役人「君と世界に花束を」【ガルパンSS】 (63レス)
役人「君と世界に花束を」【ガルパンSS】 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1501360854/
上
下
前次
1-
新
通常表示
512バイト分割
レス栞
抽出解除
レス栞
9: ◆663LzicDVs [] 2017/07/30(日) 06:39:50.83 ID:DcA3DrBQ0 ◇◇◇ 「──お父さん! お父さん、聞いてる?」 「……え?」 「もうっ、進学はどうなってるんだって聞いたのはお父さんでしょ?」 「あ、ああ──すまない」 陽光に目を細めながら、辻は居住まいを正した。 ここは越谷のアウトレット・モール。外郭のフードスペースの一角だ。 目の前には意志の強そうな瞳をした自分の長女。最近その母親と面立ちが似てきた気がする。 今日は休日。数少ない貴重な娘との面会日だ。いい加減仕事の問題は心から締め出さなくては。 「……お父さん、なんかちょっと痩せた?」 「そうかな……?」 辻はややだぶついたポロシャツを引っ張り、中年太りとは無縁のままできている腹を見下ろした。 入省してからこれまでずっと激務の毎日だった。庁舎に泊まり込んで夕食は真夜中にカップラーメンなどという日も珍しくなかった。幹部クラスになってからはさすがに泊まり込みは減ったが、3年前に離婚して以来、更に食生活が荒れているという自覚はあった。 離婚原因は生活リズムの不一致と、父親としての子育てへの非協力。高級官僚にありがちな理由であった。 だが今回の辻の体重減少の原因は食生活のせいではない。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1501360854/9
14: ◆663LzicDVs [] 2017/07/30(日) 06:52:10.83 ID:DcA3DrBQ0 「レオポンも今まで頑張ってくれたけど……ね。もう私一人じゃ正直、他の戦車の面倒みるだけでも精一杯だし……」 「じゃあ、ポルシェティーガーはこのまま、ってこと、ですか……?」 「そろそろ休ませてって言いたいのかもな、って気もしてるんだ」 「……」 薄暗いガレージに納まった戦車は、その巨体に似合わず、何だか心細そうに見えた。 「シャーマンとか、アメリカの戦車が高校戦車道用にレンタルされるって噂もあるし……」 他の新しい戦車がやってきてお役ごめんになったら、この子はずっと、暗い倉庫の中で過ごすのだろうか? 「あの……待って。待って下さいっ!」 そんなイメージが頭の中に浮かんだとたん、思わず大声を上げていた。ツチヤが目を丸くするのがわかる。それでも、勝手に言葉が口をついて出た。初対面の、それも先輩相手に何を言ってるの?と冷静な自分が心の中で諫めるが、それでも止まらない。 「私、本当にただの部外者で……こんなこという資格ないってわかってるんですけど。それでも……それでも、諦めないでほしいです!」 「試合のとき、格好良かったです!隊長の戦車を守って戦ってたとき。この子も先輩たちも、すごくすごく格好良かったです!」 ツチヤは無言で、でもまっすぐ見つめ返しながら聞いていた。 「だから、その……また見せてほしいです。諦めないで、最後まで戦うところ……!」 初めはとぎれとぎれに震え気味だった声は、いつしか堰を切ったように早口に、熱の入ったものになっていった。 もともとはぜんぜん戦車道になんか興味なかった。興奮した友達がやたらと勧めるから、付き合いのつもりで動画をクリックしただけだった。なのに、いつの間にか完全に引き込まれていた。隊長車同士の決闘の場を守って踏ん張る、ポルシェティーガーとクルーたちの姿に。至近距離で囲まれて一斉砲火を浴び、ぼろぼろになりながらも一歩も退かない姿に。 (ナイトみたい) 我ながら乙女すぎる例えだとは思ったけれど、この傷だらけの鉄の塊が、本気で甲冑を纏った騎士のように見えたのだ。お姫様を──W号を、命がけで守る騎士に。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1501360854/14
メモ帳
(0/65535文字)
上
下
前次
1-
新
書
関
写
板
覧
索
設
栞
歴
スレ情報
赤レス抽出
画像レス抽出
歴の未読スレ
AAサムネイル
Google検索
Wikipedia
ぬこの手
ぬこTOP
0.207s*