【ミリマス】ネコデューサーさんと冬の靴下 (16レス)
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(1): ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga] 2019/12/04(水)22:38 ID:/r2p4Xlx0(1/15) AAS
その黒ネコは「志保君」と彼女を呼んでいた。

出会ったばかりの頃はまだ「北沢君」呼びだったのに、

ある時「北じゃわ君」とドヤ顔で舌を噛んでしまい、盛大に笑われてからはもっぱら「志保君」呼びで通していた。

対して、志保は彼の事を「プロデューサーさん」と呼んでいる。

他に「ネコタチ」「おやぶん」「毛玉」に「にゃーご」……それから「ツメツメトギトギシッポフリ」なんて変わったあだ名もあるけれど、
省2
2: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:41 ID:/r2p4Xlx0(2/15) AAS
そんな一人と一匹が過ごす冬のある日。

ご存知我らの765プロの、世間には『劇場』として知られている建物において、

この黒ネコは「志保君、志保君」と人を探しながら廊下を歩いていた。

劇場の廊下は冷たいもので、黒ネコは脚を出すたびに「冷たいなぁ、冷たいなぁ」と心でぶつくさ言っている。
3: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:42 ID:/r2p4Xlx0(3/15) AAS
そもそも人間は靴を履いているし、何なら靴下だってあるが、

ネコは靴を履かない生き物だし、例えお互い素足であったとして、

二足歩行と四足歩行じゃ接地する頻度と回数が比べられない。

ネコはネコであるだけで冷たい廊下に不利なのだ。
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(1): ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:43 ID:/r2p4Xlx0(4/15) AAS
だから、黒ネコは廊下を歩くのが嫌いだった。

煩わしい仕事をするのも嫌いだった。

ついでに凛々しい自分を見つけては、ネコじゃネコじゃと可愛がろうとする女子供も苦手である。

「まぁ、吾輩さま!」

なので曲がり角をひょいと曲がった折に、エミリーと鉢合わせた黒ネコは「しまった」と思って立ち止まった。
省2
5: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:45 ID:/r2p4Xlx0(5/15) AAS
「すみません、吾輩さまが飛び出してくると思わなくて。……もう少しで足を引っかけてしまいそうに」

「いや、別に、構わないよ」

黒ネコはすました顔で応え、エミリーはその場にしゃがんでこう続けた。

「それで、吾輩さまはどちらにご用事が?」

「用事って程の事じゃないけど、一応志保君を探しててね」
省2
6: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:46 ID:/r2p4Xlx0(6/15) AAS
見かけなかったかい? と黒ネコが問う。

するとエミリーは残念そうに首を振って。

「……申し訳ないのですが」

「そうかい。いや、構わないよ」

「ちなみにもう一つお尋ねしたい事があります」
省3
7: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:47 ID:/r2p4Xlx0(7/15) AAS
黒ネコが力になれないと首を振ると、エミリーは「構いません」と言って立ち上がった。

だが……その両腕には黒ネコがしっかり抱きしめられていて、彼は狼狽えながら彼女に訊いた。

「あのね、僕は志保君を探しに行きたいんだ」

「はい。私も仕掛け人さまを探しています」

「だからこうやって持ち上げられてしまうと、行きたい所に行けないだろう?」
省4
8: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:49 ID:/r2p4Xlx0(8/15) AAS
――さて、そうなってくると、建物内に残った調べるべき場所は二階と地下。

一人と一匹はそのどちらにも向かえる階段へと同時に視線をやって。

「二階ですか?」

「そのようにしたまえ」

黒ネコを抱えてエミリーは階段に足をかけた。
省1
9: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:50 ID:/r2p4Xlx0(9/15) AAS
===

「携帯を使おうって発想は無かったんですか?」

と、探し人は呆れた様子で微笑んだ。

劇場内のとある一室。

入り口を開けたばかりの場所で出迎えられ、
面と向かって呆れられた黒ネコは自分を抱えてるエミリーを仰ぎ見ると。
省5
10: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:52 ID:/r2p4Xlx0(10/15) AAS
「要するにだね。人生とは、回り道の数だけ想い出も増えて行って――」

「別に人生訓を訊いたワケじゃ。私を探してたって事は、用事があったんじゃないんですか」

「そうだけどね、志保君。……君って人間はもう少しばかり、他人との会話を楽しんだ方がいいな」

「ご忠告どうも痛み入ります」

皮肉たっぷりに言って志保が続ける
省5
11: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:53 ID:/r2p4Xlx0(11/15) AAS
「一体何をやってるんだい?」

黒ネコが疑問を口にした。

だが答えたのは机へと戻る志保ではなく、彼女と一緒に作業をしていた別の女性。

「忘れちゃったんですか先輩? オーナメントの点検と掃除ですよ」

「……そうか。そう言えばそうだったな」
省2
12: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)22:58 ID:/r2p4Xlx0(12/15) AAS
何故ならば、だ。その女性こそがエミリーの探していた――。

「仕掛け人さま、それなら私もお手伝いします!」

「本当? だったら助かるわ〜」

「この飾りを包装から取り出せば良いんですね?」

「そうそう。で、種類別に集めてセットを作って――」
省5
13: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)23:00 ID:/r2p4Xlx0(13/15) AAS
そうして、志保が飾りつけ用のボールを黒ネコの鼻先に転がした。

コロコロと向かってきたボールを前脚で踏みつけると、彼はふてぶてしく胸を張って言った。

「それこそ携帯電話を使いたまえ!」

「じゃあ、今年のクリスマスプレゼントに猫用ベストを送りますよ。ポケットが多めの物を選んで」

「いや、待て、待ちたまえよ? ――だったら靴下のほうが良いな。ココの廊下ときたらやんなっちゃうぐらいに冷たくってね」
省1
14: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)23:07 ID:/r2p4Xlx0(14/15) AAS
「プロデューサーさん。……あの、それって手編みでも良いんですか?」

黒ネコがピンと耳を立てる。

それからゴロゴロと喉を鳴らし出すと、志保はホッと肩の力を抜いて言った。

「だったら何時もお世話になってますし、手編みでも良いなら頑張ってみます。……なるべく静電気がたまりそうな素材で」

「やめて」
省2
15: ◆Xz5sQ/W/66 [sage saag] 2019/12/04(水)23:08 ID:/r2p4Xlx0(15/15) AAS
===
以上、おしまい。

お読みいただきありがとうございました。
16: ◆NdBxVzEDf6 2019/12/04(水)23:11 ID:Y6GOEWeZ0(1) AAS
今年の5月ぐらいにしぶに投下されてた「ネコデューサーさんと私」の続きかな?
乙です

>>1
北沢志保(14) Vi/Fa
画像リンク[jpg]:i.imgur.com
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>>4
エミリー(13) Da/Pr
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