梨子「5年目の悲劇」 (315レス)
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23: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:42 ID:oZ0o4GAZO携(1/35) AAS
ルビィ「全く変わってないなあ、この町」
純粋なルビィの感想に、私も心中で頷く。
バスを降りてすぐ漂ってきた潮の香りも、眩しいくらいに綺麗な海も、馴染みのある建物も。
何もかもあの頃のまま、懐かしい気分に駆られる。
24: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:43 ID:oZ0o4GAZO携(2/35) AAS
「二人とも、来てくれたんずらね」
梨子「!」
聞き覚えのある訛り。振り返るまでもなく、それが誰なのか理解出来た。
梨子「花丸ちゃん、久し、ぶ……」
花丸「どうしたずら?」
省1
25: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:44 ID:oZ0o4GAZO携(3/35) AAS
梨子「いや、その……」
ルビィ「お姉ちゃんから聞いてたけど……花丸ちゃん、本当に身長伸びたね」
Aqoursの中で一番背が低かった筈の花丸は、ざっと165pだろうか。私の背を追い抜いていた。
その点を除けば眼鏡をかけたThe・文学少女の清楚な佇まい。訛りが出るのは相変わらずらしい。
今は文学系の大学に進み、その傍らで執筆した小説を賞に応募しているそうだ。
26: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:46 ID:oZ0o4GAZO携(4/35) AAS
花丸「ルビィちゃんは変わらないずらね〜」
ルビィ「マルちゃん! 高校の頃からほとんど伸びなくて気にしてるのに……」
花丸「でも、ルビィちゃんはそのままでも可愛いずら」
ルビィ「うぅ〜……」
矢澤にことよく共演する彼女は、「近い背丈に同じツインテールの仲良しコンビ、まるで姉妹だ」と言われることがある。
省2
27: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:47 ID:oZ0o4GAZO携(5/35) AAS
梨子「ねえ、もしかしてみんな来てるの?」
花丸「鞠莉さん以外はもうみんな集まってるずら」
梨子「鞠莉さん以外?」
曜「あれ、梨子ちゃん聞いてないの? 鞠莉ちゃん、いま海外にいるって」
梨子「あー……」
省2
28: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:48 ID:oZ0o4GAZO携(6/35) AAS
梨子「何だか、遠い存在になったみたい」
無意識の内に、そんな言葉が口をついて出た。
29: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:49 ID:oZ0o4GAZO携(7/35) AAS
────千歌の部屋。
襖を開けると、懐かしい顔ぶれと、まだ湯気が立っている8つの湯呑み。
善子「おっ ようやく来たわね。お茶、冷めちゃってるけど梨子のはそれ」
梨子「えっと……善子ちゃん? お団子やめたんだ」
善子「まあ、これでも社会人だしね。髪型もそうだけど、堕天使も卒業したわ」
30: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:51 ID:oZ0o4GAZO携(8/35) AAS
荷物を置き、スーツに身を包んだ善子の隣に座る。
キャリアウーマンな風体の善子。堕天使ヨハネを名乗っていた頃のはっちゃけっぷりはすっかりナリを潜めている。
中二病卒業を機にリリー呼びも辞めてしまったのだろう、一抹の寂しさを覚えた。
31: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:52 ID:oZ0o4GAZO携(9/35) AAS
ルビィ「お姉ちゃん!」
ダイヤ「久しぶりです、ルビィ。連日の仕事、お疲れでしょう」
ルビィ「慣れないことは多いけど、まだまだ元気だよ〜」
ルビィに飛びつかれて微笑むダイヤは、以前よりも大和撫子という言葉が似あうようになっていた。
人気アイドルに抱き着かれようものなら黙っていない迷惑なファンはいるが、実の姉を咎める者は居ないだろう。
省1
32: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:54 ID:oZ0o4GAZO携(10/35) AAS
果南「千歌も仕事が終わったら来るってさ」
気になったのは果南の恰好。長かった髪は短髪になり、何故か彼女も着物。それに……。
梨子「果南ちゃん、その着物って確か、ここ(十千万)の……」
果南「そうだよ〜。ここの仲居さんが着るものだね」
梨子「いや、そうじゃなくて……」
33: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:55 ID:oZ0o4GAZO携(11/35) AAS
果南「潰れたんだ、ウチの店」
梨子「えっ……?」
『旅館の手伝いでもしているのだろうか』 そんな予想は、斜め上すぎる形で裏切られた。
34: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:56 ID:oZ0o4GAZO携(12/35) AAS
果南「去年、経営難でね。それでも、ダイバーショップを諦められなかったからさー」
千歌「それで、ウチでダイビング一式の貸し出しとか、教室も開いて、果南ちゃんにインストラクターをお願いしてるんだ〜」
千歌「あ、久しぶり、梨子ちゃん」
梨子「久しぶり……じゃなくて!」
ようやく現れた最後の役者、千歌。
省1
35: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:57 ID:oZ0o4GAZO携(13/35) AAS
果南「お仕事終わったんだね。お疲れ」
千歌「この時期はお客さんが少ないからね〜。楽でいいよ」
果南「というわけで今はここに住み込みで、何もない日は旅館の業務を手伝ってるよ」
千歌「果南ちゃんの作る海鮮料理、お客さんにもすっごく評判が良くてさ──」
梨子「はぁ……」
省2
36: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)01:58 ID:oZ0o4GAZO携(14/35) AAS
千歌「とにかく、こうして9人集まったワケだし、暗い話はナシでいこうよ」
ルビィ「9人?」
梨子「鞠莉さんは居ないんじゃ……」
善子「いるのよ、ここに」チッチッチッ
指を振りながら、善子が取り出したのはタブレット端末。
37: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)02:00 ID:oZ0o4GAZO携(15/35) AAS
善子「生憎と音声オンリーだけどね。CEOにこの時間空けておけって伝えてあるから」
梨子「どういうこと……?」
曜「善子ちゃん、いまは鞠莉ちゃんの会社で働いてるんだよ」
ルビィ「そうだったの!?」
善子「そうよ。というか、二人とも知らなかったのね」
38: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)02:01 ID:oZ0o4GAZO携(16/35) AAS
自慢げに見せてくれた社員証は、確かに彼女が小原グループに所属していることを証明するものだった。
善子「日本支部の担当は違う人だけれど、鞠莉が雇うように直接人事に掛け合ってくれたのよ」
花丸「大学受験に失敗してしばらくやさぐれて、鞠莉さんに拾われるまでゆーちゅーばーしてたずら」
善子「それは言うなずら丸!」
39: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)02:01 ID:oZ0o4GAZO携(17/35) AAS
鞠莉『Ciao〜♪』
果南「お、繋がったね」
電話越しの元気そうな鞠莉の声は、あの頃と変わっていなかった。
遠い存在、そう思っていた自分が馬鹿らしくなって来る。
40: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)02:02 ID:oZ0o4GAZO携(18/35) AAS
鞠莉『久しぶりにAqoursが集まるってヨハネから聞いてたからね。もうみんな揃ってる?』
善子「揃ってるわよ。あとヨハネはやめてって言ったでしょ!」
鞠莉『私はそのままでいいってずっと言ってるのに。それに、前みたいにマリーって呼んでくれなくなったし』ムッスー
花丸「流石に、善子ちゃんも社長さんにそんなことは言えないずら」
曜「いよっ、CEO!」
省1
41: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)02:03 ID:oZ0o4GAZO携(19/35) AAS
梨子「あの……鞠莉さん」
鞠莉『その声は梨子ね。What? どうかした?』
梨子「浦の星が廃校になるって、本当なの?」
鞠莉『…………』ハァ
42: ◆8TImjtGSKs [saga] 2017/06/04(日)02:05 ID:oZ0o4GAZO携(20/35) AAS
Aqoursの活動により、入学者が増えた筈の浦の星女学院。
けれどもそれは一時的なものに過ぎず、Aqoursの解散後はすぐに低迷。
行政等の関与もあり、今年度をもっての廃校は避けられない……。
“元“理事長の口から語られた現実は、あまりにも無情だった。
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