【鬼滅の刃】愛の言葉は私から【ぎゆしの】 (37レス)
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1: 2020/04/05(日)19:54 ID:ZD/WkuXt0(1) AAS
キメツ学園軸
転生設定、記憶有りです

SSWiki : 外部リンク:ss.vip2ch.com
2: 2020/04/05(日)19:58 ID:33Pc5UOzO携(1/35) AAS
こちらと連作です
良ければどうぞ
【鬼滅の刃】愛の言葉は必要か【ぎゆしの】
vip2chスレ:news4ssnip
3: 2020/04/05(日)20:00 ID:33Pc5UOzO携(2/35) AAS
「しのぶ、ちょっとお話があります」
「は、はい…」

 こう言われたのは久しぶりに姉さんとランチをしている時のことだった。元々仲の良い姉妹だったが、お互いに結婚してからは忙しく今日は久しぶりのランチ会だった。
4: 2020/04/05(日)20:04 ID:33Pc5UOzO携(3/35) AAS
「でね、実弥くんったら、『もうこれ以上はおはぎは…』って寝言言ってるのよ」
「へぇ、あの不死川先生がねぇ…意外かも…」
「けどね、その後すぐに『いや、きなこは別だろォ』って言ったの。それがおかしくっておかしくって」
「ふふっ…何その自分ルール…」

 話題は自然とお互いの相手の話になってくる。姉さんもこんな風に不死川先生の他愛もない話をしてくれていた。
5: 2020/04/05(日)20:09 ID:33Pc5UOzO携(4/35) AAS
「けど、姉さんはいいわよね…相手が不死川先生だもの…」
「あら、冨岡くんだって優しいじゃない」
「優しいけど…」

 だから私も、義勇さんの話をする。ただそれだけのつもりだった。けれど…
6: 2020/04/05(日)20:11 ID:33Pc5UOzO携(5/35) AAS
「でもね、本当に言葉が足りないのよ?この間だってそう、デートでふらっと居なくなったかと思ったら、全身ズタボロになって帰ってきたのよ?」
「えぇ!?」
「それで、理由を聞いたら『喧嘩した』としか言わないの…」
「そ、それ…どうしてなの?」
「そう思うわよね?そこからゆっくり話を聞いたの。一時間くらいだったかしら、それくらい話してやっと、私を盗撮してた人たちと揉めてたってことがわかったのよ…」
「えぇ!?」

 姉さんが驚くのも無理はない。そんなことを当の本人に黙って勝手に解決しようとしてしまう。そんな不器用な人なのだ。
7: 2020/04/05(日)20:12 ID:33Pc5UOzO携(6/35) AAS
「本当に…もう少しちゃんと説明してほしいわよ…心配するこっちの身にもなってほしいわ…」
「うーん、けどそれは冨岡くんの優しさでしょう?」
「だけど!姉さんはいきなり自分の旦那さんが傷だらけで帰ってきたらびっくりしない!?」
「それは、びっくりするけど…」
「ね?そもそも普段から言葉が足りないのよ!この間だって、何を思ったのかアサリを大量に買ってきたのよ?」
8: 2020/04/05(日)20:12 ID:33Pc5UOzO携(7/35) AAS
「アサリを?どうして?」
「話を聞いたら『アサリは貧血に良い』としか言わないの。多分私がその時貧血気味だったからだと思うんだけど…それにしたって五キロも買ってこられても困るわよ!」
「そ、そんなに…」
「そうなの!もう本当にどうしようもない…」

 そう言って私はため息をつく。そこからは似たような愚痴が口から自然に溢れ出てきた。基本的に義勇さんは口下手で会話がにがてだからこの手の話題には事欠かない。似たようなエピソードを五つほど披露した頃、姉さんが口を開いた。
9: 2020/04/05(日)20:13 ID:33Pc5UOzO携(8/35) AAS
「しのぶ、ちょっとお話があります」
「は、はい…」

 いつになく神妙な面持ちで口を開いた姉さんに思わず敬語で返事をしてしまう。
10: 2020/04/05(日)20:13 ID:33Pc5UOzO携(9/35) AAS
「…まさかとは思うけれど、いつもこんな感じなの?」
「こんな感じって?」
「…冨岡くんのお話するときはいつもこんな感じ?」
「え、えぇ…まぁ…」
「はぁ…そう…まさかとは思ったけどね…」

 ため息を吐きながら、姉さんは頭を抱える。どうやら私は何かをしでかしてしまったようだ。
11: 2020/04/05(日)20:14 ID:33Pc5UOzO携(10/35) AAS
「あのね、しのぶ。私はこれでも貴女のお姉さんだから、しのぶが素直じゃないこともわかってるし、近しく感じている人にほどツンツンした態度を取っちゃう性格もわかってるつもりよ」
「はぁ…」

 あまり納得はいかないが、ここで反論すべきではないと感じ相槌を打つ。姉さんは続ける。
12: 2020/04/05(日)20:15 ID:33Pc5UOzO携(11/35) AAS
「だけどね、夫婦っていうのは元々他人なの。そりゃあ冨岡くんとは前世からの知り合いで、気心だって知れているけど、それでもこんな風に悪口を言われ続けて耐えられるかしら?」
「悪口って…そんなつもりは…」
「そうね、そんなつもり無いわよね…けどね?しのぶがこの数分の間に言った言葉を思い出してみて?」
「この数分の?」
13: 2020/04/05(日)20:15 ID:33Pc5UOzO携(12/35) AAS
「『もっとしっかりしてほしい』『どうしようもない』『なんでそうなるのかがわからない』」
「あっ…」
「ね?気づいたでしょう?」

 なるほど、こう聞くと私の話は義勇さんの悪口に他ならない。
14: 2020/04/05(日)20:16 ID:33Pc5UOzO携(13/35) AAS
「そりゃあ一緒に暮らしてるんだもの。嫌なところの一つや二つはあるわよ。私だって実弥くんに思うところもあるもの。けどね、言い方や伝え方は気をつけなきゃダメよ?」
「うん…そうね…」
「たまには素直に『愛してる』って言ってあげてもいいんじゃない?」
「愛し…へ?」

 唐突に飛び出してきた言葉に驚いて、つい情けない声を出してしまった。
15: 2020/04/05(日)20:18 ID:33Pc5UOzO携(14/35) AAS
「あら、私たちは結構頻繁に言ってるわよ?」
「嘘!?あの不死川先生が!?」

 姉さんが言っているのはあまり違和感はないが、あの強面なんてものじゃない不死川先生が言っている姿が想像できない。どんな顔をして言っているのだろうか。
16: 2020/04/05(日)20:18 ID:33Pc5UOzO携(15/35) AAS
「だって言わないと伝わらないじゃない。私は必要だと思うわよ?」
「けど…そんなのがらじゃないし…」

 私だけじゃない。義勇さんだって私にそんなことを言われた日にはビックリして目を丸くするだろう。
17: 2020/04/05(日)20:19 ID:33Pc5UOzO携(16/35) AAS
「あらそう、じゃあ無理強いはしないけど…」

 しかし、次の姉さんのセリフを聞いた時、私の中で時間が止まった。
18: 2020/04/05(日)20:19 ID:33Pc5UOzO携(17/35) AAS
「知らないわよ?冨岡くんが誰かに取られても?」

 まるで脳みそを直接殴りつけられたような衝撃が私を襲った。取られる?誰が?誰に?どうして?そんなことを考えているうちにいつの間にか楽しいランチ会は終わっていた。
19: 2020/04/05(日)20:20 ID:33Pc5UOzO携(18/35) AAS
「はぁ…」

 気がつくと私はいつもの家路についていた。早く家に帰らなければ。義勇さんが帰ってくる前にこの気持ちを整理しておかなければならない。
20: 2020/04/05(日)20:20 ID:33Pc5UOzO携(19/35) AAS
「取られる…なんてこと…ないわよね?」

 ただでさえ無口で無愛想な義勇さんのことだ。私が告白した時だって、どれ程苦労したことか。前世での知り合いだなんて、何のアドバンテージにもならなかった。そもそも義勇さんは浮気ができるような性分ではない。けど…
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