[過去ログ] 花陽「死を視ることができる眼」 (1002レス)
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523: /3 2016/12/29(木)02:06 ID:lR/UHR7sO携(1) AAS
さっきと同じことができれば、私はこの化物に勝てる。

──この化物を殺し切れる。

そこまで考えて、私は我に返りました。

自分がどれだけ恐ろしいことを考えていたのか、気がついたんです。

[ピーーー]?
省10
524: /3 2016/12/29(木)02:06 ID:prJvfKrKO携(2/2) AAS
/8
真姫ちゃんの両親が経営する病院で眼が覚めたあと、私は警察から簡単な事情聴取を受けました。

内容は思っていたよりあっさりとしたもので、拍子抜けするぐらいのもの。

それもそのはずです。

現場には犯人はおろか、死体さえなかったんですから。

真姫「残っていたのは血痕だけ……ね。例のペーパーナイフにも血液は付着していなかったし、他に凶器らしい凶器も所持していない……証拠不十分もいいとこだわ」
省16
525: /3 2016/12/29(木)02:06 ID:o1AkWWoNO携(1) AAS
そう言って、女医さんは渡したはずのペーパーナイフを私に差し出しました。

花陽「あの、これは?」

女医「名工が暇潰しに作った一品物にルーンを刻んだだけのものだけど、魔除けとしては一級品でね……きっとあなたを守ってくれるわ」

差し出されたペーパーナイフを受け取ると、女医さんは嬉しそうな表情を浮かべました。

ペーパーナイフは大きさの割にそこそこの重さがあるので、もしかしたら純銀で作られたものなのかもしれません。
省9
526: /3 2016/12/29(木)02:06 ID:HJvzrAtkO携(1) AAS
/4
地獄のような冗談で、冗談のような地獄でした。

退院後、私は元通りに学校に通い始め、μ'sの練習にも復帰しました。

海未「花陽!ステップがワンテンポずれていますよ!」

花陽「は、はいっ!」

みんなの身体に刻まれた線が、動きと一緒に揺れる。
省17
527: /3 2016/12/29(木)02:06 ID:zg2a9YSpO携(2/2) AAS
染みは路地裏に向かうよう、続いていました。

点々としている染みを追いかけていると、その色が段々と濃くなっていきます。

これ以上は良くない、人もいないし視界も悪い。なにより嫌な予感がする。

そう思っていても、足は歩みを止めようとしてくれません。

曲がり角の先にある行き止まりに辿り着いたところで、私は息を呑みました。
省17
528: [sage saga] 2016/12/29(木)02:06 ID:WwwgwYCn0(101/127) AAS
シエル「では、私もロアの残滓の元に向かいますので、小泉さんはここで大人しくしていてくださいね」

花陽「あの……先輩!」

シエル「……?」

花陽「私もロアの残滓のところに連れて行ってください」

シエル「……何故そこまでやつに拘るんです、小泉さん。今だって立っているのがやっとでしょう。必要以上の無理をして、死に体でやつを討つ理由がどこにあるんです」
省9
529: /3 2016/12/29(木)02:06 ID:em3q+KW+O携(1) AAS
/1
きっかけは、ありふれた日常の狭間にありました。

多分、それは誰にも止めることなんてできなかったと思います。

今になって考えてみれば、ひょっとすると私がこんな眼になってしまったのも、避けられない巡り合わせだったのかもしれません。

花陽「凛ちゃん、今日はちょっと食べ過ぎだよお」

凛「ヘーキヘーキ、これぐらい腹八分目にゃ」
省11
530: /3 2016/12/29(木)02:06 ID:nhhuyEs3O携(1) AAS
弁当箱から取り出したおにぎりを視ていると、我ながら会心の出来だと惚れ惚れします。

最高級の南魚沼産コシヒカリを贅沢に使い、先進の技術を用いて生み出された新型の炊飯器で炊き上げられ少し硬めに調整されたお米は、邪なものを寄せ付けない輝きを放っていました。

色、艶、香り──どれをとっても一級品であることに間違いありません。

もうこれだけで口の中が唾液だらけになるんですが、さらにここから一工夫。

お米からおにぎりに昇華するための工程を辿ります。
省9
531: /3 2016/12/29(木)02:07 ID:xlL74yH1O携(1) AAS
/3
危惧されていた事故の後遺症もなく、私はすぐに退院することになりました。

μ'sのみんなも退院を心から祝福してくれて、誕生日でもないのに主役気分です。

凛「かよちん……かよちんかよちんかよちんっ!!ホントに良かった……かよちんが無事に退院できて、ホントに良かったにゃ!」

花陽「凛ちゃん、ちょっと苦しいよお」

凛「ご、ごめんね……痛かった?まだどこか悪いところあるの?」
省8
532: /3 2016/12/29(木)02:07 ID:FBQ46AbTO携(1) AAS
さっきと同じことができれば、私はこの化物に勝てる。

──この化物を殺し切れる。

そこまで考えて、私は我に返りました。

自分がどれだけ恐ろしいことを考えていたのか、気がついたんです。

[ピーーー]?
省10
533: [sage saga] 2016/12/29(木)02:07 ID:WwwgwYCn0(102/127) AAS
花陽「わかってます。どれだけの事情があっても、凛ちゃんを傷つけたことだけは許さない……それに、親を倒さないと凛ちゃんが吸血鬼になるというなら、私は無関係じゃありません」

シエル「……仇討ちですか。しかし、それなら小泉さんが戦わなくても決着はつきます」

花陽「っ────!?」

シエル「法王庁────私の本拠地に要請が通ります。何が起きようともあと数日で法王猊下直属の埋葬機関が送り込まれてきますから、ロアの残滓はそれでお終いです。小泉さん自身が戦う理由なんて、どこにもないんですよ」

花陽「先輩……やっぱりそれじゃダメだよ」
省9
534: /3 2016/12/29(木)02:07 ID:l6YdeEqJO携(1) AAS
そう言って、女医さんは渡したはずのペーパーナイフを私に差し出しました。

花陽「あの、これは?」

女医「名工が暇潰しに作った一品物にルーンを刻んだだけのものだけど、魔除けとしては一級品でね……きっとあなたを守ってくれるわ」

差し出されたペーパーナイフを受け取ると、女医さんは嬉しそうな表情を浮かべました。

ペーパーナイフは大きさの割にそこそこの重さがあるので、もしかしたら純銀で作られたものなのかもしれません。
省9
535: /3 2016/12/29(木)02:07 ID:o5WDzXCiO携(1) AAS
/8
真姫ちゃんの両親が経営する病院で眼が覚めたあと、私は警察から簡単な事情聴取を受けました。

内容は思っていたよりあっさりとしたもので、拍子抜けするぐらいのもの。

それもそのはずです。

現場には犯人はおろか、死体さえなかったんですから。

真姫「残っていたのは血痕だけ……ね。例のペーパーナイフにも血液は付着していなかったし、他に凶器らしい凶器も所持していない……証拠不十分もいいとこだわ」
省16
536: /3 2016/12/29(木)02:07 ID:bdIqxlpTO携(1) AAS
/4
地獄のような冗談で、冗談のような地獄でした。

退院後、私は元通りに学校に通い始め、μ'sの練習にも復帰しました。

海未「花陽!ステップがワンテンポずれていますよ!」

花陽「は、はいっ!」

みんなの身体に刻まれた線が、動きと一緒に揺れる。
省17
537: /3 2016/12/29(木)02:07 ID:1fPhJPebO携(1) AAS
染みは路地裏に向かうよう、続いていました。

点々としている染みを追いかけていると、その色が段々と濃くなっていきます。

これ以上は良くない、人もいないし視界も悪い。なにより嫌な予感がする。

そう思っていても、足は歩みを止めようとしてくれません。

曲がり角の先にある行き止まりに辿り着いたところで、私は息を呑みました。
省17
538: /3 2016/12/29(木)02:07 ID:vYaD6Xq8O携(1) AAS
/1
きっかけは、ありふれた日常の狭間にありました。

多分、それは誰にも止めることなんてできなかったと思います。

今になって考えてみれば、ひょっとすると私がこんな眼になってしまったのも、避けられない巡り合わせだったのかもしれません。

花陽「凛ちゃん、今日はちょっと食べ過ぎだよお」

凛「ヘーキヘーキ、これぐらい腹八分目にゃ」
省11
539: [sage saga] 2016/12/29(木)02:07 ID:WwwgwYCn0(103/127) AAS
凛ちゃんが楽しんでる顔。

その全てがどうしようもないくらい愛おしいって思えたんだ。

だから、決めた。

私は凛ちゃんを守る。

例えこの命が擦り切れてしまっても、凛ちゃんを責める全てから守り通す。
省10
540: /3 2016/12/29(木)02:08 ID:2BoV5smWO携(1) AAS
弁当箱から取り出したおにぎりを視ていると、我ながら会心の出来だと惚れ惚れします。

最高級の南魚沼産コシヒカリを贅沢に使い、先進の技術を用いて生み出された新型の炊飯器で炊き上げられ少し硬めに調整されたお米は、邪なものを寄せ付けない輝きを放っていました。

色、艶、香り──どれをとっても一級品であることに間違いありません。

もうこれだけで口の中が唾液だらけになるんですが、さらにここから一工夫。

お米からおにぎりに昇華するための工程を辿ります。
省9
541: /3 2016/12/29(木)02:08 ID:KU7yvV5WO携(1) AAS
/3
危惧されていた事故の後遺症もなく、私はすぐに退院することになりました。

μ'sのみんなも退院を心から祝福してくれて、誕生日でもないのに主役気分です。

凛「かよちん……かよちんかよちんかよちんっ!!ホントに良かった……かよちんが無事に退院できて、ホントに良かったにゃ!」

花陽「凛ちゃん、ちょっと苦しいよお」

凛「ご、ごめんね……痛かった?まだどこか悪いところあるの?」
省8
542: /3 2016/12/29(木)02:08 ID:GoVWoAy0O携(1) AAS
花陽「凛ちゃん危ないっ!!」

気がついたときには無我夢中で走り出していました。

運動神経は良い方ではなかったけれど、幸か不幸か、最悪の展開だけは避けられたんです。

凛ちゃんを突き飛ばして、迫り来る鉄塊と対峙。

許された思考は一瞬。
省1
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