【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―7― (306レス)
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68: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/12/24(火)19:55 ID:vF+jj9uO0(1/6) AAS
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―ピエリ誕生日SS―

 誕生日を迎えることが大人になる事じゃないって知ったのは、あの子に出会ってからだと思う。それまでの誕生日はただ歳を重ねる事だけしか出来ていなくて、ピエリは大人に近づいてなんていなかった。そんなことを思いながら雪が降る空の下にいると、声が聞こえた。

「駄目ですよ、ピエリさん。そのままじゃ、風邪を引いちゃいます」

 そう言って駆け寄ってきたその子を見ていると、お母さんを思い出す。
 ピエリのお母さんはとっても優しくて、お料理上手の綺麗な人だった。
 ピエリが何かを間違ったことをしたら怒ってくれて、最後には優しくしてくれた。
 そんなお母さんがピエリは大好きで、なりたい大人と言われたらお母さんって答えるほどだった。
 だけど、ある日、お母さんは真っ赤に染まって居なくなった。
 それからお料理の匂いもしなくなった。
省8
69: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/12/24(火)20:00 ID:vF+jj9uO0(2/6) AAS
 誰もいない場所ならそんなことを考えなくてもいい。そうしてピエリが逃げ込んだのが星界の小さな祠みたいな場所だった。
 そこで、ピエリはその子に出会った。その子のことをピエリは全然知らなかったけど、向こうはピエリのことを知ってた。
 なのに、その子はピエリのことを怖がったりもしないで、言葉を掛けてきたから思わず聞いた。

『あなた、ピエリが怖くないの?』

 ピエリの質問に、その子はこう返してきた。

『その、怖がられたいんですか?』

 それにピエリは怖がられたくないって、素直に口にしていた。
 素直にそう口にしたら、すごく悲しくなって涙が出る。声を出さないように頑張ったけど、口の中から漏れ出して自然と体が丸くなって動けなくなった。
 だけど、こうやって泣いても気にしてくれないと思う。ピエリの事を知ってるなら関わらない方がいいってみんな知ってるから。だから、その子も声を掛けてくれない、そう思った。
省8
70: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/12/24(火)20:04 ID:vF+jj9uO0(3/6) AAS
「駄目じゃないですか、今日の主役が何も言わずに外に出たりしたら。皆さん、探していましたよ」
「今日はピエリの誕生日で、ピエリが主役なの! だから問題ないはずなのよ」
「いいえ、何をしてもいいってわけじゃありませんよ。むしろ、準備してくれている皆さんを心配させたらだめです」
「ぶーっ、リリスは堅物なの」
「堅物で結構ですよ。ああ、頭にいっぱい雪が乗ってるじゃないですか」

 さっきまで怒っていたのに、すぐにリリスはピエリを心配してくれる。ピエリの頭に乗った雪を優しく払ってくれて、それがとっても心地よくて嬉しくもあった。
 出会ったあの日から、リリスはピエリのことを怖がったりしなかった。
 一緒に星界を歩いてくれたし、外への買い出しの手伝いなどもしてくれた。
 何より、間違ってることをピエリがしようとすると、止めようとしてくれて、だけどそれが原因で喧嘩になったりもした。でも、リリスはピエリを止めることをやめなかった。
 ある日、本当に大喧嘩に発展したことがある。その喧嘩はピエリが勝ったけど、リリスはずっとピエリが間違ってるから止めるって言ってて、どうして止めるのって聞いた。
省3
71: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/12/24(火)20:09 ID:vF+jj9uO0(4/6) AAS
「どうしたんですか、なんだか嬉しそうですけど」
「えへへ、リリスってお母さんみたいって思ったの」
「またですか。残念ですけど、私はあなたみたいな子供、知りませんよ」
「うう、酷いの。ピエリ、こんなにリリスのこと愛してるのに」
「はいはい、ピエリさんに愛されて私はとても幸せですよ。よし、これで雪は落ちましたね。あとは傘とマフラーを……」

 リリスは傘を開くとピエリが入るように身を寄せてくれる。さらにマフラーも巻いてくれたから、首元がとっても暖かくなって思わず息が漏れた。

「ふぅ〜、あったかいの〜」
「ここで風邪を引いたら大変ですからね。今度からは防寒具を付けて外に出てください」
「はーい。だけど、一人で外に出たことは怒らないのね」
「い、いえ……まぁ、ピエリさんが一人でいてくれて助かったというのもありますから……」
省5
72: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/12/24(火)20:15 ID:vF+jj9uO0(5/6) AAS
「ピエリの?」
「はい。本当は他の皆さんと一緒にお渡しするべきでしょうけど、これから準備とか色々とあって渡す時間が無さそうだなって。なので、私だけズルしちゃうことにしました」

 そうして差し出されたプレゼントを受け取ると、胸の奥がとても熱くなる。なんだか表現できない色々な思いが体の中を駆け巡るような感じがして、次第に顔も熱くなり始めた。
 その熱を逃がすように顔を下げて、まずはお礼をと口が開いた。

「あ、ありがとう……なの」
「ふふっ、どういたしまして。これで一つ大人になりましたね」
 そう言って、リリスはピエリの頭を優しく撫でてくれた。

『また大きくなったわね』

 同時に記憶にあるお母さんを思い出す。いつの誕生日だったかはわからないけれど、それは確かにピエリが成長していることを喜んでいるお母さんの姿だ。
省14
73: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/12/24(火)20:18 ID:vF+jj9uO0(6/6) AAS
 今日はこれだけ

 ピエリは守られるよりも一緒にいて、きちんと導いてくれる人がいればきっと素敵な大人になれる子だって思ってる。
 リリスはああ見えて肝が据わってるはずだから、ピエリと一緒に歩んでいける友人になれると思う、そんなお話でした。

 改めて、ピエリ誕生日おめでとう。
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