【艦これSS】不器用を、あなたに。 (624レス)
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226: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:25 ID:J91t5PLpO携(8/42) AAS
青葉「その、先程もそうでしたが、電さんが何故あそこまで山城さんを助けるのか気になりまして」
響「...!」
青葉「姉妹艦の皆さんなら何か知ってるんじゃないかと思ったんです」
雷「...電は優しいから...」
雷がありきたりの言葉を呟く。
このような質問には、まずそれで反応を見ることがこの3人の中でのマニュアルになっている。
227: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:27 ID:J91t5PLpO携(9/42) AAS
青葉「...私は電さんが何か事情を知ってるからだと思います」
青葉「その事情のためにいつも山城さんを助けるのでは、と。」
少し小声で発声された青葉のその言葉を聞いた瞬間、3人が閉ざしていた門は開かれたのだ。
暁「偶然ね!ちょうど私達でその話をしようとしてたわ!」
響「(でも...青葉さんは時雨と同じタイミングで着任したはず...それもあってか仲良さそうだし...)」
省1
228: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:28 ID:J91t5PLpO携(10/42) AAS
響「残念ながら私達が知ってることは何も無いんだ」
暁や雷が躊躇いなく話そうとするところに、響が被せるように言った。
何となく響から警戒心を読み取った暁と雷は驚きと不安を隠せぬまま黙って響を見つめた。
一方の響は動じずクールな表情を保っている。
響「だけど“お人好し”なのだって、私達の妹の大事な長所だからね」
響「だから私達は、たとえ電が必要無いまでの優しさを振り撒いていても、それを見守るだけなのさ」
響は終始落ち着いていた。
それに今言ったこと自体は彼女の本心でもあった。
青葉のインタビューを回避しようとする意図以外は、まさに嘘偽りのない返答なのだ。
省2
229: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:29 ID:J91t5PLpO携(11/42) AAS
青葉「...やはり警戒しますか」
青葉も伊達に“取材”を続けてきたわけではないのだろう、その経験を活かしてか普段そこまで接点が多いわけでもない艦娘の心理を見事に読んでみせたのだ。
青葉「ですがこれは決して記事にするとかではなく、私個人のために内密に調べてることなんです」
青葉「どうか、些細なことでも、電さんについて知ってることを教えてくれないでしょうか」
青葉「きっと姉妹艦にだけなら、ってふと零した重要な言葉があるんじゃないかって思うんです」
省1
230: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:30 ID:J91t5PLpO携(12/42) AAS
響「...青葉さんが本気なのは分かったよ」
ひとまず青葉の意図を信頼し、警戒姿勢を緩める響。
響「ただ警戒したメインの理由はそこじゃないんだ」
青葉「他に何かあるんですか...?」
響「電が山城さんの味方をする理由を見つけるには、きっと、今ある山城さんの人物像を一度忘れる必要がある」
省3
231: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:31 ID:J91t5PLpO携(13/42) AAS
雷「まぁ...この鎮守府で進んでやることじゃないわよね...」
響「特に青葉さんは時雨と同時着任で仲も良いじゃないか」
響「それでも本当にそんな調査をしたいと思えるのかい?」
響が危惧していたのはまさにその点であった。
ほぼ全員から良く思われていない者について、1度先入観を捨て去って再評価しようとするにはかなりの勇気が必要である。
省1
232: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:33 ID:J91t5PLpO携(14/42) AAS
もちろん鎮守府の雰囲気に流されずに中立や擁護すら見せる艦娘達も数人はいる。そして彼女らがその立場を理由に飛び火して嫌われるという事態は一切起きていない。
しかし彼女達はほとんどが古参の面々で、戦力的にも精神的にも鎮守府に大きく貢献している者達であることも同時に忘れてはならない。
つまりそれだけの存在だからこそ周囲の行き過ぎた山城嫌いを抑制できるのであって、これを他の者が安易に真似る事は得策ではない。
・・・それでも電の言動の意図を解き明かしたいのであれば、この道は避けられないかもしれないが。
233: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:35 ID:J91t5PLpO携(15/42) AAS
青葉「...覚悟は決めてあります」
響の言葉で空気が重く沈んだが、やがて青葉が口を開いた。
青葉「もちろん私は時雨さんとは仲が良いです」
青葉「そして今までずっと山城さんのことを憎むべき人だと信じて疑いませんでした」
振り返れば青葉も山城への嫌悪は隠さないタイプであったように思う。
省3
234: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:36 ID:J91t5PLpO携(16/42) AAS
暁「そう思うきっかけがあったのかしら?」
暁がそう尋ねると、青葉は意を決したように言葉を続けた。
青葉「ええ、数日前に古鷹さんがふと零した言葉が忘れられなくて...」
古鷹さん、という言葉に反応して暁型の3人はある気づきを得た。
しかし、誰から目配せをしたわけでもないが、ひとまずは青葉の話を中断せずに聞くことにした。
青葉「私がいつも通り山城さんを批判した時、古鷹さんは悲しそうな顔をしてこう呟いたんです」
省2
235: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:38 ID:J91t5PLpO携(17/42) AAS
青葉「それは、喧嘩を仲裁する時みたいな普段の山城さん擁護とはちょっと違いました」
青葉「わざわざ古鷹さん自身を比較対象に出すくらい、本心から絞り出た古鷹さんの思いだった気がするんです」
青葉は困ったような顔をしている。
青葉「だから、もう私は分からなくて...古鷹さんは誰にでも優しすぎるから、って勝手に納得してただけなのかもしれないって」
青葉「古鷹さんの言葉を前提にしてみたら、きっと山城さんは今と全く別の人物になるんじゃないかって」
省1
236: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:40 ID:J91t5PLpO携(18/42) AAS
青葉が次の言葉を口にしようとする時、またもや響が食い気味で被せてきた。
響「詳しいことを教えてくれなかったんだね?」
しかし今度の意図は話を回避するためではなく、むしろその真逆である。
まさに言おうとしたことを言い当てられて青葉は少し驚きを隠せずにいた。
雷「これって、古鷹さんが残り2人のうちの1人ってことよね」
暁「そうとしか思えないわね」
省1
237: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:43 ID:J91t5PLpO携(19/42) AAS
響「うん。実をいえば私達もちょうど青葉さんと同じだからね」
雷「古鷹さんみたいな妹がいるもの」
青葉「やはり...!」
青葉「私も、古鷹さんが何か山城さんに肩入れする事情があるのだとしたら、古鷹さんと同じような立場を取る電さんもきっと同じはずだと思ってたんです」
青葉は自身の推測が正しかった事に興奮を覚えながら、それでも周りに聞かれぬようにある程度抑えた声量で話を続ける。
省2
238: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:44 ID:J91t5PLpO携(20/42) AAS
響「なるほど、それで私達が3人になった時にインタビューしに来たんだね」
青葉「そういうことです」
暁型の3人も、青葉と同じ発想を古鷹に対して適用しなかったわけではなかった。
何せ青葉は自覚があるかは分からないが古鷹にべったりであり、古鷹も青葉を特に大事にしている様子である。
青葉の妹である衣笠曰く、ヘタレな青葉が行動しないだけで実際は“事実上の恋人同士”らしい。
今では青葉に色恋沙汰を取材されたら「古鷹とはどうなのか?」と言い返せば青葉を退けられるとまで言われるほどである。
239: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:47 ID:J91t5PLpO携(21/42) AAS
それほどまでに深い情で結ばれているのならば、自分達と同じように何か古鷹から打ち明けられたり相談されていそうなものだ、というのがこの3人の思考であった。
しかし電が自分達に一部を打ち明けてくれた一方で、依然として山城を嫌い続けていた青葉の様子を考えれば、古鷹は電と同様ではないと思えてしまったのだ。
それこそが、暁型が逆に青葉に尋ねることをしなかった理由であったのだ。
240: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:48 ID:J91t5PLpO携(22/42) AAS
響「実はさっき暁と雷が話していたことが私達が持ってる唯一のヒントみたいなんだ」
青葉「2人のうちの1人...でしたか?」
雷「そうなの。以前電が教えてくれたのよ、事情を知ってるのは電を除いて3人らしいの」
雷「私達はその時に1人については教えてもらってて、その人は古鷹さんじゃなかったわ」
青葉「つまりそれは古鷹さん以外に事情を知ってる人が2人いるって事ですか?」
省1
241: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:49 ID:J91t5PLpO携(23/42) AAS
青葉「それなら1人は昨日私も知ったんですよ」
その言葉にちょっとした緊張が走る。
青葉が知ったという人次第では、この鎮守府で山城についての何かしらの事情を知っている人を全員把握したことになるからだ。
青葉「私が知った人と言うのは川内さんの事なんですが...」
だがその希望は残念ながら通らなかった。
暁「私達と同じね...」
省3
242: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:51 ID:J91t5PLpO携(24/42) AAS
青葉「ちなみにみなさんは電さんからどのように聞いたんですか?」
響「あれは暁が着任してすぐの時だね」
青葉「とすると8月半ばくらいですか」
雷「そのくらいだったわ」
青葉はいつの間にかメモ帳とペンを手元に用意していた。
流石は自ら記者を名乗るだけある。
省2
243: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:52 ID:J91t5PLpO携(25/42) AAS
響「そういうわけで暁には着任のほんの数日前に起こった出来事を説明したんだけど」
響「その時も電はやっぱり山城さんを擁護しようとしてたんだ」
雷「何か事情があったと思うし聞いたままの話だけを信じないで欲しい、って一生懸命フォローしてたのよ」
雷「でも私と響はそれにちょっと反対するような事言って、電は困った顔して黙っちゃってね...」
響「そこで暁が思い切って電にストレートに聞いてくれたんだよ」
省1
244: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:54 ID:J91t5PLpO携(26/42) AAS
青葉「その時に事情を知ってるってことを?」
響「いや、実はこの時点ではまだ打ち明けてもらえなかったんだ」
響「だけどこの時私が、電は優しすぎるんだって言ったら、電が何か匂わせるような返答をしてね」
青葉「何て言ったんですか?」
暁「例えば川内さんとかも近いうちに山城さんの味方をするようになると思う。ほとんどの艦娘の敵対感情に配慮して堂々と仲良くは出来ないだろうけど、って」
省3
245: ◆eZLHgmSox6/X [saga] 2019/03/09(土)01:56 ID:J91t5PLpO携(27/42) AAS
暁「そうなの。それで電の言いたい事が分からなくてとりあえず「何でそう思うの?」って聞いたのよ」
暁「そしたら、山城さんと川内さんは仲良くなったから、って答えたわ」
青葉「仲良く...ですか...」
雷「それで、電もそれと同じようなもので、だから山城さんの味方をするのは別に電が優しくしたいからではない、ってことを強調してきたのよ」
一応電の言うことは筋は通っていた。
周りからは“優しすぎる”から味方をしていると言われる事に対し、“仲良くなった”から味方をするだけだ、と反駁したということである。
省1
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