方でこのアパートのとある部屋で机に向かって黙々と執筆活動をしている青年がいた。
髪型はボサボサで後ろ髪を縛り服はまるで何日も洗濯してないかのような不衛生さを漂わせる青年。
彼の名は佐々木哲平。現在自分があらぬ容疑を掛けられているとは予想もせずある作業に追われていた。

「よし…それで…ここは…いいぞ。順調だ。」

そんな哲平が机の前でせっせとホワイトナイトの連載に向けて執筆を行っていた。
既に一夜ほど徹夜しているが漫画家として初めての連載だ。力が入ってしまうのも無理はない。
ちなみに哲平は原稿用紙の傍にあるモノを置いて作業に取り掛かっていた。
モノ書きであれば傍にネタとなる資料を置くのは必然。だがこれは単なる資料とはわけがちがう。

「これがあればもう何も恐くない。こいつは神さまが俺に与えてくれた奇跡なんだ。」
省5
42: [saga] 2020/07/02(木)22:25 ID:0AxqYuWp0(6/38) AAS
「佐々木哲平さんですね。警視庁特命係の杉下と冠城です。少しお話があります。」

そこに現れたのは右京と冠城だ。するとどうだろうか。
刑事を名乗る男たちが訪ねてきた瞬間、哲平は思わず顔面蒼白となり額には冷や汗がビッショリと垂れていた。
何故このタイミングで警察が現れたのか…?
一瞬で頭の中が真っ白になり思考が停止してしまうほどだ。

「あの…警察が何のご用で…?」

「佐々木さん、あなたこの一ヶ月間留守にしていたそうですね。
大家さんが一ヶ月前に起きた雷で部屋に異常がないか訪ね回ったのにあなたの部屋だけ確認が取れていないそうです。
そこで何か異常がないか調べさせてください。」
省5
43: [saga] 2020/07/02(木)22:26 ID:0AxqYuWp0(7/38) AAS
「何ですか…これは…?」

さすがの右京も部屋にある電子レンジを見た瞬間に思わず躊躇した。
この部屋の台所付近に設置された冷蔵庫の上に置かれた電子レンジ。
何故ならこの電子レンジは溶解したかのような状態。
明らかに火事を起こして焼き焦げてしまった状態で置かれていた。
この電子レンジの上に置かれていいるロボットの玩具も禍々しく溶解して酷い惨状だったことが伺えた。

「これは…一ヶ月前の落雷によるものですね。」

右京から問われると哲平は思わず目を背けてしまった。
どうやらそのようだ。それにしても酷い有様だ。一歩間違えば全焼していたかもしれない。
省4
44: [saga] 2020/07/02(木)22:27 ID:0AxqYuWp0(8/38) AAS
「右京さん…これを見てもらえますか…」

机の方を調べていた冠城があるモノを発見する。
その冠城だがどういうわけか様子がおかしい。一体何を見つけたのかと尋ねるとそこには一冊の雑誌が置かれていた。少年ジャンプだ。

「少年ジャンプですね。これがどうかしましたか。」

「よく見てください。この雑誌の年号が十年後の2030年になっているんですよ。」
省8
45: [saga] 2020/07/02(木)22:29 ID:0AxqYuWp0(9/38) AAS
「ホワイトナイト…何故…?」

巻頭に『ホワイトナイト』と記されていた。内容を読むとホワイトナイトの第一話が掲載されていた。
一体どういうことだろうか。ホワイトナイトまだ読み切りのみで一話などジャンプには掲載されていないはずだ。
だがこの少年ジャンプには既に一話が掲載されている。
ちなみに読んだ感想だがこちらの方が圧倒的に面白い作品に仕上がっていた。
作画においても話の構成でもすべてこちらの方が圧倒的に上だ。
ところでだがこちらのホワイトナイトだが内容の他にもうひとつ異なる点があった。

「アイノイツキ…まさかこのホワイトナイトは伊月さんが描いたものですか…」

右京はすぐに今週号の少年ジャンプを取り出して作者名を確認した。
省8
46: [saga] 2020/07/02(木)22:30 ID:0AxqYuWp0(10/38) AAS
(チーン)

今度はレンジから音がした。まさかあの壊れた電子レンジがまだ動いているのか?
気になった右京はすぐにレンジの中を開けた。

「これは…少年ジャンプ…?」

中を開けるとそこには少年ジャンプがあった。すぐに日付を確認すると2030年と記されていた。
同じく十年後の雑誌が現れた。それも電子レンジの中からという不可解な現象。
省7
47: [saga] 2020/07/02(木)22:31 ID:0AxqYuWp0(11/38) AAS
「実はあの落雷のあった日から電子レンジからこうして未来から少年ジャンプが送られてくるんです。」

落雷のあった日、つまり徹平が集英社にホワイトナイトを持ち込む前日のことだ。
渾身の出来だった作品を菊瀬からボツを喰らい哲平は絶望していた。

「俺…25歳までに漫画家になった成功したかった…
けどいつもボツばっかりで正直もう限界だった。それで諦めようとした時だ。
落雷が起きて電子レンジから未来の少年ジャンプが届いたんだ。」

それが一連の真相だった。その後は簡単に推理できた。
哲平は届いたジャンプを読んで本来のホワイトナイトに感動した。
それから何を思ったのかホワイトナイトを自分で描いてそれを編集部に持ち込んだ。
省4
48: [saga] 2020/07/02(木)22:32 ID:0AxqYuWp0(12/38) AAS
「その未来はもうないんだ…」

哲平は伊月に懺悔するかのようにあることを告げた。

「俺がキミのホワイトナイトを描いてから…多分だけど時間軸が変わったんだ。」

「だから本来ならキミがホワイトナイトを描くはずだった未来はもうない。今あるのは俺がホワイトナイトを描いてしまった時間軸なんだ。」
省16
49: [saga] 2020/07/02(木)22:33 ID:0AxqYuWp0(13/38) AAS
「…わかりました。佐々木先生、改めてあなたにホワイトナイトを託します。だから…」

最後まで言おうとしたところで伊月の瞳から涙が零れ落ちた。
本当なら最後まで自身の手で結末まで描こうとした。けれどそれはもう望むことは敵わない。
今の自分に出来ることは後のことを哲平に託すだけしかない。

「…ああ、俺は罪の十字架を背負いホワイトナイトを描いていく。」

「俺たちは同類かもしれないな。俺もみんなの笑顔のために描きたかった。」
省3
50: [saga] 2020/07/02(木)22:35 ID:0AxqYuWp0(14/38) AAS
「ひとつよろしいでしょうか。」

一連の流れを遮るかのように右京があることを哲平に問いかけた。
哲平もこんな時に一体何だと迷惑そうにするが…

「佐々木さん。あなた罪の十字架と仰いましたがその言い回しは可笑しい。
十字架というのは元々罪の象徴、それなのに『罪の十字架』では二重の意味になってしまいます。
言いたくはありませんが作家として語彙力が浅はかなのではありませんか。」

こんな時につまらない指摘をされて哲平は思わず不快そうな顔で右京を睨みつけた。
今はそんなことどうだっていいだろう。こっちは仕事に追われているんだ。
早く出て行けと言おうとした時だ。
51: [saga] 2020/07/02(木)22:37 ID:0AxqYuWp0(15/38) AAS
「それともうひとつ訂正させてください。」

「あなたは先ほど代筆と仰った。」

「ですが敢えて言わせてください。あなたの行いは代筆ではなく盗作です。」

「それなのにまるで自らの正当性を主張するかのように代筆と言ってのける。」
省11
52: [saga] 2020/07/02(木)22:38 ID:0AxqYuWp0(16/38) AAS
「しかし盗作が行われたことは事実です。だからこそあなたがこの件に対して本当に誠意を持って応じるのならば今すぐに編集部に行ってご自分が盗作を行ったと伝えるべきではありませんか。」

真実を打ち明けることこそが今の哲平に出来る唯一の誠意ではないか。そう告げる右京。
だがそれは哲平の望むことではない。何故なら…

「そんなこと出来ません…それで今回の連載がもしも流れるようなことになればホワイトナイトが世に出なくなるんですよ。」

「だからといって真実を隠すつもりですか。そうすれば結局得をするのは佐々木さん、あなただけではありませんか。
あなたは念願の連載を得て既に将来を約束されたも同然。それは本来なら伊月さんが得るものだった。
まさに盗人の如き犯行、そのようなことが許されると本当に思っているのですか。」
省3
53: [saga] 2020/07/02(木)22:39 ID:0AxqYuWp0(17/38) AAS
「それでは伊月さんはどうですか?真実を知った今こそお聞きします。彼にホワイトナイトを託せますか。」

右京に問われた伊月は突然のことで戸惑うしかなかった。
正直なところ今は考えがまとまらない。まだこの事態に混乱していた。
電子レンジでタイムパラドックスが発生して自分の描いたホワイトナイトが自らの手から離れた。
それだけでもショックだというのに自分にどうしろというのか。

「そもそも伊月さんに対して今この場で許しを乞うのは余りにも不利ではありませんか。
既にホワイトナイトをジャンプに掲載させて世に送り出しさらには連載に踏み切る時点で今頃になって謝罪する。
こんな事態になってから謝罪されてどうしろというのですか。」

「それは…俺だって一度は躊躇しました!けど編集部に送られてきたファンレターを読んだんです!
省6
54: [saga] 2020/07/02(木)22:40 ID:0AxqYuWp0(18/38) AAS
「ところであなたはホワイトナイトをこれからも描いていくつもりだと言っていますね。
それは勿論電子レンジの恩恵によるものでしょう。しかしそんな溶解した状態ではいつ動かなくなるかわかりませんよ。
そうなった時にあなたはどうするつもりですか。ご自分でホワイトナイトを描き続けることが出来ますか。」

そう右京から問われると哲平は再び目を逸らして口篭ってしまう。
そして今の話を聞いて伊月も改めて思うところがあった。
先ほど集英社で読ませてもらった哲平の原稿。あの某海賊漫画の擬きが哲平の実力だ。
恐らくは今の自分すら下回るレベル、その哲平に自身が苦心の末に生み出したホワイトナイトを託さなければならない?
彼にこの先を描く実力など絶対にない。そのことをようやく確信した伊月は哲平を前にして改めてこう告げた。

「返して…」
省7
56: [saga] 2020/07/02(木)22:52 ID:0AxqYuWp0(19/38) AAS
「佐々木さん、いつもどうやって原稿を描いてますか。
先ほど冠城くんはあなたの机から未来の少年ジャンプを見つけた。
そしてあなたが描いている原稿のタイトルもキャラクター名もすべて同じ。
つまりあなたは未来のホワイトナイトをそのまま写しているわけですね。」

「だから…それはホワイトナイトを完璧に仕上げたくて参考に…」

「そこが意味がわからないんですよ。完璧に仕上げたいのなら伊月さんのホワイトナイトをそのままコピーして載せればいい。
ですが敢えてそれを行わない理由、それはあなた自身が漫画家を体験したいだけにしか僕には思えないんですよ。」

右京は自分で推理しながら哲平の行いに呆れるしかなかった。これが作家の姿かと…
本来作家とは膨大な資料と自身の発想力を用いて執筆作業に取り組む。
省3
57: [saga] 2020/07/02(木)22:52 ID:0AxqYuWp0(20/38) AAS
「いい加減にしてください!さっきから何なんですか!これは俺と藍野さんの話だ!アンタには関係ないだろ!?」

ここまで問い詰められてとうとう堪えきれなくなった哲平は右京たちを部屋から追い出そうとした。
仮に盗作を行ったとしてそれは当事者たちの問題でしかない。部外者は引っ込めとでもいうつもりだろう。

「まさかあなたは今回の件が自分と伊月さんのみが当事者であるというつもりですか。まだ自分が何を仕出かしたのか自覚してないようですね。」

右京がそう告げると同時にこれまで事態を静観していた冠城が哲平に携帯を手渡した。
実は冠城だが右京が哲平を追求している間、密かにある人物と連絡を取っていた。
それから哲平が手渡された携帯を受け取ると…
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