【ミリマス】茜ちゃんと踊る馬鹿人間 (24レス)
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1: ◆Xz5sQ/W/66 2018/12/03(月)22:50 ID:HY1MskrZ0(1/22) AAS
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十二月、それは新年へ向けたカウントダウン。

突入すれば「一年過ぎるのも早いもんだ」なんてしみじみ振り返ってみたり、
まだ半月以上もあるというのにクリスマスの輩があちこちに姿を現したり。

とにかく日本人というやつが、八月と並んで馬鹿に陽気になるのが十二月なのではないだろうか?

また、読者諸氏には知られた話であるだろうが、
吹き付ける海風の勢いが増そうと765プロライブ劇場は相変わらずの常春気分。
省4
5: 2018/12/03(月)22:57 ID:HY1MskrZ0(5/22) AAS
「茜ちゃんのパーティ中止なんだそうです」

そう麗花がしょんぼり口を開けば。

「実は、プロデューサーさんがいない間にちょっと困ったことになって」と、説明を引き継いだのは春香である。

彼女は控え室に置かれているホワイトボード――こちらは事務室に置かれている物とは違い、
仕事の予定よりアイドル同士の連絡に使われている物だ――を見やった。

するとそこには、茜が書いたのであろう『茜ちゃんによる茜ちゃんの為のハピバシークレットライブ』の告知。
省2
6: 2018/12/03(月)22:58 ID:HY1MskrZ0(6/22) AAS
「なぁ春香、この黒ペンで書き込んでるのはひょっとして……」

「……社長です。たまたま私たちと一緒にこっちへ来てて」

「"楽しみにしてる"って書いた千早と律子もその時か」

春香がコクリと頷くと、私は思わず呻き頭を掻いた。

この際、同じアイドル仲間である千早と律子は良しとしよう。
省6
7: 2018/12/03(月)22:59 ID:HY1MskrZ0(7/22) AAS
結果、ホワイトボードの隅に書かれることとなった茜の返信――慌てた筆跡の「いったん中止」が痛々しく視線をひくのである。

そうして、それを書かざるを得なかった本人の落ち込む姿というのも、また。

「すまないけど春香、麗花、少しの間だけ茜と二人きりで話をさせて欲しい」

言えば、「分かりました」と春香が頷いた。
「お願いしますね」と麗花が続く。

さらにレッスン室に行ってますねと控え室から二人が去っていくが、
その間、一人残される身の茜は微動だにしなかった。
省4
8: 2018/12/03(月)23:00 ID:HY1MskrZ0(8/22) AAS
「随分とやられてるじゃないか。……それとも、黙ってたのは演出を考えていたからか?」

茜が僅かに顔を上げる。

それと同時にさり気ない動作で目尻を拭い、彼女はそ知らぬふりでこう応えた。

「そ、そうなの! 可愛い茜ちゃんのバースディステージを、思ってた以上に皆が楽しみにしてくれてるみたいだから……」

「やっぱり俺が思った通り、真面目に演出を練り直していたんだな? 
期待に応える、いや、その期待の遥か上を飛び越えていくのが野々原茜流だもんな」
省2
9: 2018/12/03(月)23:02 ID:HY1MskrZ0(9/22) AAS
「それで、何をするつもりだ。良かったら相談聞いてやるぞ」

「……プロちゃんが?」

「当然だろう。アイドルの願いを叶えるプロだからプロデューサーなんだぜ?
折角の誕生日ライブなんだ。頼まれれば大砲を使って祝砲だって上げてみせる!」

そうして、今度は両腕を広げるようにして大袈裟な爆発を示すジェスチャー。

見ている彼女の表情が呆れたようにほぐれていく。
省2
10: 2018/12/03(月)23:03 ID:HY1MskrZ0(10/22) AAS
すると茜は小さく鼻をすすり。

「だ、だったら……茜ちゃん、最初はパレードから始めたいでーす!
劇場の前の道路をこう、サンバサンバのカーニバルで練り歩きながら駐車場に入ってくるの」

私に負けじと立ち上がると、彼女はその手を大衆に見立てて机の上を行進させる。
声にはいつもの張りが戻り、語る口ぶりもお調子者の見せるソレだ。

「で、エントランスに着いたらバーンバーンって祝砲ね。グッズ売り場にはもちろん茜ちゃん人形をどっちゃり置いて、
ステージの上もサーカスみたいに飾り付けて。――そうだ、プロちゃん象も用意できる?」

「必要とあらば恐竜だって持ってくるさ!」
省6
11: 2018/12/03(月)23:04 ID:HY1MskrZ0(11/22) AAS
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とはいえ、夢というヤツは決まって最後に覚めて終わる。
アイディアをあらかた出し尽くすと、茜は落ち着くように息を吸い込んでから。

「でもこれだけ盛大なパーティだと、流石の茜ちゃんもすこーしばかり緊張かな?」

なんて、柄にもないことをポツリと呟く。

「緊張? ……まさか、お前からそんな言葉が飛び出してくるなんてな」
省6
12: 2018/12/03(月)23:05 ID:HY1MskrZ0(12/22) AAS
「そこんとこ、プロデューサーだって言うならキチンと把握していなくっちゃ。
いつかプロちゃんには言ったと思うけど、茜ちゃんが現場を盛り上げると、その愛くるしさがお茶の間の人に笑顔を生んで――」

「ゆくゆくは、世界を明るく照らす太陽に取って代わるアイドル……だっけな」

「そ……そんなこと茜ちゃん言ってたっけ?」

「いんや、これは俺の夢だ」

「にゃんとぉーっ!!?」
省8
13: 2018/12/03(月)23:06 ID:HY1MskrZ0(13/22) AAS
そうして私は、今の今まで置きっぱなしになっていた紙袋を彼女の前へと差し出した。

受け取った茜が中身を机の上に出す。

それはクリスマスカラーの包装紙で包まれたプレゼントであり、
彼女は包みと私の顔の間で視線を何度かさ迷わせ。

「えっ、今日ってクリスマスだっけ?」

「お店のおねーさんの勘違いだ。ハッピーバースディ、ディア茜〜」
省4
14: 2018/12/03(月)23:07 ID:HY1MskrZ0(14/22) AAS
「……茜ちゃん足四本も無いよ?」

「一足はどうみても俺の分だろ? 茜の足には大きすぎる」

「なーんで一緒に入ってたの?」

「それもお店のおねーさんの勘違いだ。レジがやたらめったらと混んでたのよ」

忙しそうで言い出せなくて、と説明するとプロちゃんらしいやと笑われた。
しかし、すぐにも彼女は「ありがとう」と。
省2
15: 2018/12/03(月)23:08 ID:HY1MskrZ0(15/22) AAS
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――さて、それからおよそ三時間後。

私は茜と劇場内のメインホール、そのステージ裏で待機していた。

チラリと客席の様子を覗いてみれば、そこには事務所所属のアイドル達、

それからこの日の仕事を終えた劇場スタッフが思い思いにくつろいでおり、
省1
16
(1): 2018/12/03(月)23:09 ID:HY1MskrZ0(16/22) AAS
「それでは歌声とお笑いのコラボレーション、ぷっぷかリボンのお二人で〜す」

ステージ中央、マイクを握った美也の紹介で春香たち二人が舞台に飛び出る。

それを出迎える拍手の小気味よさに聞き入りながら、
私はつい数時間前までの余裕を完全に失った自らの体たらくさを笑っていた。

「ちょっとプロちゃん、顔が死んでるから」

そうして声に誘われるまま視線を移してみれば、こちらを覗き込んでいる茜と目が合った。
省2
17
(1): 2018/12/03(月)23:10 ID:HY1MskrZ0(17/22) AAS
「そ、そうか? こういうことには慣れてなくて。……しかし凄いな。茜たちはいつもこんな緊張の中で出て行くのか」

「いやー……この状況で改めて関心されたってね?
プロちゃんってばプロデューサーなのに、大勢の前で発表したりするの慣れてないの?」

「企画と演技じゃモノが違うさ。相手する人数も期待もとてもとても――」

おまけに最前列に社長いるし。

「う、ぐぅ……腹ぁ痛くなってきたぞ」と腹部を押さええて前屈み。
省1
18: 2018/12/03(月)23:11 ID:HY1MskrZ0(18/22) AAS
>>17訂正

〇「いやー……この状況で改めて感心されたってね?
×「いやー……この状況で改めて関心されたってね?
19: 2018/12/03(月)23:12 ID:HY1MskrZ0(19/22) AAS
すると、そんな私の醜態に呆れたのか茜が大きなため息をついた。

彼女は手近な椅子に座った私の前にしゃがみ込むと、その手をこちらの膝に乗せ。

「ねぇプロちゃん、そんなにシンドイならやっぱり――」

「大丈夫だ、でも少しだけ茜の頭借りるぞ!」

最後まで言葉を言わせないように私は茜の頭を撫でた。彼女も黙って受け入れる。
省7
20: 2018/12/03(月)23:13 ID:HY1MskrZ0(20/22) AAS
「……よーし、やったろうじゃないか!」

そうして私は気合一発、鼻息も荒く立ち上がった。
さらにはそんな私に寄り添うようにして茜もすっくと立ち上がると。

「そうそうプロちゃん、その意気その意気っ♪ 転ぶ時には茜ちゃんも一緒だから」

スケートを履いた彼女が私の背中をポンと叩き、先導するように片手を取った。
引かれて動く私の足。その先端にはなれない滑車がついている。
21: 2018/12/03(月)23:13 ID:HY1MskrZ0(21/22) AAS
「それではいよいよ真打ち登場ですぞ〜」

美也が舞台から手招いた。「ねぇプロちゃん」と振り返った茜が私に笑いかける。

「今日はステージの最後の最後まで、とことんつき合わせちゃうんだからね!」

だからこそ私は「当然だ」と。

「今更遠慮なんてするな、俺は茜のプロデューサーなんだぜ!」
省2
22: 2018/12/03(月)23:16 ID:HY1MskrZ0(22/22) AAS
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以上おしまい。用意していたネタがホワイトボードによって爆発四散したのですが
結果的には満足のいく話が書けて良かったなって思ってます。

それでは、改めましてハッピーバースデー茜ちゃん!

お読みいただきありがとうございました。
23: ◆NdBxVzEDf6 2018/12/04(火)00:30 ID:DE1i+Jod0(1) AAS
ホワイトボードのあの流れか画像リンク[jpg]:i.imgur.com
いいプレゼントの仕方だった、乙です

>>2
野々原茜(16) Da/An
画像リンク[jpg]:i.imgur.com
画像リンク[jpg]:i.imgur.com

>>4
天海春香(17) Vo/Pr
画像リンク[jpg]:i.imgur.com
画像リンク[jpg]:i.imgur.com
省7
24: 2018/12/04(火)22:56 ID:9EfJNoS3o(1) AAS
乙っぷかプリン
公式ネタをこんなスピードでssにしてしまうとは
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