('A`)は喰らい、生きるようです (61レス)
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1: 2011/04/23(土)01:04 ID:C8nvHS4Q0(1/48) AAS
さあて、こっそりやります。
元ネタはありますが、それをプレイしたことはありません。
2: 2011/04/23(土)01:05 ID:C8nvHS4Q0(2/48) AAS
 生きろと言われ、生き始める人間などいない。

 変われと言われ、変わり始める日常などない。
3: 2011/04/23(土)01:07 ID:C8nvHS4Q0(3/48) AAS
 某都市、雑踏。某年某月某日。日中、夏の日差しが一層強く感じられる日であった。
 『それ』は空が世の無慈悲さを嘆き、涙を流したかのようにも見えた。間もなく、辺りに響き渡る破裂音と悲鳴――。

('A`)「――は?」

 その時、欝田ドクオもイヤホンから流れだす音楽の背後から、その旋律を聞き、辺りを見渡すと、間もなく上空を見上げた。
 すると、彼の瞳に映るのは上空一帯を散漫とする小さな赤い塊。その情景はまるで空が赤い涙を流しているかのようにも見えた。
 その小さな赤い塊がちりばめられる元――中心は白い。上空に残されたその痕跡からは、何かが上空で破裂し、その破裂がほんの少しだけ前の出来事であったと推測できる。しかし、彼はそんなことは考えなかった。いや、むしろ考えられなかったのだろう。
 ニュースにも予報されていなかった突然の現象。それを彼は恐怖というよりは疑問に近い眼差しで見つめていた。
 何かが起きている。『非日常』が訪れている。
 それだけは周りの人々同様、彼も理解出来るものの、自分が何をすべきなのかまでは思惟は働かない。

 だが、次の瞬間、人々の思惟はことごとく覆された。
省1
4: 2011/04/23(土)01:08 ID:C8nvHS4Q0(4/48) AAS
「うわぁあああああああ」

「キャアアアアアアアア」

(;'A`)「――ッ!?」

 ドクオはその時、初めて事の重大さに気付いたようだった。上空を舞っていたはずの赤い塊が地に向かってくることの美しさは、思考をも奪うほど美しいのだろうが、辺りに瞬間的に広がってゆく阿鼻叫喚といった光景は美的なものではないとドクオ自身の理性が啓示する。
 そして、ドクオは自らの考えを訂正した。上空を舞っていた赤い塊は地に向かって落ちているのではない。
 それらはまるで意志を持つかのように、人々に向けて落ちているのだ。

 雑踏の中で押し退け合いながらも逃げ惑う人々。だが、無慈悲にも狂いなく人々に赤い塊が落ちてゆく。
 赤い塊自体は大した大きさではないのだ。柿の種程度の大きさである。
 だが、その赤い塊を受けた人は次々に倒れてゆく。それを頭に受け、または胸に受け、腕に受け。それでも人は皆平等に地に伏してゆく。
省2
5: 2011/04/23(土)01:10 ID:C8nvHS4Q0(5/48) AAS
 それは諦めに近かったのかも知れない。空を仰ぐ彼の瞳に映ったのは、自らへと一直線に向かってくる赤い塊。
 辺りで倒れてゆく人々と、赤い塊か衝突し崩れてゆくビル群を横目に映しながら、ドクオは走馬灯に似た感覚で想いに耽る。
 その時はあまりに突然のことで何に対する恐怖も無かったのだろう。ああ、という一声で思考を終わらせられたのだ。

('A`)(今日は四人で集まろうって約束してたのにな。高校は皆と別になったから――)

 頭のなかに流れるドクオ自身の声は寂しそうにも聞こえる。

( A )(――ブーン、ツン、クー)

 三人の名を呼んだときには、ドクオの胸には赤い塊が既に埋まりつつあった。徐々に消えゆく意識の中、彼は心の中で小さく呟いた。
省7
6: 2011/04/23(土)01:11 ID:C8nvHS4Q0(6/48) AAS
 ――喰ラエ。

 誰がそう命令したのか、俺は知らない。内から聞こえた声なのだから、きっと俺の中に居る何かがそう命令したのだろう。
 苦しくはなかった。冷たくも暖かくもない真っ暗闇の中で、俺は寝転がりながら不思議な映像を見ていた。
 いや、見ているようだった。
 映像には奇妙な怪物が映っていた。なんだろう、質の悪いB級映画なのだろうと自問自答するが、そうでは無いことはあとから分かる。

 手に伝う生々しい感触。
『映像の中の俺』は両手に刃物を持ち、怪物を切り刻んでいた。画面に血が付着する。爽快だ。だが、こんなにも醜い手をしていただろうか。
 そう思っている間に、ふと両手に痺れが走る。どうやら、怪物に弾かれたらしい。
 すると、怪物の魔の手が映像の中の俺に迫る。ああ、死ぬのか。ってか、自分が死ぬってのに、俺って呑気だよな――。
7: 2011/04/23(土)01:12 ID:C8nvHS4Q0(7/48) AAS
 ――生キロ。

 今さらながら気付く。
 どうやらこの声は、映像の中の俺の原動力らしい。両手を弾かれ、仰け反ったはずの俺の体は、声に応じるように瞬時に体勢を立て直す。
 なるほど、声の主が映像の中の俺――俺の体を操っているのか。

 俺は歯を出す。
 いつの間にか獣のように尖った鋭利な歯だ。
 両手が使えなければ、これで殺せばいい。それでいい。俺は目の前に居た白黒の怪物の胸に噛み付く。そして、勢いで胸を貫く。視界を覆う血は気にしない。肉は美味い。骨も臓器も美味い。

 その時、俺の歯に堅いものを感じた。骨をも砕く歯に堅いものなど無いと思ったが――。

 俺は構わず、それを飲み込む。
 次の瞬間、高鳴る心臓の鼓動。俺の中で飢えていた何かが、その時満たされる。
省2
8: 2011/04/23(土)01:13 ID:C8nvHS4Q0(8/48) AAS
しかし、在れと言われ、在り始める自分は此処にいる。
9: 2011/04/23(土)01:14 ID:C8nvHS4Q0(9/48) AAS
プロローグ 終わり

('A`)喰らい、生きるようです
10: 2011/04/23(土)01:15 ID:C8nvHS4Q0(10/48) AAS
うわ、はを忘れてるよ。はを。

続けて一話を投下します。
11: 2011/04/23(土)01:18 ID:C8nvHS4Q0(11/48) AAS
 あなたはいつ、死んだのですか?

 ある人は答えて言います。
 最初に生きた時から死んでいます、と。
12: 2011/04/23(土)01:19 ID:C8nvHS4Q0(12/48) AAS
 それはまるで朝に目を覚ますような他愛のないことのようであった。彼はある時にふと眼を開く。
 別段、彼は誰に呼び掛けられたわけでもない。ただ自然と起きようと思っただけなのだ。彼は目覚めたついでに体を起こし、立ち上がる。それから、まだはっきりとは覚めていないような眼で呆然と辺りを見つめた。
 すると、間もなく彼の無表情が歪められる。

(;'A`)「どうしてこうなった」

 その起き上がってからのドクオの第一声は、まさに辺りの状況を鮮明に映し出していた。
 彼の忙しく動く瞳には、荒廃した街並みが映し出されている。
 いや、街並みとドクオが認識出来るのは、先程までその街並みを見ていたからであろう。
 ビルに付いている大型液晶モニターは灰色に染まり、亀裂の入った画面は何も映しはしないだろう。加えて、崩れ落ちたビルや亀裂の入った足元のコンクリートなど、まるで災害が此処で起きたかのような光景がそこにあったのだ。
 そんな時、ドクオの脳裏にふと疑問が過る。

 ――何故自分はこんなところに居るのだろうか。
省6
13: 2011/04/23(土)01:20 ID:C8nvHS4Q0(13/48) AAS
(;'A`)(――肉、片?)

 だが、そう心の中で呟いたとしても、彼は恐怖におののくことは無かった。その時には彼は自分がおかしくなっているとは薄々感じていた。その瞳に映る肉片を認識しても違和感はあるものの、大きく驚くことはなかったのだから。
 それでも、彼は混乱することは無かった。自分が異常とは思えるものの、それを素直に受け入れられるように体がなっていたのだ。だがそうだとしても、移ろいを感じることなく変化した自分を不思議だと思ったのだろう。訝しげに首を傾げる彼だが依然として呆然と立ったままであった――が。

「君も初誕を乗り切ったか」

(;'A`)「――ッ!?」

 ゆくりなく、辺りに響き渡った声にドクオは咄嗟にその声の方へと顔を向ける。
 そういえば、ドクオの辺りには人一人はおろか生き物は一体も居なかった。居たという痕跡を残すように、あちらこちらに血が付着しているだけである。無論、声など聞こえるはずも無かった。
 だが、その時に確かに声が響いたのだ。ドクオが眼を向ける先には、路上にて幾つもの自動車が縦に潰されていた。その奥に、確かに人影が見える。
 それから間もなく、ドクオは眼を見開き、嘘だろと言葉を口にした。
 ドクオの瞳に映る人影。それは確かに人だった。そして、ドクオは確かにその人間に見覚えがあった。いいや、そんなレベルではないほどだろう。
14: 2011/04/23(土)01:21 ID:C8nvHS4Q0(14/48) AAS
川 ゚ -゚)「やはり、人とは常に繋がっているものなのだな」

 その時、ゆくりなく吹いた風が彼女の長い黒髪をなびかせる。

(;'A`)「……クー?」

 ドクオの目の見開きようは、まるで幽霊を目前としたかのように大きく開き、それはまるで永劫にも閉じないほどに見える。興味よりはむしろ、恐怖や驚きの感情が彼の瞳に映りだしていたのだ。
 それを感じてか、クーは困ったように微笑む。

川 ゚ -゚)「立った死人を見るような眼で見つめるなよ。正真正銘、生きている私だ」
省6
15: 2011/04/23(土)01:23 ID:C8nvHS4Q0(15/48) AAS
(;A;)「……ほぇ?」

川;゚ -゚)「再会を喜ぶのは良いが叫ぶな。『ヤツら』が来る」

(うA;)「……ヤツらって?」

 いつの間にか零れだしていた涙を拭い、クーの顔を見つめながら問うドクオ。その時にはユーモラスな雰囲気を滲みだしていたクーも少々深刻な顔持ちでドクオを見つめていた。

川 ゚ -゚)「初誕状態の悪魔化した生物のことだ」
省9
16: 2011/04/23(土)01:24 ID:C8nvHS4Q0(16/48) AAS
(;'A`)「……え?」

 ドクオが疑問の声を洩らした、まさにその時であった。
 ゆくりなく、自らの脳へと何かが流れ込んでくるような感覚に彼は陥っていた。
 刹那に終わりを告げる。だからこそ、痛みは無い。
 ドクオの脳がその時覚えた――というよりは思い出した映像は、あの『喰らう』映像だった――。

 ――辺りに血飛沫が舞い、何かが天空へと咆哮する。
 ――狂った瞳は、それでも真っすぐにヤツらを見つめていた。
 ――元は同族を。
 ――俺は、喰らった。
 ――生きる、ために。
省7
17: 2011/04/23(土)01:27 ID:C8nvHS4Q0(17/48) AAS
('A`)「――あれから気が付いたら、俺は眠っていたんだよな」

川 ゚ -゚)「ああ、これを喰らった時からだろう?」

 クーはドクオが何を考えているのか分かっているかのように、着ているワンピースのポケットから何かを取り出す。
 それは赤い。血の色に似た何か。
ドクオはそれを幾つも見たことがあった。

「悪魔の種子」

 ドクオの問いよりも先にクーが静かにそう言う。
省10
18: 2011/04/23(土)01:28 ID:C8nvHS4Q0(18/48) AAS
(;'A`)「ん、んじゃ……生き喰いしないと喰えないのか」

川 ゚ -゚)「あながちそうでも無いんだがな。実際、私の持っている種子は死体から採取した。媒体の生命力が強ければ、死滅しない場合もあるのだろう」

(;'A`)「……へぇ」

 その時、ドクオの間の抜けた声にクーはくすりと笑っていた。

川 ゚ -゚)「いつまでも変わらないな。ドクオは」
省12
19: 2011/04/23(土)01:30 ID:C8nvHS4Q0(19/48) AAS
(;'A`)「――そういえば、さ。お前って、なんでそんなに詳しいんだ?」

川 ゚ -゚)「ああ、言ってなかったな」

 すると、クーは自らの胸に手を当てると、静かに眼を閉じた。

川  - )「こうして眼を閉じてると、私の意識の中にいる悪魔が私に話し掛けてくれるのさ」

(;'A`)「……んじゃ、そうやって悪魔化とかなんやらの情報を得たのか――ってか、俺も出来るのか?」
省9
20: 2011/04/23(土)01:30 ID:KYo78Sr20(1/8) AAS
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