[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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804: コドクノオリ【姉弟語り】 [sage saga] 2013/08/29(木)21:08 ID:YJd43wxQo(4/7) AAS
 久信が何かあったのかと尋ねても修実は何も話してはくれなかった。
久信は姉は自分のような凡俗には分からないようなストレスのかかる生活を送っているんだろうと考えて一人ひねくれもしたものだ。
 しかし、そんな妬みも収まってきた高校生活も終わろうという頃、
姉の疲弊が見た目にも顕著になり、久信も、そして幼少の頃はどう扱ったものか困って、まるで腫物を扱うように関係して里子に出してからはほとんど我関せずだった両親も、実家に帰ってくるよう勧めた。
 そして、そのついでとばかりに修実に対して久信は告白をしたのだ。
 離れたくない。そんな顔をしなきゃいけない生活からは離れて、帰って来てくれ。
 我ながら赤面ものの女々しい告白だが、そう言われた時の姉の嬉しそうな顔を、久信は覚えている。そしておそらく、一生忘れない。
 十数年も実家から放り出されて、やっと家族にかけてもらえた、帰ってきて欲しいという言葉。二十歳になろうかという姉が童女のように喜んでいた。
それほど、姉は帰りたがっていたのだと、その時になってようやく解った。
 もっと早くに気付けていたなら、と今でも思う。もっと早くに気付いていたのなら、あるいは結末は変わっていたのかもしれない、と。
 姉は、実家に戻るようにという誘いに頷いて、これまで組織から受けてきた恩を、最後に組織を長年苦しめているという都市伝説を退治することで返したら戻ってくると言った。
 これが最後の往復だと言って、組織の監視役と一緒に実家を出て行った姿。それが、久信が知っている五体満足な姉の最後の姿だった。
 いつまで経っても帰ってこない修実を心配して探しに行った際、壊滅した町のありさまと、ようやく発見した変わり果てた姉自身から聞かされたことだが、
修実が離脱すると知った組織は、内部の情報を知りすぎている修実を危険と判断して、罠にかけ、殺害しようとしたらしかった。
 この組織は山奥の町の中にあり、長い年月をかけてお膝元の町に根差していた。
裏で行っていた様々な犯罪行為も表沙汰になることがなかったのは、町全てが組織の一部として彼らが行うことを黙認し、
彼らにとって有益であるように組織の噂を歪曲して周囲の町へと伝えていたという、そのような下地があったためだった。
 修実という、いわば組織の後ろ暗い仕事の代表格になりつつあった者の離脱は組織にとっても、そしてその組織と共犯関係にあった町の人々にとっても脅威となることだったのだ。
 自分たちの悪事が露見することを恐れた彼らは、結局、町ぐるみで修実を殺しにかかった。
 組織が手こずっていたという討伐対象の都市伝説は組織側が用意した都市伝説であり、
これの討伐に向かっていた修実は、その都市伝説と、そしてともに討伐に向かった仲間だったはずの組織の構成員の手によって攻撃された。
 何とか抗って町まで逃げた姉はこれまで警備役として町を守ってくる過程で決して知らない仲でもないという程度には関係を重ねてきたはずの町の人々に騙され、
捕えられてしまい、逃亡ができないように修実の両手足は切断され、その上で組織の契約者たちが攻撃を仕掛けた。
 裏切りに対してショックを受けて両手足まで落とされた状態で尚、修実は組織の契約者たちを退けたが、
最後には疲弊したところに封印を受けてしまい、あとは衰弱して死ぬのを待つばかりにされてしまった。
 その封印の中で、修実は否応なく自分が全てに裏切られてしまったのだということを納得させられ、ついに力を暴れさせた。
 封印の中で荒れ狂った力は封印を綻ばせ、その綻びからは瘴気が溢れだした。
 毒と瘴気は町ごと組織を壊滅させ、修実を探しに行った久信が封印を見つけた時には、
町は元々人間だったと思われるものたちの残骸を残してゴーストタウン化しており、修実は半ば都市伝説のような存在となって、意識も朧な状態だった。
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