【艦これSS】不器用を、あなたに。 (624レス)
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238: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:44 ID:J91t5PLpO携(20/42) AAS
響「なるほど、それで私達が3人になった時にインタビューしに来たんだね」
青葉「そういうことです」
暁型の3人も、青葉と同じ発想を古鷹に対して適用しなかったわけではなかった。
何せ青葉は自覚があるかは分からないが古鷹にべったりであり、古鷹も青葉を特に大事にしている様子である。
青葉の妹である衣笠曰く、ヘタレな青葉が行動しないだけで実際は“事実上の恋人同士”らしい。
今では青葉に色恋沙汰を取材されたら「古鷹とはどうなのか?」と言い返せば青葉を退けられるとまで言われるほどである。
239: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:47 ID:J91t5PLpO携(21/42) AAS
それほどまでに深い情で結ばれているのならば、自分達と同じように何か古鷹から打ち明けられたり相談されていそうなものだ、というのがこの3人の思考であった。
しかし電が自分達に一部を打ち明けてくれた一方で、依然として山城を嫌い続けていた青葉の様子を考えれば、古鷹は電と同様ではないと思えてしまったのだ。
それこそが、暁型が逆に青葉に尋ねることをしなかった理由であったのだ。
240: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:48 ID:J91t5PLpO携(22/42) AAS
響「実はさっき暁と雷が話していたことが私達が持ってる唯一のヒントみたいなんだ」
青葉「2人のうちの1人...でしたか?」
雷「そうなの。以前電が教えてくれたのよ、事情を知ってるのは電を除いて3人らしいの」
雷「私達はその時に1人については教えてもらってて、その人は古鷹さんじゃなかったわ」
青葉「つまりそれは古鷹さん以外に事情を知ってる人が2人いるって事ですか?」
省1
241: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:49 ID:J91t5PLpO携(23/42) AAS
青葉「それなら1人は昨日私も知ったんですよ」
その言葉にちょっとした緊張が走る。
青葉が知ったという人次第では、この鎮守府で山城についての何かしらの事情を知っている人を全員把握したことになるからだ。
青葉「私が知った人と言うのは川内さんの事なんですが...」
だがその希望は残念ながら通らなかった。
暁「私達と同じね...」
省3
242: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:51 ID:J91t5PLpO携(24/42) AAS
青葉「ちなみにみなさんは電さんからどのように聞いたんですか?」
響「あれは暁が着任してすぐの時だね」
青葉「とすると8月半ばくらいですか」
雷「そのくらいだったわ」
青葉はいつの間にかメモ帳とペンを手元に用意していた。
流石は自ら記者を名乗るだけある。
省2
243: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:52 ID:J91t5PLpO携(25/42) AAS
響「そういうわけで暁には着任のほんの数日前に起こった出来事を説明したんだけど」
響「その時も電はやっぱり山城さんを擁護しようとしてたんだ」
雷「何か事情があったと思うし聞いたままの話だけを信じないで欲しい、って一生懸命フォローしてたのよ」
雷「でも私と響はそれにちょっと反対するような事言って、電は困った顔して黙っちゃってね...」
響「そこで暁が思い切って電にストレートに聞いてくれたんだよ」
省1
244: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:54 ID:J91t5PLpO携(26/42) AAS
青葉「その時に事情を知ってるってことを?」
響「いや、実はこの時点ではまだ打ち明けてもらえなかったんだ」
響「だけどこの時私が、電は優しすぎるんだって言ったら、電が何か匂わせるような返答をしてね」
青葉「何て言ったんですか?」
暁「例えば川内さんとかも近いうちに山城さんの味方をするようになると思う。ほとんどの艦娘の敵対感情に配慮して堂々と仲良くは出来ないだろうけど、って」
省3
245: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:56 ID:J91t5PLpO携(27/42) AAS
暁「そうなの。それで電の言いたい事が分からなくてとりあえず「何でそう思うの?」って聞いたのよ」
暁「そしたら、山城さんと川内さんは仲良くなったから、って答えたわ」
青葉「仲良く...ですか...」
雷「それで、電もそれと同じようなもので、だから山城さんの味方をするのは別に電が優しくしたいからではない、ってことを強調してきたのよ」
一応電の言うことは筋は通っていた。
周りからは“優しすぎる”から味方をしていると言われる事に対し、“仲良くなった”から味方をするだけだ、と反駁したということである。
省1
246: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:58 ID:J91t5PLpO携(28/42) AAS
響「この事はまだ他の人には言わないで欲しいとも頼まれたよ」
響「そして青葉さんならその頃から既に居たし知ってると思うけど、実際に電の言った通りになったんだ」
雷「まさか夜戦練習に付き合ってもらうほどの関係になってたなんてね」
暁「今じゃ那珂ちゃんさんも巻き込んで完全な味方よね」
青葉「では電さんは川内さんも事情を知っていることを、その時点で把握していたってことですね」
省3
247: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:59 ID:J91t5PLpO携(29/42) AAS
響「私はその時はまだ、電が水雷戦隊に大きな影響を持つ川内さんを説得して、なんとかあの事件を収束させようとしたんだと思ってたよ」
暁「私なんか以前の様子を知らなかったから、てっきり山城さんと川内さんはもともと仲良しで、電が間に入って2人の関係を元に戻したって事なのかと思ってたわ」
間違った解釈を誘発したあたりに、電が意図的に話をぼかした事が窺えるであろう。
響「それから1ヶ月くらいして、ようやく電が事情があって擁護しているということを打ち明けてくれたんだ」
248: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:01 ID:J91t5PLpO携(30/42) AAS
青葉「そうなるとそれは9月の半ば頃ということですか」
青葉はメモを見ながら時系列を確認する。
暁「多分合ってるわ」
暁が確認に応える。
響「それで、もちろん詳しい事情を知りたかったから聞いたんだけど、ついに「事情がある」って事しか教えてくれなかったんだ」
省2
249: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:03 ID:J91t5PLpO携(31/42) AAS
雷「その時何とか聞き出せた唯一の事が、今さっき話した事情を知ってる人の数とそのうちの一人が川内さんって事なの」
雷「それを聞いて初めて、電が最初にぼかしを入れて話してたことの意味が理解できたの」
青葉「つまり電さんは“事情を知る”を“仲良くなる”に強引に置き換えて話していたわけですか」
暁「あとはこの事は基本的に他の人に言っちゃダメって、言われたわ」
暁「だけど、山城さんの事をちゃんと知ろうとする意志が見られたなら喋っていいとも言われたの」
省2
250: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:05 ID:J91t5PLpO携(32/42) AAS
青葉「ところで電さんがそれ以上話せない事やみなさんへの口止めは山城さんの指示ですか?」
雷「それもあるみたいだけど...その事情を伝える権利が電には無い、って電自身は言ってたわ」
その言葉を聞いて、青葉は「やっぱり...!」と微かな声で呟いた。
そして動かしていたペンの動きを止めた。
青葉「新情報はあまり得られませんでしたが、情報の整理は出来ました」
青葉はメモから顔を上げ、食堂の入口に目を向ける。
まだ電は帰ってきていない。
省1
251: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:09 ID:J91t5PLpO携(33/42) AAS
暁型は青葉の情報に身構えた。
青葉「まず私が川内さんが事情を把握してることを知ったのは、昨日那珂さんに聞いたからなんです」
雷「あー、それでなのね」
青葉「私は何も知らない状態で調査を開始したので、とにかく山城さんに友好的な人から当たろうと思いまして」
青葉「昨日は神通さんの誕生日会もありましたから、そこで川内さんと那珂さんに詳しく聞こうと思ったんです」
省2
252: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:10 ID:J91t5PLpO携(34/42) AAS
響「川内さんに聞いちゃってたら警戒されて、「事情があった」以上の事実を知るのが余計難しくなるからだね」
青葉「ええ、何せ姉妹艦にすら教えない事なんですから余計な警戒は受けないようにしたいところです」
青葉「それともう一つラッキーな点は那珂さんもこっち側に引き込めたんです」
雷「引き込むって...青葉さんと一緒に調査してるってこと?」
青葉「はい、そうです」
省3
253: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:12 ID:J91t5PLpO携(35/42) AAS
青葉のお願いに近い提案を受け、顔を見合わせる3人。
しかし彼女らも今の青葉と同じ気持ちを抱いてきたのである。
それゆえに結論はすぐに出た。
響「私も気になる、是非参加させてもらうよ」
暁「もちろん私もよ!」
雷「青葉さんがいれば何か分かりそうだものね!」
省4
254: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:14 ID:J91t5PLpO携(36/42) AAS
青葉「それで那珂さんから聞いた事は暁型での事例とほとんど同じでした」
青葉のまとめによれば、川内は事情を知って1ヵ月後くらいに神通と那珂に一部のみを打ち明けたそうだ。
その内容はやはり「事情があった」というものであるが、どうやら山城は川内型を気遣うような言動もしていたらしい。
那珂はその点に山城の良心の存在を見出し、結局詳しい事情を知らないままでも山城を擁護する側に立つと決めたのだという。
また山城から口止めを受けている点も暁型のケースと同様である。
255: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:17 ID:J91t5PLpO携(37/42) AAS
青葉「ここで電さんと川内さんの動きを時系列で見ると、偶然にもかなり一致してるみたいです」
響「どういうことだい?」
青葉「どうやら川内さんが事情を山城さんから聞いたのが、ちょうど電さんがぼかしながら響さん達に伝えた頃になるみたいです」
雷「てことは電は川内さんが事情を知った事を把握した直後に、私達にあれを話したのね」
青葉「そして2回目の話をした9月半ば頃も、やはり那珂さんが川内さんから打ち明けられた頃に一致するようです」
省3
256: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:19 ID:J91t5PLpO携(38/42) AAS
青葉「それと川内さんも電さんもあれ以上を語らない理由を「権利がないから」としている点も重要そうです」
響「川内さんもそう言ったのか」
青葉「ええ。ひょっとすると川内さんに電さん、そしてもしかしたら古鷹さんもが、それを周りに言うのが躊躇われるような事情を持ってるという事なのかもしれません」
雷「そこは鍵になりそうね」
青葉「私が知ったことはこれくらいですし後は事情を知っている残り1人は誰かという話ですが...」
257: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)02:21 ID:J91t5PLpO携(39/42) AAS
青葉「これは宿題になっちゃいますね...」
青葉は食堂の入口を見ていた。
そちらを見てみれば電がこちらに早足で向かってくるところであった。
青葉「では今度は那珂さんも呼んで集まりましょう」
青葉はそそくさと立ち去ろうとしたがそれを止めるように響が質問をする。
響「最後に一つだけ。今日の喧嘩の発端は何だったか見てたりしたかい?」
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