[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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106(1): 僕は小説が書けない第五話「猫股亭奇譚/序」 [saga] 2013/02/25(月)21:26 ID:bsqlir0a0(8/9) AAS
「む、まさかトラップ!?」
「……その可能性も有る。少し下がっていろ。巻き込まれたくないだろう?」
「だがそれじゃあ悲喜が――――」
「今はまだお互いにお試し期間だ。この程度のヘマでやられるような男ならお前も契約相手にしたくないだろ?」
「…………分かった」
訂正します。この娘やっぱお馬鹿です。
でもいいんだ。アホの子ラブ、俺大好きだよこういう素直な子。
僕はまるで何かを警戒するように、いや実際に周囲の様子に気を配りながらゆっくりとドアノブから手を離す。
その時、ドアの奥からほんの僅かな物音がしたのを僕の耳は捉えた。
粘着質の液体が這いずるような不快な音色。
何かが来る、そう思ってしまったせいだろうか。指の先からゆっくりと寒気が登ってくる。
でもまだ僕は否定する。
まさか、そんな筈が無い。
気のせいだ。気のせいに決まっている、ここで情けない声なんてあげて飛び退いたら。
―――――ペロリ、と首筋を何かが撫でた。
「うわあぁっ!?」
僕は思わず情けない悲鳴を上げながら後ろに飛び跳ねた。
「何か有ったのか?」
ジルりんは不思議そうに僕を見る。
「え、あ、いや……その、気のせいだったらしい」
そう言って彼女に曖昧な笑みを向ける。
「悲喜、下がってろ」
だがその時には既に彼女はこちらを向いていなかった。
彼女が見ているのは今僕が飛び退いてきた扉の方向。
「……あんた、戦闘については素人だと思ってたけどそうでもないのかもな」
扉の方を見たまま、彼女はそう続ける。
「ここから先は化け物同士の時間だ
こんな良い場所、頂けるなら頂いておきたい――――」
彼女の会話を遮るように扉が開く。
「――――行くぞ!」
そう言って彼女は二本のナイフを振り回して扉の向こう側へ突貫する。
中で陶器の割れる音と小さな悲鳴、そして壁の砕け散る音が聞こえた。
僕もケースから光線銃を取り出して彼女の後に続く。
「おい、ジルリン!」
扉を足で蹴り開けて中に入る。
驚くべきことに、そこには誰も居なかった。
静寂だけが屋敷の中に広がっていた。
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