[過去ログ] 勇者「俺はヒーローになれなかった」 (136レス)
1-

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
1
(1): ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/01(火)18:41 ID:MRDQUi9u0(1/13) AAS
季節は冬の始まり。
木々の葉が枯れ落ち、森は景色すらも寒々しい。

勇者「……」

その森に1人の男が行き倒れていた。
彼は勇者。つい先日まで英雄として人間たちの希望を背負っていた男だが――

勇者(もう、いいや…)

今やその表情は希望を失い、まるで亡者のようだった。
省3
117: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:23 ID:ZUDFeiaJ0(3/16) AAS
邪神「ダメージを回復させた所で万全ではなかろう。体力は消費したままだ」

勇者「それでいい。回復魔法がそこまで万能だと、俺が卑怯すぎる」

邪神「脆弱な人間は、群れて初めて魔物と対等になる。その程度のことで文句を言う程、私は小さくない」

勇者「寛大なお心をどうも」

邪神がそう言うのなら、気にしない。
だけどこれ以上、誰の助けも借りる気はない。
省12
118: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:24 ID:ZUDFeiaJ0(4/16) AAS
勇者は球体を斬ると同時、跳躍した。
宙に浮いた勇者はそのまま、爆風に飛ばされ――

邪神「――」

邪神との距離を一気に詰めた。
邪神はそのスピードに対応できず――

勇者「――終わりだ」

ずぶり。
省1
119: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:24 ID:ZUDFeiaJ0(5/16) AAS
邪神「――」

邪神は呆然と、己の喉に突き刺さる剣を凝視していた。

勇者(魔王よりも魔法能力は優れていたが、身体能力は劣っていたみたいだな)

勇者が剣を引き抜くと、邪神はその場に倒れた。
しかし邪神には自己治癒の力がある、トドメを刺さねば――そう思い勇者は剣を構え直した。

邪神"…見事だ、勇者よ"
省10
120: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:25 ID:ZUDFeiaJ0(6/16) AAS



王「よくぞやってくれた、勇者よ」

勇者「…どうも」

邪神を討った勇者は城に招かれ、英雄としてもてなされた。
だが賞賛の言葉も、人々の歓声も耳に入ってこない。

勇者(白々しいなオイ)

彼らは勇者が、邪神を討つ為に邪神の下へ潜り込んだ、と勘違いしてくれている。
とはいえ勇者も無駄に敵を作りたくないから、その誤解を解こうとは思わなかったが。
省4
121: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:26 ID:ZUDFeiaJ0(7/16) AAS
踊り子「勇者…」

勇者「…踊り子」

廊下の途中で踊り子と出くわした。
何やら、しおらしい表情を浮かべているが…。

勇者「…じゃあな」

踊り子「ま、待って勇者!」
省12
122: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:26 ID:ZUDFeiaJ0(8/16) AAS
勇者(俺は…正しい道なんて歩けていない)

自分は没落した勇者から、本当の勇者として認められた。
だけど、歩んできた過程は以前より汚れている。

自分を受け入れてくれた邪神を裏切った。
人間と手を組み、"侵略者"である邪神を討とうとした魔王を利用した。
最愛の人を失い傷ついている踊り子を見捨てた。

勇者(…駄目だ。開き直れない)

勇者はその心残りをいつまでも抱えていくことになるだろう。
世界が勇者を認めようと、勇者は自分を認めることなんてできない。
省4
123: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:27 ID:ZUDFeiaJ0(9/16) AAS
勇者(…何か懐かしいな、ここに来るのは)

心が温かいのは雪溶けの時期だからか。
とにかく勇者は、邪神の神殿を出て初めて、和やかな気持ちを取り戻した。

勇者(会いたいな)

迷わずに進む。
今、どうしているだろう。きっとここにいるはずだが…。

勇者「…あっ!!」
省6
124: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:27 ID:ZUDFeiaJ0(10/16) AAS
村娘「勇者さん…話は聞いたす」

勇者「うん。倒したよ、邪神を」

村娘「…勇者さんは邪神を倒す為に、邪神の下に潜り込んだと言われてっすけど」

勇者「…」

やっぱり、村娘にはわかるか。
省23
125: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:28 ID:ZUDFeiaJ0(11/16) AAS
村娘「なして返事も待たずに行くんすか。…怖いんだすか、勇者さん」

勇者「…そりゃ怖いよ」

自分だって踊り子に冷たくしたけど、自分がされるのは怖い。だからその前に去ろうと思った。

村娘「勇者さんは臆病者だす」

村娘は目に涙を浮かべていた。
その涙は、何の涙か――
省18
126: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:29 ID:ZUDFeiaJ0(12/16) AAS
勇者「こんな弱くて、世界を裏切るような卑怯者の俺でも好きでいてくれると言うのなら…村娘ちゃんを幸せにする為に、頑張るから!」

村娘「ま、待って…そ、そんなん…」

勇者「……やっぱ、無理か?」

村娘「だ、だって…勇者さんはもう、世界の英雄で…あたしなんか…」

勇者「そんな事言わないで。俺は"英雄"なんかにとてもなれない。君がいて、ようやく"人間"でいられるだけの男だよ」
省15
127: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:29 ID:ZUDFeiaJ0(13/16) AAS
月日は流れていく。
人々は平和に慣れていき、戦いの記憶を過去に置いていく。

村娘「こらぁ、起きるす!」

勇者「うー…眠い」

村娘「もう村の人達は外に出てんよ! ほらほら、早く顔さ洗ってご飯食べて、雪かきしてくるす!」

勇者「うぇーい」
省7
128: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:29 ID:ZUDFeiaJ0(14/16) AAS
勇者「うー、さみさみ」

村娘「お疲れさんだす。お粥作ってっすよ」

勇者「この冷えた体には有り難い。頂きます」

村娘「お塩で味付けたす」

勇者「…塩粥食べたら思い出すな、君に拾われた時のこと」
省10
129: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:30 ID:ZUDFeiaJ0(15/16) AAS
勇者「平穏てのはいいもんだね」

村娘「そうだすなぁ」

勇者「"ヒーロー"が必要ない、平和な世界が理想なんだろうな」

村娘「違うすよ」

勇者「?」
省8
130: ◆WnJdwN8j0. [saga] 2016/03/08(火)18:30 ID:ZUDFeiaJ0(16/16) AAS
ご読了ありがとうございました。
男主人公モノはギャグ以外だと久しぶりです。

過去作こちらになります。
外部リンク:ponpon2323gongon.seesaa.net
131: 2016/03/08(火)18:32 ID:tox57Puio(1) AAS

132: 2016/03/08(火)18:59 ID:UtX44UCxO携(1) AAS

133: 2016/03/08(火)19:14 ID:saB9veEo0(1) AAS
乙乙
134
(1): 2016/03/08(火)21:44 ID:0y/jgRag0(1) AAS
元仲間や王たちが白々しすぎるとか、魔王より邪神より強い『勇者という化け物』をかつて裏切ったのに恨まれてるんじゃないかとは全く考えてないがごときフォロー(しようとするの)のなさとかが、ちょっと手抜きというか書割(背景)に描かれただけの人物的おざなり設定に感じるけど
まぁ村娘ちゃんとのほっとした生活エンドが最重要だからしょうがないね!
135: 2016/03/08(火)22:31 ID:RyNRmUWE0(1) AAS
>>134 のツンデレたアドバイスっぷりに萌えてしまった
村娘への萌え気分を返せ
136: 2016/03/09(水)03:36 ID:pxiDxWoyO携(1) AAS
乙、よかったです
1-
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.273s*