梨子「5年目の悲劇」 (315レス)
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107: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:04 ID:OK/bdtscO携(8/36) AAS
グ〜〜〜ッ

「「…………」」

千歌「……ごめん、朝から何も食べてなかったから」

突然の腹の虫の音に、どうしようもなく緊張がほぐれる。

幸いにもキッチンに食材が搬入されていたので、軽い昼食を摂ることにした。
省1
108: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:04 ID:OK/bdtscO携(9/36) AAS
────13時半頃。

ダイヤ「軽くお昼作りましたので、一応置いておきます」

果南『いいって言ったでしょ?』

ダイヤ「ですが……」

果南『……勝手にして』
109: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:05 ID:OK/bdtscO携(10/36) AAS
ダイヤ「…………」ハァ

梨子「何だか果南さん、変わりましたね」

ダイヤ「ダイバーショップがなくなってから、果南さんはああです」

梨子「髪を切ったのも、もしかして……」

ダイヤ「ええ。千歌さんとお揃い、と本人は言っていましたが……」
110: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:06 ID:OK/bdtscO携(11/36) AAS
ダイヤ「何より、店がなくなったのは……」ハッ

ダイヤ「……とにかく、私は失礼します」

梨子「……? 施錠はしっかりしてくださいね」

ダイヤ「分かっていますわ」ガチャリ

自室へ戻るダイヤを見送り、私も部屋へ向かった。
111: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:07 ID:OK/bdtscO携(12/36) AAS
────梨子の部屋。

梨子「んー……」

分からない。この事件は謎が多すぎる。

まず一つ、何故犯人は鞠莉の首を切断したのか。

鞠莉の死体には、首を絞めたような跡がはっきりと残されていたのを確認している。
省1
112: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:09 ID:OK/bdtscO携(13/36) AAS
二つ。何故犯人は犯行を善子の仕業のように見せかけているのか。

首が狩られていた件についても、かつて善子がハマっていた黒魔術、その類の見立てと考えれば一応辻褄は合う。

現に善子の持ち物である魔法陣の描かれたクロスが使われたのだから、彼女が犯人と考えるのが自然ではある。
113: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:10 ID:OK/bdtscO携(14/36) AAS
しかし、もし彼女が犯人ではないと仮定した場合。

犯人はその偽装を、“Aqoursの皆”に見せつけたのだ。

全盛期ならいざ知らず、5年経った今でもその名前を紙に記し、私たちを誘導した。

度の過ぎたファンの仕業か、或いは。
114: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:11 ID:OK/bdtscO携(15/36) AAS
梨子「まさか」

『私たちの中に、犯人がいる』

あまりしたくない想像を保留として、思考を次へ進める。
115: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:12 ID:OK/bdtscO携(16/36) AAS
三つ目。何故犯人はロープウェイを使えなくしたのか。

ワープロであんな紙を用意していたことと言い、私たちをここに閉じ込めたことといい。

一連の犯行には、計画性が滲み出ている。

犯人はこの後も誰かを狙っているのだろうか、そんな考えが頭をよぎった。
116: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:13 ID:OK/bdtscO携(17/36) AAS
梨子「そうだ、内線」

果南はあの時、内線電話について触れていた。

当然、この部屋にも備え付けの電話機が設置されている。

薄い期待を胸に受話器をあげ、1、1、0のボタンを押してみる。
117: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:14 ID:OK/bdtscO携(18/36) AAS
梨子「……やっぱりダメか」

繋がらない。外部への連絡手段は全て絶たれている。

夕飯時までベッドで寝転がっていようか。そう思った矢先。

プルルルル、とさっき切ったばかりの室内電話が鳴り出した。
118: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:15 ID:OK/bdtscO携(19/36) AAS
梨子「もしもし」

果南『もしもし、私。さっきはごめんね』

掛けてきたのは果南だった。別段何かが起こったワケでもないらしい。

梨子「いいですよ、そんな……」
119: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:18 ID:OK/bdtscO携(20/36) AAS
果南『私ね、梨子ちゃんが羨ましいって思う』

梨子「……?」

果南『鞠莉が死んだ時、梨子ちゃんは私やダイヤを気遣ってくれた』

果南『でも、私自身は鞠莉があんな死に方をしたのに全く悲しめてなくてさ。死んだのか、程度にしか思えなくて』

梨子「果南さん……」
120: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:20 ID:OK/bdtscO携(21/36) AAS
果南『梨子ちゃんも気を付けた方がいいよ。2年で変わらなくたって、5年も経てば人は変わるんだから』

梨子「っ……」

果南『それじゃあ、夕飯の時になったら教えてね』ガチャッ ツー ツー ツー

彼女の言葉に、私は何も言い返すことが出来なかった。

──ねえ、梨子ちゃん。あのこと、私は忘れてないからね。
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(1): ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:21 ID:OK/bdtscO携(22/36) AAS
────14時頃、千歌の部屋。

千歌「──うん、多分そういうことだから。じゃあね」 ガチャリ

千歌「……ハァ」
122: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:22 ID:OK/bdtscO携(23/36) AAS
鞠莉の死体を目にした時、「当然だ」という感情しか湧かなかった。

理由はどうあれ、彼女はそういう運命だった。然るべき報いを受けたのだ。

千歌「…………」

いつからだろう。いつからこうなってしまったんだろう。
123: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:22 ID:OK/bdtscO携(24/36) AAS
千歌「……雨、まだまだやみそうにないね」

カーテンを閉め、ベッドに軽くダイブする。

千歌「まったく、都合が良いんだか悪いんだか」

その呟きを聞く者は、ここにはいなかった。
124: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:24 ID:OK/bdtscO携(25/36) AAS
────15時頃、花丸の部屋。

花丸「善子ちゃんが犯人なワケ、ない……」

絞り出すように呟いた。

あの状況では善子に疑いが向くのは無理もないだろう。

現に果南は疑っていたし、他の皆もその方向に傾いているかも知れない。
省2
125: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:24 ID:OK/bdtscO携(26/36) AAS
善子『ずら丸、私、番号がない……』

花丸『嘘……だって、405、406、よんひゃくは……』

善子『…………』

学科は違っても、一緒の大学に行こう。

そう誓って一緒に勉強したけれど、善子は受験に失敗した。
126: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/18(日)02:25 ID:OK/bdtscO携(27/36) AAS
善子『何で私に構うのよ……あんた今日講義あるんでしょ?』

花丸『善子ちゃんが部屋から出るまで、ここにいるずら』

善子母『ごめんなさいね、いつも』

花丸『いえ、お構いなく』

善子『…………』
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