[過去ログ] 真・恋姫無双【凡将伝Re】3 (1002レス)
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509(1): 一ノ瀬◆lAEnHrAlo. [saga] 2019/02/04(月)21:34 ID:enLvEem50(2/6) AAS
それは闇の底のさらに底。日の光が差すこともない一室である。
そこには蜘蛛の巣すら張る余地なく、闇のみが漂う。
「張られた蜘蛛の巣は今や張りぼて、と。こうして私がここにいるのがその証左ね。
そう考えると袁家の威光、遥か遠く虚しいかもしれないわね」
くすくす、と麗人は笑う、嗤う、哂う。
「李儒よ、お主の言うことは分かるのじゃがな。いかにも時期が悪いと思うでおじゃるよ。
麻呂の高貴たる呼びかけには、それはそれは従う官吏、武将が列をなすであろうぞ。
じゃがの、このたびは時期尚早でおじゃる」
袁胤は上品に笑いながら李儒の持ち込んだ案を差し戻す。いや、中身に目も通さずに遠ざける。
冗談ではない。拾ったこの身、命。無駄にしてなるものか、と。
「のう、此度の蜂起案とやら、じゃがの。
どう思う?許攸よ」
艱難辛苦を共にした腹心に問う。
「そうですなあ。袁術様を手中にというのはウチらが検討した目的そのもの。これはですやろ。
やけど……。今この時期に蜂起するのは正直言って、阿呆(アホ)のすることやと思いますわ。
今は力を蓄える時期ですやろ。
ありえへんですわ。今蜂起するなんて、な」
やれやれ、と全身で否定する許攸の仕草を見て袁胤は笑う。
「ほ、ほ。どうやらお主の雇い主も切羽詰まってきたようでおじゃるな?
まあ、麻呂には関係ないことでおじゃる。精々足掻けばいいでおじゃるよ」
ほ、ほ、と上品に笑う袁胤。李儒はそれでも揺るぎなく。
その態度にちり、と袁胤の本能が警戒を呼び掛ける。これでも袁胤は権謀術数の巣窟を軽やかに歩いてきたのだ。だからこそ李儒の余裕に違和感以上の不穏を嗅ぎ取る。
表情を司る筋肉の一筋すら震わせることなく更に袁胤は笑う。笑い続ける。
その笑みに同調して李儒も笑い出す。心底可笑しげに笑う。それがいっそ不気味である。不吉である。
「七千、準備したわ」
苦労したのよ?と哂う李儒にさしもの袁胤も青ざめる。
即座に問うたのに李儒は笑みを深める。
「許攸よ、如南の守りはいかほどじゃったか」
秀麗な貌を白くしながら許攸は小さく応える。千、と。
「あらあら、高貴なお方が取り乱してはいけませんわね?
まあ、私にはどうでもいいことですけどねえ!」
獰猛な笑い声を阻むものはいない。いやしないのである。げらげらと、心底愉快そうに笑う李儒の嬌声を切り捨て、袁胤は腹を括(くく)る。
「……是非もなし、じゃな。麻呂が立つ。それしか……なかろうよ」
「そんな、袁胤様!」
きっぱりとした口調で呟く主に、許攸はすがりつく。勝ち目などないと。後がないと、無謀だと。
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