ガヴリールドロップアウト (22レス)
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1: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:09 ID:pDk4sywp0(1/20) AAS
ガヴリール×サターニャ

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3: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:13 ID:pDk4sywp0(3/20) AAS
001

ありえないことが起きた。
一体なにがあったのかを説明する前に、まず簡単に、申し訳程度に自己紹介をさせてほしい。
そうすることで多少は私も冷静になれるだろう、言わば核心に触れる前のワンクッションというやつだ。
早速だけど、私は一応“天使”をやっている。
名前は天真=ガヴリール=ホワイト。
立場上、人間を幸せにするという大義を背負わされ地上にやってきた。
当初はそんな自分の使命に誇りを持っていたはずだったんだけど。
しかし地上の娯楽の楽しさに気付いてしまった私は、それまでの“優秀な天使”というなんとも退屈で面倒な肩書きを自ら捨てて、現在は好きなことをしながらダラダラと幸せな日々を送っていた。
まあ本来の使命をないがしろにしている影響は天界からの仕送り、つまり金銭面にジワジワと影響を与えていたため、地上での生活費を稼ぐために仕方なく喫茶店のバイトなんかも始めてみたり。
省5
4: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:16 ID:pDk4sywp0(4/20) AAS
私がかろうじて天使という体裁を保っていられるのはきっと、彼女達のおかげだろう。
悪魔なのに真面目で世話好きなヴィーネ。
私と同じ天使で、退屈を何より嫌うラフィエル。
そして、この物語に大きく関わっていて、むしろこの物語の核心そのものでもある、自称大悪魔。
胡桃沢=サタニキア=マクドウェル。
私は彼女のことをサターニャと呼んでいる。
サターニャは何故か最初から私のことを勝手にライバル視してて、何かと理由をつけては私に謎の勝負を挑んでくる。
はっきり言って、かなりうざい。
控えめに言っても、面倒くさい悪魔。
当初は彼女に対してそんな印象が七割くらいを占めていた。
省9
5: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:16 ID:pDk4sywp0(5/20) AAS
002

あれは確か、学校で体力測定があった日だった。
体力ゲージがおちょこ一杯分くらいしかない私は、当然のようにサボろうと決心していたんだけど、我が親しき悪魔ヴィーネの口車に乗せられてしまい、不本意ながらも参加することにした。
焼肉ってワードの持つ魔力は尋常じゃない。
その日は例の如くサターニャが勝負を挑んできたが、もちろん私は断った。
一人でやってろ、と。
サターニャは運動が得意だからか、ここぞとばかりにテンションが高く、正直うっとうしい。
かくしてなんとか最終項目の持久走を完走した私は、しかし走り終わると同時に地面に倒れてしまった。
いわゆる熱中症というやつだ。
普段の運動不足に加え、その日はかなり日差しも強く、こまめに水分補給をしていたつもりでも身体は保たなかったらしい。
省4
6: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:17 ID:pDk4sywp0(6/20) AAS
そう思いながら、ゆっくりと目を開ける。
そこには、さっきまで邪険にしまくっていたサターニャが、必死な表情で私を保健室に運ぶまでの一部始終が鮮明に映し出されていた。
私はこの時、不覚にも彼女に、ときめいてしまったのだ。
今まで経験したことがない不思議な感覚。
得体の知れない恥ずかしさと、強烈なまでの心地良さが同時に身体の中に湧き起こる。
心臓が一定のリズムで力強く脈打ち、その音が次第に大きくなっていくのがわかった。
このまま外に飛び出してしまうんじゃないかと思うほどに。
きっかけといえば、やはりこれがそうなんだろう。
この日から私はサターニャのことを意識するようになった。
彼女は実に表情豊かで、現代には珍しいくらいの純情で、目で追えば追うほどに惹かれ、彼女の一挙手一投足がとても尊く感じるようになったころにはすでに、私の頭の中はサターニャで占領されていた。
省3
7: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:18 ID:pDk4sywp0(7/20) AAS
「そう、ただし負けたら相手の言うことに一つ従うという悪魔的なババ抜きよ!」

飽きもせず、懲りもせず、挨拶みたいな気軽さで、私にけったいな勝負を持ちかけてくるのだが。

「うーん、まあ……たまには勝負も悪くないかもな」

いつもなら第二宇宙速度くらいの速さでお断りするんだけど、今の私は以前とは少し違う。
例の件でサターニャには借りがある手前、ババ抜き程度の勝負に付き合うくらい私とて吝かじゃない。それにたかがババ抜きだろ。
そんな風に自分で言い訳を考えながら。
私の返事が意外だったらしく、サターニャは鳩が豆鉄砲を食ったような間の抜けた表情を見せるが、変に理由を追求してくることもなく、いつもの調子に戻ると早速トランプを配り始めた。

「うふふ、罰ゲームありのババ抜きなんて見ている側もなんだか緊張しますね」
省5
8: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:18 ID:pDk4sywp0(8/20) AAS
003

結果から言えば、ババ抜き対決は私の負け。
まあ二人対戦だから最後は二分の一の戦いになるので、どちらが勝っても別に驚きはしないけど。
しかしサターニャはまるで子供のように両手を上げて無邪気に喜んでいた。
こいつのリアクション、ほんと尊いな畜生。

「くっく、さて、ガヴリールに一体何をさせようかしら」

「まあ一応ルールだからな、私にできることならなんでも言ってみろ」

私の言葉を聞き、不敵に笑うサターニャ。
一体、私に何をさせる気だろう。
負けるまであんまり深く考えていなかったので、かなり不安になってきた。
省2
9: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:19 ID:pDk4sywp0(9/20) AAS
サターニャの要求はかなり予想外だった。
思わず私は彼女のことを凝視してしまう。
私の視線に対して何かを感じたのか、サターニャは目が合うとすぐに顔をそむけてしまった。
今の反応、ひょっとして、照れてた?
いや……まさかな。

「さ、サターニャさんとガヴちゃんが……二人きりで映画館デートだなんて!いつからそんなに仲良しになられたんですか!?」

案の定、ラフィエルは驚きを隠せない様子で狼狽える。
ヴィーネに至っては驚きすぎて半分石化していた。

「ガヴが私じゃなくてサターニャと映画館に……私じゃなくてサターニャと」

うわ、なんか小声で呟いてる。
省6
10: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:21 ID:pDk4sywp0(10/20) AAS
004

デート、と言っていいのかわからないけど、それでも二人きりで映画館に行くというのだから、デートと捉えても問題はない気がする。
サターニャに指定された待ち合わせ場所は市街地の一端、そこは雑誌などでデートスポットによく取り上げられるエリアだった。
ここを指定してきたってことは、向こうもデートだと認識している?
だとしたら、サターニャは私のこと……。
いやいや、冷静になれ私。
今まで本気じゃないにしろサターニャに対してはおよそ悪態ばかりついてきた。
そんな私のことを、サターニャが好意的に思うはずがあるだろうか。
答えは明確だった。
だからきっと、これは私になにか屈辱を与えるための作戦なのだろう。
省2
11: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:23 ID:pDk4sywp0(11/20) AAS
体力測定のあったあの日に、私はサターニャに対する見方を変えた。
それまで邪険にしていた態度も改め、それ以降はサターニャに極力優しく接するように心がけてもいた。
しかし、私がサターニャに与えてきたものはきっとその程度の気持ちの変化で償えるようなものではないだろう。
だから今日は、サターニャにどんなことをされようと、それを甘んじて受け入れるつもりでいる。
私はまるで天界にいた頃を思い出したみたいに、精一杯身だしなみを整えてから、行ってきますと呟いて家を出た。
12: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:25 ID:pDk4sywp0(12/20) AAS
005

「あら、遅かったわねガヴリール」

待ち合わせ場所に着くと、そこにはすでにサターニャがドヤ顔で待ち伏せていた。
私は不意に驚いてしまう。
それはサターニャが自分より先に待ち合わせ場所に着いていたことではなく、サターニャの格好に対しての驚きだった。

「サターニャ……その格好」

「格好?ああ、適当に雑誌に載ってたのを選んで買っただけなんだけど、それがどうかしたの」
省9
13: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:27 ID:pDk4sywp0(13/20) AAS
いつにも増してテンションが高いサターニャと一緒に、少し歩いた場所にある映画館へ向かう。
その際の会話で得た情報によると、サターニャは地上に来てから映画館で一度も映画を観たことがないため、誰かと一緒に映画が見たかったのだと。

「ガヴリールは映画館に行ったことあるの?」

「いや、そうえば私も初めてだな」

「ふぅん、なら私がガヴリールの初めてを奪うことになるわね!」

「ちょ、声がでかい!誤解されたらどうするんだよ」
省10
14: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:28 ID:pDk4sywp0(14/20) AAS
映画館でチケットを買う際に、私の分のお金をサターニャが出そうとしてきた。

「いや、自分のチケット代くらい自分で払うよ」

「ふん、どうせアンタ課金とかで金欠なんでしょ、今月魔界からの仕送りが少し多かったからこれくらいの出費痛くもかゆくもないわ、それに」

「それに?」

「あぅ、その、ガヴリールの休日を私の都合で潰してるわけだし、このぐらいはさせなさいっ」
省13
15: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:30 ID:pDk4sywp0(15/20) AAS
006

時刻は16時52分。
映画館を出たあと、お腹が空いたので適当に近くのファミレスに入ることにした。

「天使と悪魔ってR15だったんだな」

「私もまさかあんなに過激な映画だとは思わなかったわ……」

お互いに作品についての感想を述べ合う。
内容はぶっちゃけ、ただの官能映画だった。
しかもよりによって地上で暮らす天使と悪魔の女の子が終始いちゃつくだけという、まるで私達へ何か注意喚起を訴えかけるようなお話。
上映中、何回サターニャと目が合っただろうか。
なかなか気まずかった。
省9
16: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:32 ID:pDk4sywp0(16/20) AAS
サターニャの横顔が夕日に照らされて、なんかすごく綺麗だ。
結局、普通にデートを楽しんだだけだったな。
私が変に勘ぐりすぎた。

「サターニャ、なんで体力測定のとき、私のこと助けてくれたの?私、てっきりおまえに嫌われてるかと」

不意にあの日のことを聞いてみる。
それは私の意思とは無関係に物事の核心に迫る質問だと、言った後で気付いた。

「さあ、なんでかしらね。気付いたら身体が勝手に動いてたのよ」

サターニャは自分の考えを整理しているように、少し沈黙する。
それから何かを決意したみたいに私の方をまっすぐ見つめながら、続けた。
省1
17: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:33 ID:pDk4sywp0(17/20) AAS
世界中のあらゆる時計の針が静止した。
もちろん実際は静止してなんていない。
ただ彼女の言葉はそれくらい衝撃的で、驚愕的で、そして享楽的だった。

「ふぇっ?」

思わず私の口から間抜けな音が漏れる。
今、サターニャはなんて?
好き?好きって、誰が?
頭の中が真っ白になった。
わけがわからない。
サターニャが私に告白するなんて。
省4
18: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:34 ID:pDk4sywp0(18/20) AAS
007

後日談として、その日から私達は正式に恋人同士になった。
ヴィーネとラフィエルにはまだ秘密にしてあるけど、まあ長くは隠せないだろう。
しかし自分から報告するのは恥ずかしいので、自然に発覚するのを待つことにした。
それにしても、まさかサターニャと付き合うことになるとは。
これが天界にバレたら、堕天確定かな?
まあ、そんなことどうでもいいけど。
あとから判明したことだが、サターニャが私によく勝負を仕掛けてくる理由は、彼女なりのアプローチのつもりだったんだと。
いつだったか廊下ですれ違ったときに、一目見た瞬間、私に特別な興味を持ったらしい。
聞いた話によると、いわゆる一目惚れというやつに近いのかもしれない。
省3
19: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:35 ID:pDk4sywp0(19/20) AAS
これがこの物語の真相で、真実。
なんてことはない、どこにでもある、どこにでもいる学生の至って平凡な恋物語だ。
事実は小説よりも奇なりというなら、まあ天使と悪魔の恋愛も確かに“奇”と言えないこともないが、これはそんなに難しい話なんかじゃない。
とある日曜日。
私はいつか映画館に行ったあの日のように、なんならあの日以上に、サターニャに負けないように精一杯のオシャレをしたりなんかして、家を出る。
今日はサターニャと一緒に水族館に行くのだ。
どうやら今回は私の方が早かったらしく、あとから待ち合わせ場所にやってきたサターニャは私を見つけると少し悔しそうな顔をする。
そんな彼女に向けて、私は言った。

「ん遅かったなサターニャ」

まるでいつかの意趣返しをするみたいに、お互いに私達は続ける。
省9
20: ◆VsKDZIx0tDcQ [saga] 2017/05/31(水)16:35 ID:pDk4sywp0(20/20) AAS
☆END☆
21: 2017/05/31(水)22:16 ID:L7BdNzHSO携(1) AAS
中身読んでないけどタイトル考えろよ
22: 2017/05/31(水)23:33 ID:W4vuQTxn0(1) AAS

ガヴサタ最高
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