【艦これSS】不器用を、あなたに。 (624レス)
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504: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:19 ID:FvzkVLeNo(1/32) AAS
22時は個人的にまだ夕方です(毎度ほんとに申し訳ないです)

それでは投下します
505: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:20 ID:FvzkVLeNo(2/32) AAS
−−−

那珂「...だから山城さんは...むしろ時雨ちゃんの事は大事に思ってるんじゃないかな」

雷「そんなことが...全く気づかなかったわ...」

Верный「私も...これは驚いたな」

暁「やっぱり、山城さんもほんとは優しい人なのよ!」
省3
506: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:21 ID:FvzkVLeNo(3/32) AAS
普段、このメンバーだけで揃うというのは難しい。
このメンバーに限定したい理由はもちろん、目的が目的なだけに事情を知る組に悟られないようにするためだ。

ストレートに聞いてもある程度は話してくれるが、肝心の点については決して教えてくれない。
だからまずは何とか直接聞く事無しに情報を集め推測し、それに確信を得てから彼女らに −少し怖いが山城本人でも良いのだ− 確かめる方針なのである。

せっかく掴みかけている真実を諦めたくはない。

しかし残念な事に彼女らはそれぞれ、まさにその事情を知る組の姉妹艦(青葉は厳密には違うが似たようなものである)なわけである。

・・・逆に言えばそんな背景が、彼女らに山城が隠す何か重要そうな真実の存在に気づかせたわけであるが。
507: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:23 ID:FvzkVLeNo(4/32) AAS
ゆえに尚更これ以上釘を刺されないように慎重に嗅ぎ回らなくてはならない。
こうした理由で下手には集まれないのである。

そんな中やって来たチャンスが、今ちょうど執務室で行われている大規模作戦に向けての会議であった。

この会議には普段の艦隊運営を手伝う者、つまり主には各艦種それぞれの最古参勢が呼ばれる。
ここにごっそりと事情を知る組が招集されているのだ。

また、那珂曰くこちらには引き込むのが難しそうという神通も会議に呼ばれている。
そして逆に神通より着任が早いВерныйが呼ばれなかったのはかなりの幸運かもしれない。
508: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:24 ID:FvzkVLeNo(5/32) AAS
とはいえそもそも基本的に、より旗艦を任されやすい艦種が会議に呼ばれやすい事は当然ではある。
また軽巡の方がむしろ普段の駆逐艦の動きを客観的に見ているのだから的確な提言が期待できるし、駆逐艦代表として初期艦の電も招集しているから十分なのだろう。

いずれにせよ放送があって暫くしてから青葉はこのチャンスを無駄にするまいと、暇を持て余していた那珂を軽巡寮で拾って、またもや電のみが居ない暁型を訪ねたのであった。

こうして暁型の部屋で開かれることになった待望の“会議”で、まずは各々がこの1週間ほどで得た情報を共有しあったわけである。
509: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:25 ID:FvzkVLeNo(6/32) AAS
Верный「みんなの話から考えると...やっぱり嫌われる事に意味があるみたいだ」

雷「でもそんな事ってあるのかしら...正直周りに迷惑でしかないわよ?」

暁「結局そこよね。山城さんは何がしたいんだろう...」

那珂「那珂ちゃんも山城さんとだいぶ仲良くなれたとは思うのになぁ...そこはどうしても教えてくれないみたい」

探偵達は行き詰まってしまった。
お互いの情報交換によって、今の彼女達の中における山城の人物像は変わりつつあった。
省3
510: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:26 ID:FvzkVLeNo(7/32) AAS
青葉「この中で1番山城さんに絡んでる那珂さんすら、ですもんねー...。」

探偵団の創設者とも言える青葉もそれは同様であった。

青葉「...そういえば那珂さんはどうやってそこまで山城さんに近づけたんですか?」

青葉「あんな態度取り続けてるわけですし、てっきり歩み寄ってくる人に対しても容赦なく距離を置くんだと思ってましたが...」

那珂「それがね〜、こっちからグイグイ行けば何だかんだ付き合ってくれるんだよ」
省5
511: ◆eZLHgmSox6/X 2019/04/27(土)22:27 ID:FvzkVLeNo(8/32) AAS
那珂「ちなみにね、今のアイドルパワー溢れる那珂ちゃんを作ってくれたのも実は山城さんなんだ!」

那珂「それに最初は...むしろ山城さんの方から歩み寄ってくれたようなもんだし」

青葉「...どういう事ですか?」

那珂「あれはね...」

那珂は行き詰まった調査の息抜きに、山城への初めての接触について皆に語るのであった。
512: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:30 ID:FvzkVLeNo(9/32) AAS
−−


川内から山城の事情の存在を聞かされてから数日後、那珂はまた朝礼台をステージにライブをしていた。

・・・観客は居なかったが。

艦娘達はちらほら足を止めるくらいはするのだが、その場にずっととどまって聞いてくれる人までは居なかった。

そんなわけで多少は落ち込みはするのであるが、もともと那珂はダンスをしながら歌えれば満足であった。
客が居ないからといって、その事実が那珂に絶望を与えるわけではない。
省2
513: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:31 ID:FvzkVLeNo(10/32) AAS
こうしていつも通りにパフォーマンス終了後に機材の片付けをする。
だがその日はいつも付き添ってくれる川内も神通も居なかったため1人で黙々と片していたのだった。

そんな時、那珂は思い出したようにあのベンチの方を向いた。

朝礼台から決して近くはないが、そこに座る人物を判別出来るくらいには遠くない・・・そんな絶妙な位置にあるベンチに、またしても山城が座っていたことを那珂はライブの途中に気付いていたのだった。

今や那珂の目に映るその人物は、以前までのその人物とは全く違って見えた。

何か大きな優しさを持っている。
省1
514: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:32 ID:FvzkVLeNo(11/32) AAS
那珂はこの数日間で、川内が伝えてくれなかった部分を一生懸命に考えた。

だが出てくる推測はどれもあまりに強引なもので、とても山城の言動を正当化できるものではなかった。

神通にもそれとなく川内が隠した事情の話を振っても、「姉さんがあそこまで隠すのですし私はもう諦めます」と、まるで興味を示さなかった。

だから今この状況はチャンスだった。
川内も神通も、おそらく川内と同じように事情を知ってそうな人達も、逆に事情の存在を一切知らず山城を憎む人達も・・・皆この場所には居ない。

那珂「(まさか観客が居なくて喜ぶ日が来るなんて思わなかったなぁ)」
省1
515: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:33 ID:FvzkVLeNo(12/32) AAS
近くまで行くと、足音に気づいてか山城は顔を少しだけ横に向けながらこちらを尻目に見た。

那珂「あの...山城さんこんにちはっ!」

山城「...何か用?」

緊張のあまり上擦った那珂の挨拶に、単純に山城は困惑しているようだ。

那珂「いやぁ、そのぉ...用があるわけじゃなくて...世間話でもしようかと...」
省5
516: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:34 ID:FvzkVLeNo(13/32) AAS
一瞬で自分の意図を見抜かれ、那珂はビクッとする。
しかしそれと同時に、どうしてそこまで隠したがるのかがやはり気になって仕方がない。

那珂「詳しく教えてくれないのは...私が信用できないからですか...?」

山城「別に貴方だけの事ではないじゃない。しつこく聞いてきた人には面倒臭いから話しただけよ」

那珂「そ、それなら...!私もしつこく聞きます」

山城「何でそこまでしたいのよ」
省6
517: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:36 ID:FvzkVLeNo(14/32) AAS
山城「...貴方に言うメリットがないのよ」

山城「川内には弱みにつけ込めば口出ししなくなる見込みがあったから言っただけ」

山城「でも貴方は...まぁそういう要素も少しはあるけど...そうはいかないと思う」

那珂「弱みって...」

山城「そこは気にしなくていいわ。とにかく貴方に言っても反対されるだけなのは明らかよ」
省3
518: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:37 ID:FvzkVLeNo(15/32) AAS
その呆れたような言葉にも那珂はめげなかった。

もし自分が、何らかの事情によって川内や神通に暴言を吐かなくてはならなかったら・・・そんなのは考えたくもない。

だが目の前の人は、持ち前の不幸のせいなのか、きっとそういう状態を強いられているのだ。
川内が言っていた事は、そういう事だ。

ならば、絶対に見捨てることなんてできない。

那珂「山城さんだって...みんなと同じ1人の艦娘だもん...!」
省2
519: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:38 ID:FvzkVLeNo(16/32) AAS
山城「...そうね」

対する山城はそう呟いて肯定はしたものの、それだけだった。

その口調は乾いたもので、那珂の言葉に感情を動かされたような様子は見受けられない。

− そんなのは分かっている。だけど私は違う −

そう突き放されたように感じた。
省5
520: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:40 ID:FvzkVLeNo(17/32) AAS
山城「アンタ、艦隊のアイドルじゃなくて嫌われ者になりたいの?」

山城はすました顔で那珂を軽くあしらう。

那珂「...白露型との仲が拗れないように、って気遣いまでしてくれた人を見捨てるなんて嫌だよ...」

那珂「そうしてまでみんなに好かれるアイドルなんかやりたくないです」

那珂はハッキリと意思表明をする。
省4
521: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:42 ID:FvzkVLeNo(18/32) AAS
山城「...嫌だと言ったら?」

その返しには少し戸惑ってしまう。

しかし那珂は山城をもう1度信じると決意しているのだ。
その決意が勇気を与えてくれる。

那珂「嫌だと言われても...付きまといます。みんなに...嫌われる事になっても...」

そう那珂が言うと山城は「馬鹿ね」とだけ呟いた。
省5
522: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:44 ID:FvzkVLeNo(19/32) AAS
だが、ここで負けてはいけない。

自分の弱い心を見せたら、きっと山城はそれを理由に自身の味方など出来っこないと突き放すのだろう。

もしかしたら山城の言っていた「弱み」とはこの事なのではないか?
山城は皆の心の弱さを指摘することで、自身の味方をさせないのではないか?

そうやって彼女は孤独を維持し、いつまでも事情とやらを隠し続けるつもりではないか?

だとしたら・・・山城の味方をするためにも、孤独を恐れない強さを見せつける必要がある。
省4
523: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/04/27(土)22:46 ID:FvzkVLeNo(20/32) AAS
山城「もうちょっと工夫すれば立派な艦隊のアイドルになれるわ」

那珂「え...?本当ですかっ!?」

那珂「...って、何ですか急に..。山城さん絶対そんな事思ってないでしょ...」

今までの話の流れと全く関係ない事を持ち出されて困惑する。

とはいえ少しはお世辞でも褒められて嬉しいという気持ちはあるが。
省5
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