提督「姉」【艦これ】 (37レス)
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1: 2019/08/23(金)15:32 ID:EaIuAju3O携(1/35) AAS
拙い文ですがよろしくお願いします。

地の文あります。

なんか戦闘シーンとか苦手です。

書き溜めました。

よろしくお願いします。
省1
2: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:35 ID:EaIuAju3O携(2/35) AAS
俺には高校生の姉がいる。

7つ歳が離れている姉だ。

世話焼きで面倒見いい姉で、いつも俺のことを甘やかしてくる。

「あ、またご飯こぼしてる。だめよ?よそ見しながら食べちゃ」

「………」
省9
3: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:36 ID:EaIuAju3O携(3/35) AAS
「ねぇ、ちょっとだけ散歩にいかない?」

夏のある日、姉がそう誘ってきた。

僕は迷った。もし途中で友達に会ったりでもしたら、またからかわれてしまうに違いない。

僕が渋っていると姉はそれをどう勘違いしたのか、そそくさと準備をして玄関に行ってしまった。

「ほら!あんなにも空が青いわ。絶好のお散歩日和よ」
省3
4: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:37 ID:EaIuAju3O携(4/35) AAS
「……姉さんはなんで僕に構うのさ」

散歩をしながら、僕は尋ねた。

「当然じゃない、大切な弟だもの」

「……なんだよそれ」

「あなたは私のたった一人の家族。大切に思うのは当然でしょう?あなたは私の事、大切じゃないの?」
省6
5: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:38 ID:EaIuAju3O携(5/35) AAS
両親は一年前に死んだ。

戦争に巻き込まれたのだ。

戦争と言っても、国と国が戦っているわけではない。

敵は深海棲艦と言う。

突如海から現れた人外の敵は、海辺の街を蹂躙しつくした。
省6
6: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:39 ID:EaIuAju3O携(6/35) AAS
「深海棲艦との戦いは芳しくなく、徐々にではありますが、我々人類は内陸へ内陸へと追いやられています」

テレビのアナウンサーが言っていた。

なにせ、人類の武器が通用しないらしい。

人類は一体どうやって抵抗しているのか、そういった情報は入ってこない。機密というやつなのだろう。

そんなことを思いながら家で宿題をやっていると、家の扉を叩く音が聞こえた。
省7
7: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:40 ID:EaIuAju3O携(7/35) AAS
「姉は、今バイトでいません……」

「そうか、なら少し待たせてもらおうかな」

40代くらいだろうか、白い軍服を着た細身の男の人だ。ニコニコしていて、軍人っぽくない。

さすがに不用心だったかな……招き入れたことを少し後悔していると、

「あぁ、これは失礼。私はこういう者です。いきなりの訪問で申し訳ない」
省2
8: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:40 ID:EaIuAju3O携(8/35) AAS
お茶を出して気まずい沈黙を過ごす。

何しに来たのかと聞いても、姉が帰ってきたら話すと突っぱねられてしまった。

早く帰ってきてくれ、姉さん。

そんなことを思っていると、扉の開く音が聞こえた。

どうやら帰ってきたようだ。
省5
9: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:41 ID:EaIuAju3O携(9/35) AAS
「なんの、ご用でしょうか……?」

姉が恐る恐る訊いた。

「突然の訪問申し訳ない。あなたが〇〇さんですね?」

「そ、そうですけども」

「簡潔に申し上げますね」
省3
10: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:42 ID:EaIuAju3O携(10/35) AAS
「 か、かんむす……?」

「えぇそうです。まだ公にはされていませんが、この国は深海棲艦の対抗策として、『艦娘』を開発致しました。大戦時の軍艦の魂を人間の女性に宿らせ、軍艦の力を持った艦娘として戦って頂くのです。この艦娘になるには適性が必要なのですが、あなたの身体がある艦の適性を持っていることがわかりました。なので今後は軍に身を置きーーー」

「ま、待ってください!あの、突然のことで何が何やら……」

「あぁ、簡単に言うと、国のために戦ってください、ということです。まだ艦娘は開発されたばかりでして、第一次艦娘計画としてあなたが選ばれたと。ご安心ください、あなたの他にも適性を持った方がいます。もちろんその方も徴兵いたします」

「で、でも、弟は……」
省2
11: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:42 ID:EaIuAju3O携(11/35) AAS
なんだ……なんの話だ。

姉さんが、徴兵される……?

深海棲艦と戦うというのか……?

目の前で繰り広げられる会話に頭が追いつかない。

僕は施設に?姉さんと離れ離れになってしまうのか?
省5
12: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:43 ID:EaIuAju3O携(12/35) AAS
「では行きましょう。準備の方をお願いいたします」

「え、い、今から行くんですか?」

「もちろんです。今国は危機に陥っています。少しでも急がなくては」

姉が、行ってしまう。

戦地に、行ってしまう。
省7
13: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:44 ID:EaIuAju3O携(13/35) AAS
叩きつけられた衝撃でくらくらする。

姉が叫ぶ、僕の名を叫ぶ。

「私は大丈夫だから!!あなたはしっかり生きていくの!!また会えるから!!生きていれば会えるから!!私があなたを守るから!!!」

あぁ、僕は守られていたんだ。ずっと姉さんに。

親を亡くした僕を、寂しい思いをさせまいと。
省3
14: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:44 ID:EaIuAju3O携(14/35) AAS
それから一年後、施設で暮らしていた僕に姉が死んだという報せが入った。

戦艦扶桑の魂を宿した姉は、深海棲艦に沈められたのだった。
15: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:46 ID:EaIuAju3O携(15/35) AAS
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16: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:46 ID:EaIuAju3O携(16/35) AAS
俺には姉がいた。

7つ歳が離れていた姉だ。

今はもう、姉の年齢もとっくに超えてしまったが。

姉は20年前に海で死んだ。

艦娘、戦艦扶桑として深海棲艦と戦い、水底へと沈んだのだ。
省9
17: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:47 ID:EaIuAju3O携(17/35) AAS
「あぁ、すまん、ありがとう山城」

「……また姉様のことですか」

「ん、まぁ、そうだな。お前にとっても、俺にとっても姉様のことだ」

耳元で突然叫んだこの大馬鹿は戦艦山城。俺の姉、戦艦扶桑の妹艦である。

そして、姉の最期を看取った一人でもある。
18: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:48 ID:EaIuAju3O携(18/35) AAS
俺は姉の死を聞かされた後、死に物狂いで勉強をした。死に物狂いで身体を鍛えた。深海棲艦への復讐のため、軍に入るためだ。

そして、見事軍に入り艦娘を指揮する提督へとなった。

新米の提督として、前線の泊地に飛ばされて出会ったのが山城であった。

山城は出会った当初は細くやつれ、戦いに出ればボロボロになり、役立たずの烙印を押され解体寸前のところであった。

第二次艦娘計画で生まれた山城は、扶桑を姉妹艦という関係を超えて本当の姉のように慕っていたという。
省4
19: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:49 ID:EaIuAju3O携(19/35) AAS
俺は山城に伝えた。

「俺は深海棲艦を殲滅する。力を貸してくれ」

山城は泣き腫らした顔でこちらを見て、強く頷いた。

俺と同じ、復讐の目をしていたーーー。

「というのに、前線という割にはあまり激しい戦いは無いな、この辺りは」
省5
20: ◆t2z.CtSM8o 2019/08/23(金)15:49 ID:EaIuAju3O携(20/35) AAS
「あ、提督」

「ん、あぁ時雨か」

見回りと称して泊地内を歩いていると、時雨が話しかけてきた。

「提督、サボりかい?」

「人聞きの悪い。見回りだよ、見回り」
省5
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