真美「ベランダ一歩、お隣さん」 (462レス)
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1: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:06 ID:MwWLOLhm0(1/71) AAS
あの日も、夏が始まったばかりの暑い日だった気がする。
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2: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:07 ID:MwWLOLhm0(2/71) AAS
「真美ー、この段ボールこっちでいいのー?」
「うんむー、頼むー」
隣の部屋から、壁越しに亜美の声が聞こえた。
夏の頭、じりじりと日差しが強い日のお昼下がり。
亜美と一緒に、引越しの準備をしていた。
省7
3: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:09 ID:MwWLOLhm0(3/71) AAS
「もう、そういうことするなら手伝わなくていいよ」
「真美さんや、そう易々と拗ねるでないぞよ?」
「ふん、私はオトナの階段を着々と登ってるの」
「酒も飲めない歳で何を言うか」
「よっし、今度りっちゃんにこないだのタバスコジュースの真相をお伝えしてしんぜよう」
省6
4: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:10 ID:MwWLOLhm0(4/71) AAS
「……なぁんて、私もおばあちゃんじみてきちったよ……」
「真美さんや、ご飯はまだかいの?」
「亜美おばあちゃん、もう食べたでしょ」
「ううん、本当にまだ食べてないよ」
「……あれっ、そういや食べてないっけ?」
省5
5: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:10 ID:MwWLOLhm0(5/71) AAS
一人だけ作業をするのもなんだか癪だから、ぼーっと窓の外を眺める。
マンションの窓からは、前面に広々と青空が見える。
あー、夏の空っていいなー。
あの白い雲とか、すっごいもふもふしてそう。
「……でも、あ゙づい゙」
省7
6: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:11 ID:MwWLOLhm0(6/71) AAS
澄んだ風が吹いた。
夏の気だるさを吹き飛ばす。
「あー、いーぃ風ぇー……」
溶けたようにベランダの手摺りに身体を預け、だらーんと伸びる。
もー引っ越しの準備疲れたよー。
省7
7: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:11 ID:MwWLOLhm0(7/71) AAS
「久しぶりに、やっちゃいますかね?」
右足を手摺りにかける。
室外機のダクトに手をかけ、一呼吸で一気に登る。
「あらよっと!」
猫の子か何かのように、ひょいっと手摺りへ飛び乗る。
省8
8: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:12 ID:MwWLOLhm0(8/71) AAS
マンションの壁を伝うパイプを掴む。
そして、隣の手摺りへ一歩、足を伸ばした。
あの日と、同じように。
9: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:13 ID:MwWLOLhm0(9/71) AAS
――――――――
―――――
――
「っととぉ! めっちゃギリセーフ! 危なかったぁ……」
一歩で渡れるかびみょーな距離だったけど、まぁ真美の足にかかればこんなもんっしょ!
省9
10: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:13 ID:MwWLOLhm0(10/71) AAS
と、その時急に。
「ん?」
「うあああああああんっ!?」
ととととと、突然横から声がしたぁ!
びっくりしてすぐ横を見ると、男の人が怪しむような目で真美を見ていた。
省9
11: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:14 ID:MwWLOLhm0(11/71) AAS
「兄ちゃん、この部屋の人?」
「兄ちゃんて……まぁ、そうだな」
「ニート?」
「誰がニートだ誰が。大学生だよ」
「ほほう……エリートですな?」
省9
12: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:15 ID:MwWLOLhm0(12/71) AAS
暇だったから、兄ちゃんとだらだらとお喋りしてた。
兄ちゃんは大学四年生で、今は就活中だということとか。
就活があんまりうまくいっていないということとか。
というか、やりたいことが特にないということとか。
あんまり就活に身が入らず、だらだらと日々を過ごしてることとか。
省7
13: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:15 ID:MwWLOLhm0(13/71) AAS
「あ、そろそろ戻らなきゃ」
手摺りによじ登ろうと手をかける。
「いやいやいやいや待てお前落ちたらどうする! 帰りは普通に玄関から戻れ!」
「だいじょーぶだって! 真美、うんどーしんけーには自信あるから」
「『大学生の部屋から少女が落下! 部屋へ連れ込んだ挙句、悪魔のような凶行!』とかワイドショーに躍るだろう!」
省5
14: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:16 ID:MwWLOLhm0(14/71) AAS
「そんじゃまた明日来るねー」
「また来るんですか!?」
兄ちゃんが玄関から顔を覗かせて固まった。
んっふっふ〜、こんな面白い秘密基地、使わない手はないじゃん!
「もっちろん! なんか面白いもの用意しといてねー!」
省5
15: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:16 ID:MwWLOLhm0(15/71) AAS
次の日。
昨日みたいに、ベランダの手摺りを伝って兄ちゃんの部屋に行く。
「ふっ、この真美様も手慣れたものよ……」
今日は、ベランダに兄ちゃんはいない。
ゆっくりしたい、とか言ってたから、部屋にいるはず……。
省5
16: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:17 ID:MwWLOLhm0(16/71) AAS
音をたてないように、静かに窓を開けて侵入する。
「ククク……兄ちゃん、気付いていないようだな……」
そろぉりそろぉり。
静かに忍び寄って……。
「わぁっ!」
省6
17: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:17 ID:MwWLOLhm0(17/71) AAS
「お前、またベランダ渡ってきたのか! 危ないっつっただろうが!」
「だって正面から行っても驚かせらんないじゃん」
「驚かせることに義務感を持てとは誰も言ってないからな?!」
「もう一人の真美に言われたのさ」
「何がもう一人の真美だ……って」
省10
18: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:18 ID:MwWLOLhm0(18/71) AAS
「まぁいいや……っと、もう十五時か」
「真美は学校に行ってるっていうのに、兄ちゃんは今日も引きこもってるんだね」
「今日は講義がないんだよ。レポート書いてんだ」
兄ちゃんのパソコンを覗くと、なんかちっちゃい文字がいっぱい書いてある。
ええと、けーざいじょーほーのなんたらかんたら?
省7
19: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:18 ID:MwWLOLhm0(19/71) AAS
「しゃーない、補給タイムだ」
「ほきゅーたいむ?」
兄ちゃんは立ち上がって、キッチンの方へ行った。
冷蔵庫を開けて、何やらごそごそやってる。
「お前、黒と白、どっちが好き?」
省7
20: ◆on5CJtpVEE [saga] 2019/06/17(月)01:18 ID:MwWLOLhm0(20/71) AAS
ぴっ!とその間一秒足らず。
真美はそっこーで正座して兄ちゃんをお迎えした。
「ほれ、ショートケーキ」
「うわああぁ……白いやつだぁ……!」
真っ白な生クリームで綺麗に包まれて、その上にちょこんと赤いイチゴが……。
省9
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