魔王「もう、やめんか勇者よ……」 (179レス)
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1: [saga] 2018/11/10(土)21:11 ID:/OayQcdY0(1/28) AAS
無数の死体が散らばった戦場。勇者と魔王が対峙している。

魔王「もう、止めんか勇者よ」

勇者「ここまで来て何を言ってやがる。お前のために殺された魔族に対して悪いと思わないとか」

魔王「だからこそ、もう止めようと言っておるのだ」

勇者「何を訳の分からないことをぬかしてるんだ。俺はお前を殺す。それが、俺の使命なんだ」
省3
2: [saga] 2018/11/10(土)21:13 ID:/OayQcdY0(2/28) AAS
魔王「勇者、我はお主と戦いとうないのだ」

勇者「黙れ黙れ! 俺は魔族に殺された民の為にも、殺してきた魔族の為にも、お前を殺すんだ」

魔王「そうか……その信念を貫き通すと言うのだな?」

勇者「あぁ、そうだ」

魔王「分かった……諦めよう」
省1
3: [saga] 2018/11/10(土)21:16 ID:/OayQcdY0(3/28) AAS
魔王「いや、その必要はない。お主は少しでも身体を休めよ」

魔王が短剣を逆手に持つ。

勇者「な、お、おい魔王ッ!!」

魔王「さらばだ勇者よ」

魔王が自身の胸に短剣を突き刺す。
省11
4: [saga] 2018/11/10(土)21:18 ID:/OayQcdY0(4/28) AAS
2

幼女「起きてください」

眠る勇者の肩を揺する幼女。

勇者「んん、疲れてるんだ。あと五分だけ」

幼女「起きてください」
省2
5: [saga] 2018/11/10(土)21:19 ID:/OayQcdY0(5/28) AAS
三分後。

幼女「三分経ちました。起きてください」

勇者「いやだ! あと五分……んん」

幼女「……ふぅ」

幼女が勇者の傷口に指をねじ込む。
省5
6: [saga] 2018/11/10(土)21:21 ID:/OayQcdY0(6/28) AAS
勇者「はは、可愛いなー。でも、魔王に様とか付けない方がいいぞ」

ルー「ッム……私は二十歳で、勇者殿より三歳も歳上です!」

勇者「嘘だー。どう見ても六歳くらいじゃねーか」

ルー「人間の物差しで測らないでください。魔王様の命よりと申したでしょう。私は魔族です」

勇者「ま、魔族? こんなに容姿が人間な魔族なんて見たことがない」
省3
7: [saga] 2018/11/10(土)21:23 ID:/OayQcdY0(7/28) AAS
勇者「あーはいはい。その話は後で聞くから。とりあえず今は、人民の皆に魔王を倒したって報告しに行かないと」

ルー「それは叶わぬ願いですね」

勇者「え、何でだよ」

ルー「ここに、あなたを知っている方は存在してませんから。その逆も然りです」

勇者「あん? あーそう言えば、ここはどこだ?」
省8
8: [saga] 2018/11/10(土)21:24 ID:/OayQcdY0(8/28) AAS
勇者「どういうこと?」

ルー「日本は私たちが暮らしていた星とは別の星である、地球の大地名の一つです」

勇者「ほ……し……?」

ルー「はい、別の星です」

勇者「あの野郎、いきなり自害したかと思えば……そんなことしやがったのか!」
省6
9: [saga] 2018/11/10(土)21:26 ID:/OayQcdY0(9/28) AAS
ルー「はいはい。では、そんな脳筋の勇者殿にも分かるように教えてあげますよ」

勇者「お、おう」

ルー「良いですか。世界には魔族と人間が支配していますね」

勇者「人界と魔界だな」

ルー「そうです。土地の割合は人界と魔界で一対一です」
省9
10: [saga] 2018/11/10(土)21:28 ID:/OayQcdY0(10/28) AAS
ルー「貴族達は魔界の土地を自分のものにしようとします」

勇者「有り得るけど、王がそうはさせないだろ」

ルー「王も貴族の一人です。世界の半分という宝を目の前にした貴族は欲に飢えます」

勇者「確かに貴族は土地だの宝石だのに異様にうるさいけど……」

ルー「そうして、貴族同士での土地争いが勃発するのです」
省14
11: [saga] 2018/11/10(土)21:29 ID:/OayQcdY0(11/28) AAS
勇者「嘘だろ……」

ルー「嘘ではありません。話が少し脱線しましたね。戻しましょう。つまり、魔王様は人間から勇者殿を守るべく自害して日本に転送させたのです」

勇者「なんで、そこまでして俺を」

ルー「魔王様は勇者殿を愛していました。いつか、人間と魔族が分かり合える世界を求めていました。私たちも、そんな魔王様の夢を見守っていましたよ」

勇者「俺はアイツが女だったことも知らなかった」
省8
12: [saga] 2018/11/10(土)21:30 ID:/OayQcdY0(12/28) AAS
ルー「……そんなことが可能なんですか?」

勇者「ああ。勇者の力の源、聖力を補充する方法は感謝されることだ。多くの人に感謝されればされるほど、聖力が補充される」

ルー「つまり、聖力さえあれば転移も可能だと?」

勇者「理論上はな」

ルー「しかし、魔王様の天命に匹敵する量となると、膨大な時間が必要になるかと思いますが。」
省6
13: [saga] 2018/11/10(土)21:31 ID:/OayQcdY0(13/28) AAS
勇者「あのさ、さっきから気になってたんだけど」

ルー「なんです?」

勇者「この天井で輝いてるやつはなんだ?」

ルー「電球です」

勇者「雷の魔法か何かか?」
省10
14: [saga] 2018/11/10(土)21:32 ID:/OayQcdY0(14/28) AAS
ルー「あと、一ヶ月の間は単独行動を禁止します」

勇者「な、なんでだ?」

ルー「勇者殿が独りで行動すると、すぐに問題を起こしそうですからね」

勇者「はは、そんなガキじゃあるまいし」

ルー「いえ、今の勇者殿はクソガキ以下です。前の世界での常識は一切通じませんので」
省8
15: [saga] 2018/11/10(土)21:33 ID:/OayQcdY0(15/28) AAS
3

勇者が日本に転送されてから一ヶ月が経過。

勇者「おーいルートネス、風呂入ったぞ」

ルー「では、お先に」

勇者「なあなあ、俺もその風呂ってのに浸かってみたいんだけど。今日はお湯を流さないでくれ」
省10
16: [saga] 2018/11/10(土)21:34 ID:/OayQcdY0(16/28) AAS
勇者「ちぇ、厳しいな」

ルー「ふふん♪ふんふん♪」

勇者「ムスッと顔のルートネスが鼻歌を歌うくらいご機嫌になる風呂って、どんだけ極楽なんだよ……うー、やっぱり体験してみてー!」

辛抱ならず、脱衣所に向かう勇者。

勇者「なあ、今日だけは頼むからお湯を流さないでくれよ」
省8
17: [saga] 2018/11/10(土)21:35 ID:/OayQcdY0(17/28) AAS
脱衣所を出ていこうする勇者。
床に脱ぎ散らかしていた、靴下を踏みバランスを崩す。

勇者「おわっ――!!」

浴室へと繋がるドアのドアノブに手をかける。
そのまま、浴室へと突っ込む。

勇者「え、えへへ……わりぃ」

ルー「ふふ」
省7
18: [saga] 2018/11/10(土)21:36 ID:/OayQcdY0(18/28) AAS
ルー「さあ、十回死にましょう」

勇者「おー、ギロチンが見える」

勇者の首が跳ね飛び、再生する。

勇者「幻って分かってても、やっぱ辛いなこれ……」

ルー「あと、九回です。耐えてくださいね」
19: [saga] 2018/11/10(土)21:37 ID:/OayQcdY0(19/28) AAS
4

勇者が青ざめた顔で首を両手で抑えている

勇者「うぉぇ……うぇ。あー、生きた心地しねー」

ルー「自業自得ですよ」

ルートネスが勇者にコーヒーを差し出す。
省11
20: [saga] 2018/11/10(土)21:39 ID:/OayQcdY0(20/28) AAS
勇者「とは言っても、何で学校なんだよ」

ルー「聖力を集めるには、交流が必要ですからね。かと言って、日本では、誰これ構わず話しかけると不審者扱いされますので」

勇者「そこらへんは面倒な星だよな、ホント」

ルー「ですが、学校内なら特に問題はないでしょう。進んで人助けに励んでください」

勇者「まー、学校には一回通ってみたかったんだ。サンキュー!」
省4
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