右京「タイムパラドクスゴーストライター?」 (82レス)
1-

57: [saga] 2020/07/02(木)22:52 ID:0AxqYuWp0(20/38) AAS
「いい加減にしてください!さっきから何なんですか!これは俺と藍野さんの話だ!アンタには関係ないだろ!?」

ここまで問い詰められてとうとう堪えきれなくなった哲平は右京たちを部屋から追い出そうとした。
仮に盗作を行ったとしてそれは当事者たちの問題でしかない。部外者は引っ込めとでもいうつもりだろう。

「まさかあなたは今回の件が自分と伊月さんのみが当事者であるというつもりですか。まだ自分が何を仕出かしたのか自覚してないようですね。」

右京がそう告げると同時にこれまで事態を静観していた冠城が哲平に携帯を手渡した。
実は冠城だが右京が哲平を追求している間、密かにある人物と連絡を取っていた。
それから哲平が手渡された携帯を受け取ると…
58: [saga] 2020/07/02(木)22:55 ID:0AxqYuWp0(21/38) AAS
「なんてことをしてくれたんだッ!」

携帯から突然怒鳴り声が響いた。
哲平は思わず耳を塞いでしまうがこの声には聞き覚えがある。
以前まで自分の担当をしていた少年ジャンプ編集部の菊瀬だ。

「菊瀬さん…どうして…」

「刑事さんから聞いたぞ!ホワイトナイトは盗作だったそうだな!」
省16
59: [saga] 2020/07/02(木)22:56 ID:0AxqYuWp0(22/38) AAS
「そうだ…担当の宗岡さんに話をさせてください…彼ならわかってくれるかも…」

「馬鹿言うな。宗岡はとっくに上層部に呼び出された。何で盗作を見抜けなかったと糾弾されてるぞ!」

「じゃあ…編集長を…編集長ならわかってくれるはずです…」

「編集長だって同じだよ。今回の件で責任取らされるに決まってるだろ!」
省8
60: [saga] 2020/07/02(木)22:58 ID:0AxqYuWp0(23/38) AAS
「アンタたちどうしてくれるんだ!おかげで全部台無しじゃないか!」

「台無しとはおかしなことを言いますね。元々はあなたが勝手に盗作しただけの話じゃないですか。自業自得ですよ。」

「自業自得だと?ふざけるな!これは俺に訪れた奇跡だったんだ!」

それから哲平はこれまでのことを語りだした。幼い頃から漫画家を志て学校を卒業後はこの東京へと上京した。
だがこの4年間はいつまで経っても努力は報われなかった。
プロの漫画家のアシスタントやアルバイトで生計を立て食費も切り詰めながら漫画家人生を夢見て生活を送ってきた。
どれだけ漫画を描いても担当の菊瀬によってボツにされてきた。
それがようやく叶おうとしたというのにすべて台無しにされた怒りは相当のものだった。
省11
61: [saga] 2020/07/02(木)22:59 ID:0AxqYuWp0(24/38) AAS
「だってしょうがないじゃないか!俺はみんなを楽しませる漫画を描きたかったんだ!」

それでも哲平は拘った。みんなを楽しませる漫画を描きたいと…
そんな哲平に右京はあることを尋ねた。

「ひとつお聞きします。みんなを楽しませたい。その気持ちは分かりました。
しかしあなたが描いた漫画と十年後から送られてきたホワイトナイトを読み比べましょう。
完成度は未来の伊月さんが描いた漫画が圧倒的に上です。
つまりあなたの漫画、お話はそこそこ成り立ちますが本物と比べれば劣化版でしかない。
そんな劣化版を読んで読者は十分に楽しめるでしょうか。」

このことを指摘されて哲平は図星を突かれた。
省8
62: [saga] 2020/07/02(木)23:00 ID:0AxqYuWp0(25/38) AAS
「今更誰かのせいにするのはやめなさい。すべてはあなたが招いた結果ですよ。」

「仕方ないだろ!あんな名作を読んでしまったんだ!そしたら世に広めたくなるのは当然じゃないか!」

「そのためならこのアパートを全焼させてもいいと思ったのですか。」

は?何を言っているんだ。右京から突然そんなことを言われて哲平は戸惑った。
省8
63: [saga] 2020/07/02(木)23:01 ID:0AxqYuWp0(26/38) AAS
「そんな…危険なんかない!この一ヶ月間ずっと使っているんだから!」

「これまでは運良く稼働していただけでしょう。
しかしレンジがいつまで未来からの転送に耐えられますか。
この未知の機械が安全だとあなたに保障できるのですか?

この電子レンジについてそう問われると哲平はまたもや口を塞いだ。
今まで考えもしなかった。何故ならこの一ヶ月間は順調に未来から少年ジャンプが送られてきたからだ。

「佐々木さんにしてみれば未来からジャンプが届けさえすればそれでいいのでしょう。
ですが他の住人のみなさんはどうですか。あなたが実家で呑気に漫画を描いている間にこのアパートが大爆発を起こしてみんな死んでいたかもしれないんですよ。
そうなった時にあなたは全ての責任を取れますか。それともご自分が盗作した漫画でも読ませて被害にあった人たちを楽しませればいいと思いましたか。」
省6
64: [saga] 2020/07/02(木)23:06 ID:0AxqYuWp0(27/38) AAS
「それなら…俺はどうしたらよかったんだ…才能のない凡人はどうしたらいいんだよ…」

哲平は涙を流しながら右京にそう訴えた。そんな哲平を隣で見ていた冠城は正直なところみっともないとしか言いようがなかった。
ここまで自業自得だというのに25歳を過ぎたいい大人が涙を流し鼻水を垂らしながら惨めに縋り付いてくる。
こんな無様を晒してまだ自らの夢とやらを諦めていないのだろう。余りにも未練がましい姿だ。

「僕に訴えられても困ります。ですがひとつあります。今のあなたでもみんなを楽しませることが…」

「それは…本当なんですか!教えてくださいどうしたらいいんですか!」
省3
65: [saga] 2020/07/02(木)23:08 ID:0AxqYuWp0(28/38) AAS
「あれです。あの電子レンジのコンセントを抜いてください。それだけであなたは人を楽しませることが出来ます。」

その答えを聞かされると哲平の思考が一旦止まってしまった。
突然何を言い出すのかと…あの電子レンジは今や自分になくてはならないものだ。
さらに言えば哲平は落雷があった日から今日まで電子レンジを一切弄ってはいない。
当然だ。これは未知の産物、何か弄って機能しなくなっては未来から少年ジャンプが転送されなくなってしまうからだ。

「嫌だそんなの…大体何でそんなことでみんなが笑顔になれるんだよ!?」

「わからないなら説明しましょう。今やこの部屋はいつ爆発してもおかしくないんですよ。
それで住人の皆さんが被害に遭われたら大怪我を、最悪の場合は死に至るでしょう。
ですがあなたがこのコンセントを抜くだけで住人は被害に遭わずこれから楽しい未来が待っている。
省6
66: [saga] 2020/07/02(木)23:10 ID:0AxqYuWp0(29/38) AAS
「嫌だ…」

「こんなのやりたくない…」

「このレンジがなきゃ…俺はもう駄目なんだ…」

とうとう哲平は大声を上げながら泣き出してしまった。
他の部屋の住人たちも一体何事かとぞろぞろと集まってきた。
冠城が玄関の前でなんでもないと呼び止めるがいつまでもこうしてはいられない。
省12
67: [saga] 2020/07/02(木)23:11 ID:0AxqYuWp0(30/38) AAS
『フューチャーサンダー』

突然電子レンジが光りだした。それだけではない。
これまで電子レンジの置物だと思われていたロボットの玩具がフューチャーサンダーと音声を発した。
そしてどういうわけかまたもや未来からの転送だ。だが何やら様子がおかしい。
するとレンジになにやらメッセージが浮かび上がった。
何故このタイミングでと読んでみるとそこにはとんでもない記述が載せられていた。

[描け 佐々木哲平]

[死の源流は未だだだ消失をしてません]
省13
68: [saga] 2020/07/02(木)23:12 ID:0AxqYuWp0(31/38) AAS
ブチッとコンセントが外れる音がした。誰かがいきなり哲平を押しのけて外した。
一体誰が…?右京は哲平の傍らにいるし冠城も玄関の前で他の押しかけてくる住人たちの対応に追われている。
それでは誰なのかと見てみると…そこには伊月がいた。なんとコンセントを外したのは彼女だった。

「何をしているんだ!キミは自分が何をしたのかわかっているのか!」

哲平はすぐ伊月を問い質した。何でこんなことをしたのかと…
この電子レンジは奇跡のタイムマシンだ。それがコンセントを引っこ抜いただけでどんな影響を及ぼすのか…
もしかしたら二度と使えなくなるのかもしれない。
いや、問題はそれだけではない。これでは伊月が死ぬ未来を変えられなくなってしまう。
69: [saga] 2020/07/02(木)23:14 ID:0AxqYuWp0(32/38) AAS
「…余計なお世話です。」

「は?何を言っているんだ。キミは十年後に死ぬんだぞ!だからそのために俺が未来を変えなきゃならないんだ!」

「だから余計なお世話です!そのために私の漫画を潰すんですか!?それなら殺された方がまだマシですよ!!」

これ以上哲平に漫画を潰されるくらいなら死んだ方がマシだと伊月はハッキリとそう断言した。
それを聞いた哲平は呆然とした。何を言っているんだと…
この世で死ぬこと以上に残酷なことはないはずだ。それなのにどうして…
省13
70: 2020/07/02(木)23:14 ID:k8n/UKWh0(2/3) AAS
原作通りだけど知ったばかりのぽっと出の情報で自己正当化するのすげぇなこいつ…
71: [saga] 2020/07/02(木)23:16 ID:0AxqYuWp0(33/38) AAS
一週間後―――

「右京さん、これを見てください。」

特命係の部屋で冠城が今週号のジャンプで気になるページを見つけた。
それは謝罪文だ。ホワイトナイトが盗作された作品だったということを公表した内容だ。
既に決まっていた連載も急遽中止となったことの報告。
そして本来の作者である藍野伊月への謝罪も含まれていた。

「菊瀬さんから連絡がありましたが今回の件でホワイトナイトの連載を決めていた編集長は左遷されたそうです。
それで佐々木哲平も一連の騒動による損害で賠償金は勿論ですが集英社の出入りも一切禁止となり他の出版社にも根回しして彼が原稿を持ち込んでも相手しないように注意を呼びかけていましたよ。」
省8
72: [saga] 2020/07/02(木)23:18 ID:0AxqYuWp0(34/38) AAS
「ですが彼女なら大丈夫でしょう。本来の未来で名作を描けたのです。
漫画への情熱があればこの程度のことで挫けたりせずきっともう一度立ち直ると僕は信じています。」

「そういえば彼女、自分を虐めた相手も楽しませるなんて素敵な夢を持っていましたね。」

「ええ、だから信じましょう。この先何があろうと伊月さんが夢を叶えることを…」

ジャンプに載せられた謝罪文を読みながら右京は伊月の成功を願った。
電子レンジから転送された未来からのメッセージは彼女の死を暗示していたがこの世界が既に本来の時間軸と異なっているのなら
その死を回避することも可能かもしれない。
すべては伊月次第、夢を掴むのも大事だがその生命も大事に守ってほしい。
73: [saga] 2020/07/02(木)23:19 ID:0AxqYuWp0(35/38) AAS
「それにしても右京さん今回は結構感情的でしたよね。」

「感情的…?この僕がですか。」

「そうですよ。あんな小悪党相手にずっと凄んでいましたからね。」

自分は常に冷静沈着だと言い張る右京だが冠城は今回の件で右京から鬼気迫るものを感じていた。
その理由について心当たりがあった。
省12
74: [saga] 2020/07/02(木)23:21 ID:0AxqYuWp0(36/38) AAS
「ところで右京さん、もうひとつ聞きたいんですが佐々木哲平はどうして盗作に踏み切ったんですかね。」

「それはどういう意味でしょうか…?」

「だってそうでしょ。こんな盗作がバレたリスクを考えられなかったのがちょっと不思議で…
今にして思えば佐々木哲平がホワイトナイトをそのまま書き写したのは
あれが十年後の作品でまだ作者の伊月ちゃんが生み出していないとタカを括ったからですよね。
けど何かのきっかけですべてがバレる可能性だって考えていたはずです。それなのに敢えてホワイトナイトをそのまま持ち込んだ。
これってどうして何ですかね?」

今回の件で冠城が疑問に思ったのはまさにそこだった。
盗作など行った哲平は本当に何のリスクも考えられなかったのか?
省3
75: [saga] 2020/07/02(木)23:21 ID:0AxqYuWp0(37/38) AAS
「…それは恐らく夢を見てしまったせいでしょう。」

「夢…ですか…?」

「そう、夢です。才気溢れる若者が夢見ることはとても素晴らしいことです。
自ら目標を見つけてこれからの将来に突き進んでいく。まさに希望といえます。
ですが才の無い者が見る夢は残酷です。いつまでも辿り着くことのない頂きをよじ登らなければならない。
何度躓き転げ落ちようとも次こそはと挑み続けて登る。それはまさに呪いといえるものです。」

右京の話を聞き終えた冠城は今回の騒動がなんとも皮肉なものかと感じずにはいられなかった。
佐々木哲平と藍野伊月、二人は似たような夢を見た。
省7
76: [saga] 2020/07/02(木)23:25 ID:0AxqYuWp0(38/38) AAS
これでおしまいです。
相棒といまジャンプで最も話題の男佐々木哲平くんとのお話でした。
あと後日談をやりたいのでその続きはpixivで
それでは!
1-
あと 6 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.874s*