[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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425(2): はがけない 第十五話「我儘な人々」 [saga] 2013/04/06(土)22:08 ID:VYNqQhoM0(4/6) AAS
「理事長!?」
ナージャが悲鳴をあげる。
ラーメンを食べ終わっていたジルりんが彼女の首筋にそっとナイフを当てる。
「ナージャさん、動かないでください」
ジルりんと目を合わせて頷く。
ポカンとする弟。
「理事長さん、勝手に弟を巻き込まれると困るんですよ」
僕は理事長の死体に光線銃を突きつける。
「遺体の回収でしたっけ?
この左腕、どこの聖者の遺体なのかは知りませんが勘弁して下さい
僕としては聖者の遺体みたいなものが有るならばそれを回収するのはイケメンな主人公と可憐なヒロインって決まってるんですよ
得体のしれない魔術師結社がはるか昔の聖者の遺体を集めているなんてちょー悪役っぽくて気に入りません」
早口に捲し立てる。
光線銃では殺せてないのは解ってる。
目の前の死体も仮のものだろう。
だがこいつが僕に対して反撃に移る瞬間、僕とジルりんが場所を入れ替えてジルりんにカウンターをさせる。
ジルりんの方を見ると彼女はウインクしていた。
「……すばらしい、そのエゴは非常に素晴らしい」
部屋中に声が響く。
どこから聞こえているかは解らない。
辺りを見回している間に目の前の死体が光の粒となって消失し始めた。
「その寿司は皆さんで分けてください
私は仕事を思い出しました
ちょうど財団のメンバーに一人空きが出たので埋めなくてはいけません
六条悲喜、ナージャとの入れ替わりなどではなく貴方をその空きを埋めるメンバーとして財団に迎えます」
「り、理事長!?」
ナージャさんは驚いたような声をあげる。
「貴方のご両親に言い訳が面倒なのでね、申し訳ありません」
「お待ちください理事長殿、僕が財団に入るのやだーって言った場合はどうするんですか?」
僕はおどけた振りで尋ねてみる。
「左腕の使い方を知りたくないですか?」
「これからよろしくおねがいしますね理事長さん」
これに乗らない手は無い。
「お、おい待て兄ちゃん!」
「それから路樹くん、君にも一つ耳寄りニュースだ
“遺体”は正式な方法で保管しないとすぐに怪異を生み出す
そして我々はその方法を知っている
我々から遺体を奪った警察は……その方法を知っているだろうかねえ?
いや知っていることを切に願うよ、これは本当だ。心から“遺体”が正しく取り扱われていることを願っている」
それを聞いて路樹の顔が青ざめる。
今のでこいつは迷った。
僕と違って正義感の塊であるこいつは今この言葉で確実に迷いを持った。
「まあ我々の方で遺体はどうにかしよう
遺体の回収任務を希望するメンバーは多いしね
だが君は遺体のことについて知ってしまった
後は君の自由意志に任せるだけだ
君は財団とは関係の無い一般契約者にすぎないんだからね」
理事長は笑っている。
姿は見えないがそう感じる。
結局、こいつの思うとおりに事態は動いている。
こいつはまったく戦わずに、勝つことも負けることすらもなく目的だけを完璧に成し遂げた。
僕には知識を、弟には正義感を、それぞれの求めるものを提示しただけなのに。
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