[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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806: コドクノオリ【姉弟語り】 [sage saga] 2013/08/29(木)21:10 ID:YJd43wxQo(6/7) AAS
 おかげで今や俺たちがお尋ね者だ。
 とは言っても、町を滅ぼしたのは姉であるというのは確かだ。そう見ると町を壊滅させた化け物、という姉弟が追われる理由は正しい。だが、それでも彼女は被害者である。
 いや被害者は修実姉1人で、他のは皆まとめて自業自得だ。
 憤りながらそう言った時は、さすがに姉にも昌夫にも苦笑された。
 それでも全ての責任を修実に押し付けて自分はのうのうと逃げている郭正吾を許せないというのは共通した思いだった。
 郭正吾も追っ手がかかっているということは気付いているらしく、町が壊滅した情報とその犯人について広めた後は、
この町に雲隠れしているようだ。隠れている彼を追って捕え、実家を通し組織≠ニ呼ばれる超巨大な都市伝説集団に連絡を取って読唇系の能力者を使って真相を明らかにすることが久信たち姉弟の目的だった。
「逃げられる前に、絶対に郭正吾を捕まえて、俺たちの濡れ衣を全部とっぱらう」
「うん」
 修実が頷く。彼女の足元ではいつの間にか蛇が掛布団を広げていた。布団の中に半ば埋もれるようになりながら修実は言う。
「いつまでも難しいことばかり考えていてもしかたないわ。今日はもう疲れたでしょう」
「ああ、まあ」
「うん、だから、ね? もう寝ましょう?」
 そう言って、修実は自分の体の下にある、部屋に一つしかない布団に誘ってきた。
 いくらダルマ状態になって食事が要らなくなったとはいえど、睡眠が必要なくなったわけではない。
布団が一つということは、一緒に寝ることを前提にしているのだろう。
 昌夫の奴……。
 部屋の手配をした友人に口の中でぶつぶつ言いながらも、実は少し嬉しいのは秘密だ。
 小さく咳払いをして、
「あーうん。そうだな。今日は追われて疲れたし、寝ようか」
 蛇を部屋の外に追い払い、姉を抱き上げる。外からは蛇と犬が戯れる鳴き声が聞こえてくる。
デバガメ役の犬でも用意していたんだろうか。今更隠すような関係でもないし、気にすることでもないだろう。
 そう割り切って、久信は昔には抱きしめられた記憶のある姉を、今は久信が抱きしめる。
 修実は悲しくなるくらいに軽く、だが、泣きたくなるほど温かい。
 危うく失ってしまいそうになった温もり。絶対にこれを失わない。布団を頭まで引き上げ、修実の温もりを感じながら、その胸に頬を押しあてる。
 肉付きがよくなって、顔が埋まってしまう胸の奥で、確かに心臓の鼓動が聞こえる。
優しい匂いも昔と変わらない。この人は確かに生きている。その事に暗視して、久信は一日中張りつめていた気を緩めた。
 頭を、ほとんどない腕が軽く叩く感触がある。
 深く呼吸するように、大きく息をする音が修実の肺から聞こえる。
 今、彼女はどんな顔をしているのだろうか。
「おやすみ」
 優しくかけられた声に促されるように、久信は眠りに落ちた。
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