[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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136: 僕は小説が書けない第八話「猫股亭奇譚/肆」 [saga] 2013/03/06(水)23:31 ID:n2E8HxpX0(6/8) AAS
こうなって初めて攻撃を仕掛けられたことを理解した。
でもそれだけじゃない。
肩口から火を注がれたような激痛が走る。
耐え切れずに僕はその場に倒れてしまう。
左腕がグチャグチャになってしまっている。
その左腕で持っていたジュラルミンケースもこれでパァだ。
終わった。
こうなってしまって何ができる。
これから始まるのは一方的な蹂躙だ。
たとえ帰ってこれても日常はもう二度と帰ってこない。
面白くもなんともない幕切れである。
親愛なる弟に少々申し訳ないのだが僕はどうやら死ぬらしい。
まあ男同士だ細かいことは言うな、許せ。
それにしても人ならざる者に触れてしまって調子に乗った男の愚かな末路って意味では悪くない筋書きだ。
僕の書く小説もだいたいこんなくだらないオチで終わるものばかりなのだ。
「あっ……」
攻撃の衝撃で床が崩落する。
こんな幽霊屋敷、良く考えれば構造がもろくなっていて当然だ。
無数の瓦礫とともに僕はその破壊の渦の中に飲み込まれていった。
この高さから落ちれば無事では済むまい。
こんな時にでも、死にたくないと願ってしまう僕は醜い生き物なのだろうか。
正直なところなんでもいいから助けてくれ、そう思う自分に自己嫌悪を禁じ得ない。
※ ※ ※
崩落に巻き込まれて僕はなお意識を保っていた。
この屋敷にあった地下室の瓦礫の中に落ちたせいで落下の衝撃を和らげていたらしい。
いっそ死んだほうが楽だったというのに。
遠くから足音が近づいてくる。
ジルりんには済まないことをしたものだ。
僕なんかとつるんだせいでこんな目に遭うなんてあの娘も哀れだった。
彼女には幸せに生きて欲しかった。
自分の目で、耳で、頭で、何が善で何が悪か、判断して生きていく姿を見たかった。
僕はきっと彼女が好きだった。
そっと傍に寄り添いたかったのに、そんなことも素直に言えなかった。
「おーい、生きてる? 生きてるならもう少しお姉さんと遊んでもらおうかなあ
女の子をあれだけ泣かせたんだもんそれくらいのワガママには付き合ってもらわないと」
あいつはきっと生まれたばかりだったのに。
本当にあっけなく、虫けらみたいに死んでしまった。
「……心臓の音、かな。悪運が強いねえ。殺すには惜しいし、これは尚の事遊んでおきたいなあ」
なんでだ。
僕のせいだ。
僕が馬鹿な事を言ってないでちゃんと彼女の言うとおりに戦う準備を、契約をしておけば。
僕は近づいてきた吸血鬼の女に胸ぐらを掴まれる。
そして彼女の瞳が僕の瞳を覗き込もうとしたその時、女の身体が揺れて彼女はその場に崩れ落ちた。
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