男「元奴隷が居候する事になった」【安価有】 (597レス)
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428: [saga] 2018/10/15(月)20:48 ID:4uI/TZsD0(1/26) AAS
耳に届くは夏の風物詩。
遠くから太鼓の音が聞こえてきた。
実際に叩いてはおらず、どうやら町内放送用の
大きいスピーカーで流しているようだが、
省6
429: [saga] 2018/10/15(月)20:50 ID:4uI/TZsD0(2/26) AAS
周りを見渡せば人の波が視界に飛び込んでくる。
中々に壮観な混雑具合で、人混みが苦手は僕としては
この中に後から飛び込むのかと考えると少しだけ肩が重い。
只、がやがやとしているが、その実なぜだか妙に心地良い。
祭りの賑わい故だろうか。
省5
430: [saga] 2018/10/15(月)20:53 ID:4uI/TZsD0(3/26) AAS
ふと、下駄の音が背後から自分に近づいてくるのを感じた。
振り返ってみると、そこには一人の女の子。
「お兄さん、お待たせしました」
和装の定番とも言える浴衣に身を包んだサンディがそこにいた。
日焼けした褐色の肌、烏の濡羽色を想起する黒艶な髪からのぞかせる、ほんのり紅潮した頬。
省3
431: [saga] 2018/10/15(月)20:55 ID:4uI/TZsD0(4/26) AAS
濃紺の藍色を基調とした浴衣に身を包んだサンディ。
それを見た僕は率直な感想を告げてみた。
「うん、綺麗だね」
「………………っ!!!」
彼女はぼっと顔を更に真っ赤にして、しゅんしゅんと肩を縮こませるような素振りをする。
省3
432: [saga] 2018/10/15(月)20:59 ID:4uI/TZsD0(5/26) AAS
サンディの分だけ買うと彼女は気後れするだろうから、
いちおう僕も大人用のそれを購入して、いま実際に着ていたりする。
和の心を形だけでもと整えてはみたが、こうして実際に袖を通してみると
なかなかどうして粋なものだ。
「お兄さんも、とっても似合ってます……」
省9
433: [saga] 2018/10/15(月)21:02 ID:4uI/TZsD0(6/26) AAS
「そ、それにしても思ったより時間がかかって申し訳ありません」
「気にしないで。少しは下駄に慣れたかい?」
「む、難しいところです……」
彼女は浴衣用の下駄を初めて履くものだから、
玄関を出た先の足取りなんてそれはもう覚束なくて危なっかしい。
省10
434: [saga] 2018/10/15(月)21:04 ID:4uI/TZsD0(7/26) AAS
目線を下にして足元を注視しながらも、わたわた歩きをするサンディは実に可愛い。
だがそれ以上にハラハラしてしまう……。
折角の楽しい場でケガをさせてしまうのは保護者失格。
浴衣と下駄を見立てたのは僕だし、そこはしっかり責任を持たねば。
支えになるため、彼女の左手を優しく握ってみた。
省7
435: [saga] 2018/10/15(月)21:12 ID:4uI/TZsD0(8/26) AAS
まぁ、おじさんに片足を踏み込んだような僕と手を繋ぐのは恥ずかしいのだろう。
中々に慣れてくれないから何だかこっちも妙に照れ臭くなってしまうのは困りもの。
「ゴメンね、嫌だったら離してもいいからね」
そういうとサンディは首を勢いよくブンブンと振って、
繋がっている手を少し強く握り返してくれた。
省6
438: [saga] 2018/10/15(月)21:30 ID:4uI/TZsD0(9/26) AAS
ちんとんしゃん、と祭りの雰囲気を色濃く醸し出してくれるBGMが聞こえてくる。
そんな中でダラダラ歩みを進めていると、くぅぅと横から可愛らしいお腹の音が聞こえて来た。
発信源になった子は、それはもう恥ずかしさでいたたまれないような表情をしている。
そういえば夕飯を済ませていなかった事を思い出し、
僕とサンディは屋台の並んだ通りを歩くことに。
省3
439: [saga] 2018/10/15(月)21:33 ID:4uI/TZsD0(10/26) AAS
「お兄さん、あれはなんですか?」
「あれはヒーローを催したお面だよ」
「食べられるんですか?」
「食べられないよ」
省13
440: [saga] 2018/10/15(月)21:36 ID:4uI/TZsD0(11/26) AAS
「へい、サンディ」
「な、なんでしょうか?」
「お好み焼きとタコ焼き、どっちが好き?」
「ど、どちらも好きですが……強いて言えば、たこ焼きです」
「よっしゃ任せて、どっちも買ってくる」
省6
441: [saga] 2018/10/15(月)21:44 ID:4uI/TZsD0(12/26) AAS
少し離れた屋台にて双方の食べ物を購入し、サンディの所へ戻ろうと振り返ってみると。
遠目だと分からないが、どうやら浴衣姿の女性と話し込んでいるようだ。
知り合いなのだろうか? 屈託のない笑顔を浴衣の女性に向けていた。
例の事件のこともあるし、心内で少しだけ警戒レベルを上げながら元居た場所に歩みを進める。
だが、近づくにつれて自分の心配が杞憂なのが分かった。
省8
442: [saga] 2018/10/15(月)21:53 ID:4uI/TZsD0(13/26) AAS
「あら、お兄さん。偶然ですね!」
「いや本当に。店員さん、浴衣姿も似合っていますね」
「本当ですか!? いやー、イケメンから言われると悪い気はしませんね!!」
はっはっは、と互いに笑いながらも邂逅する。
こちらとしては偽りなく褒めているつもりだが、まぁ向こうの返しは社交辞令だろう。
省6
443: [saga] 2018/10/15(月)21:56 ID:4uI/TZsD0(14/26) AAS
大きな目、クリっとした癖毛、中世的な顔立ち。
例えがあまり思い浮かばないが、芸能人の有名子役と言われても違和感のない子だ。
まぁ、うちの子も負けてはいないが。
背丈と雰囲気から察するに年齢はサンディと近いと予想する。
……ただ、この子は男の子か?女の子か? 一体どっちだ?
省9
444(1): [saga] 2018/10/15(月)22:07 ID:4uI/TZsD0(15/26) AAS
そういえばサンディは、日本に同じ年頃の子の友人が今の所いなかったのを思い出す。
もしこの子が友人になってくれたら、きっと彼女は喜ぶだろう。
いつの間にやら僕の背中に隠れるように収まっていたサンディの頭を軽く撫で、
そっと背中を押して前に出す。
「ほら、自己紹介」
省13
445: [saga] 2018/10/15(月)22:19 ID:4uI/TZsD0(16/26) AAS
店員のお姉さんは、よくできましたと言わんばかりにマオ君をぐりぐり撫でくりましている。
当の彼は、やめろよと口では言いながらも、嫌がる事無くされるがままだった。
どことなく照れているような素振りすら伺えてしまう。
……おや、これはひょっとして?
ひとしきり撫で終えたあと、店員はこちらを振り返って笑顔を向けてくる。
省10
446: [saga] 2018/10/15(月)22:20 ID:4uI/TZsD0(17/26) AAS
「で、でもお姉さんはきっとその内いい人ができますよ。お綺麗なんですから」
「いいんです、いいんです……。その優しさにしばし癒させてもらいます……」
「何なら僕が嫁さんにしたいくらいですよ」
「えー、ほんとにですか……?」
何となくお姉さんがまんざらでもない顔を向けてくる。
省7
447: [saga] 2018/10/15(月)22:28 ID:4uI/TZsD0(18/26) AAS
謎のプレッシャーを感じつつ、ふと相手の方を見てみると、マオ君が店員さんの手を握っていた。
彼女はポカンとしながらも握られるがまま。
マオ君は顔を見られないように俯きながら、しかして真っ赤な耳で呟いた。
「姉ちゃんは俺がもらうから、いいだろ」
男前ですやん。なんて分かり易い初恋なんだ……!
省7
448: [saga] 2018/10/15(月)22:38 ID:4uI/TZsD0(19/26) AAS
サンディは握っていた僕の手を放して、つかつかとマオ君に近づいていく。
そうして悲しみの抱擁が終わった彼の前に立ち、次はサンディが彼にハグをした。
そして背中を二度三度、ポンポンと叩く。
その後にサンディとマオ君は初めて向かい合い、互いの目を見つめた。
はっ、とマオ君はサンディの何かを察したような仕草をする。
省10
449: [saga] 2018/10/15(月)22:54 ID:4uI/TZsD0(20/26) AAS
そうして僕らは二言三言と世間話をしたあと、
もうすぐ花火が始まるとのアナウンスを機にそれぞれ解散した。
お姉さんは別所に二人分だけスペースを事前に作って陣取ってあるのだとか。
僕たちよりその場を早めに去る二人の背中を見つめる。
目に見えて分かるのは、身長差。
省7
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