男「元奴隷が居候する事になった」【安価有】 (596レス)
1-
抽出解除 必死チェッカー(簡易版) レス栞 あぼーん

233: [saga] 2017/12/12(火)00:55 ID:sLz/PBVL0(1/30) AAS
クリスマスイブ。薄曇りの空模様で、普段よりも少し肌寒い気温が世界を包む。

今日はお兄さんの提案で出かける事になった。

行先を訊ねてみれば、内緒の一言だけ。

どこへ行くのかもちろん気にはなっている。
省11
234: [saga] 2017/12/12(火)01:12 ID:sLz/PBVL0(2/30) AAS
深呼吸を幾度か繰り返して平静に戻る。

ちょうどその頃合を見計らったかのように、お兄さんも車の駐車してあるスペースに辿り着いた。

そこに停めてある桃色の車に乗り込む前に、

サイドミラーを覗き込んで手櫛でサッサッと前髪を整える。

髪型はおかしくはないだろうかと自問自答。
省16
235: [saga] 2017/12/12(火)01:29 ID:sLz/PBVL0(3/30) AAS
それから一呼吸だけ間を置いて私も助手席に乗り込む。

私がシートベルトを着用したのを確認し、お兄さんは今回の目的地に向かうために車のエンジンを点火した。

しばらく走っているうちに、この車は郊外に向かっている事が分かった。

道路の案内板から察すると市街地のテーマパークらしき場所が目的地のようだ。
省9
236: [saga] 2017/12/12(火)01:45 ID:sLz/PBVL0(4/30) AAS
車を走らせること大よそ一時間ほど。

“遊園地”と呼ばれている大規模なテーマパークに辿り着いた。

目的地に着いてその中に入場をした私は思う。

地球にはこんなにも人が居たのか、と。

「うはぁ、凄い人の多さだ……」
省2
237: [saga] 2017/12/12(火)01:47 ID:sLz/PBVL0(5/30) AAS
「いやぁ、最近ちょっとバタバタしていたからどこにも連れて行けてなくてさ。
 今日はクリスマスイブだから何かしようと思ってたけれど……裏目に出ちゃったかな?」

「いいえ、とても素敵なところに連れてきてくださって嬉しいです」

「サンディは優しいなぁ……」

お兄さんは大仰にほろりと泣くような素振りを見せて、私の手を繋いでくれる。

その大きな手をぎゅっと握り返した。離さないように、離れないように。
省1
238: [saga] 2017/12/12(火)01:58 ID:sLz/PBVL0(6/30) AAS
人の多さが影響しているのだろう。

遊園地のアトラクションは軒並み待ち時間が多かった。

特にジェットコースターという乗り物には、どれも約三時間待ちという看板が立っている。

さてどこから回ろうかとお兄さんはパンフレット片手に悩んでいた。

貴方と一緒にいれるだけで私は嬉しいのに。
省10
239: [saga] 2017/12/12(火)02:14 ID:sLz/PBVL0(7/30) AAS
お兄さんが熟考をして出した結論は、

『とりあえず空いているアトラクションを端から回ろう』という内容だった。

ただ、観覧車にはとりあえず乗っておきたいという彼の要望で、

一番最初に観覧車の整理券をもらい、順番が巡ってくる二時間後までは別所を巡る段取りに。
省20
240: [saga] 2017/12/12(火)02:19 ID:sLz/PBVL0(8/30) AAS
そのままお兄さんのいた景色を置き去りにして、回転木馬はのんびり回る。

そして二周目、再びお兄さんの待っている景色へ。

「サンディ、こっち向いて!」

言葉のまま彼の方を向いて手を振ると、パシャリと彼の携帯電話で写真を撮られた。
省18
242: [saga] 2017/12/12(火)02:46 ID:sLz/PBVL0(9/30) AAS
その後はコーヒーカップという乗り物の所へ行き、お兄さんと一緒に乗った。

ぐるぐる回るそれも楽しくて、ついはしゃぎすぎた結果、二人して思わず回し過ぎた。

アトラクションから降りる際にお兄さんの足元がふらふらしていたのも

何だかとっても面白くて、つい笑ってしまった。

そして遊園地の中にある売店で軽食のサンドイッチと温かい飲み物を購入した。
省28
243: [saga] 2017/12/12(火)03:05 ID:sLz/PBVL0(10/30) AAS
それから少し遊園地の飾りつけを見て回り、気が付いたら観覧車に並ぶ良い時間となっていた。

係員の方に整理券を渡して、優先列に並ぶ。

ものの十分と待つ事も無く、ゴンドラに乗り込むことができた。

ゆっくりと頂上に上がるそれは、人工的に色づいた夜光を置き去りにしていく。
省20
244: [saga] 2017/12/12(火)03:19 ID:sLz/PBVL0(11/30) AAS
プレゼントに対して、私は何か返せるものがないのか訊ねてみた。

お兄さんは「気にしないで」の一点張り。

そして私の頭を軽く撫でて、伝えてくれる。

「君がプレゼントの中身を見てくれたら、僕はそれだけでいいんだ」
省13
245: [saga] 2017/12/12(火)03:21 ID:sLz/PBVL0(12/30) AAS
素敵な時間はあっという間に過ぎていく。

遊園地にもっと長くいたいという気持ちは強い。

だからこそ、名残惜しいくらいが丁度いいのだろう。

去年の今頃は、明日さえ分からないような刹那を生きていた。
省5
246: [saga] 2017/12/12(火)03:50 ID:sLz/PBVL0(13/30) AAS
家に戻ると、お兄さんはいそいそと何かの準備を始めた。

その間に私はラッピングされたプレゼントを開ける事に。

包み紙の形を崩さないように丁寧に開けると、そこに見えたのはやはり簡素なCDケースだった。

ただ、『親愛なるサンディへ』と書かれているのが気になるところ。
省4
247: [saga] 2017/12/12(火)03:53 ID:sLz/PBVL0(14/30) AAS
まず最初に映っていたのは、どこかの大きな施設。

色んな人種の子どもたちが楽しそうにはしゃいでいる姿が映し出されている。

ふと、カメラがとある子どもに向かってズームを始めた。

そこに映っていたのは。
省10
248: [saga] 2017/12/12(火)03:54 ID:sLz/PBVL0(15/30) AAS
そして次の場面転換では、空いた部屋に二人が並んで座っていた。

二人はまじまじとした顔でカメラを見つめている。

物珍しい、を体現するとこうなるのか。

カメラを回している人が小さな声で、オッケー喋って喋って、と言ってるのが聞こえてきた。

 
249: [saga] 2017/12/12(火)04:03 ID:sLz/PBVL0(16/30) AAS
“あー、いま、もう撮れてるの? 撮れてる? なら良かった。

 サンディ。元気にしてる?

 私たちは今、アメリカの孤児院で暮らしているわ。

 ここの先生たち、とっても優しいの。神様みたい。
省8
250: [saga] 2017/12/12(火)04:07 ID:sLz/PBVL0(17/30) AAS
『やっほー。サンディ、私のこと忘れてないよね?

 私もイザベルと一緒の孤児院にいるんだ。

 ここはね、温かいよ。

 身を切らずにご飯も出るし、それぞれにベッドとふかふかの毛布が分配されてるから
省8
251: [saga] 2017/12/12(火)04:09 ID:sLz/PBVL0(18/30) AAS
“それとね。あたし達、貴方にどうしても伝えなくちゃいけない事があるの”

『うん、どうしても伝えたかったの』

せーの、と息を合わせる合図の後、その言葉は紡がれた。

 
252: [saga] 2017/12/12(火)04:10 ID:sLz/PBVL0(19/30) AAS
 サンディ、助けてくれて、ありがとう。

 
253: [saga] 2017/12/12(火)04:12 ID:sLz/PBVL0(20/30) AAS
『辛かったとき、一緒にぬくぬくしてくれて、ありがとう』

“日本にくるとき、あの船の中で私たちを庇ってくれて、ありがとう”

『サンディ泣き虫だから、きっと誰よりも怖かったのに』

“貴方がいてくれたから、きっと私たちは生きていられたの”
省5
1-
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.185s*