[過去ログ] 【艦これ】梅雨祥鳳【短編集】 (113レス)
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40: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)21:58 ID:91mEHEi9o(1/22) AAS
読みに来ていただきありがとうございます
今日投下する時雨編は、私と読書遍歴が似ていなければ分からないかもしれないです
知っていたらニヤニヤ出来るようにか仕上がっているはずですが・・・
41: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:10 ID:91mEHEi9o(2/22) AAS
【時雨】

雨が降る日は、図書室にお気に入りの本を持ち寄って読書する。

白露型の部屋で読むのもいいけれど、今日みたいな日は図書室で読むのがいい。

静かに、時の流れるままことばの奔流に身を任せるのが心地良いんだ。

本を読むのは、もともと好きだった。
省2
42: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:11 ID:91mEHEi9o(3/22) AAS
「おや、時雨も読書か?」

「うん、お揃い・・・だね」

提督も、本を読むのが好きだから。

特に、出撃任務が中止になるこんな雨の日は、提督もここへ来て本を読むことが多い。

・・・だからボクもここに来るんだ。静かに、二人きりで話せる機会はそうそうないから。
省3
43: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:12 ID:91mEHEi9o(4/22) AAS
「時雨は、どんなことばが心に残ったんだ?」

”―あたしたちは、恋だろうか。”

今、ボクが手にしている恋愛小説の一節を唱えると、提督は少し意外そうな顔をした。

なんだい、その顔は。・・・失礼な人だよ、まったく。

「ボクには恋愛小説が似合わないって言いたいみたいだね?」
省3
44: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:13 ID:91mEHEi9o(5/22) AAS
「もう少し理知的というか・・・論理的というか。そんな本が似合うと思ってたから」

なにさ、それ。勝手にどういうイメージを抱いていたんだろうと、ボクは短く笑う。

「でも、さっきのが分かったってことは、提督もあの小説を読んだってことだよね?」

「いやあ・・・それは・・・。あはは」

キミの方が、よっぽど似合わないじゃないかと言ってあげたら。
省3
45: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:14 ID:91mEHEi9o(6/22) AAS
雨の音を背景にしながら、ボクたちはそれぞれの本に没頭していた。

丁度、章と章の間に差し掛かったところで、ふと顔を上げて聞いてみる。

「そういえばさっき、提督の好みを聞いてないや」

他にはどういう本が好きなんだろう、ちょっと・・・というか、大分気になる。

「俺か、俺はなあ・・・」
省3
46: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:15 ID:91mEHEi9o(7/22) AAS
ああでもない、こうでもないなんて言って、悩む提督を見るのが楽しい。

好きな本はって聞かれて悩む気持ちは、これ以上ないくらいに分かるんだ。

「タイトルコールを上手く使う本、っていうのが好きだな」

おっと、ちょっと捻ってきた。

普通に挙げただけじゃ、面白くないって思ったんだろう。
省1
47: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:16 ID:91mEHEi9o(8/22) AAS
「ふうん、例えば?」

ボクがくいついたことが嬉しくて、目を輝かせるのが可愛い。

そうして得意げに間をとって、一言。

「あい、すくりーむ」

「・・・それが言いたかっただけでしょ」
省2
48: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:17 ID:91mEHEi9o(9/22) AAS
「それじゃあ、ただの駄洒落じゃないか」

「そうさ、ただの下らない駄洒落」

ヒソヒソと、まるで子供が大事な宝物を隠した秘密の場所を教え合うみたいに。

顔を近づけて、内緒の話を続けるんだ。

「謎かけが遠まわりして、時間差で相手に届く・・・こんな面白いことがあるか!?」
省3
49: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:19 ID:91mEHEi9o(10/22) AAS
それにしても・・・謎かけが遠まわりして、時間差で相手に届く。言い得て妙だ。

提督が今話題にした小説の1巻のストーリーを端的に表している。

でも・・・それなら1巻を持ってくるのに疑問が残るよ。だって。

「あのシリーズは2巻の方が面白くないかい?」

あれだって、相当に秀逸なタイトルだと思うけれど。
省1
50: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:19 ID:91mEHEi9o(11/22) AAS
「俺は、一発で分かったからな」

「はいはい。いるよね、証明出来ないことに限って威張る人」

「あ、信じてないな?」

「別にー?」

こんな風に読書の話で提督と盛り上がれるのは、この鎮守府でボクだけ。
省2
51: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:20 ID:91mEHEi9o(12/22) AAS
「そう言えば、時雨はその本の作者が好きなのか?」

「うん、一通りシリーズは読んでいるよ。提督は、どう?」

「今お前が持っているそれと、あと・・・」

この作者が書いた中で一番人気で有名な作品が上がる。

映画にも、アニメにもなったあの作品だ。
省4
52: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:21 ID:91mEHEi9o(13/22) AAS
偶然にも、鍵となる”それ”は、今ボクの鞄の中に入っている。

ちょうど今日、読み返そうと思って持ってきていたんだ。

ドキ、ドキ、ドキ。

思いついてしまった悪戯は、途中で止めることなんて出来やしない。

そっと鞄の中を探って、“それ”の存在を探り当てる。
省4
53: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:23 ID:91mEHEi9o(14/22) AAS
「この本、提督にあげるから・・・読んでみて」

貸すのではなくて贈るんだってことを強調してみる。

ねえ、提督なら・・・この意味が分かるよね?

「ほう・・・『レインツリーの国』か」

ああ、渡しちゃった・・・。
省4
54: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:24 ID:91mEHEi9o(15/22) AAS
提督はボクのこの悪戯を、どう思うだろうか?

うろたえるだろうか、迷惑に感じるだろうか・・・そうだとしたら、悲しい。

でも、でも・・・もしも・・・違った答えを出してくれるのなら・・・。

「ふむ・・・」

ゴクリと唾を飲み込もうとして・・・自分の口の中がカラカラに渇いていることに気づく。
省3
55: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:25 ID:91mEHEi9o(16/22) AAS
「有難い・・・けど、大事な本だろう。返さなくても良いのか?」

「・・・へ?」

「持ち歩いてまで読み返すなんて、余程のお気に入りじゃなんだろう?」

「え、あ・・・うん。大好きな本だけど・・・」

肯定でも否定でもない、単なる疑問。
省2
56: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:26 ID:91mEHEi9o(17/22) AAS
「あ」

そうして、思いがけない事実に突き当たる。

「提督、もしかして」

同じ作者の、先ほど話題にした本の名前をもう一度あげて。

「何巻まで読んだの?」
省3
57: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:27 ID:91mEHEi9o(18/22) AAS
「な、なんだ?」

「いや、何でもないよ・・・」

がっくりとこうべを垂れるボクを見て、提督が驚く。

「で、この本だが・・・」

「いいよ、あげるよ。読んでみてよ」
省3
58: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:28 ID:91mEHEi9o(19/22) AAS
でも、話はまだ、これで終わりじゃなかった。

ああ、ボクは小心者だなあなんて思ったりして。

だから、これで良かったのかもしれないなんて納得していたら・・・。

「そうか、ありがとう・・・お返しに、今度俺のお気に入りを君に贈ろう」

期待していたよりもずっとずっと欲しい答えを、提督がくれたんだ。
省3
59: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/03(水)22:29 ID:91mEHEi9o(20/22) AAS
「しかし、こうなると・・・」

僕が贈った『レインツリーの国』の表紙を指でなぞりながら、提督が言う。

「この作者の、あの作品も続きが気になってきたな・・・今度2巻も読むか」

「な、なっ・・・だっ、駄目――――!」

一段落付いたあとにそんな事を言うなんて、卑怯だ。
省2
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