朝倉葉「オイラ、幸せもんだな」小山田まん太「僕だって、幸せ者さ!」 (16レス)
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1: [sage saga] 2020/06/22(月)23:11 ID:FFL98XnqO携(1/14) AAS
その日は雨だった。
僕の友達の朝倉葉くんは、降りしきる雨を窓越しに眺めている。穏やかに、ぼんやりと。
朝からずっと、放課後まで、飽きもせずに。

「葉くん、帰らないの?」
「ん? ああ。オイラうっかり傘を忘れちまってな。どうしたもんかと考えてたんよ」

どうやら彼は傘がなくて困っているらしい。
それもその筈、本日の降水確率は0%だった。
登校するまでは快晴だったのに教室に入った途端、雨が降り出した。全く予想外である。

「実は僕も傘を忘れたんだ」
「まん太も? うぇっへっへっへっへっ。そりゃあ、奇遇だな。まあ、なんとかなるさ」
省16
2: [sage saga] 2020/06/22(月)23:14 ID:FFL98XnqO携(2/14) AAS
「ほら、さっさと行くわよ」
「あ、ちょっと待ってくれ、アンナ」
「何よ」
「まん太も傘を忘れたらしいんだ」

葉くんは変わっているけど良い人だ。
僕の事情を考慮して、交渉し始めた。
とはいえ、傘は2本しかないようなのでどうしようもない。僕は車を呼んで帰ろう。

「いいよ、葉くん。僕は車で帰るから」
「でも迎えが来るまで待つの面倒だろ」
「まあ、ちょっと家が遠いからね……」
省12
3: [sage saga] 2020/06/22(月)23:16 ID:FFL98XnqO携(3/14) AAS
「アンナ、そりゃどういう意味……」
「アンタは黙ってなさい」
「……あい」

堪らず問いただした葉くんだったが、ぴしゃりと嗜められて黙りこくった。おっかない。
そんな彼の手を引き、昇降口へと向かう。
僕も彼らのあとに続いて、校舎の外に出た。

「葉、傘を持ちなさい」
「へいへい」

葉くんが傘を広げる。
アンナさん用の、赤い傘。
省13
4: [sage saga] 2020/06/22(月)23:18 ID:FFL98XnqO携(4/14) AAS
「それで、どうしてこんなことに?」
「お? おお、まん太か。遅かったな」

それから程なくして。
仲睦まじいおふたりに気を利かせてゆっくり歩みを進めていた僕の足元に、何故か先にいった筈の葉くんがずぶ濡れで転がっていた。

「なんでこんなところで倒れてるのさ」
「いや、実はオイラ、相合い傘なんてしたことがなくてよ。気がついたらアンナの肩がびしょ濡れになっちまっててなあ! うぇっへっへっへっへっ。やっぱ慣れねぇことはするもんじゃねぇなあ」

うぇっへっへっへっへっ、じゃない。
この男、どこまで残念なんだ。がっかりだ。
今回ばかりはアンナさんが可哀想すぎる。

「葉くん……君ね。それで、アンナさんは怒って君を置いてひとりで帰っちゃったの?」
省9
5: [sage saga] 2020/06/22(月)23:21 ID:FFL98XnqO携(5/14) AAS
後日。放課後の教室にて。

「あの、アンナさん。ちょっといい?」
「なによ、まん太」
「そろそろ葉くんを許してあげても……」
「嫌」

葉くんはあれから何度もアンナさんに謝ったけれど、お許しは得られなかった。
最終的に土下座を敢行した葉くんの頭には、アンナさんの足跡がくっきり浮かんでいる。

「たしかに今回は葉くんが悪かったと思うけどあれはいくらなんでもやりすぎじゃ……」
「葉から事情を聞いたの? 下着のことも?」
「いや! そんな詳しく聞いたわけじゃ……」
省9
6: [sage saga] 2020/06/22(月)23:23 ID:FFL98XnqO携(6/14) AAS
「まあ、それはともかく! 葉くんもあれから海より深く反省してることだし……」
「そうね。ここはまん太の顔を立てて、寛大に許してあげる。これで借りはチャラよ」

僕の貸しが思わぬところで消費された。
とはいえ、別に構わない。本望だとも。
これで2人が仲直り出来るならばいい。

「ありがとう、アンナさん」
「礼は必要ないわ。私はいずれ葉の妻となる女だもの。夫婦喧嘩の予行練習よ」
「あはは……夫婦喧嘩、ね」

夫婦喧嘩。それはよくあることだ。
喧嘩するほど仲が良いとも言う。
省8
7: [sage saga] 2020/06/22(月)23:25 ID:FFL98XnqO携(7/14) AAS
「ねえ、アンナさん」
「なによ」
「どうしていつも葉くんに厳しくするの?」

それは兼ねてよりの疑問だった。
アンナさんは葉くんのことを愛している。
それは先程の発言からも重々承知済みだ。
それなのに何故。彼に辛く当たるのか。

「死なれたくないから」

さらりと、どきりとする発言をされた。

「し、死ぬって、葉くんが……?」
省9
8: [sage saga] 2020/06/22(月)23:27 ID:FFL98XnqO携(8/14) AAS
「それなら僕にとやかく言う資格はないね」
「いいえ、まん太。それは違うわ」

部外者が口を出すべき問題ではないと察して大人しく身を引こうとしたら止められた。

「まん太は葉の友達でしょ?」
「それは、そうだけど……」
「私は葉の許嫁ではあっても友達じゃない。だから、まん太にはまん太の役割がある」
「僕の、役割……?」

たしかに僕は葉くんの友達だ。
けれど凡人の僕には彼の戦いは手伝えない。
そんな無力な僕に、何が出来るのだろう。
省15
9: [sage saga] 2020/06/22(月)23:29 ID:FFL98XnqO携(9/14) AAS
「わかったよ。僕にどれだけのことが出来るかわからないけど、精一杯頑張ってみる」
「よろしく頼むわ、葉のこと」

そう言って、アンナさんは微笑んだ。
その笑顔はやはり魅力的で、そんな表情を向けて貰えない葉くんが可哀想だった。
なんだかやりきれない思いに苛まれる僕を尻目に、床に転がる葉くんの元へとアンナさんは近づいて、そして蹴っ飛ばした。

ガンッ!

「アンタ、いつまで寝てんのよ!」

叱咤するも返事がない。まるで屍のようだ。
省10
10: [sage saga] 2020/06/22(月)23:31 ID:FFL98XnqO携(10/14) AAS
「起きないなら、このままかけるから」

背後から聞こえる衣擦れの音。本気だ。

「葉。これは全部、アンタの為なのよ」

嘘だ。
アンナさんはきっと自分の欲求を満たしたいだけだ。女性経験のない僕にだってわかる。

「葉、愛してるわ。だから、わかって」
省10
11: [sage saga] 2020/06/22(月)23:33 ID:FFL98XnqO携(11/14) AAS
ちょろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

「っ……!?!?!!」

それはまるで永遠。
にも関わらず、一瞬の出来事であった。
耳に届くのは清涼な水音だけ。
まったくの無臭であり、実感が湧かない。
せめてアンモニア臭さえすれば。
そうすれば、僕は一気に冷静になれたのに。

ある意味、夢のようなひとときだった。
それは悪夢であり、そして現実であった。
省12
12: [sage saga] 2020/06/22(月)23:35 ID:FFL98XnqO携(12/14) AAS
「それじゃあ、まん太」
「は、はひっ!」
「あとは任せたわよ」

僕が見張っていた扉からアンナさんが退室する間際、また魅力的な笑みを浮かべ、囁く。

「たぶん、あの男、起きてるわよ」
「えっ?」

そんなまさか。
呆然としてアンナさんが立ち去るのを見送ってから、僕は友の元へと駆け寄り、尋ねた。

「葉くん、君は本当に起きてるの……?」
「ああ……当たり前だろ」
省11
13: [sage saga] 2020/06/22(月)23:37 ID:FFL98XnqO携(13/14) AAS
「悪いな、まん太。辛い思いさせちまって」
「いいんだ! だって僕らは友達だろう!?」

謝罪なんかいらない。聞きたくない。
ただ僕は彼の側に居てやりたかった。
それが唯一、僕に出来ることだから。

「まん太……お前はいい奴だな」
「葉くん……!」

涙が止まらない。畜生、畜生、畜生。
泣く権利があるのは彼のほうなのに。
それなのに、彼はニヘラっと笑って。
省18
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(1): 2020/06/22(月)23:48 ID:So2mHUu90(1) AAS
立てる板どころか主人公の名前すら間違えるゴミ以下の存在くんは今日も日付変わってから自演で「またあんたか」とかコメしちゃうの?
いい加減ここの板でスカトロ表現のあるスレ立てるの滑ってることに気付こうよ子供じゃないんだからさぁ
15: [sage saga] 2020/06/22(月)23:59 ID:FFL98XnqO携(14/14) AAS
>>14
朝倉ではなく、麻倉でした。
前作でも獅子劫のことを獅子刧と書いていたので、念入りにチェックしたつもりだったのですが申し訳ありません。
謹んで、お詫びと訂正します。
ご指摘ありがとうございました。
16: 2020/06/23(火)12:21 ID:p0FHYVOS0(1) AAS
「うぇっへっへっへっ。オイラとしたことが、ちょっと飲んじまったぜ。しょっぺぇ」

尿ってしょっぱいんだ……
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