【艦これSS】不器用を、あなたに。 (624レス)
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156: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:05 ID:17oph7spO携(1/22) AAS
お待たせしてすみません、投下します
157: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:06 ID:17oph7spO携(2/22) AAS
12月9日 13:00

ようやく昼時になった。

先程から絶え間なく聞こえてきた廊下のにぎやかな声も収まってきたようだ。

それはすなわち、午前が非番であった艦娘達がぞろぞろと食堂に向かったということでもある。
おそらくは演習組や既に帰投した部隊も、それに合わせて昼食を取りに行くのだろう。

今頃食堂は大盛況なはずである。
省1
158: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:07 ID:17oph7spO携(3/22) AAS
嫌われてからそれなりの月日が経過し、日々をなるべく平穏に過ごすための立ち回りが癖になってきた。
だから食事時のような、皆が集まる時間と場所は極力避けるようにしている。そうすることで要らないトラブルを起こさないようにしているのだ。

山城「時間と場所をわきまえるなんてね...ふふっ...金剛に窘められたわけでもないのに」

呟いた冗談は孤独で殺風景な空間に吸収されたのだった。

山城「(そろそろあの場所も行きやすくなった頃よね)」
159: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:08 ID:17oph7spO携(4/22) AAS


昨日と同様にやはり外は寒い。
冬も本番といったところで、本当は2時間後の午後演習までは部屋に籠っていたかった。

だが今日は是非とも行っておきたい所があった。もっとも、それはたいそうな場所でもなく、鎮守府内のごく一般的な施設であるのだが。
先程まで頃合いを見計らっていたのもこのためであった。

なるべく接触するのは1人のみでありたい。
特に自分をこの上なく嫌う白露型の味方とは、出来る限り出くわしたくない。

色々と考え事をしながら歩いていると、ついに目当ての場所に来た。
160: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:10 ID:17oph7spO携(5/22) AAS
− 工廠。

ここまでは誰ともすれ違わなかった。
それも時間帯を考えればその筈で、昼食を取る時間にわざわざ工廠に来る艦娘は居ない。

あとは工廠内に、機械オタクの軽巡が居ないことを望むしかない。おそらく彼女は、おっちょこちょいがトレードマークの白露型6番艦と昼食を一緒に取るために不在だと思う。

彼女たちはかなり親密な関係なのだが、艦種が異なるために −というより夕張が工廠の手伝いばかりで普通の軽巡扱いされないという点も大きいが− 普段は別行動を余儀なくされることが多い。だから食事などで時間を合わせるはずと踏んだのだ。
161: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:11 ID:17oph7spO携(6/22) AAS
別に仲良しなら同部屋になればいいのに・・・。

まだこの鎮守府が今ほど大きくなかった3ヵ月くらい前は、姉妹艦が揃わないなんて当たり前だったし、同型艦以外と同室なんて風景はよく見られた。
そもそも、今だって姉様と満潮の例が・・・

山城「(…半分くらいは私が原因だけど...)」

山城「(まぁ、とにかく今度提督にでも部屋割り変更の進言しときましょうか)」

一つ結論を出しつつ、やや重たい扉を開けて工廠へ入る。
162: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:12 ID:17oph7spO携(7/22) AAS
入った先には作業着姿の明石が居た。彼女は私を認めると、すぐに微笑んで「何か御用ですかー?」と尋ねてきた。

今ここには夕張が居ないことを知り、安心した。

山城「ええ、ちょっと装備のことで...」

しかしその安堵は束の間だった。

大淀「あら、誰か来たn...」
省2
163: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:13 ID:17oph7spO携(8/22) AAS
首から下げたバインダーと手に持つペンを見るに、在庫チェックでもしていたのだろうか。

それに彼女は明石と同じく鎮守府に最初から居る艦娘である。そう考えれば単純に仲が良いのだろうし、大淀自ら暇な時に顔を出しに来るのかもしれない。

いずれにせよ、山城はとりあえず気まずくも会釈した。
明石は申し訳なさそうな苦い顔をしている。
164: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:14 ID:17oph7spO携(9/22) AAS
大淀「...何しに来たんですか?」

大淀が先程の明石と同様の質問をする。
しかしその語調や含意は真逆のものである。

山城「えっと...装備の相談で...」

大淀「そうですか、どんなに装備を変えても不幸は治らないと思いますけどね」

いきなり敵意が剥き出しであった。
そんなこと言われる前から分かっているが・・・
165: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:15 ID:17oph7spO携(10/22) AAS
山城「使いやすさの問題で相談しに来ただけよ」

大淀「装備妖精との絆を深めれば使いやすくなるかもしれませんね」

大淀「あ、仲間との絆を踏みにじる人には無縁な話でしたね」

明石「ちょっと大淀!」

明石が大淀を止める。先程までの表情とは少し違い、やや怒気を含んでいた。
166: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:18 ID:17oph7spO携(11/22) AAS
大淀「何で?今言ったことは事実じゃない」

対して大淀は澄ました顔をしている。

大淀「それにこの人の装備を完璧にしたところで、自分が生き延びるためだけにしか使われないですから」

大淀「艦隊の仲間を蔑ろにする人の装備の相談に乗る必要あるのかしら」

明石「大淀、本当に怒るよ?」
省1
167: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:19 ID:17oph7spO携(12/22) AAS
明石「あんた山城さんが「まぁ、落ち着きなさいよ」......。」

これ以上進むと面倒くさい事になりそうなので私が止めることにした。

山城「大淀の気持ちは分かってるつもりだわ」

山城「誰だって憎い奴と同じ空間には居たくないでしょう」

山城「でも私だってなるべく人が居ない時間に来るように配慮してるのよ?」
省3
168: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:21 ID:17oph7spO携(13/22) AAS
山城「それに貴方は批判的みたいだけど、自分が生き残ることに執着することの何がいけないの?」

山城「皆が自分が生き残るように執着すれば、結果的に皆沈まないじゃない」

山城「そうすれば誰ひとり傷つかない」

山城「自己犠牲精神が美しいの?」

山城「...絆なんて概念だけで苦しみを無くせるなんて思わないで」
省2
169: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:23 ID:17oph7spO携(14/22) AAS
山城「...それじゃあ明石、本件に入らせてもらうわ」

明石「は、はい!」

山城「ざっくり言うと、フィット性を取るか火力を取るかという話なのだけど...」

相談したかった内容というのは、近日実行予定の大規模作戦に向けた装備調整である。

この鎮守府ももはや大規模なものとなり、複数の鎮守府との共同作戦で担う役割も著しく大きなものとなった。
そのため自身の心許ないスペックを最大限に活用するための装備選択が必須となる。
170: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:25 ID:17oph7spO携(15/22) AAS
特に主砲については、自身に1番フィットする35.6cm砲か、さらなる火力が出せる41cm砲かという重要な選択肢がある。

なるべく取り回しや機動性を考慮して前者を使いたいが、それならば少しでも火力を上げるために改良等が出来ないかも打診しておきたかった。

こうした相談に明石は親身に乗ってくれた。

一方で大淀はこちらの邪魔はしなかったものの、ずっと私への睨みを効かせていた。
明石に何かするつもりなどないというのに・・・
171: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:27 ID:17oph7spO携(16/22) AAS
工廠内に独特な緊張感を纏ったまま時間が流れたが、結局私は目的自体は達成できた。

試作品があるというので改良した35.6cm砲をとりあえず装備させてもらい、もう少しで始まる演習で試させてもらうことになったのだ。
明石は試作品を取りに少しの間工廠の奥へ姿を消し、やがてまた戻ってくると快活な声をあげる。

明石「お待たせしました!」
172: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:29 ID:17oph7spO携(17/22) AAS
彼女から試作品を受け取る。

明石「それじゃあ、今日の演習での使い勝手とか聞かせてくださいね!」

山城「ええ、もちろん。助かったわ、ありがとう」

明石「いえいえ!あっそうだ、今じゃなくていいので、右の砲身よく見といてください」

山城「分かったわ。じゃあ失礼するわね」
173: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:32 ID:17oph7spO携(18/22) AAS
明石「...ふぅー。...ちょっと、大淀?」

大淀「何...明石」

明石「いくらなんでもあれは酷いよ」

明石は大淀を再度窘める。

大淀「...何で明石はそんなに擁護してるの?」
省1
174: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:34 ID:17oph7spO携(19/22) AAS
明石「...私達は直接暴言吐かれたわけじゃないじゃん」

大淀「それでもあまりに許せるレベルじゃないから皆嫌ってるのに?」

大淀「着任時から時雨さんと同室だったのにあんなこと平気でするような人でも?」

攻め立てるように続ける。

大淀「そのくせ自分が生き残るためにはあんなに必死になっちゃってさ」
省1
175: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/02/14(木)01:36 ID:17oph7spO携(20/22) AAS
明石は何も言えなかった。

いつもはとても話の弾む同僚との沈黙が続く。

もし自分が、悩みを綺麗に消す魔法の薬を作れたなら、などとありえもしない事を考える。
でも、そうだったら、こんな苦しさは最初から現れずに済んだのだ・・・
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