[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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36: 僕は小説が書けない第四話「君が生まれるその日まで」 [saga] 2013/02/23(土)09:42 ID:KdoxVB9f0(3/5) AAS
「人間か……どうだろうな
 僕は人間なのかな」

「何を言っているんだ?」

「なあ、君は何を以て人間を人間とするんだ?」

「……そりゃあ殺せるかどうかだ」

「都市伝説だって殺せるんじゃないのか?」

「都市伝説は死なない。私が死んだところで代わりの切り裂きジャックがいくらでも居る
 私は人々の伝承が集まって一時的に形を為している切り裂きジャックのアバターの一つに過ぎない
 命の存在しない私達に死んだり殺したりなんて感覚は存在しない
 人が、人だけが私達に命の感覚を教えてくれる
 いくら私以外のジャックが居ても私が奪った命だけは私のものだから」

 彼女の心が狂おしげに悶えているのが僕には分かる。
 まるで耳元にそっと囁かれているかのように伝わってくる。
 
「そうか、契約をすれば、直接人と繋がれば、人を殺す以上に何かを手に入れられると
 君はそう思ったのかい?」

「そんなところだ。何か悪いか?」

「悪いか? と尋ねること自体が君の罪の意識の現れだよ
 君は殺人を犯す罪悪感と悦楽によって意識を揺さぶることで自我を保っているんだ
 これは精神的な食事に等しい
 君は命を無駄に奪っては居ない
 言うなれば命を頂いて、自分を手に入れているんだ
 君は君の存在に疑問を持つことはない、僕はそう思うよ」

「そっか……」

 思うに。
 都市伝説と呼ばれる存在は自然発生的に生まれてくる。
 ならばその精神は生まれたての赤ん坊のように無垢なのではないだろうか。
 そんな存在による殺戮やその他の罪をどうして人間が裁けるのだろう。

「私は、なんなんだろう」

 悲壮さも、絶望も、悔恨もなく彼女は呟く。
 ああなんて哀れなのだろう。
 こんなにもしっかりと大地に立つ足を持っているのに、肝心要の心はこんなにも空っぽだなんて。
 でもそれ故に誰も足を踏み入れぬ雪原のような美しさが彼女にはあるのだ。
 僕が彼女を助けたあの時、彼女はただ月を眺めていた。
 彼女が僕と初めて会った時、彼女は僕と話してくれた。
 この少女は世界と触れ合いたいだけなのだ。
 それを思うと僕は彼女が愛おしくてしょうがなくなる。
 僕は知り合いの女性をこの娘に殺されている。
 だからこの美しい少女がどうしようもなく危険な化け物で、それ故に脆く儚く心惹かれる存在だと認識している。
 そんな危険過ぎる存在は本当ならばあの黒服達のように敵として排除すれば良いのだろう。
 それが人間として最低限の義理というものだ。
 でも僕にはできなかった。
 彼女を助けて、黒服の男を三人殺してしまった。
 面白いからというだけで平気でこんな選択をできる僕の方がよっぽどバケモノだ。
 いいや、面白ければいくらでも聖人になれるのだからもっと質が悪い。
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