[過去ログ] 【艦これ】梅雨祥鳳【短編集】 (113レス)
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65: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:17 ID:bU39jzdLo(2/42) AAS
叢雲編の投稿です
注)短編と銘打ちましたが叢雲編だけ少し長くなりそうです
66: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:18 ID:bU39jzdLo(3/42) AAS
【叢雲】
しとしとと、雨が降り続く。
一人きりの執務室の中で、私は黙々と書類仕事を続けながらアイツの帰りを待つ。
なんていうと、ロマンチックに聞こえるかもしれないけれど。
「あんのバッカ・・・またサボリね!」
省2
67: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:18 ID:bU39jzdLo(4/42) AAS
でももうすぐ3時・・・そろそろ帰って来る頃だろうか?
乾いたタオルがまだ残っていたはずだからと、箪笥の中を殴りながら・・・。
今度首に掛ける縄でも買ってこようかしら、なんてことを半ば本気で考えていると。
ガチャリ、と扉を開ける音がして、この部屋の主が入ってくる。
「遅い、サボリ、仕事!」
省3
68: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:26 ID:bU39jzdLo(5/42) AAS
「アンタ、どれだけ仕事が溜まっているか分かってるの?」
「今更山が一つ二つ増えただけで動じてちゃ、提督業なんて出来んさ」
コイツが提督業に慣れてきて、悟ったように言い切ったことがある。
必要なのは書類を片付ける覚悟じゃない、書類をほっぽらかす覚悟だなんて。
そう言い切った時は思わず酸素魚雷をぶちこんでやろうと思ったものだ。
省3
69: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:27 ID:bU39jzdLo(6/42) AAS
後回しにして良い案件は、ちゃんとより分けてある。
私が人差し指で示した山を遠巻きに見ながら、こんな事を言う。
「お前が秘書艦の時は、安心してサボれるな」
「ふざけんじゃないわよ!今度こそ魚雷が欲しいのかしら!?」
口ではそんな事を言いつつも、本当は心の中でプライドを擽られている。
省1
70: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:29 ID:bU39jzdLo(7/42) AAS
だから、どこかのタイミングでベテラン秘書艦が帳尻を合わせなければならない。
秘書艦に指名された回数を指折り数えて、他の艦娘と比べているなんて知れたらどう思われるだろうか?
・・・別に、コイツに選ばれたから嬉しい訳じゃない。
秘書艦としての能力が発揮されている実感が欲しいだけなのだ、私は。
「ふふ」
省3
71: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:30 ID:bU39jzdLo(8/42) AAS
「なんだ、急に笑い出して。気持ちわるいな」
「な!?全身ズブ濡れのアンタに言われたくないわよ!」
「はら、風邪引くからさっさと拭きなさい」
ありがとうと礼を言って、私の差し出したタオルを受け取る。
まったく、これじゃあ今日は甘やかしてなんていられないわね。
省2
72: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:32 ID:bU39jzdLo(9/42) AAS
雑談しようったって、そうはいかないのよ。
この雨で出撃が出来ない日が続く間に、少しでも溜まった仕事を減らさないと。
出撃組に秘書艦経験を積ませるためにローテーションを組んでいるのなら尚更。
コイツのサボりを止めて椅子に縛りつけられる艦娘は、そうはいない。
どの艦娘に出しても恥ずかしくないようにコイツを教育するのも、私の務めなのだ。
省4
73: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:34 ID:bU39jzdLo(10/42) AAS
自然と口元が綻ぶ。まったく、カンベンして欲しいわよね、まったく。
嫌々叱って、仕方なく世話をやいている私の身にもなってくれないかしら?
「で、何を話そうとしたの」
「ああ、実はな」
結局、水を向けてしまう私。
省4
74: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:34 ID:bU39jzdLo(11/42) AAS
「で、そういう問題を総合的に見直して指導する役目を仰せつかった」
「何日か、この鎮守府を空けて視察に出ることになるだろう」
「ハン、アンタがねぇ」
着任当初は兵装の開発すら出来なくて、初期艦の私に頼りきりだった男が良く言うものだ。
あの時期の事を知らない艦娘にとっては頼りになる提督でも、私にとっては違う。
省4
75: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:36 ID:bU39jzdLo(12/42) AAS
不思議そうにこちらを見てくる提督の顔は、なんだかとても間抜けだ。
あのねえ、私がどれだけアンタの秘書艦をやっていると思ってるのかしら?
アンタの考えなんて、わざわざ見ていなくても分かるんだから。
「余所様の鎮守府を見に行く前に、自分の所は大丈夫か確かめに行ったんでしょう」
「視察に出る間自分がいなくても大丈夫か不安になった、というのもあるかしら?」
省3
76: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:37 ID:bU39jzdLo(13/42) AAS
「大丈夫よ」
苦笑して、ことばを続ける。
「アンタが鍛え上げたこの鎮守府の艦娘たちは、大丈夫。数日くらいアンタが抜けても私やみんながフォローして見せる」
どのみち、この雨じゃあ満足に出撃も出来ないのだから・・・演習と内務なら私が秘書艦として残れば十分まわしていける。
そんな様な事を言うと、キョトンとした顔を上げてこう宣言された。
省4
77: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:38 ID:bU39jzdLo(14/42) AAS
「秘書艦のノウハウに詳しい者も連れてこいということだからな、お前に任せた」
今回行くのはあそこだ、と示されたその鎮守府の場所は・・・。
「結構遠いじゃない・・・」
ここと違って梅雨の影響が少ない地域だから、目的地まで言って雨に悩むことは少ないだろう。
ちょっとした小旅行気分だ。
省2
78: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:40 ID:bU39jzdLo(15/42) AAS
コホン、と威厳の全く感じられない咳払いを一つして、提督が話を続ける。
「そう言えば、お前とここまで遠出するのは初めてだな」
「え、ああ、うん。そうね」
戸惑いながらも、突然のつぶやきにそう返事する私。
初めての、遠出。その言葉を意識しながらチラリと視界に入るのは、私の左手の薬指に嵌った銀色の指輪。
省5
79: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:41 ID:bU39jzdLo(16/42) AAS
動揺すると早口になる。提督を仕事に戻らせている間に頭を働かせないといけない。
・・・話には聞いたことがある。ケッコン、いえ、結婚した男女がその幸せな生活をスタートする前に行うセレモニー。
シンコンリョコウ。
かあ、っと顔が熱くなる。
そりゃあ、確かにコイツとはケッコンした。並み居る戦艦や空母たちを押しのけて私が一番最初に、した。
省2
80: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:43 ID:bU39jzdLo(17/42) AAS
わざわざ駆逐艦の私と一番最初ケッコンした意味を考えなかった訳じゃない。
いや、気になって気になって仕方ないと言ってもいい。
だって、お互いにその想いを確かめた事はないし、そもそも私はコイツの事を恋愛的にどうと考えている訳でもないのだから。
・・・なんて、自分の心に嘘をついても今更遅いか。
だって、コイツとの遠出、余所の鎮守府に行くという任務に”それだけのこと”を仮託しているのだから。
省2
81: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:44 ID:bU39jzdLo(18/42) AAS
「ね、ねえ。それっていつ行くの?」
「急だが、明後日に」
「明後日!?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
それだけ向こうの鎮守府の問題を早く解決したいという上の意向なのだろう。
省5
82: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:45 ID:bU39jzdLo(19/42) AAS
今回の任務は、コイツと二人きりの日々が数日続くってこと。
それも執務室なんかの限られた空間、時間じゃなくって・・・。
新生鎮守府への指導さえ終われば誰も私たちのことを邪魔しない、隔絶された空間での二人きり。
さっきから、心臓が痛いくらいに高鳴っている。
うるさいわね、私の心臓なら少しくらい気を効かせて黙ってたらどうなの!?
省3
83: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:47 ID:bU39jzdLo(20/42) AAS
あれ、それに道中は?
目的の鎮守府に着くまで汽車を乗り継いで数日かかるはず。
道道の宿泊や乗り継ぎの待ち時間なんかは、一体どう過ごせばいいのだろう?
ああもう、そんな事ありえない。ありえないから!
・・・でもコイツは。提督は、この私と二人きりの任務をどう考えているのだろう?
省6
84: ◆VmgLZocIfs [saga] 2015/06/06(土)17:48 ID:bU39jzdLo(21/42) AAS
「と、とにかくっ。それなら少しでも溜まった仕事を片付けるわよ!」
「今からこの量をやっつけるのは無理なんじゃあ・・・」
「アンタ、これだけの量を留守組に押し付けて行くなんていい度胸じゃない」
「ハイ、やらせて頂きマス!!」
お人好しの翔鶴あたりは良いとしても、加賀や那智にはジロリと睨まれることになるだろう。
省2
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