屍男「おい、そこのロクでなし」吸血娘「なんだ髪なし」 (424レス)
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344: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)20:53 ID:v9qraTHso(7/21) AAS
屍男「皮は剥がれ、肉は削られ、苦痛に満ちた表情で死んでいた。実際はそんな顔ではなかったと思うが、俺にはそう見えた」

屍男「……俺は許せなかったんだ。彼女達が何をしたのか、なぜこんな理不尽な目に遭わなくてはいけなかったのか。犯人よりも、そんな不平等が許せなかった」

屍男「現場には壁に、血で描かれた巨大な眼が描かれていた。後から分かったことだが、こいつは“紅眼”と呼ばれている人為らざる者の仕業だった。無論、警察は捜査をしたが、相手は人外だ。手掛かりは何も見つからなかった」

吸血娘「“紅眼”……おい、お前は聞いたことあるか?」

魔女「……まあ、名前くらいはね」
省2
345: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)20:54 ID:v9qraTHso(8/21) AAS
屍男「俺は復讐を決意した。必ず、母やあの一家を殺した犯人を地獄に送ってやるとな」

屍男「そこからの流れは簡単だった。裏の世界に入り、“紅眼”の情報をひたすらかき集めた。その傍らで、狩人としての経験を積み、殺しのテクニックを磨いた」

屍男「だが、そう簡単には見つからなかった。“紅眼”は当時の狩人の世界でも、相当な懸賞金が懸けられていた大物だった。奴は姿を隠すのが上手かったんだ。いくら手掛かりを探しても、尻尾一つ見せなかった」

屍男「……だが、ここで俺はある人物と出会った。これが俺の運命を決定的に変えた」

吸血娘「だ、誰だよそれ」
省1
346: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)20:55 ID:v9qraTHso(9/21) AAS
吸血娘「先代って、お前が最初じゃないのか?」

魔女「……つまりゾンビくんは二代目ってことか」

屍男「あぁ、俺は彼のやり方を模倣しているに過ぎない。それはお前も気付いていたんじゃないか?」

魔女「……」

魔女「まあ、ね。Shadowが現れ始めたのは記録上だと半世紀ほど前。ゾンビくんが初代だとしたら、よっぽどの若作りをしてないと計算が合わないってことになるもの」
省1
347: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)20:57 ID:v9qraTHso(10/21) AAS
屍男「その通りだ。彼の存在は俺も耳にしていた。とてつもなく強い狩人がいるとな」

屍男「実際に会うまでは都市伝説の類いの一つだと思っていた。誰もその存在を目撃したことがないというのはあまりに不自然だ。誰かが抑止力として流した噂だとな」

屍男「……彼と出会ったのは本当に偶然だった」

屍男「奇跡的な確率だったと思う。偶然、俺が……見てしまったんだ。彼が、実際に怪物を狩る姿を」

屍男「そいつは前々から目を付けていた怪物だった。人気のいない場所に入り込んだところを狙って、見張っていた時だった。そこに……“影”が現れた」
省2
348: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)20:58 ID:v9qraTHso(11/21) AAS
屍男「直感的に理解した。この男が“Shadow”なのだと。そして反射的に体が動いた。俺は……立ち去るその影を呼び止めた」

屍男「今にして思えば、愚かな行為だ。彼が目撃者を全て消すというスタイルだったなら、俺はその瞬間に死んでいただろうに」

屍男「俺は彼に、弟子にしてほしいと頭を下げ、頼み込んだ。正直、承諾するとは思っていなかった。相手にされないだろうと、ならばどうやって説得しようかと、頭の中では次の行動を考えていた」

屍男「……しかし、返ってきた答えは意外なものだった」

屍男「ただ一言「着いて来い」とその男は言った」
349: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)20:59 ID:v9qraTHso(12/21) AAS
屍男「初めは耳を疑った。まさか、こんな簡単に上手く行くなんて、思ってもみなかったのだからな。罠かと疑いもしたが……俺に選択肢はなかった。立ち去る影の背中を追うことにした」

屍男「それからはその男と共に暮らし、狩人としての知識と技術を学んだ」

屍男「まあもっとも……教えらしい教えは一切なかったがな。俺と彼の間にまともなコミュニケーションはなかった。言葉を交わしたのもこの出来事を含め数えるほどしかない」

屍男「見て覚えろ、そう言われた。だから俺もそれに従い、観察してその技を盗むことにした」

屍男「……それから数年が経った頃だ。その生活に慣れていたある日」
省2
350: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:02 ID:v9qraTHso(13/21) AAS
屍男「そこにあったのは……ベッドで、眠るように死んでいる影の姿だった」

屍男「最初は何者かの攻撃を疑った。だが、それらしき形跡はなかった」

屍男「念のために、死体を検視した結果……老衰だった。彼は寿命で死んだんだ」

吸血娘「……は?」

魔女「寿命って、そんなお歳だったの?」
省3
351: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:04 ID:v9qraTHso(14/21) AAS
屍男「……だが“Shadow”として殺しを続けているうちに、なぜ彼があんな早死にしたのか、その真実に触れることになる」

屍男「ある日のことだ。いつもと同じ朝、目が覚め、シャワーを浴びていると……手に違和感があった」

屍男「何かと思い、見てみると……」

屍男「髪がごっそり抜けていた」

屍男「それから一週間もしないうちに、全ての髪が抜け落ちた。明らかに異常な事態だ。病院で検査をしたが、肉体には何も異常は見つからなかった」
省1
352: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:09 ID:v9qraTHso(15/21) AAS
屍男「いくら感情を殺しても、狩りというものは繊細な注意がいる。一歩間違えば死は避けられないのだからな。常に命懸けの綱渡りだ」

屍男「相手のスペックは常に上だ。精神を擦り減らし、たった一つの勝利へのルートを導き出し、そして戦闘では一秒を百秒に感じるほど思考を巡らせる」

屍男「自覚はなくとも、人間という生物の領域を超えた所業なのだろう。“Shadow”の戦闘スタイルは超短期決戦だ。一瞬の刹那に勝負を決める」

屍男「その一瞬に、命の砂時計は普段とは信じられない速度で堕ちて行く。それを何回も続けていたら寿命は確実に縮む」

吸血娘(最初からハゲじゃなかったのかこいつ)
省1
353: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:10 ID:v9qraTHso(16/21) AAS
屍男「それからしばらくすると、髪は生えてこなくなった。味覚などの器官にも影響が出た」

屍男「自分の肉体が崩れて行くのを感じたが、今更そんなことは止まる理由にはならなかった。もはや自分の命など……どうでもいい段階まで来ていた」

屍男「……そして、その時はやってきた。俺は……“紅眼”を殺すことに成功した」

屍男「……それだけだった」

吸血娘「おい、何だよ。どういう意味だそれ」
354: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:14 ID:v9qraTHso(17/21) AAS
屍男「……俺にとってはもはや“紅眼”は他の標的と変わらなかった」

屍男「その頃にはもう相手の目を見るだけで、どのぐらいの秒数で仕留められるかが分かるようになっていた」

屍男「何年もかけて情報を集め、奴の潜伏先を暴いた時は興奮した。これでやっと復讐を果たせるのだと

屍男「そして、初めて“紅眼”を視界に捉えた時に視えた所要時間は八秒、高くも低くもない。平均的なものだった」

屍男「……俺は、もっと苦しめたかった。無残に殺された母や彼女達の無念を晴らすように、出来るだけ長く、あいつに死の恐怖を味合わせたかった」
省2
355: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:16 ID:v9qraTHso(18/21) AAS
屍男「待っていたのは達成感と……虚無感だった」

屍男「今までの俺は復讐の為に生きていた。それがゴールであると信じていたし、その先には何もないと思っていた」

屍男「これから何をすればいいのか、分からなかった。だが、今更表の世界に引き返すことは出来ないというのは理解していた」

屍男「そして、俺が導き出した答えは……“Shadow”を続けることだった」

屍男「自分の復讐が終わった後は他者の復讐を代行をするしかない。それしか道は残されていなかった。理不尽な死を一つでも防ぎたかった」
省2
356: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:20 ID:v9qraTHso(19/21) AAS
吸血娘「……」

屍男「……もういいだろう。話すことは全て話した。これで終わりだ」

魔女「ちょっと待って、それから先の話はどうなったの?」

魔女「ゾンビくん、アナタは一体に誰に殺されたの?」

屍男「……さあな。それは覚えていない」
省4
357: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:23 ID:v9qraTHso(20/21) AAS
魔女「そう…...」

屍男「どうだ?これで満足したか?これがお前の知りたかった男の過去だ」

屍男「どこにでもあるような話だ。復讐に駆られた男が、その正義を暴走させ、自滅しただけの話」

屍男「……分かってはいたんだがな。例え悪人でも、そいつには親しい友や家族がいてもおかしくない」

屍男「その者から見れば、俺は悪だ。かつて自分が見た感情を、その者達もまた持つのだろうと」
省4
358: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/06(土)21:23 ID:v9qraTHso(21/21) AAS
今日はここまで
次でラストです
359: 2019/04/06(土)21:44 ID:+YezvIECO携(1) AAS

さて最後はどうなるか
360: 2019/04/06(土)22:21 ID:VHrQhoKx0(1) AAS
ただ意味もなくハゲ散らかしてたワケではなかったのか…
361: 2019/04/07(日)04:55 ID:JVGzpsyPO携(1) AAS

362: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/14(日)04:45 ID:PylgOG9Ko(1/33) AAS
吸血娘「お前を殺さない。これが、私の答えだ」

屍男「…………」

屍男「……は?」
363: ◆gqUZq6saY8cj [saga] 2019/04/14(日)04:46 ID:PylgOG9Ko(2/33) AAS
屍男「どういうことだ。今更、何を世迷言を……頭がおかしくなったのか?」

屍男「俺はお前の父を殺したんだぞ。父に対するお前の想いはその程度のものだったのか」

吸血娘「……」

吸血娘「正直なところ、私はパパとはあまり仲が良くなかった。でも、悪いことばっかじゃなかった。いい思い出もあるっちゃあるし、今思い返してみると、それは愛情の裏返しだったんじゃないかなって思う」

吸血娘「あの人も自分の感情はあまり言葉に出さない方だったし、多分、自分の子供との関係性ってのが分からなかったんじゃないかなって……そう感じるようになったんだ」
省4
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