梨子「5年目の悲劇」 (315レス)
梨子「5年目の悲劇」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/
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277: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:38:25.20 ID:hUsgo0N0O ────浦の星女学院。 周囲に誰の姿もない、施錠された校門の前に、彼女は立っていた。 「なんでここにいるって分かったの?」 そう語る彼女は、言葉とは裏腹に、私がここに来るのを分かっているようだった。 むしろ、私が来ることを待っていたようにさえ見えた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/277
278: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:40:09.99 ID:hUsgo0N0O 梨子「5年前、Aqoursが9人揃ったのもここだった。そして今日は、昨日までの雨で延期になった沼津夏祭り、花火大会の日」 梨子「そう、Aqoursがユメに向かって本当の意味でスタートした日……でしょ?」 「…………」 梨子「結論から言うわ。今回の事件には、裏で手を引いていた黒幕のような人がいた」 「根拠はなに?」 彼女はただ嬉しそうに、それでいてどこか寂しそうに笑っていた。 まるで、その推理の続きを聞かせてくれと言わんばかりに。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/278
279: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:41:47.11 ID:hUsgo0N0O 梨子「善子ちゃんの復讐を動機とした花丸ちゃんに、黒澤家絡みの一件で協力者の立場になったルビィちゃん」 梨子「でも、後から考えてみると、この動機にはどうしても納得のいかない箇所があった」 梨子「何故鞠莉さんたちが、Aqoursの皆が集まり、テレビの関係者が来ると分かっていながら善子ちゃんの存在を抹消したのか」 梨子「もちろん善子ちゃんが余程重大な証拠を握っていた可能性もあるけれど、そこまで躍起になるような人たちなら、善子ちゃんのスマホだって血眼で探すんじゃないかしら」 梨子「最悪、花丸ちゃんにまで危害が及んでいてもおかしくはない」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/279
280: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:42:30.48 ID:hUsgo0N0O 梨子「何より、花丸ちゃんの言っていたことが正しいなら、善子ちゃんが行方不明になったのは3週間前」 梨子「それだけ時間があれば、もっともらしい理由をつけて同窓会はなくなった、と連絡すればいいのに、何故しなかったのか」 梨子「その疑問は、思い切って発想を逆転させてみたらあっさりと晴れたわ。善子ちゃんの行方を握っているのは、別の誰かなんじゃないかって」 「…………」 ひとつ呼吸を置く。既に、彼女の顔に笑顔は浮かんでいなかった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/280
281: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:43:24.43 ID:hUsgo0N0O 梨子「ルビィちゃんはこう言ってた。『お姉ちゃんが鞠莉ちゃんを殺したのが花丸ちゃんだって気付いちゃったみたいで』って」 梨子「考えようによっては、ダイヤさんが動機から逆算して花丸ちゃんにたどり着いたようにも見える」 梨子「けれども、その誰かがダイヤさんに何らかの形で花丸ちゃんが犯人だと教えたとも考えられるわよね」 梨子「さっきも言ったようにこの事件に黒幕がいたとするなら、その人は善子ちゃんのスマホを花丸ちゃんに送り付け、焚きつけたことになる」 梨子「だからあなたにとって、鞠莉さんが殺されることは想定の範囲内だったんじゃないかしら」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/281
282: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:45:24.14 ID:hUsgo0N0O 梨子「もう一つの根拠は、高森さんを殺したのが花丸ちゃんではなかったこと」 梨子「彼女は自分を犠牲にして、ルビィちゃんを庇おうとした。当然警察には高森さん殺しについても問われることになる」 梨子「もしそこでボロが出たら、自分以外に殺人犯がいる可能性に気付かれる──それを恐れて、彼女は私に高森さんがどうやって死んだのかを聞いてきた」 梨子「花丸ちゃんは高森さんを殺したのがルビィちゃんだと思い込んでいた。ただ、あの時ルビィちゃんには完璧なアリバイがあったことを、彼女は知らなかった」 梨子「だから、やってもいない罪を庇うなんて不可解な状況が出来上がった」 「つまり、何が言いたいの?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/282
283: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:47:10.03 ID:hUsgo0N0O 梨子「…………」 思わず唇を噛む。握り拳に力が入る。 彼女は、一切の弁明をしようとしなかった。 それどころか、最後の結論さえも私の口から言わせるつもりでいたのだ。 ふぅと息を吐き、言いたくなかったその答えを、口にする。 梨子「あなたが高森さんを殺して、その罪を花丸ちゃんになすりつけた。黒幕はあなたよ、千歌ちゃん!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/283
284: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:48:46.34 ID:hUsgo0N0O 千歌「正解だよ、梨子ちゃん」 出来ることなら聞きたくなかったその台詞が、遠慮なく放たれた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/284
285: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:50:15.00 ID:hUsgo0N0O 梨子「千歌ちゃん自身は何も証拠を残していない。花丸ちゃんは誤解をしたまま」 梨子「あなたを捕まえても、花丸ちゃんとルビィちゃんが傷つく結果しか得られない」 梨子「ある意味でこれは完全犯罪と言っていいものよ。何しろ本当のことを知っているのは千歌ちゃん、あなたしかいないんだから」 千歌「いま梨子ちゃんに話したけどね」 梨子「ねえ、千歌ちゃん。いったい何があったの? わざわざ花丸ちゃんたちをけしかけてまで、鞠莉さんとダイヤさんの命を奪う動機は──」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/285
286: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:50:49.66 ID:hUsgo0N0O 千歌「善子ちゃんが死んだのは、私のせいなんだ」 そう言った千歌の目に、後悔とも怒りとも取れる感情が浮かび上がり。 やがて、千歌の告白が始まった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/286
287: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:52:22.05 ID:hUsgo0N0O 千歌「善子ちゃんが大学受験に失敗したことを知ったのは、本当に偶然だった」 千歌「けれども、私も大学を中退した直後でね。何かをしてやれるような気分でもなかった」 千歌「そんな時、日本を発つ前の鞠莉さんとお話する機会があったの」 梨子「……それで、鞠莉さんに善子ちゃんを助けてあげるよう頼んだのね」 千歌「結構いい案だと思ってたし、実際、善子ちゃんは目に見えて元気になっていた」 千歌「善子ちゃんなりに恩を感じてたからなんだろうね。最初に相談を持ち掛けたのが、私だったのは」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/287
288: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:54:15.88 ID:hUsgo0N0O 梨子「相談?」 千歌「9人で集まるって約束をした日から1週間くらい後だったかな。善子ちゃんから電話があったんだ」 千歌「ほら、果南ちゃんが言ってたでしょ? 内浦の海で新資源が見つかった話」 千歌「それ絡みで鞠莉さんたちがやってる不正……癒着? 横領? っていうのかな。善子ちゃん、それを知っちゃってね」 千歌「かなりギリギリのやり方だったらしくて、いつバレてもおかしくはなかった」 千歌「おまけに、海外の企業までその資源に目を付け始めてね。善子ちゃんはどうすればいいか悩んでた」 千歌「止めさせなければいつか小原グループも黒澤家も警察の介入で潰される。止めさせてしまえば、内浦が、私たちの町が余所者に荒らされる」 千歌「それで、今すぐ会えないかって。一度どこかで待ち合わせして、私の家に行く予定だった。果南ちゃんもいるしね」 千歌「……それなのに」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/288
289: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:55:57.80 ID:hUsgo0N0O 千歌『海岸通りで〜……待ってたのに〜……』 千歌『き〜みは今日来て……あ、来た』 千歌『おーい!』 善子『────!』 千歌『ひさしぶ──後ろ、よけて!』 キキィィィィィィィィ ドン http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/289
290: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:57:16.19 ID:hUsgo0N0O 梨子「轢き逃げ……」 千歌「救急車を呼ぶまでもなく、即死だった。他に人通りもなかったし、轢いた車にも逃げられて、私にはどうすることも出来なかった」 千歌「私の家に直接来るように言えば、善子ちゃんが小原グループの秘密に気づかなければ」 千歌「もっと言えば、私が善子ちゃんを小原グループに入れさせなければ、善子ちゃんはあんな死に方をせずに済んだ」 梨子「あなたは、その矛先を……鞠莉さんたちに向けたっていうの?」 こくり、と力なく頷いた千歌に。 私は反射的に、平手打ちを浴びせていた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/290
291: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 01:59:05.55 ID:hUsgo0N0O ふざけるな。 千歌のやったことは逆恨みでしかない。 八つ当たりで、その上こんな卑劣なやり方で、人の命を奪ったというのか。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/291
292: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 02:00:52.59 ID:hUsgo0N0O 千歌「……最初はね、私が鞠莉さんたちを殺すつもりだった。けど私にそれをする勇気はなかった」 頬を押さえながら、千歌が呟いた。 千歌「善子ちゃんを海に捨てて、あとは全部花丸ちゃんに押し付けた。彼女がどうしようと、その結果を私の答えにすることにした」 まさかルビィちゃんを巻き込むとは思っていなかったけど、と彼女は自嘲気味に付け加えた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/292
293: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 02:01:52.09 ID:hUsgo0N0O 千歌「高森さんは……悪かったって思ってる。あの人、花丸ちゃんのことに気付き始めていて、私の部屋まで来たんだよ」 千歌「でも、Aqours以外の人に事の成り行きをどうにかされるのは、癪だったから……」 梨子「……あなた、おかしいわよ」 千歌「分かってもらおうなんて、思ってないよ」 間髪入れずに、否定の言葉が返された。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/293
294: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 02:03:09.82 ID:hUsgo0N0O 千歌「梨子ちゃんには……ううん、誰にも分からないよ。目の前でメンバーを殺された私の気持ちは」 千歌「あの頃のように、一つのユメを追っていたワケじゃない。みんなバラバラになってしまった」 千歌「だってそうでしょ? 生まれた環境も育った環境も違う9人が大人になって、いつまでも仲良く出来るワケじゃない」 千歌「現に、今の私を梨子ちゃんが理解出来ていない」 千歌「ユメを掴んだ人と、ユメを諦めた人」 千歌「分かり合える筈、なかったんだよ……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/294
295: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 02:04:56.09 ID:hUsgo0N0O 梨子「…………」 返すべき言葉が浮かんでは、喉の手前で消えてゆく。 善子が死んだその日から、或いはAqoursが優勝したその時から既に、彼女の頭のネジは外れてしまっていた。 それこそが、今回の事件の根幹だったのだ。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/295
296: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/07/16(日) 02:06:49.12 ID:hUsgo0N0O 千歌「ねえ、梨子ちゃん」 千歌「私たちは、Aqoursは、輝いてたんだよね。あの日々は幻じゃ、なかったんだよね」 言いながら、彼女はポケットの中に手を突っ込もうとする。 その意味を知っていた私は腕を掴み、叫んだ。 梨子「幻なんかじゃない! 楽しいことも辛いことも、全部ひっくるめてあの日々があった!」 自分でもビックリする程、その声は熱量を持っていた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/296
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