【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―7― (306レス)
前次1-
抽出解除 必死チェッカー(簡易版) レス栞 あぼーん

238: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)18:48 ID:01mrACZZ0(1/9) AAS
 今日はピエリの誕生日なので、ピエリ誕生日SSになります。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 今日はピエリさんの誕生日である。そんな当たり前のことを目覚めてすぐに思い浮かべた。いつも寝起きしている部屋とは違う城下町の小さな宿舎の一室、その部屋の隅には今日渡すプレゼントも入った小物入れが置いてある。
 ラッピングはピエリさんの好きな赤で、リボンの色は彼女のお気に入りであるリボンを思ってストライプ柄で決めている。抜かりはありません。
 今日はみんなでピエリさんにプレゼントを贈ろうという話になっていて、各自がそれぞれ贈る物が出来る限り被らない様にと事前の打ち合わせもこなしていたりと、中々に徹底していると思う。

「よし、早く行かないと」

 目的が決まっていると体はすぐ動くもので、身支度を手短に済ませて受付にあいさつをして宿を出た。
 とても冷え込むことで有名な暗夜の冬は、今日もその通りにとても冷え込んでいた。一ヶ月ほど前の初雪から断続的に降雪は続いていたこともあって、城下町全体がフリージアになってしまったかのように錯覚するほどに、一面が白い化粧で彩られている。
 化粧といえば、ピエリさんの化粧は思ったよりも濃い。そういった化粧道具というのもプレゼントとしてはとても良かった。でも、私には化粧道具の知識なんてこれっぽっちもないので、ニュクスさんとシャーロッテさんが化粧道具をプレゼントとして送ることになっている。
 そんな化粧を施された大通りを進んでいると、とても香ばしい香りが漂ってきた。視線を向けると、すでに幾つかの露店が開業の準備を始めている。パンにスライスしたチーズ、そして鉄板で焼いたブロックミートを挟んだお手軽だけどボリュームのある商品が調理されている。
省1
239: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)18:51 ID:01mrACZZ0(2/9) AAS
 続いて鼻を突いてきたのは甘い香りで、視線の先にはたっぷりとはちみつを掛けて、最後にホイップクリームを乗せたパンケーキの準備が行われている。ピエリさんは甘いお菓子が好きだった。最初、そういったスイーツの詰め合わせを模索していたけれど、それを送る役目は私がしたいというカゲロウさんと、ならば私もというスズカゼさんたちに譲ることにした。なんでも、ピエリさんでもおいしくお茶が飲める和菓子を送るつもりらしい。
 そして、洋菓子はブノワさんとハロルドさんが用意することになっている。ハロルドさんはいろいろと運が悪い人だから心配だったけれど、ブノワさんと相談した結果、ブノワくんと同じ甘いお菓子を頼むことにすればきっと私の頼んだ物はしょっぱいお菓子になるはずだ。これで甘いお菓子としょっぱいお菓子、両方をピエリくんに渡すことができるぞ、と言っていた。
 お茶といえば紅茶というのもあったけれど、紅茶に関してはジョーカーさんとフェリシアさんが送ることになっていて、同時に今日一日はピエリさんの専属給仕として仕えることになっている。残念ながら、私には紅茶の葉の見分け方も、給仕としての腕もないから、あきらめるしかなかった。
 大通りをさらに進んでいくと、今度は武器防具店が目に入った。あの戦いが終わりを迎えてからこういったものの出回りは落ち着いたけれど、未だに山賊や盗賊による被害が地方の村で起きている。そういえばフランネルさんはさすがに何を送ればいいかわからないから、後日人狼を狙う狩猟団退治を正式にピエリさんの騎士団にお願いするって言っていた。フランネルさんなりに考えた結果らしい。まぁ、人それぞれですよね。
 で、そういうこともあってまだまだこういった武具に需要があるというのはなんだか複雑なものだった。そして、そんな武具を送ろうと言い出したのはオーディンさんとルーナさん、そしてベルカさんである。ルーナさんはどっちが強いのかをさらに決めるためにはいい武器でやりあわないと意味がないと言っていた。ベルカさんは贈り物がよくわからないからとルーナさんと一緒に選ぶことにするらしい。そして、オーディンさんは蒼き赤き混沌が身に纏う衣は俺が選ばなければならないとよくわからないことを言っていた。どちらにしても、ピエリさんに誕生日プレゼントを贈りたくてたまらないのだ。もちろん私もその一人です。
240: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)18:53 ID:01mrACZZ0(3/9) AAS
 また少し進むと書店が目に入る。本というのはとてもいいものだけど、ピエリさんのイメージという点ではあまり繋がりを見出せない。だけど、料理のレシピ本はそれなりに読んでいるらしい。だからこその腕前だと思えることもある。ならと、本を送ることにしたのはエルフィさんだった。正直、エルフィさんは本を読むよりもそれで訓練をしているイメージが強いから、石のような本をプレゼントしそうな予感はあるけど、ピエリさんの作るおいしいごはんのレパートリーが増えることを期待している節もあるのではないかと思う。そういえば、レオン様も本関連で何か送ろうとか考えているらしい。特にレオン様が送る本っていうのがどういうものなのかはとても気になる。少し前に人を殺してはいけないことを他人にどう説明すればいいのかとカミラ様に相談していたようですが、カミラ様も心底悩んでいました。
 次に見えたのは調理道具の店舗。調理というのは思ったより重労働で使用する道具もできる限り重くない方が好ましい。つまり料理は運動といっても差し支えないものなのだ。だからなのか、ピエリさんの殺人衝動を運動に昇華させるなら、料理をさらに進んでできるように質のいい調理器具をプレゼントすればいいのではないかと、サイラスさんが名乗りを上げた。さすがは、ピエリさんの殺人衝動を運動で解消しようと考えた人なだけはあります。
241: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)18:55 ID:01mrACZZ0(4/9) AAS
 さらに歩いていくと装飾品を売っている小さなお店が目に入った。いわゆる古今東西の煌びやかな装飾を取り扱っているのが売りみたいで、淡いランプの光が積もった雪と相まって、落ち着いた雰囲気を醸し出している。店先にはきらきらと揺れる花や蝶の飾り、雪にちなんで雪だるまの形をしたアクセサリーなども置かれていた。アクセサリーもプレゼントとしていいですが、それに関してはニシキさんとヒナタさんがすでにプレゼントを考えていた。ニシキさんは、ピエリは変わってるよね、芋虫はだめだけど蝶は平気なんだからさ、とすでに渡すものの形が想像できることを口にしていたし、ヒナタさんもリボンのお返しするにはいい機会だからなと張り切っているようだった。
 そして最後に通るのは衣装を扱うお店だ。ここにはいろいろな種類の服が扱われている。店頭のショーケースに並べられたドレスが目に入った。今日ピエリさんが着るドレスは私の主であるカムイ様がピエリさんと共同で制作したものだ。理由は、ピエリさんが可愛いので、私が思う最高に可愛いピエリさんがかわいいと思うドレスを作って誕生日に着てもらいたいからという欲望に忠実なもので、これにはさすが姉様だと感服してしまう。
 そして、それの完成にはあともう一つ、必要なものがあって、私はそれを届ける役目を担っていて、それが今日の朝から熟すべき私の目的だった。
 そんな時、目的地のシルエットが目に入った。
 ピエリさんのお屋敷は、この雪の中であっても、その明かりから存在を認識できる、こんな朝だけれどさすがに会場ということもあって準備に余念がないということでしょう。そう思いながら駆け足気味にお屋敷へと、私は向かった。
242: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)18:57 ID:01mrACZZ0(5/9) AAS
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 今日はピエリの誕生日、そう思うとぱっちり目が覚めた。
 起き上がると、数日前に設置された大きな衣装棚が目に入る。カムイ様と一緒に一ヶ月以上前から作った今日のドレス。出来れば今すぐにでも着たいけど、まだ必要なものがそろってないから我慢する。
 部屋の外からは人が行き来する音が絶え間なく聞こえる。ピエリがベッドから降りるとその音に気づいて部屋前に待機していた使用人が入ってきた。

「おはようございます、ピエリお嬢様」
「おはようなの。うー、思ったより寒いの」
「はい、先日までの降雪の影響でかなり冷え込んでいるみたいですから、まだ休まれますか?」
「ううん、もう起きるの。誰かが訪ねてきたらすぐにお出迎えしたいから」
「かしこまりました。すぐにご準備いたしますので、少々お待ちくださいませ」

 そして、着替えを使用人二人に手伝ってもらって着替えを済ませる。専用のドレスになるのは早いけど、誕生日に来てくれる人を持てなす分には問題ない格好だった。
省6
243: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)18:59 ID:01mrACZZ0(6/9) AAS
「捕まえたの!」
「わっ! ピ、ピエリさん、脅かさないでくださいよ」
「そうなの、ピエリなの。こんなに早く来てくれるなんて、ピエリとっても嬉しいの!」

 ピエリの腕の中に収まったリリスをもっとぎゅうぎゅうすると、だんだんぽかぽかと暖かくなってきた。

「ちょ、ちょっとピエリさん、その、あ、当たってます」
「ぎゅうぎゅうしてるから、体が当たるのは当たり前なのよ」
「いえ、その、体の一部分が問題というか、と、とりあえずもうぎゅうぎゅうは大丈夫ですから」

 しぶしぶ離すとリリスはこちらを向いてくれた。なんだか顔が少し赤くなっていた。寒い外にいたからだと思う。視線をゆっくりと下ろすと手には小物入れがあって、そこからひょっこりとリボンが見えた。ピエリのお気に入りのリボンと同じ柄だからすぐに目に入った。

「リリス、それって」
「はい、例のものですよ」
省6
244: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)19:02 ID:01mrACZZ0(7/9) AAS
 部屋に戻ると、リリスが来たという言葉を聞いた使用人がすでにドレスの最終チェックの下準備を済ませて待ってくれていた。今日の衣装にはある物が必要で、それを今日のパーティー開始前にリリスが届けてくれる手筈になっていたのだ。

「えへへ、これでドレスが完成なの。リリス、持ってきてくれてありがとうなの」
「いえいえ、出来れば昨日届ける事が出来てば良かったのですけど」
「ううん、今日間に合ったからとっても良かったの。それじゃ、それを貸してほしいの」
「はい」

 リリスは小物入れの中から箱を取り出して、ピエリに差し出して来る。でも、それはリボンが付いた箱じゃなかった。それが予想外で、ちょっとだけ固まった。

「はい、ピエリさん。まずは開けて中身を確認してみてください」
「う、うん」

 受け取った箱を開けると、ドレスに着ける赤と青の宝石をあしらったブローチが入っている。ピエリの青い髪の色とピエリの好きな色が揃ったこれが、特製ドレスの最後の装飾品だからだ。
省15
245: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)19:04 ID:01mrACZZ0(8/9) AAS
「わかったの。今は我慢するの」
「えらいですよ。ピエリさん」
「子ども扱いしないでなの」
「ふふっ、安心してください。時間が来たらきちんとお渡ししますから」
「もう、リリスは融通が利かないの」
「よく言われます。でも、やっぱりこういうのはみんなで一斉に渡したい物なんですよ」

 そう言ってリリスは柔らかい笑顔を浮かべて、ピエリのことを見つめる。

「誕生日っていうのはみんなで一緒にお祝いしたいじゃないですか。特に一番大好きな友達の誕生日っていうのは」

 そう恥ずかしげもなく伝えてくるリリスになんだか恥ずかしくなる。

「そういうわけですから、プレゼントはその時間までお預けです」
省12
246: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2020/12/24(木)19:10 ID:01mrACZZ0(9/9) AAS
今日はこれだけ
 
 リリスや他の仲間たちと一緒に楽しい誕生日、ピエリお誕生日おめでとう!
前次1-
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.215s*