梨子「5年目の悲劇」 (315レス)
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74: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:40 ID:SnVGEAuwO携(12/33) AAS
高森「それで、11時頃に出るロープウェイに乗って来てくれませんかって連絡を受けてたんだけど……何だか妙なのよ」

ダイヤ「妙、とは?」

高森「カメラマン何人か連れて来る予定だったんだけど、時間になっても来ないもんだからどうしたものかってね」

高森「電話したら、みんな口を揃えて『小原さんから、翌日にずらして欲しいって連絡があった」なんて言うんだもの」

高森「私はそんな連絡受けてないし、Aqoursのみんなは集まってるし、なんでかなーって」
75: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:40 ID:SnVGEAuwO携(13/33) AAS
ルビィ「そんな筈はないと思うけど……マネージャーさんとは明日までって話をしているのになあ」

高森「まあ、黒澤ちゃんのマネージャーって結構そういうところ厳しいからね」

ルビィ「マネージャーさんと知り合いなんですか?」

高森「ええ。スクールアイドルから芸能人になった人は他にもいるし、そういう人たちのこともよく知ってるわ」
76: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:41 ID:SnVGEAuwO携(14/33) AAS
曜「でも、確かにヘンだよねえ。私たちにもそんな話伝わってないし」

梨子「誰か、善子ちゃんか鞠莉さんに電話した?」

果南「一応してるんだけど……出ないね」

花丸「どうせ二人で何か企んでるずら」

梨子「……」
省5
77: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:43 ID:SnVGEAuwO携(15/33) AAS


千歌「おー……」

ダイヤ「雨天でなければ完璧でしたわね」

ゴンドラを降りると、そのリゾートは眼前に広がっていた。

手入れの行き届いた洋風庭園に囲まれた、瀟洒な別荘という言葉がピッタリな建築物。
省3
78: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:44 ID:SnVGEAuwO携(16/33) AAS
曜「外も凄かったけど……」

ルビィ「中も綺麗……」

大理石の床、待合い用の大きなソファ、ガラス張りのテーブル、煌びやかなシャンデリア。

天窓からは、フロストガラスである程度緩和された太陽光が差し込むのだろう。

今は生憎の雨で、明かりの主役はシャンデリアなのだが。
79: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:45 ID:SnVGEAuwO携(17/33) AAS
高森「……いないわね、小原さん」

千歌「善子ちゃんもどこ行ったんだろう」

こういう時、「Ciao〜♪」とハイテンションで出迎えるのが鞠莉だった筈なのに。

従業員との打ち合わせ……にしては、私たち以外誰もいないように感じられる。
80: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:46 ID:SnVGEAuwO携(18/33) AAS
果南「ねえ、気になったんだけど」

梨子「これは……ルームキー?」

ロビーの中央、一番大きなテーブル。

そこに、8つの鍵が置かれていた。

高海様、渡辺様、桜内様……
省2
81: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:46 ID:SnVGEAuwO携(19/33) AAS
そして、一緒に置かれていた一枚の手紙。

『Aqoursの皆様、正午になりましたら再度ロビーにお集まりください』

梨子「何だか、かなり凝ったことするのね」

果南「そういうことだったら、大人しく待ってあげよっか」
82: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:47 ID:SnVGEAuwO携(20/33) AAS
ダイヤ「……ところで。私とルビィ、どちらがどちらの鍵か分かりかねるのですが」

ルビィ「どっちも『黒澤様』って書いてる……」

果南「んー……部屋番号を見た感じ、片方は私の隣でもう片方はマルの隣みたいだし」

花丸「じゃあ、こっちがルビィちゃんの鍵ずら」

ダイヤ「では、私はこちらを」
83: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:48 ID:SnVGEAuwO携(21/33) AAS
千歌「とりあえず、お部屋に荷物置いて来ようよ」

梨子「そうね。癪だけど鞠莉さんと善子ちゃんの企みに乗ってあげましょう」

私たちは皆、バス停からそこそこ距離のあったロープウェイ乗り場まで雨の中歩かされているのだ。

それに、仕事の関係などで荷物の量が他より多い人もいる。

千歌と私の提案に、反対する者は誰もいなかった。
84: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:50 ID:SnVGEAuwO携(22/33) AAS


ガシャリ、グシャリ。

誰にも気づかれないようロープウェイ乗り場へ行き、ハンマーで制御装置を力任せに破壊する。

これで、このリゾートは陸の孤島と化した。

この作業が終わったら、次はあれをロビーに置かねば。
85: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:51 ID:SnVGEAuwO携(23/33) AAS


外装やフロントが豪華なら、部屋も当然ながら豪華だ。

ベージュのカーペットに、優に3人分の幅はあるベッド。

テラスの向こうは、依然として雨。

こういうテラスで日光を浴びながら優雅に紅茶、と洒落こみたいところだが、今日は出来そうにない。
86: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:52 ID:SnVGEAuwO携(24/33) AAS
時間まですることもないので、備え付けのテレビを見ながら色々考える。

何故鞠莉と善子は揃って音信不通なのか。

破天荒な2人のことだ。もしかしたら、壮大なドッキリでも仕掛けているのかも知れない。

ドッキリでなくとも、ここまで姿を見せないからには何かがある。

二人揃って電話にも返事がないのはいささか不自然だ。
87: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:54 ID:SnVGEAuwO携(25/33) AAS
梨子「…………」

気づけば、約束の正午まであと5分。

学生時代に習った5分前行動の精神とやらは身体からそう簡単に抜け出ないもので。

着替えようかとも思ったが、結局そのまま部屋を出た。
88: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:54 ID:SnVGEAuwO携(26/33) AAS
────正午、ロビー。

再び集合した8人。

けれど、やはり2人の姿はなかった。

ダイヤ「あの2人は一体何をしているんですの……」

果南「まあまあ落ち着いて」
省1
89: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:55 ID:SnVGEAuwO携(27/33) AAS
高森「でも、本当にどうしたのかしら」

ルビィ「んー……あれ、またテーブルに何か……」

大テーブルのど真ん中。

何かが置かれているが、身を乗り出さないと取れないだろう。
90: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:56 ID:SnVGEAuwO携(28/33) AAS
千歌「とうっ!」

行儀が悪い、を我先にと実行した千歌が、それを手に取った。

千歌「鍵と紙だね。小原CEO……え?」

鞠莉の部屋の鍵と、それを示す紙……らしいのだが。
91: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:57 ID:SnVGEAuwO携(29/33) AAS
千歌「きゃぁぁっ!?」

何かに驚いたように、千歌はその2つを放り投げた。

梨子「どうしたの?」

千歌「だって、あの紙……」

曜「これ……血じゃないの!?」
92: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:58 ID:SnVGEAuwO携(30/33) AAS
梨子「っ!?」

曜が拾ったその紙には、血痕らしき真っ赤な染みが付着していた。

まさか。嫌な予感が一瞬にして湧き上がる。

「「…………」」

誰も言葉を交わさぬまま、鍵が示す部屋へと一斉に駆け出した。
93: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/11(日)02:59 ID:SnVGEAuwO携(31/33) AAS
────鞠莉の部屋。

果南「嘘……」

ダイヤ「鞠莉、さん……?」

2人の声を切っ掛けに、悲鳴が廊下に反響する。
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