西城樹里「ミドリ」 (18レス)
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1: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:02 ID:jB+QKM/40(1/17) AAS
「凛世、そのままのリズムよ!」

「……はい」

「智代子、腕が下がってるわ。最後まで気を抜かない!」

「ひーっ!」

「樹里、ちょっと走ってる。ちゃんと曲を聴きなさい!」
省21
2: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:03 ID:jB+QKM/40(2/17) AAS


ひょんなことから、アイドルにスカウトされ、芸能界に踏み出したアタシを待っていたのは、きらきらと輝くスポットライトなどではなく、山のような量のレッスンという、現実だった。

学校が終わる。事務所に行く。担当のプロデューサーに挨拶をする。レッスンスタジオへ行く。シャワールームで汗を流し、更衣室で着替え、電車で家に帰る。来る日も来る日もそれの繰り返し。

たくさんたくさん歌ったり、足が棒のようになるまで踊ったり、化粧の勉強だったり、一つ覚えたそばからどんどん次の課題が積まれていく。

そんな毎日だったが、不思議と嫌にはならなかった。
省6
3: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:04 ID:jB+QKM/40(3/17) AAS


今日も今日とて、学校が終わると友人に別れを告げ、真っ直ぐに自身の所属する芸能事務所へと向かう。

今日の予定はダンスレッスンであったはずだ。

ダンスレッスンは嫌いではない。

元々、体を動かすこと自体は好きな方であるし、できないことができるようになっていく、という実感を一番得やすい。
省1
4: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:05 ID:jB+QKM/40(4/17) AAS
事務所に着いて、自身のプロデューサーのデスクに行くと、何やら忙しそうに電話をしている最中であったので、喉元まで出かかった挨拶を引っ込めた。

大人しく待つしかなさそうだ、とソファに腰掛け、プロデューサーの声に耳を傾ける。

「ええ、ええ。そうですね。先日、スカウトした西城とも歳が近いですし。はい、その方向で。ありがとうございます。では」

受話器を耳から離し、プロデューサーはふぅと息を吐く。

「……アタシの名前、出てたけど、なんかあったのか?」
省13
5: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:06 ID:jB+QKM/40(5/17) AAS
「まぁ、そういうのはプロデューサーに任せるぜ。っつーわけで、そろそろ時間だし、レッスン行ってくる」

「あ、待って。一応続き……っていうか説明があるから聞いてってくれ」

「ん、まだなんかあんのか?」

「樹里と同じユニットで活動するメンバーについて、ざっくりと、な」

「それ、今必要なのか?」
省17
6: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:12 ID:jB+QKM/40(6/17) AAS
「そして、次。杜野凛世さん。この子もスカウト組で、歳は樹里の一個下だな」

続いて表示された写真を見やる。

上品に結われた濃紺の髪に、ばっちり着こなした和服。

そして白い肌。

先程の少女の後であることも相まって、いっそう物静かな印象を受けた。
省15
7: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:13 ID:jB+QKM/40(7/17) AAS


レッスンスタジオの玄関をくぐり、受付で更衣室ロッカーの鍵をもらう。

掌の上でカギを転がし、今日出会う仲間のことを考えた。

これから先、長い期間を共に過ごすことになる三人の仲間たち。

写真から受けたそれぞれの印象はなんというか、三人ともばらばらで、正直に言ってしまえば統一感のようなものはあまり感じられない。
省11
8: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:16 ID:jB+QKM/40(8/17) AAS
今日利用できるようになっているレッスンルームのあるフロアに移動すると、既にレッスンルームには誰かいるようで、灯りがついていた。

「あ―っ!」

ドアノブを掴み、覗き込むようにしてレッスンルームの中へ入った瞬間、絶叫が飛来した。

「樹里ちゃん! 西城樹里ちゃんですか?」

赤みのかかった跳ねた長い髪の、元気溌剌を体現したような少女が全速力でアタシの前までやってくる。
省12
9: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:17 ID:jB+QKM/40(9/17) AAS
「おう。その、なんだ。すげーな」

そうとしか表現しようもない、小宮果穂への印象を率直に言葉にする。

「うん、だよね。えっと、西城さんでいいのかな」

「あー、いや、樹里でいいよ。同じ歳だろ」

「じゃあ樹里ちゃんで!」
省16
10: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:18 ID:jB+QKM/40(10/17) AAS
いろいろとあったものの、ようやく自己紹介が終わったアタシたち四人は、レッスン前のアップを雑談交じりに始める。

「なぁ、そういえばアタシらのユニットのコンセプトってなんなんだろうな」

「あー、言われてみたら……そうかも。凛世ちゃん何か聞いてる?」

「いえ、何も」

「秘密、ってことか。……って果穂、何にやけてんだ?」
省22
11: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:20 ID:jB+QKM/40(11/17) AAS


ユニットメンバー四人での初顔合わせから二週間ほどして、再びアタシたち四人に召集がかけられた。

その理由は、最後の一人が決定したことによる、全員の顔合わせと今後の説明、とのことだ。

それならそれで、お茶の席でも設けてくれればいいものを、またしても集合場所はレッスンルームで、顔合わせの後はダンスレッスンが割り当てられていた。

「ったく。せっかく最後の一人が決まったんだから、今日くらいレッスン休みにして、ゆっくり話す場所作ってくれてもいいのにな」
省10
12: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:21 ID:jB+QKM/40(12/17) AAS
「待たせたわね。私は有栖川夏葉。今日からよろしくお願いするわ!」

突如やってきた来訪者は、そう宣言し、仁王立ちのままこちらを見据えている。

しかし、こちらにも一人、瞬発力では負けない奴が一人、いる。

「グリーン! グリーンが来ました!」

ぴょこぴょこと跳ね、アタシら三人を見やった直後、もう待ち切れないと言わんばかりの速度で果穂が来訪者へと突撃していった。
省12
13: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:22 ID:jB+QKM/40(13/17) AAS
「樹里に凛世に智代子ね?」

果穂との謎のやりとりがようやく終わったらしい来訪者は、真っ直ぐにアタシたちのもとへやってきて、言う。

「私は有栖川夏葉。今日から同じユニットで活動することなったから、よろしく頼むわね」

にこやかな笑みと共に手が差し出される。

ややあって、握手を求められているらしいことを理解したアタシは「おう」と返事をして、差し出された手を握り返した。
省9
14: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:23 ID:jB+QKM/40(14/17) AAS
「んー。その、なぁ、一ついいか?」

「ええ、どうぞ。それから、私のことは気軽に名前で呼んでくれて構わないわ」

「んじゃあ夏葉。そう言うお前だって今日来たばっかなんだから、トップも何もねーんじゃねぇの」

「ふふ、愚問ね」

「んだよ」
省15
15: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:24 ID:jB+QKM/40(15/17) AAS
間もなく、CDプレイヤーが音楽の再生を始め、軽やかな前奏と共に、全員が動き出した。

「果穂、アナタがセンターなのよ! もっと大きく体を使って!」

新入りにがっかりされるのは癪だから、全力でこれまでのレッスンで培った力を発揮するべくダンスに集中していたところ、夏葉が突然大きな声で指示を出した。

少しの後に果穂が「はいっ!」と勢いよく返事をする。

「智代子、ちゃんと目の前の鏡を見て、立ち位置を確認なさい!」
省7
16: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:25 ID:jB+QKM/40(16/17) AAS
やがて音楽が止まり、夏葉がぱちんと手を叩く。

「いいわね! みんなすごいわ! 想像以上よ!」

「……いや、すごいも何も、すごいのは夏葉ちゃんだよ……」

「はい。トレーナー様のようで、ございました」
「夏葉さん、先生もできるんですか!」
省5
17: ◆TOYOUsnVr. [saga] 2019/04/14(日)20:26 ID:jB+QKM/40(17/17) AAS


「はい。十分経ったわ。もう一回通しでやるわよ!」

両の掌を打ち鳴らし、夏葉が無言で「立て」と促す。

いちばんに立ち上がったのが果穂で、その次が凛世。

そうして、文句を言いながらも何だかんだで立ち上がるのが智代子。
省7
18: 2019/04/23(火)16:24 ID:iiyQ+TdOO携(1) AAS

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