【ガルパン】みほ「私は、あなたたちに救われたから」 (733レス)
【ガルパン】みほ「私は、あなたたちに救われたから」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/
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291: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 00:23:40.17 ID:r9PzCrqV0 ・ ・ ・ 昼下がりの隊長室。 黒森峰の戦車道チームをまとめ上げる者のみが使える部屋で、まほは一人机についていた。 片手でペンを弄びながら気だるそうに書類を眺めていると、に荒々しく扉を開く音がこだました。 まほ「ノックぐらいしたらどうだ?」 手元の書類から目を離さず、まほは来客に向かって声を掛ける。 「堅苦しい事言うなよ。私とお前の仲だろ?」 「ごめんなさい突然……でも、私たち隊長に言いたい事があってきたの」 入ってきたのは二人。一人は短
髪の活発そうな少女。もう一人はお淑やかな長髪の少女だった。 普段の彼女たちを知っている者ならばその様子が決して穏やかなものでは無いと察することが出来ただろう。 片方は目じりを険しく吊り上げ、もう片方は憔悴したように、心配している様に陰を写していた。 まほ「決勝の事なら心配ない。万全を期している。それはお前たちもよくわかっているだろう?」 「とぼけんなよ。私たちが言いたいのはそんな事じゃねぇ。お前……最近無茶しすぎだ」 短髪の少女はそういって爪先で床を叩く。 その音にまほは苛立つように眉根を寄せるものの、や
はり書類からは目を離さず答える。 まほ「……練習量の事なら決勝前なのだから多少負荷をかけるのは仕方が無い。お前たちも納得してるだろう」 「私たちの事じゃねぇ。お前の事だ。それと……赤星も」 まほ「……どうしてだ」 「お前の乗員が訴えてきたよ『隊長がこのままじゃ倒れちゃう』って。あんま乗員に心配かけさせるものじゃないぞ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/291
292: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 00:36:02.50 ID:r9PzCrqV0 小さく舌打ちが聞こえた。 まほ「……余計な事を」 忌々しさ、苦々しさを隠さず顔をしかめるまほにたち短髪の少女が前に出ようとするも、その肩を長髪の少女が掴んで止める。 そして入れ替わるように前に出ると、優しく、気遣う様な声をかける。 「あなたが一生懸命なのはよくわかるけど、だからって今のやり方はおかしいわよ」 まほ「……私が乗るフラッグ車のメンバーなんだ。私の指示についてこれるよう他の隊員以上に練習するのは仕方がない」 「だからっ!!そう
じゃねぇって言ってんだろっ!?」 我慢できなくなった短髪の少女が机を叩いて体を乗り出す。 額同士がぶつかるほどの距離でも、まほはまったく表情を変えない。 「お前、昨日はいつ寝た?食事はちゃんとしてるのか?」 まほ「……お前には関係ない」 「目元、クマが酷いぞ」 その指摘の通り、まほの目元にはクマが濃く表れている。 目は充血し、髪はツヤが無く、短く切りそろえているからこそ辛うじて人前に出られる程度には整えられている。 そんなまほの様子に長髪の少女が懇願するように両手を胸の前で握りしめる。 「お願い隊長、ち
ゃんと休んで……みんな、心配して……」 まほ「問題ない。この程度なら決勝でも問題なく戦える」 「お前っ……」 「……なら、せめて赤星さんを止めて。あの子はある意味……あなた以上に危ういわ」 今にも殴り掛かりそうな短髪の少女を手で制しながら、長髪の少女がそう訴える。 今のまほには説得が届きそうにはない。ならせめて、後輩の事だけでもなんとかしておきたい。 そんな彼女の考えを知ってか知らずか、まほはまるで心配した様子もなく、 まほ「……普段の練習はしっかりやってる。副隊長としてもまぁ……及第点だ。私から言う事は
無い」 「お前の目は節穴か?あいつ、今にもぶっ倒れそうだぞ」 まほ「……まぁ、それならそれで仕方ないさ」 「あ?」 まほが軽く、まるで明日の天気でも伝えるかのように言った言葉に、低く唸るような短髪の少女の声がぶつかる。 まほ「言って聞くようならそもそもあそこまでにはならないだろう。それに……」 まほ「別に、副隊長なんていてもいなくても変わらないさ。私がいれば充分なんだからな」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/292
293: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 00:43:04.61 ID:r9PzCrqV0 殴り掛かろうとしたその拳はまほの目の前で掴み止められた。 短髪の少女は震える拳を更に握りしめて、それを遮った長髪の少女を睨みつける。 けれどもその視線に返事はなく、長髪の少女はまほをじっと見つめている。 「……隊長、いえ西住さん。今のは聞かなかったことにするわ」 まほ「……」 その言葉には返事をせず、まほは席を立つ。 掴む手を振り払って短髪の少女がその背中を声で引き留める。 「おい、どこ行く」 まほ「悪いがおしゃべりはここまでだ。実家に
行く用があってな」 「んなもん後にしろ。まだこっちの話が終わってないんだ」 まほ「私は最初からお前たちと話すつもりは無いよ」 「っ……」 ドアノブに手をかけたまま、まほは振り返らず答える。 まほ「安心しろ、ちゃんと優勝させてやるさ」 「……お前は、それでいいと思ってるのか」 「西住さんあなただってわかってるでしょ?このままじゃ……」 まほ「お前たちに、私の何がわかる」 声色が変わる。 深く、重く、怒りと悲しみを混ぜ合わせた色を二人は感じ取った。 まほが振り返る。 二人に近づき、その眼を見つめる。 視線だ
けで眼球が押しつぶされるかと思うほどの迫力に、二人はたじろいでしまう。 その姿にまほは興味を失ったのか、あるいは怒りを通り越したのか。見下すように冷たい視線を向けて再びドアノブに手をかけ、扉を開く。 まほ「私の気持ちがわかるやつなんてもう、この世にはいないんだ」 その言葉を最後に扉は閉ざさた。 扉の外からコツコツと床を鳴らす音が聞こえ、段々と小さくなっていき―――聞こえなくなった。 主のいなくなった隊長室に、二人は無言でたたずむ。 そして、 「――――――クソッ!!」 閉まった扉を前に一歩も動けず、そん
な自分への苛立ちを込めて短髪の少女は机を殴った。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/293
294: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 01:08:52.94 ID:r9PzCrqV0 ・ ・ ・ まほ「お母様に報告するために家に帰ろうとしたんだが、たまたまこの学園艦が近くにいると知ってな。せっかくだから寄らせてもらったんだ」 大洗女子学園の車庫。 夕陽が窓から入り込む中で、まほは世間話でもするかのようにみほたちにそう語る。 けれどもその雰囲気には一切の喜びも、あるいは気楽さも感じず、 気安い態度から発せられる刺すような緊張感がみほたちを竦ませる。 特に沙織はその空気に耐えきれず、逃げるように後ずさりをした。 その様子にま
ほは口だけ笑顔を作ると、指でみほを指す。 まほ「おいおい、そんな怖い顔をしないでくれ。別にこいつをどうこうする気は無いさ」 「沙織さん……大丈夫ですから」 沙織「でもっ……」 まほ「……ああ、やっぱりあのふざけた真似事はやめたのか」 「お姉ちゃん……」 みほの態度から自分の推測が正しいと確信すると、まほは蔑むようにみほを見つめる。 まほ「仲間たちの前で嘘を暴かれて、それでも嘘を貫けるような面の皮は持っていなかったようだな?」 みほは何も言い返せず、俯く。 そんなみほを庇おうと、麻子がまほの視線を遮って前
に立つ。 麻子「嫌がらせに来たのなら帰ってくれ。私たちは忙しいんだ」 まほ「あなた……確かこいつの友達だったわね。おばあ様の容態はどう?」 麻子「……おかげさまで元気だ」 警戒を解かず睨みつけてくる麻子に対してまほは優しく、嬉しそうにその表情を緩ませる。 まほ「そう、それは良かった。本当に……家族は大事だものね」 麻子「……ああ」 先ほどとは打って変わって気遣う様な素振りをみせるまほを怪訝に思いつつも、麻子はみほをまほの視界に入らないようその小さな体で隠し続ける。 すると、まほの視線は麻子―――その後ろ
のみほから離れ、今度は隣に並ぶ沙織たちに向けられる。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/294
295: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 01:30:54.43 ID:r9PzCrqV0 まほ「そういえば……そこの3人も前に見たな。お前の戦車の乗員か?」 みほ「……友達、だよ」 麻子をそっと手でどかし、みほが震える声を出す。 まほはまた、先ほどと同じく蔑むようにみほを見つめる。 まほ「へぇ?4人も友達が出来たのか。凄いじゃないか。こっちにいた時よりも随分社交的になったんだな?」 その軽口にみほがなんと答えようかと逡巡するも、答える前に新たな質問がかぶせられてくる。 まほ「それで?次は誰になるんだ?」 みほ「え……?」
自然と喉から漏れた声。 まほが何を言っているのかみほには理解できなかった。 まほ「エリカになれなくなったのなら、今度はそこの中から選ぶんだろう?ルーレットか?くじ引きか?それとも四人一役か?」 みほ「お姉、ちゃん……」 まほ「もっとも……そんな事したってお前はまた逃げ出すのだろうけどな」 まほがみほに近づく。 みほが後ずさると、その後退は先ほどまで整備していたW号によって止められた。 厚く冷たい鉄の感触と、それ以上に冷たい汗が伝うのを背中に感じた。 まほ「まさかお前のようなクズが決勝にまで出られるとは思
わなかったよ。実力もだが何よりも心が弱いお前がな」 みほはもちろん、麻子も沙織も優花里も華も、まほの気迫に動けなくなる。 まほ「途中で嫌になって逃げださなかったのを誉めてやろうか?あははっ、それは気が早いか。明日にでも逃げてるかもしれないしな」 嘲りを、侮蔑を、怒りを隠さずまほは笑う。 その姿は、その嘲笑にはみほの知っている姉の姿はどこにもない。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/295
296: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 02:18:53.69 ID:r9PzCrqV0 まほ「貧弱な戦車と、素人を集めてお山の大将は楽しいか?やりたいようにやって、好き勝手振舞うのはさぞかし楽しいだろうなぁ?」 そう言って隣で震えて縮こまる沙織たちに目を向ける。 まほ「お前たちも災難だな?こんなのにそそのかされて、たまたま運が良かったばかりに大舞台で笑いものにされるんだから」 みほ「お姉ちゃんっ!!」 友達を馬鹿にされ、みほがたまらず叫ぶ。 すると、まほの表情から笑顔が消え不機嫌そうにため息を吐く。 まほ「……今さら正気
に戻ったつもりか?なら、もう遅い」 みほ「お姉ちゃんっ……私はっ!!」 まほ「あの時こう言ってたな?『大洗に来て友達がたくさんできた』って。なぁ、みほ。エリカから奪った名前と、エリカから奪った姿と、お前の空っぽの中身で作った友達はどうだった?」 みほ「お姉ちゃんっ……私の友達は、みんなはとても素敵な人たちなのっ!!だからッ」 まほ「黙れッ!!」 みほ「っ!?」 突然、弾けるようにまほの怒りが轟く。 怒りのあまり目元に涙を浮かべ、まほはみほを睨みつける。 まほ「全部全部偽物だっ!!お前もっ!!その友達もっ!
!」 空気を薙ぎ払うように腕を振って、弾劾するようにみほたちを指さしていく。 まほ「エリカが亡くなったのは不幸な事故だ……それだけなら皆悲しみを受け入れられた。だがみほっ!!お前は、エリカの全てを奪ったんだっ!! エリカの家族からッ!!私からッ!!みんなからッ!!」 慟哭が、激昂が、車庫に響き渡る。 あるいは呪詛のようにみほへと向けられたその言葉は、他でもないみほが実感している事だった。 まほ「お前は……お前がッ!!エリカをもう一度殺したんだッ!!」 実感していた、はずだった。 http://ex14.
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297: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 02:31:28.88 ID:r9PzCrqV0 呼吸が乱れ、肩を揺らすまほ。 その眼前でみほは虫の息のようにか細い呼吸しかできなくなっていた。 みほ「お姉……ちゃん……」 それでも何とか声を出す。 その言葉が自らを指し示している事が不快だと言わんばかりにまほは顔をしかめる。 まほ「なんだその顔は?『そんな事思ってもいなかった』とでも言うつもりか?だとしたら、お前は本当に救えないな」 みほ「……ごめ、んなさい」 絞り出すようにそう告げると、その胸倉をまほが掴み上げる。 勢いのままW号
に押し付けられ、ただでさえか細かった呼吸が更に小さく、絶え絶えになる。 けれども、まほの激昂は止まらない。 まほ「今さらなんだッ!?それで許してもらうつもりかッ!?それでッ!!エリカに顔向けできると思ってるのかッ!?」 まほを掴むみほの手からどんどん力が抜けていく。 だけど、まほの声はどんどんクリアに、まるで脳内に直接響いてるかのように伝わってくる。 その怒りが、哀しみが、どうしようもないぐらい伝わってくる。 だから、 まほ「エリカの……私の大切なものを奪ったくせにッ!!お前がッ!!全部壊したくせにッ!!
なのにお前はッ!!」 もしもまほがこの怒りのまま自分を裁いてくれるのならそれで姉が満足してくれるなら。 みほが諦めではなく、そう望んだ時、 沙織「やめてッ!!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/297
298: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 02:55:28.14 ID:r9PzCrqV0 まほの手がみほから引きはがされ、離れていく。 磔のようにされていたみほはそのまま膝から崩れ落ち、意志とは無関係に荒い呼吸を繰り返し酸素を取り込む。 優花里「大丈夫ですか!?」 駆け寄ってきた優花里の気遣いに答えようとするものの、未だ呼吸を繰り返すばかりで満足に声を出す事も出来ずみほは手をあげる事で無事を表現する。 そのみほの前では沙織と華がまほにしがみつき、麻子が先ほどのようにみほの前に立ち両手を広げてまほに立っていた。 まほは沙織たち
を振り払おうともがくものの、無理やり引きはがそうとはしない。 まほ「離せッ!!部外者は引っ込んでろ!!」 沙織「部外者じゃないっ!!」 その言葉に、まほの動きが止まる。 今度はゆっくりと沙織たちの手を離していき、みほではなく、沙織を睨みつける。 突き刺さり、体の内側で暴れているのかと思えるほどの視線。 それでも沙織は逃げずに視線をぶつけ、食らいつく。 沙織「私は……私たちは、みほの友達ですッ!!」 その言葉を鼻で笑う。 まほ「……こいつの名前も素性もついこの間知ったばかりなのに友達か?」 沙織「違うっ
!!私たちは、みほと出会ってた!!初めて会った時からずっと、私たちが過ごしてきたのは西住みほだよ!!」 恐怖に負けないよう必死で拳を握る。 気圧されないように瞬きすらせず睨みつける。 沙織「名前を知らなくたって、素性を知らなくたって、私たちはっ、今日まで一緒に戦ってきたみほの友達だッ!!」 沙織は喧嘩なんてしたことが無い。あるとすれば精々そこで座り込んでいるみほの頬を叩いたぐらいだ。 だけどもし、まだまほがみほに危害を加えようとするのなら、立ち向かうつもりだった。 そしてそれは他の3人も同じだ。 華も優
花里も麻子も。その瞳には先ほどまでの怯えは一切なく、まほへ揺るがぬ視線を突きつける。 みほを守るように周りを囲む沙織たちを見て、まほが目を閉じる。 空気から重さが消え、刺すような緊張感が解けていく。 そして、まほがゆっくりと目を開きみほを見つめる。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/298
299: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 02:56:39.87 ID:r9PzCrqV0 まほ「……ここが、お前の居場所なのか。あの子たちはお前にとって大切なものなのか」 敵意のこもってない声にようやく整った呼吸でみほはたどたどしく返す。 みほ「……私は、何もかも投げ出して、逃げ出してここに来た。嘘をついて、誰かを傷つけて、その先でまた誰かを騙して傷つけた」 許さる事ではない、許されてはいけない事だ。 自分がした事を考えればそれは当然の事だ。 それでも、 みほ「それでも、私が嘘をついてた時から、沙織さんたちは優しくて、強く
て……私は、私はずっと憧れてた」 嘘が白日の下にさらされても、彼女たちは自分を案じてくれた。 何一つ真実なんて知らなず、嘘で塗り固められた自分を本気で心配して、それでも友だと言ってくれた。 だから、 みほ「だから、だから……こんな私を見捨てないでくれるのなら、友達だと言ってくれるのなら……私も、それに応えたい」 償いから逃げ罪だけを重ねてきた。 けれども、もう逃げたくない。 みほ「空っぽの私が、それでも皆の為に何かできるのなら……私の全てを尽くしたい」 未だに、大洗を居場所だとは思えていない。 思うつ
もりもない。 こんな自分に彼女たちがいる『世界』は相応しくないから。 今ここにいる事さえおこがましいから。 だから、みほはせめてもの恩返しをしたいと思った。 みほ「お姉ちゃん……私のした事、許せなくて当然だと思う。あなたは何も悪くないのに、私は自分勝手にあなた達を傷つけた」 姉の気持ちは痛いほどわかる。 己のしたことを考えれば姉の態度はむしろ優しいとまで思えた。 みほ「だけど……決して私は黒森峰に、お姉ちゃんたちに敵対するつもりはないの。ただみんなの為に、出来る事がしたいの」 http://ex14.vip2ch.com/t
est/read.cgi/news4ssnip/1553347133/299
300: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 03:00:39.63 ID:r9PzCrqV0 床に手をつき、額を付ける。 差し出せるものなど何もなく、プライドも何もない自分の土下座なんて何の意味も無いとみほはわかっている。 それでも今はこうすることしか出来ないから。 みほは額をこすりつける。 みほ「手加減してとか、許してくれとかじゃなくてただ……決勝が終わるまで待ってください。それさえ終われば……私はどんな報いでも受けます」 まほがじっと自分を見下ろしているのを感じる。 やがて、そっとまほが跪き、みほを起こした。 姉の行動に動揺
するみほを立ち上がらせ、その肩を押し沙織たちの下へとやると、ゆっくりと目を閉じる。 何かを考えるかのように天井を見上げ、ゆっくりと目を開く。 まほ「……みほ、訂正するよ。お前の友達は偽物なんかじゃない。本当にお前の事を大切に思ってくれている」 ちらりと瞳だけで沙織たちを見ると、 その口元に微笑みが浮かぶ。 瞳が嬉しそうに潤む。 まほ「そしてお前もまた、ここにきて何かが変わろうとしてるのかもな。自分勝手に生きてきたお前が、皆の為に何かをしたいだなんて……良かった」 感慨深そうにそう頷くと、まほは右手で目を
覆う。 手の隙間から零れた涙がコンクリートの床を濡らした。 そして、 みほ「お姉ちゃん……」 まほ「ああ、良かった。本当に……本当に……」 その涙を乱暴に拭う。 隠れていた表情が露わになる。 真っ赤に充血した瞳が、 裂けそうなほど吊り上がった唇が、 まほ「だって……だってこれで、お前に罰を与えられるんだからなッ!!」 どす黒い歓喜を称えていた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/300
301: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 03:03:50.53 ID:r9PzCrqV0 憎しみを喜びで包み込んだらこんな表情になるのだと、 こんなにもおぞましいものになるのだと、 みほたちは初めて知った。 まほ「空っぽの偽物を壊したところでなんの報いにもならない。お前が、本当に大切なものを見つけたというのなら。居場所を見つけたというのなら、全部叩き壊してやる」 みほ「お姉、ちゃん……」 まほ「知ってるよみほ。明日の決勝に負けたら、大洗は廃校になるのよね?」 うっとりと、思いを馳せるようにまほの笑顔に艶が入る。 みほたちを見
ているのにまるでみほたちを見ていない。 恐らく、まほが見ているのは未来――――決勝の日。その結末。 まほ「くふふっ……その時お前はどんな顔をするんだろうな?今度はどんな言い訳で自分から逃げ出すんだろうな?」 我慢しきれないといった風に口の端から笑い声が漏れる。 その口元をおさえ、粘土細工でもするかのように唇を結ぶと、今度はしっかりみほを見つめる。 その瞳に宿る感情に、みほはようやく理解する。 ―――自分の罪が、ここまで姉を変えてしまった、と。 まほ「覚悟しろ。私が、お前から命以外の全部を奪ってやる」 そ
う言い切ると、再び我慢できなくなりけらけらと笑いだす。 まほ「ふふっ、あぁ……楽しみでしょうがないよ。……みほ。もう一度、全てを失え。それが――――お前への罰だ」 最後通牒。 ―――お前を、許さない。 元より姉はそのつもりだったのだとみほは理解した。 夕陽の中呪いのような笑い声をあげながら去って行く背中にみほは、みほたちはただ立ち尽くし、目を逸らす事も出来なくなっていた。、 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/301
302: ◆eltIyP8eDQ [saga] 2019/06/09(日) 03:05:40.95 ID:r9PzCrqV0 遅くなりましたがここまでー 次回から決勝に入る予定ですが…来週は別のガルパンSSを投稿したいのでこっちはお休みします。 ちょっとだけ待っててください。 一応内容だけ言うとみほとエリカが友達じゃない話です。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553347133/302
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