第二汎用スレ (2314レス)
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(1): ジャック・V・テイラー◆/yjHQy.odQ 2018/07/26(木)05:26 ID:qMzDdpG2(1) AAS
キョウの様子にニクスが気付かないわけもない。
事実、若干の曇りが表情を覆っていた。
しかしそれをニクスから聞いてくる気配もない。
キョウの考えることはキョウのみぞ知ればいい、ということだろう。

「そうか。テイラー曰く、この一帯の獣は新参が多く、数も先程の一戦で相当数減ったらしい」

「バッカスは休憩拠点として存在しているため、地下水道は封鎖してある。基本的に向こう側から一方通行だ」

「逆に言えばもし危険な状態であったら、バッカスに逃げ込んで補給が来るまで籠城、というのもある。憶えておいてくれ」

「では行こう。近場の商店街の井戸を使う」

「何が待っているかは分からない。ここでは常に警戒と覚悟をして臨むべし、先達の教えだ」

「キョウならば大丈夫だろうが、俺はそうも行かない。牛歩は予定調和として容認して欲しい、頼む」

そう言うと、外套を翻し、小盾と片手剣を確かめて歩き出す。
彼の装備は革を重ねた軽装スタイル、ヘルメットには上下可動のレンズ、各部にベルトと装着されたシリンダー。
彼自身の警戒心にも、キョウから見て恐らく油断や乱れは驚くほど感じられないだろう。
奇襲されればと宣ってはいたが、おおよそ広く、淡く、的確に危険な場所へ集中を欠かさない。
ジャックが言った。
《彼の案内なら問題はない》
おおよそ、ニクスはその戦闘力こそ本当に駆け出しであるが、精神面は老練の玄人のそれに近い堅固さを有していた。

「キョウは大丈夫だと言ったが、極力戦闘は避けていきたいと思う」

「はぐれたりすれば最悪共倒れも視野に入るだろうし、何より俺が危ない」

「ただ戦闘を避けられないとなれば話は別だ。俺も囮くらいはやってみせよう」

石畳の街路は歩けばコツコツと音を跳ね返し、明けぬ夜の王都を不気味に揺らす。
獣の気配は無い。先程の戦闘でも周囲から殺到ということがなかった、縄張りやエリアの意識があるのだろうか。
腐るのを通り越し乾いた果実。
壊れた籠や調度品、見覚えのある路地の時間は緩やかな死の果てにあるようだった。
ニクスは淡々と警戒をそのままに歩を進め……
広場に繋がる通りに差し掛かって、足を止めた。

「ここからは店の中を通ろう。あの広場は大きな獣が縄張り争いでもするのか、小競り合いをしていることがある」

「少し遠回りだが、預かった身を危険に晒すリターンはないと判断した。構わないかな」
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