【デレマス】望月 聖「かみさま」 (16レス)
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1: [sage saga] 2019/12/25(水)05:03 ID:77T4edg60(1/15) AAS
デレマスの奴です。

・めっちゃモブ視点

・地の文あり

久々すぎて色々とガバるのでお願いします

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2: 2019/12/25(水)05:06 ID:77T4edg60(2/15) AAS
十二月二十五日、まだ真夜中。

誰もいない公園で、ずっとまつ毛に降り積もる雪を睨んでいた。

今日、私はアイドルを辞めた。

「今までお世話になりました。」

その一言だけ告げて、事務所を飛び出して、もう六時間は経ったかも。
スマホとか、誰にも会いたくないから電源切ってるし、わからない。
ただ、全部どうでもいい。
省1
3: 2019/12/25(水)05:09 ID:77T4edg60(3/15) AAS
思い返すと、我ながら酷い。

一週間前、私は後輩に呼ばれて事務所に顔を出した。
その子はとても優秀で、要は「才能のある子」だったんだと思う。

私の顔を見た瞬間、私に人懐っこい笑顔を見せて、一冊の台本を渡してきた。
人気ドラマシリーズの、まだ公開されていないシーズンのものだった。
覚えている、散々だったオーディションのことは思い出したくもない。

「センパイ、これ、私一番に見せたくて!」

 その表紙に、出演者として、後輩の名前が印字されていた。
省2
4: [sage saga] 2019/12/25(水)05:10 ID:77T4edg60(4/15) AAS
漏れ出した息が白く形を作って、落ちてくる雪の中に溶け込んで消えた。
私は、あの空気の塊に「ばかもの」と名付けた。

名付けて、髪やら鼻先に容赦なく乗っかる雪を感じながら、瞼を閉じる。
5: [sage saga] 2019/12/25(水)05:11 ID:77T4edg60(5/15) AAS
クリスマスの街は、とても居心地が悪かった。

別に、恋人たちが手を繋いでいたり、抱き合っているのを見るのは嫌ではない。
きっと、彼らにはそれが幸せで、天国にいるみたいな気分なんだ。
それは、素敵なことだと思う。

でも、今日はそれを眺めていると、骨の芯から凍らされるような気になってしまった。
僻みとか、妬みとかは考えていなかったのに。

慌ててホッカイロを買ってきても、マフラーを巻いても、足りなかった。
暖かいカフェに入っても、コーヒーを喉に流し込んでも。

これは、神様のせいだろうか。
そうだ、神様に見捨てられたから、こんなにも。
6: [sage saga] 2019/12/25(水)05:13 ID:77T4edg60(6/15) AAS
きっと神様は怠け者だ。

あんなに「みんなに奇跡を」みたいな顔をしてクリスマスを開いているくせに、ちゃんと幸せにするのはイルミネーションを見ながら手を繋ぐ恋人だとか、経済状況の良い子供とかばっかりだ。
ティッシュ配りに精を出すお兄さんだとか、独りで仕事に勤しむサラリーマンだとか、自分の才能のなさに全部を投げ出してベンチで呆ける元アイドルには見向きもしない。

適当に街全体に大雪を降らせて「あなたたちにも奇跡です」みたいな顔をしているが、冷たいし、視界が悪くなるし、道を歩き辛くするし、迷惑でしかないじゃないか。
きっと、作業の片手間で適当に空から雪を降らせるのはとっても簡単なのだろう。
7: [sage saga] 2019/12/25(水)05:15 ID:77T4edg60(7/15) AAS
――それでも、もし神様がこの雪を「平等な救済」のつもりで降らせているなら、それも案外悪くないかもしれない。

このまま、マフラーとか、コートの間も冷たい塊でいっぱいに満たされて。
どんどん色のないふわふわに埋もれて、自分の体温も、世界との境目も分からなくなって、雪と一緒に透明になって溶け出せたら。
ああ、どんなに奇跡的だろうか、なんて。

「あ、あの……、風邪、引いちゃいますよ……」

鈴の鳴るような声がした。
私に投げかけられているようだった。

雪がいつの間にか、頭に落ちるのを止めている。
8: [sage saga] 2019/12/25(水)05:21 ID:77T4edg60(8/15) AAS
「天使、ですか」

目を開けると、そこに女の子が立っていた。
暖炉の灯りみたいに煌びやかな金髪をした、揺れる炎のように赤い瞳の少女。

そんな綺麗な子が、神秘とは程遠いコンビニの袋を片手に提げて、私に傘をさしている。
小さな赤いサンタ帽と、しっかりと着込んだ赤いケープがどこか外国を思わせた。

その子はとても不思議そうな表情を見せて、私の髪に付いた雪を払う。

「えっと……、望月 聖って、言います。天使じゃないです……。」
省3
9: [sage saga] 2019/12/25(水)05:23 ID:77T4edg60(9/15) AAS
「お姉さんは、何をしているんですか……?」

何って。

思わず溜まっていた感情が言葉に変わりそうになって、どうにかグッと呑み込んだ。

「いろいろ、かな。聖さんは何をしてるの、もう夜中だよ?」
「私は、お姉ちゃんとサンタさんをしてます……」

左手で頭にちょこんと乗ったサンタ帽を撫でて、彼女は誇らしげに口元を緩ませる。
赤らんだ鼻先と、肉付きの良い頬が、彼女の人並みな子供らしさを思わせた。
省6
10: [sage saga] 2019/12/25(水)05:25 ID:77T4edg60(10/15) AAS
「あの、プレゼント……、なにか貰ってくれませんか……?」

慌てて彼女は提げていたビニール袋を広げると、とても熱がりながら、中から肉まんの包み紙を取り出した。
まだ買いたてらしく、湯気がもくもくと立ち込めている。

「イヴさん……お姉ちゃんのですけど……、たぶん、あなたが貰ってくれれば喜びます……」

サンタさんなので。
そう言って彼女は肉まんを半分に割ってみせた。

ジューシーな茶色い餡が覗いている。
なんだか物乞いみたいで申し訳なくなって、断ろうとしたが――。
省2
11: [sage saga] 2019/12/25(水)05:30 ID:77T4edg60(11/15) AAS
「今日は、クリスマスなんですよ……」

熱々の肉まんを小さな口に運びながら、彼女は幸せそうに目を細める。
肉まんの湯気と吐息が合わさって、彼女の口元には白いもやが浮かんでいた。

それから彼女はもぐもぐと口を動かして、小さな身体で精いっぱいに呑み込んだ。
それが天使なんかではなく、生きるために食べ物を食べるという。彼女を人間たらしめる証拠のようで、思わず見とれてしまっていた。

「私の寮では、今日はみんなで集まってお菓子を分けっこしあいました……」

聖さんは肉まんを膝のあたりに下ろすと、それをキラキラした視線で見つめながら話を続ける。
省5
12: [sage saga] 2019/12/25(水)05:35 ID:77T4edg60(12/15) AAS
「みんなで歌を歌うとき、本当は神様じゃなくて、みんなのために歌ってました……。今日は、その方がいいと思ったから……。」

少し伏せて語るその言葉は、誰に向けられて紡がれているのだろうか。
私にはその一つ一つの息継ぎの裏側に、彼女と同い年くらいの子供たちの姿が想像できた。

「そうしたら、胸がポカポカして……、寒いのも平気になったんです……。面白いですよね……。大切な人に気持ちを伝えるって、こんなにも……。」
 
その瞳は遠くの雪に向いているが、きっと、もっと大事なものが映っている。
まるで一生添い遂げる恋人に向けるような、熱い。

「だから、お願いして私もサンタさんをすることにしたんです……」

今日はお試しですけど。
彼女は照れ臭そうに笑った。
省5
13: [sage saga] 2019/12/25(水)05:40 ID:77T4edg60(13/15) AAS
十二月十五日、深夜。

スマホを起動したら、案の定、不在着信の嵐だった。

情けない。
情けないし、申し訳ないけど、そんなに悪い気はしなかった。

一番上にあった番号に、とにかくコールする。
何度もレッスンを共にした、可愛い後輩の十一桁。

「ぜ゛ん゛ば゛い゛」
省7
14: [sage saga] 2019/12/25(水)05:42 ID:77T4edg60(14/15) AAS
「聖ちゃん、探しましたよ〜」

「えっと、ごめんなさい……」

「寒くなかったですか〜」

「大丈夫です……。あ、あの……!」

「プレゼント……。イヴさん、歌を聴かせてあげたい人が出来たの……」
省5
15: [sage saga] 2019/12/25(水)05:43 ID:77T4edg60(15/15) AAS
短すぎて自分でビビってる。

クリスマスと、望月聖へ。
誕生日おめでとう。メリークリスマス。
16: 2019/12/25(水)06:43 ID:YHYtJ2fWo(1) AAS
おつ
よき
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