遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」 (296レス)
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158: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/04/07(日)14:14 ID:NdD66LHM0(8/12) AAS
「君の名は」

ようやく、俺の問いかけが尽き。しばしの沈黙が流れた。

遊び人は、最後の俺の問いかけに対してか何かを言いかけたものの息を吐きだすに留まった。

「私は、ただの遊び人よ」
省12
159: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/04/07(日)14:15 ID:NdD66LHM0(9/12) AAS
「千鳥足テレポートも覚えた。もう二人で飛ぶ必要はない」

そう、俺は成長した。

なんたって俺は勇者だ。誰よりも才能に溢れ、女神の加護を受けた俺は人一倍の成長力を有している。

現に見てみろ、かつて一杯のビールでふらついた足が今では浮つくことなく地面に確固としてその存在を主張している。
省11
160: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/04/07(日)14:15 ID:NdD66LHM0(10/12) AAS
彼女の怒りが頂上へと達するその瞬間、まるで「私のことを忘れていませんか」と言わんばかりにマスターがグラスを二つ差し出してきた。

「お待たせしました」

俺と彼女の前に、届けられたグラスにはそれぞれ透明の液体がなみなみと注がれていた。

「これは何だマスター?蒸留酒か?」
省11
161: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/04/07(日)14:16 ID:NdD66LHM0(11/12) AAS
カクテルが如何ほどするのかは知らないが、これだけあれば二人分の酒代は十分に賄えるだろう。

俺は、黙ってカウンターに銀貨を1枚おいた。

すると、それに対抗するかのように遊び人もまた自身の懐から銀貨を1枚取り出す。

あくまでも、今晩は俺に奢られるつもりはないという意思表示なのだろう。
省9
162: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/04/07(日)14:16 ID:NdD66LHM0(12/12) AAS
――――――

「おや、兄ちゃん、どっから現れた!?」

大柄で禿頭の店主が、突然転移してきた俺を驚きの表情で出迎えてくれた。

「悪いが、部屋はやっぱり一つしか取れなかったよ」

最悪だ。
省12
163: 2019/04/08(月)00:27 ID:h3mGJ8iDO携(1) AAS

164: 2019/04/08(月)01:28 ID:CAzlXe61o(1) AAS
痴話喧嘩だもんな
おつおつ
165: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/04/23(火)23:04 ID:mit/xXSs0(1) AAS
――――――

翌朝になっても、遊び人は帰って来なかった。
二人で酒を飲んだ後、夜の闇の中に彼女が一人ふらりと消えてしまうことはこれまでも何度かあった。
今にして思えば、俺と別れた後にあのカクテルバーに赴いていたのだろう。

だが、朝になっても姿を見せないなんてことは一度もなかった。
確かに、彼女は魔族との戦いにおいても一歩も引けを取らない実力を持っている。
たとえそれでも、俺が彼女の身の安全を案じない理由には決してならない。
彼女は一人前の戦士であると同時に、俺のハートを打ち抜いた類まれなる愛らしさを持っているのだから。

日が昇ると同時に、俺は宿屋を起点に彼女を探し回ることにした。
ここは、そう広くない村だ。そんな村を、彼女のような美人が、しかも白と黒のワンピースに、首元には赤いマフラーというまるで道化師のようないでたちをしていれば目立たないはずがない。
省38
166: 2019/04/24(水)14:48 ID:ciR0Q/f9O携(1) AAS
おつおつ!
167: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/01(水)13:09 ID:/dcHJZ9Q0(1/4) AAS
俺は、出された食事を手早く腹に収め、再び宿屋の主人に声をかけた。

「あの酒をもう一杯くれ」

宿屋の主人は、機嫌よさげに「やっと俺の酒の味がわかる客が来た」と呟きながら店の奥へと消えていった。
誤解を生んではいるが……あえて否定することもないだろう。旨いか否かは、問題ではないのだから。
戻ってきた主人の右手には、水差しが握られている。中身は、推測するまでもなくあの酒なのだろう。

「このご時世だ、飲むなら自分の部屋で頼むよ」
省20
168: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/01(水)13:10 ID:/dcHJZ9Q0(2/4) AAS
いつの日か、遊び人が言っていたが。
確かに金づちの彼女が、今の俺と同じ体験をする可能性を鑑みれば、この魔法のリスクは相当なものだ。
彼女からしてみれば、海に飛ばされるイコール死に直結するのだから。

初めての千鳥足テレポートは、大失敗だった。

俺は、必死に足をばたつかせ両手を頭の上に掲げ、そうして何とか、手を二回パンパンと叩いた。

再び光にのみこまれ、目を開けるとそこは先ほど旅立ったばかりの宿屋だった。
俺から流れ落ちた、水が足元に大きな水たまりをつくっている。
階下へと降り、宿屋の主人にタオルを借りる。

「うお、兄ちゃん、びしょ濡れでどうしたんだ。それになんだか、なまぐせえぞ」
省17
169: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/01(水)13:10 ID:/dcHJZ9Q0(3/4) AAS
度重なる失敗に俺がめげることなどなかった。
うまくいかないなら、うまくいくまでやるだけだ。

と、水差しから直に燃料を補給しようとするも当に空になっていた。
いったい今日一日で何往復したかであろう、宿屋の階段を降りていく。

「おいおいおいおい兄ちゃんよ。あんたの魔法ってのは、失敗するたびに臭くなるのかい?」

主人に言われて、自身の袖を嗅いでみる。
腐った卵のような臭い。いわゆる硫黄臭いというやつだ。

「悪いが、酒を追加でくれないか?」
省8
170: 2019/05/01(水)14:35 ID:FH1V6VKdo(1) AAS
剣錆びそう耐性つきそう
おつおつ
171: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/01(水)15:26 ID:/dcHJZ9Q0(4/4) AAS
―――――

目が覚めると、朝日が昇っていた。
どういうことだ。俺は、千鳥足テレポートに失敗しすぎて遂に時空を超えてしまったのか。
なんてことはなく、酔っぱらっていることが条件の千鳥足テレポートの燃料補給にと酒をしこたま飲んだせいで酔いつぶれてしまったらしい。

結局、俺は一度たりとも千鳥足テレポートを成功させることができなかった。
遊び人曰く、二人でやると成功率があがる。とのことだったが、それにしたって10割失敗というのはどういうことだろう。
俺には、まだ千鳥足テレポートを使いこなすことができないのだろうか。

真っ先に思いつくのは、俺が呪文を間違っていた可能性だ。
だが、この魔法は妙な条件付けが為されている一方で呪文に関しては非常に簡易なものである。
俺は遊び人の隣で、幾度となくこの魔法の呪文を聞いて来た。一言一句違えていないはずだ。
省34
172: 2019/05/01(水)22:38 ID:jcsr/CODO携(1) AAS

若いって良いなあ
173: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/03(金)16:29 ID:KfriHW7I0(1/15) AAS
――――――

「いらっしゃいませ」

マスターの声に、俺は胸をほっと撫でおろす。
店の奥には、一人の女がカウンターに突っ伏している。
ブロンドの美しい髪、屋内でも決してとることのない赤いマフラー、そしてまるで道化師のような派手な服。
彼女は、そこにいた。

「あ……」

「こんなところにいたのか」
省16
174: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/03(金)16:29 ID:KfriHW7I0(2/15) AAS
――――――

なんとか『千鳥足テレポートが成功しない』を解決したかと思えば、今度は『千鳥足テレポートの期間術式が発動しない』だ。
問題が発生したら、むやみやたらに試行錯誤を繰り返すよりも、まずは状況を整理する。一見遠回りに見えるが、これが一番いいことは既に経験済みだ。

そもそも、千鳥足テレポートとは、二つのテレポートによって構成されている。

まず1つ目のテレポート、これが成功すると、テレポートの行使者は酒のある屋内へとランダムテレポートする。
ただし、そのランダム性には行使者の嗜好、望む場所が影響を与える。
俺が、初めて飛んだのは、ラムランナーの秘密倉庫。
そして先日は、炎魔将軍の便……いや、思い出すのはよしておこう。
まあ、あそこは魔王軍の幹部の隠れ家だ、おそらく相当な量の酒をため込んでいたに違いない。

そして2つ目が帰還術式によるテレポートだ。
省16
175: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/03(金)16:30 ID:KfriHW7I0(3/15) AAS
……って、俺は阿呆か。なんて無駄な思案を巡らせていたんだ。
今、この場において問題は既に解決されたも同然ではないか。なんたってここには、千鳥足テレポートを開発した大賢者がいるのだから。

「ムダよ……アタシが何の手段も講じずに、ここでカクテルを楽しんでいたとでも思うの?」

表情から、俺が何を考えているのか察したのだろう。遊び人が、水を差してくる。
……いや、キミの場合、それが十分にありえるのだが。

「残念ですが。これはあなた方の問題でしょう。私が口出しするのは野暮ってものですよ」
省26
176: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/03(金)16:30 ID:KfriHW7I0(4/15) AAS
ふむ、手詰まりだ。
自身の魔法への知見が浅いとは思わないが、これだけ複雑の条件付けが為されているとお手上げだ。
少なくとも、酒が入っている状態で取り組むべき問題ではない気がしてきた。

俺は、再びカウンターを乗り越え客側へと戻った。
当然のことだが、俺の酒は彼女の隣に置かれたままだ。正直なところ、気まずさから席を一人分空けたい気分ではあるが。
それでは、俺が逃げたみたいで実に情けないではないか。
俺は、覚悟を決め彼女の隣へ座った。

彼女の手元にあるものと同じ、強い赤みを帯びた琥珀色の酒に口をつける。
マンハッタンといったか。いったいどういう意味なのだろうか。
省21
177: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/03(金)16:30 ID:KfriHW7I0(5/15) AAS
「まだ怒ってる?」

顔中の皺という皺を眉に寄せ、口を真一文字に結び、腕を組んで正面を凝視する俺の様子を窺うように、遊び人が俺の顔を覗き込んできた。

「俺は、そもそも怒ってなんかいない」

「いや、怒ってたよ」
省34
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