[過去ログ] 鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 〜胎魔のオラトリオ〜 (917レス)
1-
抽出解除 必死チェッカー(簡易版) レス栞 あぼーん

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
338: 田中(ドワーフ)◆7fp32j77iU [saga] 2014/06/04(水)10:37 ID:4nHMcbaz0(1/33) AAS
>>331-337
恐縮です

>>332
『銀”塊”心臓(ぎんかいしんぞう)』です

スコットランド王、ロバート一世が死後、「俺が死んだら十字軍に参加したい」と言い残したんで、
友人兼副官のジェームズ=ダグラス郷が心臓を銀の箱へ入れてクルセイドに参加
その際、ダグラス郷が戦闘中に>>325の言葉と逸話を残しました

郷が参加したクルセイドは第9次十字軍(最後の十字軍)終了後、更にテンプル騎士団壊滅直後だったため、
そうとう『キツい』状況だったでしょう。なのに突っ込んだハイランダー怖い。超怖い

その後、ダグラス郷も戦死したので、心臓はスコットランドのメルローズ修道院へ埋葬されます
省9
339: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:40 ID:4nHMcbaz0(2/33) AAS
――取り残された車両にて

「おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……ッ!!!」

 裂帛の気合いと共に『クレイモア』が空を切る。それは両手剣としてはやや短く、幅広剣には大きい。
 高地人と呼ばれるスコットランド人は山岳戦闘に長け、特に森林での戦いで大きな戦果を上げた。
 地の利と共に彼らが有利であったのは、この短い両手剣が木々の間での戦闘に適していたからだ、と言う説がある。

 それが事実であったかどうかは分からない。ハイランダーは歴史の流れと共に姿を変え、剣から銃への持ち替えてしまう。それでも『高地連隊兵』の二つ名を得てしまうのであるが。

 しかし今この光景を目にした歴史学者が居れば、仮説が正しかったのだと思うであろう。『クレイモア』と言う武器は狭い空間での戦闘に有利であったと。
省14
340: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:43 ID:4nHMcbaz0(3/33) AAS
 誰だって――生存本能を持つ個体であれば、死の恐怖は感じる。
 『死』という概念を理解出来ずとも、『痛み』や『欠ける』事を生命は恐れる。
 その動機は単純だ。

 『痛み』とは生存を続ける上での欠損を示し、突き詰めれば死に至る。
 『欠ける』にしても同種の別個体より大きなハンデを生み、引いては自己の生殖能力に関わるからである。

 だから生物は『怖れ』る。自身が傷つく事を。

(……まぁ、ね?よくよく考えればどーってこたぁないんだけど、さ)

 何のことは無い。『アレ』はずっとずっと。
省6
341: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:45 ID:4nHMcbaz0(4/33) AAS
(なら、コイツはどうなの?何がしたい?何がしたかったの?)

 一見してタダの捕食行動に見えるのは、今にして思えば『攻撃』だったのでは無いか?
 逃げ場を失った動物が破れかぶれに攻撃してくるのとどう違う?

 自身は戦場に立たず、いや『立てず』遠くから攻撃する醜くふくれあがった『アレ』のどこが、『戦士』だと言うのか?

「……あぁムカツクのだわ。こんなしょーもないヤツに手を焼いてたなんて!」

 『銀塊心臓』により引き上げられた身体能力は、文字通り全身へ血液と魔力を運んでくれる。
 少々、悪酔してハイになってはいるが、その反面戦闘自体に余裕が出来ていた。
省8
342: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:47 ID:4nHMcbaz0(5/33) AAS
 そうだ、その通りだ。
 『アレ』は必死に自身の一部を切り無し、兵隊を造る。
 つまり、目の前の『コレ』は。殺到してくる黒い水溜まりは、それだけこちらを脅威だと思っている証拠だから。

「……ダメよ、それじゃ足りない!全っ然足りてなんかていない!」

 『クレイモア』で近くに居た敵を薙ぎ払い、『槍』で『牙』をへし折る。
 それでも消化としようとする相手には雷撃を叩き込んで蒸発させた。

「あっ――がっ!?」

 物量差に押し切られそうになると、ベイロープ自身をすら巻き込んで術式は嵐を呼ぶ。
 流れた血をぬぐう事すら無く、彼女は戦う。
省7
343: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:49 ID:4nHMcbaz0(6/33) AAS
 悪夢のような一方的な戦闘、ある意味虐殺と言って良い程の惨状の中、上条当麻は考えを巡らせていた。

 上条もベイロープの出した結論――戦闘中に語るような事では決してないのだが――に同意していた。
 しかし、ならば、どうして、と言う疑問も残る。

 『アレ』が怖れているのは理解出来た。言われてみれば一貫性に乏しい。『牙』を生やした敵を殴りつけながら、そう考える。

 向こうが本気を出して捕食行動を取るのなら、『全力』でこちらを潰しに来る筈だ。捕食対象である所の人間の反撃など顧みず、ただ物量で押し切る。
 相手が『脅威』と感じていなければ出来た、筈だ。

 その仮説はかなり真実に近いのであろう。的を射た推測……では、あるが。しかし。
 まだ『足りない』気がする。何か見落としがあるような。大切な何かを見落としているような。
省3
344: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:51 ID:4nHMcbaz0(7/33) AAS
「ん、あぁ、いーのよ。あなたを護る時に一番強くなる術式だからね」

「……遣いづらいだろ、それ」

「分かってるわよ!他に手が無いっつーんだからしょうがないでしょ!?」

「すいませんっ!ホっントにすいませんでしたっ!」

 頭を下げつつも、どうにか襲撃を凌ぎきった事に安堵する。こちらから本体に手出し出来ない以上、場当たり的な時間稼ぎだが、この調子でいけば助けを待つのは余裕か。
省9
345: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:52 ID:4nHMcbaz0(8/33) AAS
「ホントホント。こっちも他の乗客が居なかったら、さっさと通報してトンズラしてるっつー――上条?」

「……なぁベイロープ。ちょっと聞きたいんだが」

「うん?『銀塊心臓』の効果時間?」

「それも聞きたいけどそうじゃない。今までさ、『アレ』が襲撃してきた時って、車体がギシギシいってたよな?」

 少なくとも上条らが出くわした限りではそうだった。
 重みで車両に負荷がかかっているのか、それとも『牙』を精製するためにはぎ取っていたのかは、まだ分からない。
省18
346: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:54 ID:4nHMcbaz0(9/33) AAS
――ユーロスターS 5両目よりも先

□□□−□□□□□   ※

※現在位置

 ユーロトンネルの中は定期的に非常灯が置かれ、万が一の場合でも非難しやすい構造になっている。
 海面下を通るトンネルとしての長さは世界二位、ましてや国と国を繋ぐ架け橋となっているのだから、関係各国の面子も絡む――その割に、イギリスとフランスの仲はお世辞にも良好とは言えないのだが。

 橙色の非常灯に映し出された『アレ』――恐らく、ユーロスターに張り付いていた『親ショゴス』の姿は、端的に表現すれば『異物』の一言であった。
 胴体は芋虫のように脈打ち、節々が限界にまで腫れ上がっている。
 黒色をベースに中身が僅かに透けているのだが、用途不明の内臓によく似た何かが、内側から心をかき乱す周期で発光を繰り返している。
省3
347: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:56 ID:4nHMcbaz0(10/33) AAS
 『ショゴス』がまだ、数十センチのバケモノであったならば人によっては可愛いというかも知れない。
 けれど目の前に鎮座しているのは、胴体部分だけで大型トラック程もある異形。
 チグハグな足をデタラメ――交互ですらない――に動かし、人が走るぐらいの早さで移動していた。

 既存の生き物の枠を越えたフォルムに、比喩無しで目眩と吐き気を催す。遠近感が狂い、自分達がそこに立っているのかも怪しくなる。
 しかしそれでも気力を絞ったのはベイロープの方だった。傍らに『護るべきもの』が立つせいかどうかは分からないが。

「なぁ、私達は正気なのか……?」

「……俺は、まだ、何とか。それよりそっちは大丈夫かよ?」

 上条もどうにか返事をする。『幻想殺し』で悪夢は殺せるのか?と半信半疑であったが。
省3
348: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)10:58 ID:4nHMcbaz0(11/33) AAS
「てか能力者かもって話はどこ行ったの?つーかあんなんが授業受ける学園都市も大概よね」

「勘弁しろよ!あんなん教室居たら怪獣映画の世界じゃねぇか!」

「校門で会って告白イベント?」

「どう考えてもそのまま喰われるバッドエンドしか思い付かねぇよ……!」

 時間を稼いでいたのは人間達――だけ、では無かった。
 『ショゴス』が思わぬ反撃を受けた時か、それとも最初からそうであったのかは分からない。
 しかし明確に『恐怖』を感じてしまった後、彼または彼女も『逃げ』ようとしたのだ。
省8
349: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:00 ID:4nHMcbaz0(12/33) AAS
 目の前の異形へ対する『怖れ』で躰がこわばり、動作が鈍る。
 絶叫して逃げ出したくなる程の、名状しがたい冒涜的なオブジェであった。

 銃口や魔術師、聖人相手にした時とは異なる。言わば『本能へ訴える恐怖』が二人を襲う。
 姿ある敵ならば殺せる。死なない相手であっても無力化は出来る。

 だが『自身の恐怖』を前にして何が出来る?何が役に立つ?
 戦うのは独り。ねじ伏せる相手は自らの心。生命の尊厳を賭けてまで、振り絞れるのは少数である。

 が、しかし。

『――――――としても』
省8
350: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:02 ID:4nHMcbaz0(13/33) AAS
――少し前 『カーゴ2』

乗客A『――, ――――.』

乗客B『――, ――――?――!』

鳴護「うーん……?」

鳴護(ちょっと騒がしくなってきた、かな?前の車両で何かあったのかも?)
省18
351: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:03 ID:4nHMcbaz0(14/33) AAS
アル「後は無責任な伝言ゲームの繰り返しってヤツ?中には『バケモンが乗ってて人を食ってた』って話も」

アル「まさに『人を食った話』ってヤツ――あぁ悪い。女の子に話すようなこっちゃねぇよな」

鳴護「いえ、大丈夫です、から」

アル「とても大丈夫だっつー顔色には見えないがね。で、そっちのお連れさん、どーにもメカニックとかに詳しかったりしないか?」

鳴護「メカニック、ですか?」
省17
352: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:05 ID:4nHMcbaz0(15/33) AAS
アル「おう。あっちでガキを抱きしめてる母親とか、恋人っぽく雰囲気出してる奴とか」

アル「あいつら、『いざとなったら飛び降りる』つってんだよ。いやマジで」

鳴護「そんな事したら!」

アル「ま、どんだけ幸運だったとしても死ぬだろうね」

アル「想像してみ?音速よりかちょい遅い速度で生身の人間が撃ち出されんだぜ?絶対ヤバいって」
省25
353: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:06 ID:4nHMcbaz0(16/33) AAS
――少し後 『カーゴ1』

 最も人が集まる『カーゴ1』であったが、今は血臭漂う陰惨な場と化していた。
 別に乗客同士で流血沙汰が起きた訳ではない。むしろ後方の車両から逃げ出してきた『訳あり』の人間達は、正気を失ったかのように茫然自失としている。

 原因は運転席から引きずり出された遺体、少々ならずともショッキングな死に方のそれらへ、どこからか調達したカバーシートがかけられている。
 しかし漂ってくる血の匂いは、エアコンをフル稼働させても中々消えるものでは無い。

 だというのに、人々はそこを離れようとはしなかった。
 何故ならば『ここが一番先頭』であるという理由で――『アレ』から最も離れている。そう言い換えても良いだろうが。

 が、その判断も長くは続かない。何かが侮蔑を込めて嘲笑ったように、人々の多くは目先の今年か見ていない。いや、より正確には目先の事すら見えてはいない。
 閉塞状況へ追い込まれれば容易に逃げを打ち、簡単な答えを求める。それが正しいのでは無く、正しそうだからでも無く、信じる。
省3
354: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:08 ID:4nHMcbaz0(17/33) AAS
『――立てよ、世界を敵に回したとしても』

『立てよ、全てを失ったとしても――!』

 突然スピーカーから流れてきたアカペラの歌。殆どの者は歌詞の意味すら理解出来ない。

『誓いや言葉は要らない』

『英雄になりたかったわけじゃない』
省7
355: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:10 ID:4nHMcbaz0(18/33) AAS
――切り離された車両周辺

上条「なんだこれ……アリサの――!」

『人と人を縛るのは絆――それは誓い』

『君が居るだけで価値があるこの星』

ベイロープ「……体が……動く?どうして?」
省18
356: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:13 ID:4nHMcbaz0(19/33) AAS
……ゥィィィィィィンンンッ

ベイロープ「モーター音?まさか新手か!?」

ジジッ

柴崎『――ご無沙汰しております』

上条「来てくれたんだ!」
省15
357: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/06/04(水)11:15 ID:4nHMcbaz0(20/33) AAS
ギギッ、ギギギギギギッ!

上条(多脚戦車の下でジタバタともがき、抜け出ようとする『ショゴス』)

ベイロープ「おかしくないか?液状なんだったら形変えて逃げられるのに」

上条「……進化、し過ぎたんだと思う」

ベイロープ「進化?」
省17
1-
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.366s*