役人「君と世界に花束を」【ガルパンSS】 (63レス)
上下前次1-新
20: ◆663LzicDVs 2017/07/30(日)07:55 ID:DcA3DrBQ0(20/53) AAS
『大洗に行くことにしたの』
憧れと未来への希望に満ちた声。
『私はあの大洗に行って、ポルシェティーガーの力になってあげるの!』
鋼のように強い意志を秘めた瞳。
「スイートピー……」
思い出した。
娘がまだ小学校低学年の頃、バレエを習いたいと言い出して通わせたことがあった。
発表会の日、例によって辻は仕事のはずだったのが、時間が空いたので見に行ったことがある。手ぶらで行くのも気が引けたので、街角で見かけた花屋で花束を買って、幕の最後に渡したのだ。たまたま目についたから店員に頼んだその花が、スイートピーだった。
受け取るときはお父さん、来たんだ?なんて生意気そうに言っていたが、それから長い事大事そうにリビングの花瓶に飾られていたっけ……
「ではこの方針で進めるということで。よろしいですな?」
官房長の声に我に返る。
このまま話が進むのを黙って見ていれば、ポルシェティーガーは異国の地で砲撃の的にされた後屑鉄になる。娘とメカニックの少女が希望を託した戦車は、アメリカから押し付けられた一律ダークグリーンの車輛に取って代わられる。
──それでいいのか?
自分はダメな父親だ。娘の好きな花と、その訳すら知らなかった、父親失格の男だ。
仕事一筋を言い訳にしてきたが、その仕事ですらミスを犯して左遷された省内のお荷物だ。もはや生きる意味すら見失いかけている、ポルシェティーガーと同じ、ロートルのポンコツだ。
でも。だからこそ。
だからこそせめて、娘の夢ぐらいは守ってやりたい。
もう会うことはできなくても、彼女の門出を祝う花束ぐらいは、贈ってやりたい。
今更失うものなんて、大して残ってすらいないじゃないか──
「待ってください!」
気が付くと辻は立ち上がっていた。
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 43 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 0.040s